◆三行の映画評

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メタモルフォーゼの縁側
2022.06.19 イオンシネマ座間:スクリーン9 [1100円/118/分]
【92】2022年日活=日本テレビ 監督:狩山俊輔 脚本:岡田惠和
CAST:芦田愛菜、宮本信、高橋恭平、古川琴音、汐谷友希、伊東妙子、菊池和澄、大岡周太朗、生田智子、光石研
●ボーイズラブで結ばれた年の差58歳の女の友情物語。きっと原作コミックは面白いのだろう。ただ宮本信子と芦田愛菜のもたれ合うような芝居は退屈だった。モチーフの対岸にガールズラブまで昇華出来ればもっと刎ねただろう。陰キャ女子高生の成長譚としては物足りなく、キャストに古川琴音の名前がなかったら観ることはなかったかな。


トップガン マーヴェリック
2022.06.12 イオンシネマ座間:スクリーン3 TOP GUN:MAVERICK [1100円/131分] ※再観賞
【91】2022年アメリカ 監督:ジョセフ・コジンスキー 脚本:クリストファー・マッカリー、A・クルーガー、E・W・シンガー
CAST:トム・クルーズ、ジェニファー・コネリー、マイルズ・テラー、ジョン・ハム、エド・ハリス、バル・キルマー
●計算され尽くしたドッグファイトの超絶編集をじっくり堪能するため、吹替版にて再観賞。いやいやじっくりなんてとても無理。この齢でハリウッド大作に没入させてくれたトムには感謝しかない。ご都合主義的に進む展開や人間関係のあまりの単純化を指摘する声もあるが、あえて前作の『トップガン』らしさの踏襲なのだと解釈したい。


TITANE チタン
2022.06.05 シネマート新宿:スクリーン2 TITANE [1200円/108分]
【90】2021年フランス 監督:ジュリア・デュクルノー 脚本:ジュリア・デュクルノー、ジャック・アコティ他
CAST:ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル、ギャランス・マリリエ、ライス・サラメ、ベルトラン・ボネロ、ドミニク・フロ
●本作を「生涯ベスト」と言い切る女性が多いと聞いた。母体をここまでグロテスクに描いた映画は初めてで、それが女性監督から放たれたことに身を怯ませながら、終始アレクシアの視点が男の性を見下していることで腑に落ちるものも感じた。生身の肉体より機械、快感より痛感、その突き抜けた暴力に作家性を捉えたカンヌの先見も凄い。


マイスモールランド
2022.06.05 新宿ピカデリー:スクリーン10 [1200円/72分]
【89】2022年製作委員会=フランス=バンダイナムコ 監督:川和田恵真 脚本:川和田恵真
CAST:嵐莉菜、奥平大兼、アラシ・カーフィザデー、チョーラク・マズルム、平泉成、池脇千鶴、藤井隆、チョーラク・ロビン
●結論としてサーリャの視点から難民に対してこの国がいかに無慈悲であるのかを思い知らされる映画だが、クルド人家族のさりげない日常に家父長主義を匂わしチクリと皮肉るところなどしっかり是枝印のドラマになっている。確かにあまりの理不尽に義憤にも駆られるのだが、我々は無力であることを無関心の理由にしているのも現実だろう。


ハケンアニメ!
2022.06.05 渋谷TOEI:2 [1200円/129分]
【88】2022年製作委員会=東映 監督:吉野耕平 脚本:政池洋佑
CAST:吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子、工藤阿須加、小野花梨、古舘寛治、徳井優、六角精児、前野朋哉
●予告編を見た限り、これ2時間9分も要る?と訝しんだが、観終わってみると何処を削るのか思いつない。東京撮影所の製作で舞台は東映アニメーション。オール東映いいね、という趣きで有名無名賑やかな顔たちの現場の空気感がいい。SNS書き込みの羅列が喧しかったものの、仕事の成果を実作品で見せた誠実さは観客に対しとてもフェア。


胎児が密猟する時
2022.05.30 シネマヴェーラ渋谷 [800円/72分]
【87】1966年若松プロダクション 監督:若松孝二 脚本:大谷義明(足立正生)
CAST:山谷初男、志摩はるみ
●マンションの一室を羊水と見立て、そこで繰り広げられる男一人に女一人の密室劇。ある時期までもっとも有名な若松作品だったが、聖書の一説に教会音楽が奏でられる中、鞭を振るいナイフで凌辱する丸木戸定男の自己陶酔に満ちた饒舌の繰り返しに「あ、やばい」と思った途端、睡魔が襲ってきた。残念ながら古さしか感じられなかった。


トップガン マーヴェリック
2022.05.29 イオンシネマ座間:スクリーン10 TOP GUN:MAVERICK [1100円/131分]
【86】2022年アメリカ 監督:ジョセフ・コジンスキー 脚本:クリストファー・マッカリー、A・クルーガー、E・W・シンガー
CAST:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、ジョン・ハム、エド・ハリス、バル・キルマー
●冒頭の"Danger Zone”がとことんチープに聴こえる。前作の唾棄すべきMTV風も律儀に踏襲したりもしているのだが、エンディングはがっちりインストで締めた。要はすべてがブラッシュアップしているのだ。戦闘の大迫力、世代を超えた友情、まさに一大エンターティメント。そして忘れてはならないトム・クルーズのあまりに純真な映画愛。


犬 王
2022.05.28 イオンシネマ新百合ヶ丘:スクリーン9 [1100円/98分]
【85】2022年サイエンスSARU=アスミックエース 監督:湯浅政明 脚本:野木亜紀子
CAST:(声) アヴちゃん、森山未來、柄本佑、津田健次郎、本多力、松重豊、石田郷太、酒井善史、松重豊
●♪でっかいでっかいクジラ~の大音響が耳から離れない。昨年の細田守を思い出すまでもなく長編アニメは草創期から音楽劇との融合を試みていた。今回はその圧倒的決定版。能楽師と琵琶法師のバディが室町時代のストリートからやがて一大ロック・フェスに結実していくのと同様、大友良英の音楽力と湯浅政明の映像力が見事に重奏している。


実録・連合赤軍 あさま山荘への道程みち
2022.05.26 早稲田松竹 [1000円/190分]
【84】2007年若松プロダクション=スコーレ 監督:若松孝二 脚本:若松孝二、掛川正幸、大友麻子
CAST:井浦新、地曵豪、並木愛枝、坂井真紀、大西信満、菟田高城、タモト清嵐、小木戸利光、中泉英雄、伊達建士
●小学生の時、街角に貼られた永田洋子の手配写真がとにかく怖かった。「総括」というワードも暗いトラウマを残したが、それを蘇らせた若松孝二。これを撮るのにもっとも相応しいというより、若松が連合赤軍を描くことの必然で190分を一気に見た感じ。間違いない力作だが「みんな勇気がなかった」と激昂する加藤元久は残念な自己批判だ。
※2008年キネマ旬報ベストテン第3位


