■2008.09

日めくり 2008年09月(平成21年)

 

2008.9.1

遠くて近い人、近くて遠い人。
自分の中のもうひとりの自分がいる。
でもその自分は実体としての自分と殆ど変らなくなっている。
ならば自分の中にもうひとりの自分を囲っている意味はあるのだろうか。


2008.9.2

外回りから帰社しようとしたとき、
仕事を終えて帰ろうとするスタッフとすれ違う。
今日は残業だったのかなと思って、
腕時計を見ると午後6時の定時だった。
大都会にもこおろぎの鳴く声、
自販機の灯りが強く感じる。
半世紀近く生きてきたというのに、
日が短くなったと気がつく瞬間にはいつも驚きがある。


2008.9.3

まあ、なんちゅうか阪神タイガース。
ほんの夏前までは、相手に先制点を許したりすると
「おっ、こいつは面白れぇ試合になりそうだな」と思ったものだった。
ところが、今、相手に先制点を許したりすると
「ありゃ、こいつは面目ねぇ試合になりそうだな」と思う。
字はほんの少しの違いなんだけど、実にエライ違いではあるな。


2008.9.4

ちょっとしたことでマの悪さをさらけ出した一日。
携帯電話を家に忘れたおかげで読みかけの本を完読。
タイガースは結局、3点ビハインドのまま雨チュウ。
雨チュウ?「雨天中止」のこと。
こんな言葉、阪神公式掲示板でさえめったに使われていないはず。
何故ならワタクシが地域限定で密かに流行らせた言葉なのです。
「雨チュウ」でググると知っている名前がチラホラ(ニヤリ)。
ほんのちょっとだけ「してやったり」の気分。
この雨はマが良かったということか。まったく情けないけどね。


2008.9.5

午前1時閉店のスーパーに駆け込む。
ピュアウォーターなる浄水された水を2リットルのボトルに注ぐ。
ボトルは専用のものを買えば、あとは使い放題なのだが、
実はその専用ボトルは別のスーパーのもの。
ルール違反だが他愛ないズル。
その水を沸かしてインスタントコーヒーを飲む。
一日の疲れを深く体に流し込むような気分。
いつもと同じピュアでズルな夜が沈んでいく。


2008.9.6

「人生、とくに結婚生活には大切しなければならない三つの袋があります…」
何で臆面もなくこんな定番を披露宴のスピーチで言えるのだろう。
寝袋、子袋、タマ袋なんてオチをつけてくれればいいのだけど(笑)
さも自分がひり出した人生訓かのように上から朗々と喋れる神経が不思議だ。


2008.9.7

ゴォーゴォーとものすごい音。窓に叩きつける雨。
テレビのテロップに各地に警報のテロップと運行見合わせの路線。
こりゃ神宮はナシだな…。テレビを消す。
おそらく5杯目くらいのコーヒーを淹れながら
「サザエさん」でも観るかなと、またリモコンに手を伸ばしかけたが、
あの主題歌を聴くと急に明日の仕事を思い出すのでやめる。
ポリ袋に捨てるため、山盛りとなった吸殻が燻っていないか確かめながら、
今日も随分とフィルターを噛んでいたなと、また4ゲーム差を思い出す。


2008.9.8

激昂と諦観の一日。
抑圧と解放が一度にきた。
ブログをやって5ヶ月。ここでは本当に自分が主人公になれることがわかった。
思わせぶりな表現で相手を煙にまくのも、
さものっぴきならぬ状況にいることをさりげなく匂わせるのも自由自在。
でも本当に今日はそういう小賢しい技を弄してみたい一日。
自分のことを案じてくれと甘ったれた気分が頭を駆けめぐりつつ、
そういったことのすべてに屁をかましてみたい気分ではある。


2008.9.9

「オレの力ではどうにもならへん」
昨日と今日で違う人たちから同じ言葉を聞かされた。
取り敢えずは言っておきたかったのだろうが、
それにいちいち頷くこちらもめげてくる。
それぞれ終わりの始まりを予感しているようだが、
こちらはそんな終わりをもう終わらせるつもりでいる。
しばらくはこうして言葉の遊びを繰り返すのみ…ってか。


2008.9.10

はっきり言って野球どころの状況ではなく、本気で仕事と向き合わなければならない。
しかし、九回裏二死満塁、バッター葛城!なんてところで仕事電話が入ってくると、
「それどころじゃねぇ!」と呼び出し音を堂々と無視する。
全然本気で仕事してねぇじゃん…(苦笑)。


2008.9.11

鳴尾浜への朝は早い。
家族には「パパ誕生日おめでとう」くらいはいわれて出掛けただろう。
その夜にカクテル光線を浴びながらダイヤモンドを一周し、
最後はひとつ高い場所から4万3千人の大観衆を見回しながら、
日焼けして精悍な顔になった男はマイクに応える。
「夢見ているみたいです」
帰宅が遅くなったヒーローを家族はどんな笑顔で迎えるのだろうか。


2008.9.12

新宿駅西口の喫煙所の前で、街宣車の上から小林興起が演説をしていた。
その正面でマスコミが脚立を設置して、カメラの位置を確認している。
小林興起の声が熱を吹きはじめ、天下国家から小池百合子に対する悪口へ。
小林興起の演説が終わる。三脚にカメラを据えつける報道陣。
本日、午後6時から麻生太郎の演説があるらしい。


2008.9.13

家から一歩も出なかった。
生身の人間をひとりも見なかった。
洗面所の鏡は何度か見た。
寝ぐせ、無精ひげ、うつろな目。
そろそろ替えどきかなと思いながら、
毛先の広がった歯ブラシに歯磨き粉を絞り出す。