哀しみのトリスターナ
2022.05.22 川崎市アートセンターアルテリオ映像館  TRISTANA [1200円/105分]
【83】1970年フランス=イタリア=スペイン 監督:ルイス・ブニュエル 脚本:ルイス・ブニュエル、J・アレジァントロ
CAST:カトリーヌ・ドヌーヴ、フェルナンド・レイ、フランコ・ネロ、ロラ・ガオス、アントニオ・カサス
●是枝和弘が云うようにモンロー、ヘプバーン同様にドヌーブ映画というジャンルが存在する。主従逆転の男女のドラマにブニュエルは大女優に様々な負荷をかけながら、フェルナンド・レイ、フランコ・ネロという強面たちを翻弄させていく。なんたる器用な資質か。個人的にはドヌーブと対峙しているネロの硬質感がたまらないのだが。
※1971年キネマ旬報ベストテン第7位


理由なき反抗
2022.05.22 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン2 REBEL WITHOUT A CAUSE [1200円/105分]
【82】1955年アメリカ 監督:ニコラス・レイ 脚本:スチュワート・スターン、アーヴィング・シュルマン
CAST:ジェームズ・ディーン、ナタリー・ウッド、サル・ミネオ、ジム・バッカス、デニス・ホッパー、エドワード・プラット
●泣き笑いのJ・ディーンのクシャクシャな表情だけが印象に残っていたが、40年ぶりの再会で確信した。この映画のディーンがもっともディーンたらしめている。家族の再生を願う無垢な反抗が愛らしいが、何より白いシャツに赤のスウィングトップは50年代若者のロールモデル。伝説のスターにスクリーンで再会することの至福を味えた気分。


自由の幻想
2022.05.21 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 LE FANTOME DE LA LIBERTE [1100円/104分]
【81】1974年フランス 監督:ルイス・ブニュエル 脚本:アンドレイ・コンチャロフスキー、エレナ・キセリョワ
CAST:ジャン=クロード・ブリアリ、モニカ・ヴィッティ、ミシェル・ピッコリ、ジャン・ロシュフォール
●断片的なエピソードを連鎖的に繋げて一本の映画として貫いた挙句「くだばれ!自由」と笑い飛ばすブニュエル。こんな巨匠の名のもとに無双としか思えない傍若無人な作劇が実に面白い。そう何からしらの比喩なのか暗喩なのかわからないながらもブニュエルの映画は面白いのだ。シュールだがまったくもって日常的。もはや無敵か。
※1977年キネマ旬報ベストテン第3位


ブルジョワジーの密かな愉しみ
2022.05.21 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 LE CHARME DISCRET DE LA BOURGEOISIE [1100円/102分]
【80】1972年フランス 監督:ルイス・ブニュエル 脚本:ルイス・ブニュエル、ジャン=クロード・カリエール
CAST:フェルナンド・レイ、ポール・フランクール、デルフィーヌ・セイリグ、ピエール・カッセル、ミシェル・ピッコリ
●私は『アンダルシアの犬』にシュールリアリズムの洗礼を受けてしばらく、ブニュエルに傾倒していた。月光を切り裂いたナイフの切っ先は退廃的享楽に耽るブルジョワたちに向けられていると思いたいが、実はブニュエル自身が自ら刺さりにいっている風でもあり、そんな皮肉が余裕にも感じられるのは人生を喜劇に見立てているからなのか。
※1974年キネマ旬報ベストテン第6位


血は太陽よりも赤い
2022.05.21 シネマヴェーラ渋谷 [800円/80分]
【79】1966年若松プロダクション 監督:若松孝二 脚本:大谷義明(足立正生)
CAST:大塚和彦、一の瀬弓子、峯阿矢、和達五郎、若原珠美、山吹ゆかり、真弓田一夫、笠間雪男、桂奈美、寺島幹夫
●渋谷の雑踏で鶏の首を切断するなど強烈な場面を配しながら、少年の大人社会への絶望と怒りという二元論的単純なテーマは恐ろしく牧歌的であり、青春ノワールとしても、機関銃で大人全員をぶっ殺すと激昂する少年の将来にテロルやゲバルトの匂いは皆無だ。そもそも恋人の父親を手にかけたことまで大人の責任にするつもりか。


処女ゲバゲバ
2022.05.21 シネマヴェーラ渋谷 [0円/66分]
【78】1969年若松プロダクション 監督:若松孝二 脚本:出口出(大和屋竺)
CAST:谷川俊之、芦川絵理、乱孝寿、木俣堯喬、林美樹、大和屋竺、真鍋由紀、宮瀬健二、花村亜流芽、小水一男
●強烈なタイトルの命名は大島渚だそうだ。荒涼とした吹きっ晒しの原野で磔にされている裸女。若松プロの象徴的ビジュアルとして有名だが、このディストピアに暴力が横溢するにつれ妙な無邪気さが漂い始め、私にはどうにもアングラごっこにしか見えなくて退屈だった。きっと若松以下、撮影隊にはこの場こそユートピアだったのだろう。


ゆけゆけ二度目の処女
2022.05.21 シネマヴェーラ渋谷 [800円/65分]
【77】1969年若松プロダクション 監督:若松孝二 脚本:出口出(足立正生、小水一男)
CAST:小桜ミミ、山未痴汚、善兵世志男、風雅超邪丸、青木幽児、花村亜流芽、保根桂和、加上玲、マダム・エドワルド
●とうとうここに踏み込んだ。ずっと以前より若松孝二のとくに初期作品に抱いていた暗黒イメージが本作で払拭されたわけではないが、屋上という閉鎖空間で繰り広げられる殺戮はやがて自死を待つ若い二人にとっては地獄だったのか天国だったのか。それでもお互いが夜から朝までの時間を共有したことの確かさに一条の光が見えた気はした。


流浪の月
2022.05.14 109シネマズグランベリーパーク:シアター3 [1200円/150分]
【76】2022年UNO-FILMS=ギャガ 監督:李相日 脚本:李相日
CAST:広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、趣里、三浦貴大、白鳥玉季、増田光桜、内田也哉子、柄本明
●フミとサラサの純愛に似た絆に共感すればするほど世間の正義がとんでもなく理不尽に思えてくるのだが、所詮、我々だって正義の側の人間。だから李相日の演出力を以てしてもフミは実際には罪から逃れられないがゆえに純愛であることの物足りなさも感じていた。最後にフミの秘密が明かされ、現代ならではの不条理劇の誕生に驚く。


シン・ウルトラマン
2022.05.14 109シネマズグランベリーパーク:シアター1 [1200円/112分]
【75】2022年東宝=円谷プロ=カラー 監督:樋口真嗣 総監修:庵野秀明 脚本:庵野秀明
CAST:斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、山本耕史、岩松了、嶋田久作、益岡徹、長塚圭史
●オープニングの数シークエンスで一気に心を掴まれた感じ。怪獣ならぬ禍威獣がなんで日本ばかりに?と、遠い昔の少年みんなが思っていた疑問を通奏低音にしてしまう皮肉も効いているし、科特隊ならぬ禍特対の面子もいい。巨大フジ隊員ならぬ巨大浅見担当官があまりにフェチ全開なのにも笑えた。多少のチープさも空想特撮映画のご愛嬌。


死刑にいたる病
2022.05.08 イオンシネマ座間:スクリーン9 [0円 /129分]
【74】2022年製作委員会=RIKIプロジェクト 監督:白石和彌 脚本:高田亮
CAST:阿部サダヲ、岡田健史、中山美穂、岩田剛典、宮崎優、鈴木卓爾、佐藤玲、赤ペン瀧川、大下ヒロ、吉澤健、音尾琢真
●悪くはない。ただ「そこは違うんじゃないか?監督」と思える画面作りや説明ゼリフの頻発も少なくなかった。ただシリアルキラー=幼少時の虐待という手垢に塗れた切り口でも最後まで飽きさせなかったのは原作の展開の面白さかもしれないし、阿部サダヲの怪演の賜物だったかもしれない。が、白石和彌には毎回期待させる何かはある。


祇園の姉妹
2022.05.07 新文芸坐 [1300円 /70分]
【73】1936年第一映画社=松竹 監督:溝口健二 脚本:依田義賢
CAST:山田五十鈴、梅村蓉子、志賀廼家弁慶、久野和子、大倉文男、深見泰三、進藤英太郎、いわま櫻子、林家染之助
●祇園花街の特殊コミュニティの中で芸妓・おもちゃが対峙するのはカネと欲絡みの“遊び”の世界であり、そこに「男に虐げられている女」というステレオタイプを見出すのは、それこそ“粋”でない気がした。むしろ相当祇園に散財したであろう溝口が作り上げた世界観に19歳の山田五十鈴が躍動する姿の圧倒感を味わえばいいのではないか。
※1936年キネマ旬報ベストテン第1位


浪華悲歌
2022.05.07 新文芸坐 [ 〃 /分]
【72】1936年第一映画社=松竹 監督:溝口健二 脚本:依田義賢
CAST:山田五十鈴、梅村蓉子、大倉千代子、浅香新八郎、志賀廼家弁慶、進藤英太郎、田村邦男、竹川誠一、原健作、志村喬
●資料的見地で戦前の大阪の風俗をあろうことか大ミゾグチから読み取ろうというのは所詮ムリとしても、船場あたりの大商家の旦那が妾囲いを競うなんてことは日常的にあったことだろう。家父長制度にふんぞり返っていても養子の肩身の狭さが憐れで、女の生きづらさを描けば描くほど、右往左往する男たちの滑稽さが際立ってくる。
※1936年キネマ旬報ベストテン第3位


永遠に君を愛す
2022.05.05 横浜シネマリン [1100円/58分]
【71】2009年自主=fictive 監督:濱口竜介 脚本:渡辺裕子
CAST:河井青葉、杉山彦々、岡部尚、菅野莉央、天光真弓、小田豊、百瀬陽子
●河井青葉と岡部尚という座組で同じような題材でも製作年を考えると『PASSION』の後でこの中編はいかにも軽いし、掘り下げも浅い。脚本を他人に委ねた結果だろうか。結婚式当日の花嫁の反乱というありがちなシチュエーションを過不足なくまとめてみましたということだろうか。非商業映画だから習作として許されるのかも知れないが。


いつも2人で
2022.05.05 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7  TWO FOR THE ROAD [1200円/112分] ※再観賞
【70】2020年アメリカ 監督:スタンリー・ドーネン 脚本:フレデリック・ラファエル
CAST:オードリー・ヘプバーン、アルバート・フィニー、ウィリアム・ダニエルス、ジャクリーン・ビセット
●高校生の時に観てピンとこなかった夫婦の倦怠というテーマが、44年経って映画そのものにピンと来ていないのではないかと思った。“ヘプバーン映画”という確固たるジャンルの中で、幾重にも時間が重ねたわりには軸が飛躍しないことに釈然としなかったのと、アルバート・フィニーとのカップリングに決定的に乗れないものがあった。


PASSION
2022.05.04 横浜シネマリン [1100円/115分]
【69】2008年東京藝術大学大学院映像研究科 監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介
CAST:河井青葉、岡本竜汰、占部房子、岡部尚、渋川清彦、宮前希依、太田正幹、佐間るい
●この後に『親密さ』『ハッピーアワー』『ドライブ・マイ・カー』と継続させていくのは執念としかいいようがないが、『偶然と想像』のロジックに『寝ても覚めても』の衝撃を加味した本作はそれら作品群と比べても一切の見劣りはない。それどころか115分、登場人物たちの言動に翻弄されっぱなしだった。なんて楽しい映画体験だったことか。


何食わぬ顔 (longversion)
2022.05.04 横浜シネマリン [1100円/98分]
【68】2002年自主=fictive 監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介
CAST:松井智、濱口竜介、岡本英之、遠藤郁子、石井理恵、渡辺淳、野村岬、林泰明
●昔ながらの学生8mm映画だが解像度の悪い画面の中でさえ、濱口イズムがすでに存在していたことに驚く。確かに8mmで98分の長丁場はきつかったが、画面の中で高校時代のエピソードを語る学生然とした濱口本人が20年後にタキシード姿でオスカー像を握りしめていることの感慨はあった。早くからイズムを抱き、貫いた者の成功物語だ。


THE DEPTHS
2022.05.04 横浜シネマリン [1100円/121分]
【67】2010年東京藝術大学大学院映像研究科=韓国国立フィルムアカデミー 監督:濱口竜介 脚本:大浦光太、濱口竜介
CAST:キム・ミンジュン、石田法嗣、パク・ソヒ、米村亮太朗、菅原大吉、村上淳
●日韓フィルムメーカーたちの習作としての非商業映画なのだろうが、シネスコによる堂々たるノワールサスペンス以外の何ものでもなく、逆にプロフェッショナルって何?と問いたくなる。日本人青年の男娼と気鋭の韓国人カメラマンによるラブストーリーとしても秀逸で、濱口が職人的なエンタメ演出でも超一級であることが証明された。