2008.9.14

見えないホームベースの位置を確かめ左打席に入る。
いるはずもない投手を制し、踵とつま先の距離を計りながら、
幾分、オープンスタンス気味に修正し、グリップを軽く持つ。
右のわき腹に壁を作ることを意識してバットを振るのだが、
グリップがぶれる、ヘッドがうまく返らない。
街頭に照らされた自分の影がなんとも不恰好だ。
久々に持ったマスコットバットがズシリと重い。
あたりに人のないことを確認して、私はゆっくりとホームランを打つ。


2008.9.15

う〜さぎ、うざぎ なに見てはねる?
あいにくの雨で月が隠れていた。
そういえば十五夜の満月を人生で何回見てきたろうか。
つくづく風流とは無縁の日々。
李白の「月下独酌」は春の詩だったか。
まだ影と相伴できるだけ今夜よりはマシというものだ。


2008.9.16

早めにケツを割った美少年酒造の評判は復活基調。
私、リーマン・ショック直前に投資信託解約。
福田康夫もとっとと逃げて高見の見物。
逃げろや逃げろ岡田・阪神タイガース。


2008.9.17

午後14時、渋谷。次のアポは新宿に16時。
ちょいと鞄は重たいが、強い日差しを避けて明治神宮境内を歩いてみる。
くぬぎ林から醸される匂いが心地よい。
北参道から西参道へ、芝生の緑が鮮やか。池にはトンボが飛んでいる。
見上げると木々の天辺には西新宿の摩天楼。
ふた通りの季節、ふた通りの景色。
そして腹立ち、可笑しみ、ふた通りの思い。


2008.9.18

焼酎3杯のあとに日本酒を3本くらいまでは憶えている。
酔うことはあっても、酔っ払ったのは久々のこと。
胃がもたれ、胸がむかつく、情けない顔。無理に笑う。
「男の顔は履歴書」……
男がみんな安藤昇というわけではない。


2008.9.19

後ろ髪は襟にかかるぐらい、前髪は眉のあたりまで、脇は耳を出して。
もみ上げはスッキリさせて、全体はすいてもらえれば……
「お疲れさまでした」と床屋は刷毛で髪を払いながら、床を掃除する。
散らかった髪の毛が白黒入り交じって、フローリングを灰色に染めていた。


2008.9.20

今、自分が直面している心配事を数えてみる。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ……秋風とともに増えている。
時間が解決してくれるものもあれば、永遠ではないかと思うものもある。
永遠? それは有り得ないか。
心配事のひとつひとつに勝ち負けがあるのならば、何勝できるというのだろう。


2008.9.21

この週末は疲れた。三連敗した試合にも疲れたが、
狭くて天井にヌケがない空間に人間の数が4万6千人。
この中に3日間も埋まっていたのもしんどかった。
まず泥のように眠ってからかな、悔しさを噛み締めるのは。


2008.9.22

虚脱しているわけではないが脱力している。
疲労困憊というわけでもないが何ともかったるい。
怒り、不安、焦り。
握り締めた拳を思いっきり突き上げたい。
でも拳はポケットの中。


2008.9.23

雨模様が一転して抜けるような青空。
そこで「小春日和」と書こうとして何やら違和感。
調べてみたら小春日和とは
「春のような陽気な気候」という意味ではなく、
「初冬の頃の、春のように穏やかな気候」とのこと。
彼岸だからといって9月に使う言葉ではないらしい。
因みに「懐石」は豪華な料理のことではなく逆に簡素な料理のことだという。
最近、思いつきだけで言葉を走らせすぎていると自省する。


2008.9.24

あっちに「あばよ」 こっちに「あばよ」
新宿、恵比寿、池袋
「あばよ」も使いすぎると慣れてくる。


2008.9.25

珍しく朗報が続いた日。
阪神勝って、巨人負ける。
中島みゆきの超プレミアチケットが当選。
それから「あばよ」が笑って言えそうなこと。
秋の甲子園の浜風が向きを変えるように
自分をとりまく風が変ってくれればいいのだけど。


2008.9.26

「これから先、自分のプライドを賭けて闘う」
優勝会見での涌井秀章の弁。
彼らほど解りやすく仕事にプライドは賭けられないが、
負けたくないという意地だけはいつも燻っている。
それが最低限のプライドだろうか。


2008.9.27

昔は、要求されたことを片っ端から受けることで、
自分のキャパシティも増えるのだから構わないと思っていた。
今は、キャパシティがいっぱいいっぱいだ。
悲しいかな、受け容れてきた癖だけが直らない。


2008.9.28

オギャーと生まれたときからお袋がいて親父がいる
小学校で何となく基礎学力を教わって
中学でとりあえず義務教育修了のお墨付きをもらって
あんなことやらこんなことを高校で教わって
大学で好き放題の時間をもらいつつ学士の称号を戴き
社会に出て四半世紀、様々な人たちにお世話になっている
人生なんて連続する他力本願さ。
……巨人が中日に負けて、タイガースにマジック再点灯。


2008.9.29

一日中、雨。しかし、よく降る。
9月の雨は冷たい、全然やさしくない。
それでも明日が晴れなら秋の虫たちは饗宴をはじめるのだろう。
今、雨の中をどうやって過ごしているのか。
強いよなぁ…。


2008.9.30

レバニラ炒めをつつきながら
泣き言のひとつひとつを
ジョッキのビールで飲み干した。
「餃子もう一皿追加しよか」
おっちゃんはいつだって良い子ちゃんなのだ。

 

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