天国はまだ遠い
2022.05.04 横浜シネマリン [1100円 /38分]
【66】 2016年NEOPA=KWCP 監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介
CAST:岡部尚、小川あん、玄理
●『偶然と想像』にこの短編をエピソード4として付け加えてもいいくらい面白かった。そうか台詞を役者を通して生きた言葉として伝えていく濱口イズム(!)の設定に憑依、口寄せという手があったか。もちろんそれ故にリアルというよりファンタジーに傾かざるえないが、どの濱口作品より爽やかな後味が楽しめる好編といえる。


不気味なものの肌に触れる
2022.05.04 横浜シネマリン [ 〃 /54分]
【65】2013年SUNBORN=fictive 監督:濱口竜介 脚本:高橋知由
CAST:染谷将太、石田法嗣、渋川清彦、瀬戸夏実、河井青葉、水越朝弓、村上淳、砂連尾理
●互いに触りそうで触らない不思議なダンス。こういうワークショップ的な振付の反復を物語とシームレスに重ねていく手法は濱口竜介の発明かもしれない。この中編は構想中の長編のパイロット版ということで、抽象的な場面が少なくなく、ややとっつきにくくはあるが、走る染谷将太を追う川辺の平行撮影と遠近撮影が印象深い。


親愛なる同志たちへ
2022.05.03  川崎市アートセンターアルテリオ映像館 ДОРОГИЕ ТОВАРИЩИ! [0円/121分]
【64】2020年ロシア 監督:アンドレイ・コンチャロフスキー 脚本:アンドレイ・コンチャロフスキー、エレナ・キセリョワ
CAST:ユリア・ビソツカヤ、ウラジスラフ・コマロフ、アンドレイ・グセフ、ユリヤ・ブロワ、セルゲイ・アーリッシュ
●ロシアのウクライナ侵攻が世界に暗雲をもたらせているが、ほんの2年前まで旧ソ連時代の暗部を描くことを許容するカルチャーがロシアにあったことに驚く。ノボチェルカッスク事件は知らなかったが、路上の死体処理の手際など今ではドキリとさせられる。共産党員の母親とKGB職員の娘探しの検問越えはやや盛り過ぎの感は否めなかったが。


ツユクサ
2022.05.02 シネ・リーブル池袋2 [1200円/95分]
【63】2022年朝日新聞=東映ビデオ=東京テアトル 監督:平山秀幸 脚本:安倍照雄
CAST:小林聡美、松重豊、斎藤汰鷹、平岩紙、江口のりこ、桃月庵白酒、水間ロン、鈴木聖奈、泉谷しげる、渋川清彦
●作り手が設定したスローライフな作風、絵作りに合わせた芝居や台詞回しに何とも不自由で窮屈な時間が続いていたが、唐突に松重豊が小林聡美に接吻を懇願する辺りから作劇の面白さが立ち上ってくる。そうなると大好きな二人の役者を囲む脇の人たちも躍動してくる。そうか「ママ、久しぶりに女の子しちゃいました」か。いいね。


カモン カモン
2022.05.01 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン10  C'MON C'MON [1200円/108分]
【62】2021年アメリカ 監督:マイク・ミルズ 脚本:マイク・ミルズ
CAST:ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、モリー・ウェブスター、スクート・マクネイリー
●うるせぇしムカつくガキだなぁと中盤までは辟易していたが、ぎこちなかった伯父と甥、兄と妹の関係が醸成されて人生再生の物語となり、合衆国の現在地から未来図まで示されると俄然感動作に差し替わる。台詞なのか自然なのかの境界線が見えないウディ君の達者ぶりとそれを受けるホアキンの卓抜ぶりに最後は引き込まれ目頭を熱くした。


ナイトメア・アリー
2022.04.30 立川シネマシティ・ワン:h studio NIGHTMARE ALLEY [1000円/150分]
【61】2021年アメリカ 監督:ギレルモ・デル・トロ 脚本:ギレルモ・デル・トロ、キム・モーガン
CAST:ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、ルーニー・マーラ
●傑作!見世物小屋が象徴する因果応報のロジックにあって、誰もが予感する決着に向けてデル・トロは巧妙に暗示を仕掛け、めくるめく因果応報ノワールを加速させていく。どこか懐かしい通俗的な世界観を残しつつ、ほぼモチーフの散りばめだけで1本の傑作を作ってしまうのだから凄い。個人的に『シェイプ・オブ・ウォーター』の数十倍は好き。


アネット
2022.04.29 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 ANNETTE  [1100円/140分]
【60】2021年フランス=ドイツ=ベルギー=日本 監督:レオン・カラックス 脚本:レオン・カラックス
CAST:アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーグ、デヴィン・マクドウェル
●名前だけは知らされていたカラックスの映画をようやく観た。確かに一時代を駆け抜けた鬼才だけにポスターのキャッチにある“愛がたぎる”映像の圧倒感は凄いと思ったが、ヘンリーとアネットの物語になって、ヘンリーへの共感を外しにかかった辺りから麻酔が切れたように醒めてしまった。そういう意図なのだろうが私は残念だった。


焼け跡クロニクル
2022.04.29 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 [1100円/84分]
【59】2022年製作プロジェクト=マジックアワー 監督:原まおり、原將人 撮影:原まおり、原將人
CAST:原將人、原まみや、原かりん、原鼓卯、原まおり、佐藤眞理子(ドキュメンタリー)
●8mmをひと齧りした世代にとって原將人は有名人だが、何十年ぶりに見せた姿はすっかり老人になっていた。しかし自宅が全焼し自身も火傷を負いながらもそれで映画を作ってしまうのは執念というより飄々とした趣味人の佇まいだ。その変わらぬ“らしさ”に感服しつつ、双子の娘を前面に出すあざとさも感じずにはいられなかった。


英雄の証明
2022.04.29 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 GHAHREMAN [1100円/100分]
【58】2021年イラン=フランス 監督:アスガー・ファルハディ 脚本:アスガー・ファルハディ
CAST:アミル・ジャディディ、モーセン・タナバンデ、サハル・ゴルデュースト、マルヤム・シャーダイ、サリナ・ファルハディ
●彼はごく普通の人間だ。その境遇は確かに不幸で状況の不条理に同情はするが全面的に支持できない。ファルハディのヒリヒリする人間観がそう思わせる。そもそも善悪併せ持つのが普通の人間であるのだが、普通であることが善か悪かの二元論でのみ判断しようとする社会正義に晒されるといかに脆いのか。そこにイランも日本もないだろう。


オートクチュール
2022.04.29 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 HAUTE COUTURE [1100円/100分]
【57】2021年フランス 監督:シルヴィー・オハヨン 脚本:シルヴィー・オハヨン
CAST:ナタリー・バイ、リナ・クードリ、パスカル・アルビロ、クロード・ペロン、スーメイ・ボクゥーム、アダム・ベッサ
●面白かった。私は何故かシスターフットというか女バディものに惹かれる趣向があり、ディオールのアトリエという女の園で母子、友人、同僚たちとの世代を超えた泣き笑いのコミョニティが気持ちよく、それでいて人種、移民問題にも言及し、既に凡百のフェミニズムからアップデートしていることも垣間見せるなど大満足の一篇になった。


林檎とポラロイド
2022.04.29 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 MILA [1100円/91分]
【56】2021年ギリシア=ポーランド=スロベニア 監督:クリストス・ニク 脚本:クリストス・ニク、スタヴロス・ラプティス
CAST:アリス・セルヴェタリス、ソフィア・ゲオルゴヴァシリ、アナ・カレジドゥ、アルギリス・バキルジス
●記憶喪失からの再生は世界中で作られているようだが、多国籍資本が多くなって、映し出される街並み・風俗が一体どこの国の風景なのか覚束なくなっている。記憶を失った主人公が自分探しや居場所探しに執着するわけでもなく、私にとってのっぺらぼうな街並みで「第2人生」の構築プランを遂行する。なんか観葉植物みたいな映画だった。


ハッチング -孵化-
2022.04.28 新宿シネマカリテ:スクリーン1 PAHANHAUTOJA [1200円/91分]
【55】2021年フィンランド 監督:ハンナ・ベルイホルム 脚本:イルヤ・ラウチ
CAST:シーリ・ソラリンナ、ソフィア・ヘイッキラ、ヤニ・ヴォラネン、レイノ・ノルディン
●ホラーに耐性のない身としてはクローゼットやベッドの下に何か居る?覗き込む…こんなオーソドックスな場面にドギマギしまうのだが、巨大化してすぐ孵化する卵ではなく、何か得体の知れないものを密かに育てる少女が、母親への愛憎を暴走させ母性が凶器化する設定の方が怖かった。モンスターホラーとなり悪い意味で安心してしまった。


ゴッドファーザー 最終章:マイケル・コルレオーネの最期
2022.04.23 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン10 THE GODFATHER CODA: THE DEATH OF MICHAEL CORLEONE [1200円/158分]
【54】1990年アメリカ 監督:フランシス・フォード・コッポラ 脚本:フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーヅォ
CAST:アル・パシーノ、アンディ・ガルシア、ダイアン・キートン、ソフィア・コッポラ、タリア・シャイア
●『PARTⅢ』は未見のまま再編集された『最終章』を観たが、さすがに前2作と続けると見劣りする。老マイケルの贖罪というテーマは良しとしても、年輪の重みがなく、新たに捻出された抗争劇も面白味がない。ヒッチコックばりのオペラ座のクライマックスも別のジャンル映画のを観ているようだ。ただ評判に反しソフィアは美しかった。


名探偵コナン/ハロウィンの花嫁
2022.04.16 イオンシネマ座間:スクリーン10 [1100円/111分]
【53】2022年小学館=TMS=よみうり=東宝 監督:満仲勧 脚本:大倉崇裕
CAST:(声)高山みなみ、古谷徹、山崎和佳奈、小山力也、高木渉、湯屋敦子、白石麻衣、緒方賢一、岩居由希子、林原めぐみ
●対象年齢は別として毎年GW前のお楽しみとしているが、安室透にハズレなしで、前2作の失速を補うだけの満足感はあった。オープニングの振り返りも凝りに凝っていて楽しい。コナンがロシア語を話せたりのご都合主義は目をつむるとしても、クライマックスの爆破回避のお約束がインフレの一途を辿り大味になるのは考えて欲しい。


THE BATMAN ザ・バットマン
2022.04.16 109シネマズグランベリーパーク:シアター5 THE BATMAN [0円/176分]
【52】2021年アメリカ 監督:マット・リーヴス 脚本:マット・リーヴス、マットソン・トムリン
CAST:ロバート・パティンソン、ゾーイ・クラヴィッツ、コリン・ファレル、ポール・ダノ、ジョン・タートゥーロ
●戦いや争いは“正義”と“復讐”の相関で成り立っているもの。その狭間に立つヒーローの苦悩をDCもMCUも繰り返し描いているが、アヴェマリアを変調させながらゴッサムシティの都市論まで描かれると、元々ダークでノワールなバットマンの世界観がより深層まで響き渡る。キャットウーマンとの恋路は蛇足と思えたが、最後の別離は秀逸だ。


ゴッドファーザー PARTⅡ
2022.04.11 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン2 THE GODFATHER PARTⅡ [1200円/200分] ※再観賞
【51】1974年アメリカ 監督:フランシス・フォード・コッポラ 脚本:フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーヅォ
CAST:アル・パシーノ、ロバート・デ・ニーロ、リー・ストラスバーグ、ロバート・デュヴァル、タリア・シャイア
●過酷なマイケルのパートから若きビトーの立志伝的なパートになると息苦しさから解放された気分にはなる。しかしよくいわれるデ・ニーロの映画ではなくやはりパチーノの映画だ。キューバ革命の場面はやや冗長だが、マイケルの孤独と非情を強調するためのビトーのエピソードであり、だからこそ時代が創り出す陰影がどの場面でも際立つ。
※1975年キネマ旬報ベストテン第8位


ゴッドファーザー
2022.04.03 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン7 THE GODFATHER [1200円/177分] ※再観賞
【50】1972年アメリカ 監督:フランシス・フォード・コッポラ 脚本:フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーヅォ
CAST:マーロン・ブランド、アル・パシーノ、ジェームズ・カーン、ロバート・デュヴァル、ダイアン・キートン
●原則「午前十時の映画祭」の再上映は観ないことにしていたが、もうスクリーンで観る機会がないのでは思い映画館に駆け込んだ。正解だった。むしろまだ3回目かよと思った。脚本、撮影、音楽と映画史に名作は数あれど金字塔と呼べる数少ない一本。マファア抗争の全容を把握しながらマイケルの変節を追いかけた至福の3時間。
※1972年キネマ旬報ベストテン第8位


女子高生に殺されたい
2022.04.02 109シネマズグランベリーパーク:シアター7 [1200円/113分]
【49】2022年ダブ=日活 監督:城定秀夫 脚本:城定秀夫
CAST:田中圭、南沙良、河合優実、莉子、茅島みずき、細田佳央太、加藤菜津、久保乃々花、キンタカオ、大島優子
●城定秀夫にはオートアサシノフィリア、多重人格、アスペルガー症候群など特異な心理を掘り下げて欲しかったが、高校生たちのあまりに類型な描き方に少なからず失望してしまった。最後のクライマックスなど安手の深夜ドラマ並みのサスペンス手法だ。注目していた河合優美も存在感が希薄で残念。マンガ原作となるとこんなものか。


ベルファスト
2022.04.02 109シネマズグランベリーパーク:シアター4 BELFAST [1200円/98分]
【48】2021年イギリス 監督:ケネス・ブラナー 脚本:ケネス・ブラナー
CAST:カトリーナ・バルフ、ジュディ・デンチ、ジェイミー・ドーナン、キアラン・ハインズ、ジュード・ヒル
●北アイルランドのベルファストは高村薫の小説で知ったが、過酷を極める暴力を背景にしながら描かれているのが少年の郷愁であるがゆえ、家族の日常の中の笑いとユーモアがいちいち面白い。そんな「かけがえのないもの」に満ち溢れた故郷との決別はつらいが、同時に新たな人生への出発だとも謳う。今年のオスカーノミネートで一番好き。


余命10年
2022.04.02 109シネマズグランベリーパーク:シアター7 [1200円/124分]
【47】2022年製作委員会=ワーナー 監督:藤井道人 脚本:岡田惠和、渡邉真子
CAST:小松菜奈、坂口健太郎、山田裕貴、奈緒、黒木華、田中哲司、原日出子、リリー・フランキー、井口理、松重豊
●自分の余命を考えざる得ない齢となった私でさえ、あらかじめ難病ものであるとの前提はきつかったが、鼻水垂らしながらの小松菜奈の熱演に持っていかれた。桜、花火、ビデオカメラなどいかにもなアイテムを駆使しつつ、藤井道人の演出に薄命の天使による単なるお涙頂戴にはしないとの気概を感じる。なにより映画として面白かった。


猫は逃げた
2022.03.21 新宿武蔵野館:スクリーン1 [1200円/109分]
【46】2022年レオーネ=東映ビデオ 監督:今泉力哉 脚本:城定秀夫、今泉力哉
CAST:山本奈衣瑠、毎熊克哉、手島実優、井之脇海、伊藤俊介、中村久美、芹澤興人、詩野、海沼未羽、萌菜
●実際読んでいないので不確かだが、城定秀夫の脚本は会心の出来だったのではないか。それを今泉力哉が自分のワールドに取り込んで広げて見せたのだから面白くないはずはない。中心となる4人の男女が織りなすあーでもないこーでもないを、猫のカンタがタテにヨコに翻弄していく。が、断じて人間模様の映画であってネコ映画ではない。


パワー・オブ・ザ・ドッグ
2022.03.20 イオンシネマ座間:スクリーン2 THE POWER OF THE DOG [1100円/128分]
【45】2000年イギリス、アメリカ、カナダ、ニュージーランド 監督:ジェーン・カンピオン 脚本:ジェーン・カンピオン
CAST:ベネディクト・カンバーバッチ、キルスティン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィー
●西部劇が古き良きマッチョイムズだけで成立できなくなった時代性を痛感。フィルはピーターに謀殺されたのではなく“現代”という時代に抹殺されたのではないか。「男らしさ」の虚妄性を際立たせるための恰好の装置に西部劇が使われがちなのがつらく、それを女性の手で描写されるともはやイジメられているとしか思えなくなるのは私だけ?
※2021年キネマ旬報ベストテン第8位


グラディエーター
2022.03.20 TOHOシネマズ上大岡:スクリーン2 GLADIATOR [1200円/155分]
【44】2000年アメリカ 監督:リドリー・スコット 脚本:デヴィッド・フランゾーニ、ジョン・ローガン、W・ニコルソン
CAST:ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、オリヴァー・リード、リチャード・ハリス
●こういう男臭さ全開の娯楽活劇がオスカーを獲る2000年はハリウッドにとってもリドリー・スコットにとってもまだまだ良い年だったのだろう。今観ると屈折した暴君コモドゥスを演じたホアキンの存在感が強烈過ぎて、主役たるラッセルの将軍マキシマスの復讐譚が単純に思えてならないが、堂々たる大作との評価は揺るぎないのだろう。
※2000年キネマ旬報ベストテン第8位


Ribbon
2022.03.13 テアトル新宿 [1200円/115分]
【43】2022年フィルムパートナーズ 監督:のん 脚本:のん
CAST:のん、山下リオ、渡辺大知、小野花梨、岩井俊二、春木みさよ、菅原大吉
●のんに純粋なファンっているのだろうか。ファンというより無数の支持者がいて、それが共同幻想となって彼女を消費しているような気がする。実は私もその一人なのだが、同時にスレっからしの映画好きでもあるので表現者としてのんの監督・脚本作品には楽しめない要素が多過ぎた。この稚拙を彼女らしさと認めてしまえば楽なのだろうが。


香川1区
2022.03.12 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン2 [1000円/156分]
【42】2021年ネツゲン 監督:大島新 撮影:高橋秀典
CAST:小川淳也、平井卓也、町川順子、大島新 (ドキュメンタリー)
●アバン部分の50歳政界引退を撤回するモジモジ感だけで小川淳也は観る者を味方につけてしまった。おかげで彼の純粋無垢な選挙戦を追うだけでドキュメンタリーの構図が勧善懲悪的に単純化してしまう。その面白さはあったがM・ムーアとまではいかなくも大島新にもう少し突破力があれば、選挙戦の本質を問う視点が醸されたのではないか。


イングリッシュ・ペーシェント
2022.03.12 TOHOシネマズ海老名:スクリーン10 THE ENGLISH PATIENT [1200円/162分]
【41】1997年アメリカ 監督:アンソニー・ミンゲラ 脚本:アンソニー・ミンゲラ
CAST:レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、クリスティン・S・トーマス、ウィレム・デフォー、コリン・ファース
●ざっくりいえば大戦中の不倫メロドラマでも、洞窟の「泳ぐ人」の壁画の造形にシンクロさせたような広大な砂漠の印影が美しく、それだけで大作感にスクリーンを堪能した気分となる。ややラズロとキャサリンが情事に落ちる様があまりに刹那過ぎたのと、あの状況でハナがキップと関係を持つものか?とやや腑に落ちない点もあるのだが…。
※1997年キネマ旬報ベストテン第5位


愛なのに
2022.02.27 新宿武蔵野館:スクリーン1 [1200円/107分]
【40】2022年レオーネ=東映ビデオ 監督:城定秀夫 脚本:今泉力哉、城定秀夫
CAST:瀬戸康史、さとうほなみ、河合優美、中島歩、向理祐香、飯島大介、丈太郎、毎熊克哉、守屋文雄、佐倉萌
●何ひとつとして成就しそうもない恋愛模様が薄ぼんやり展開していく中で、補助線もないまま愛に翻弄されっぱなしの主人公の「愛を否定すんな!」の絶叫と怒号。そう女子高生の純愛も大人の女たちの性愛も不確かではあるが愛は愛なのだ。今泉力哉の脚本を城定秀夫が撮る。この冗談みたいな好企画には当然飛びつかざる得なかった。


ナイル殺人事件
2022.02.26 イオンシネマ座間:スクリーン10 DEATH ON THE NILE [1100円/127分]
【39】2020年アメリカ 監督:ケネス・ブラナー 脚本:マイケル・グリーン
CAST:ケネス・ブラナー、ガル・ギャドット、アーミー・ハマー、アネット・ベニング、トム・ベイトマン、アリ・ファザール
●顔ぶれの豪華さでは1978年版と比べ見劣りするが、現代的にブラッシュアップされた細部の演出に見応えはあった。邦題は『ナイルに死す』にすべきだろう。オリエント急行の事件が意外な犯人なら、これは意外な共犯者といったところか。ただ銃を手にアグレッシブルなわりに連続殺人を見逃し過ぎなポワロにとてつもなく違和感が残る。


ちょっと思い出しただけ
2022.02.26 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 [1200円/115分] ※再観賞
【38】2022年東京テアトル 監督:松居大悟 脚本:松居大悟
CAST:池松壮亮、伊藤沙莉、永瀬正敏、河合優実、屋敷裕政、國村隼、成田凌、尾崎世界観、高岡早紀、大関れいか
●伊藤沙莉があまりに魅力的だったので間を置かず再見してみて、この映画は恋愛を描いているが、はっきり人生を描いていると確信。逆行する一日の時間は人生の刹那であるがゆえに季節はあっという間に移ろい、その儚さをちょっと思い出したとき、重ねて来た一瞬が永遠となることをラストの朝焼けが教えてくれる。間違いなく傑作だろう。


ファーゴ
2022.02.24 TOHOシネマズ新宿:スクリーン1 FARGO [1200円/98分]
【37】1996年アメリカ 監督:ジョエル・コーエン 脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
CAST:フランシス・マクドーマンド、スティーヴ・ブシェーミ、ウィリアム・H・メイシー、ピーター・ストーメア
●アメリカ人しかわからないような小ネタが満載で、ただでさえ噛み合わない人間関係をさらに芯をずらして進めていく作劇の巧さ。やっぱコーエン兄弟は滅法面白い。絶対に古びることのない映画だが、F・マクドーマンドがやけにチャーミングなのが歳月を物語る。シネマライズの封切りで観たかったなと、四半世紀分の後悔を味わった気分。
※1996年キネマ旬報ベストテン第4位


ドリームプラン
2022.02.23 イオンシネマ座間:スクリーン1 KING RICHARD [1100円/144分]
【36】2021年アメリカ 監督:レイナルド・マーカス・グリーン 脚本:ザック・ベイリン
CAST:ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、サナイヤ・シドニー、デミ・シングルトン、トニー・ゴールドウィン
●ヴィーナス&セリーナという誰もが知るスーパー姉妹のサクセスストーリーゆえ出口は決まっている。ゆえに物語の意外性は望めない中で “キング・リチャード” の「プラン」なる破天荒な支配を、抑圧ではなく抑制に留めた塩梅で家族愛と夫婦愛を立ち上らせた演出は手堅いと思ったが、果たして2時間24分も必要だったか?との疑問は拭えない。


渚の果てにこの愛を
2022.02.19 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン3 LA ROUTE DE SALINA [1000円/95分]
【35】1970年フランス=イタリア 監督:ジョルジュ・ロートネル 脚本:J・ロートネル、P・ジャルダン、ジャック・ミラー他
CAST:ミムジー・ファーマー、ロバート・ウォーカー.Jr、リタ・ヘイワース、エド・ベグリー、ソフィー・アルディ
●中学の時『ロードショー』誌を愛読していた時点でかろうじてミムジー・ファーマーは引っ掛かっていたが、高校から『キネマ旬報』になると完全に消えていた。なんでここに来て彼女なのかは不明だが、ベリーショートと男物の白シャツが似合う70年代フランス映画のミューズであることには間違いない。映画はまったく面白くなかった。


ボクたちはみんな大人になれなかった
2021.02.20 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン1 [1000円/124分]
【34】2022年NETC&Iエンタテイメント= 監督:森義仁 脚本:高田亮
CAST:森山未來、伊藤沙莉、東出昌大、SUMIRE、篠原篤、平岳大、片山萌美、高嶋政伸、原日出子、大島優子、萩原聖人
●大人になれなかったというが、では大人になるとはなんだろう。そのことのアプローチを抜きに現在から90年代に遡っていく設定で『ちょっと思い出しただけ』には遠く及ばないと思った。時代のアイコンをカタログ的に羅列しただけでは単なる懐古趣味ではないか。主人公・佐藤誠より森山未來が前に出てしまったら絶対にダメなのだ。


フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
2022.02.19 109シネマズ湘南:シアター3 THE FRENCH DISPATCH OF THE LIBERTY、KANSAS EVENING SUN [1200円/120分] ※再観賞
【33】2021年アメリカ 監督:ウェス・アンダーソン 脚本:ウェス・アンダーソン
CAST:ビル・マーレイ、オーエン・ウィルソン、エドワード・ノートン、シアーシャ・ローナン、アンジェリカ・ヒューストン、ウィレム・デフォー
●ワケわからないまま済ませられる映画ではないとリベンジ。もちろん美術から調度品のセンス、シンメトリーの構図がシネスコからスタンダードとなり、モノクロからアニメまで自由自在のウェス・アンダーソンの趣味を丸ごと理解できたわけではないが、この映画はクセになる。何回でも観ていられることを確信。なんなら明日また観てもいい。


ちょっと思い出しただけ
2022.02.12 イオンシネマ座間:スクリーン6 [1100円/115分]
【32】2022年東京テアトル 監督:松居大悟 脚本:松居大悟
CAST:池松壮亮、伊藤沙莉、永瀬正敏、河合優実、屋敷裕政、國村隼、成田凌、尾崎世界観、高岡早紀、大関れいか
●こういうストーリーは主人公たちを離れ、自分自身の恋愛歴にはまり込んでいくので本当に困る。同じ日付けを表示するパネル時計、猫、観葉植物、お地蔵さん、妻を待つ男からコロナのマスク。羅列しただけで目頭が熱くなる。どうして俺は…じゃなくて、、どうして映画の二人は別れてしまったのだろう。つくづく「時間」こそドラマだ。


ギャング・オブ・アメリカ
2022.02.12 イオンシネマ座間:シアター7 LANSKY [0円/119分]
【31】2021年アメリカ 監督:エタン・ロッカウェイ 脚本:エタン・ロッカウェイ
CAST:ハーヴェイ・カイテル、サム・ワーシントン、ジョン・マガロ、アナソフィア・ロブ、デヴィッド・J・エリオット
●なにを勘違いしたか不明だが、先日H・カイテルが亡くなったと思い込んでいたものだから不遜にも追悼の眼差しで彼のランスキーを観ていた。しかしそんなことを抜きにしてもカイテルは作劇の全体のゆるさを補填するだけの重みを映画にもたらしていた。ただ作家のFBIとの絡みやランスキーと家族愛を共有する描写は致命的に軽すぎて残念。


ウエスト・サイド・ストーリー
2022.02.11 109シネマズグランベリーパーク:シアター1 WEST SIDE STORY [1200円/157分]
【30】2021年アメリカ 監督:スティーブン・スピルバーグ 脚本:トニー・クシュナー
CAST:アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デボーズ、デビィット・アルヴァレス、リタ・モレノ
●「この物語を“ロミオとジュリエット”から独立させる」とスピルバーグ。確かにユートピアを自ら失っていく若者たちの衝動は悲恋を超えて新鮮ではあった。でもやはりリタ・モレノのセリフにアニータがオーバーラップする場面が素敵すぎる。今度のアニータも良かった。マリアは歌声は綺麗だが顔の癖が強すぎてヒロインとしてはどうなのか。


声もなく
2022.02.06 シネマート新宿:スクリーン2 소리도 없이 [1200円/99分]
【29】2020年韓国 監督:ホン・ウィジョン 脚本:ホン・ウィジョン
CAST:ユ・アイン、ユ・ジェミョン、ムン・スンア、イ・ガウン、イム・ガンソン、チョ・ハソク、スン・ヒョンベ、ユ・ソンジュ
●韓国の男性偏重問題はいくつかの映画で描かれているが、誘拐された女児に父親が身代金を出し渋るなんてことが本当にあるのだろうか。ただここで強烈なのは男女格差よりも社会格差そのもので、底辺で死体処理の仕事に澱む声を失った青年の致し方なさはどうだろう。その上でよくこんな物語を思いつくものだと心底驚いてしまう。


ゴーストバスターズ/アフターライフ
2022.02.05 イオンシネマ座間:スクリーン3  GHOSTBUSTERS:AFTERLIFE [1100円/124分]
【28】2021年アメリカ 監督:ジェイソン・ライトマン 脚本:ジェイソン・ライトマン、ギル・キーナン
CAST:マッケンナ・グレイス、ポール・ラッド、フィン・ウルフハード、キャリー・クーン、ダン・エイクロイド、ビル・マーレイ
●孫世代の俄か悪霊退治ジュブナイル・ファンタジーをボケ~と観ていていたら、最後に爺々となったダン・エイクロイドやビル・マーレイ、何と故ハロルド・ライミスまで揃い踏み、レイ・パーカーJrの主題歌の後にシガニー・ウィーバーまで登場してしまうとリアルタイム世代として強引に持ってかれた気分になる。たまには同窓会もいいかな。


大怪獣のあとしまつ
2022.02.05 イオンシネマ座間:スクリーン3 [0円/116分]
【27】2022年東映=松竹 監督:三木聡 脚本:三木聡
CAST:山田涼介、土屋太鳳、濱田岳、ふせえり、六角精児、岩松了、オダギリジョー、嶋田久作、菊地凛子、西田敏行
●タイトル通りの内容。レビューを見ると悪評ふんぷんだが、最初から70点満点を目指していると思うとそれほど出来の悪い映画ではない。主人公たちは真面目に周辺はおバカにという設定の中で、くだらないコントも数打ちゃ当たるとばかり、個人的には何発かはまともに食らい吹き出す場面もあった。なにより敬礼で終わる後味は好きだ。


麻希のいる世界
2022.02.04 新宿武蔵野館:スクリーン2 [1200円/89分]
【26】2022年シマフィルム 監督:塩田明彦 脚本:塩田明彦
CAST:新谷ゆづみ、日高麻鈴、窪塚愛流、鎌田らい樹、八木優希、大橋律、松浦祐也、青山倫子、井浦新
●死の影から逃れられない由希と性犯罪者の父を持つ麻希。八方塞がりの彼女たちに音楽が一筋の光明なのかと思い始めた先に待っ暗闇。物語は由希の麻希への絶望的な片思いとして呆気なく終幕する。ダークで切羽詰まった青春劇は嫌いではないが、刹那な人生に塩田明彦が斬り込めたかといえば表層を追うだけで、やや物足りなく思えた。


フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
2022.01.30 TOHOシネマズららぽーと横浜:シアター11 THE FRENCH DISPATCH OF THE LIBERTY、KANSAS EVENING SUN [1100円/120分]
【25】2021年アメリカ 監督:ウェス・アンダーソン 脚本:ウェス・アンダーソン
CAST:ベニチオ・デル・トロ、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン、レア・セドゥ、フランシス・マクドーマンド、ティモシー・シャラメ
●饒舌すぎる映像から洪水のように溢れ出る情報量に力が尽きてしまった。ウェス・アンダーソンなのだからこのくらいの覚悟はしておけってなものだが、何とか必死についていくことばかりを考えてしまう。とにかく観客以前にここまで自己完結されるともうお手上げか。ただ「恐れ入りました」と率直に降参出来る奇特な映像作家ではある。


前科者
2022.01.30 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン7 [1100円/133分]
【24】2022年WOWOW=日活 監督:岸善幸 脚本:岸善幸
CAST:有村架純、磯村勇斗、森田剛、若葉竜也、マキタスポーツ、石橋静河、北村有起哉、リリー・フランキー、木村多江
●NHKドラマのようになってしまったがBSだったか。ことほどさようにどこかテレビドラマ的な印象。いや出演者たちも劇場を意識して熱演で応えてはいるのだが、良質なドラマの枠内に収まってしまうのは保護司を主役としているからなのか。ひとつ前の廣木隆一といい、岸善幸といい、作家性がテレビの枠内から抜けられていないのは惜しい。


ノイズ
2022.01.30 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン1 [1100円/128分]
【23】2022年製作委員会=日テレ=ワーナー 監督:廣木隆一 脚本:片桐翔
CAST:藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介、黒木華、渡辺大知、永瀬正敏、酒向芳、余貴美子、鶴田真由子、柄本明
●話が島の閉鎖性の中で完結するのがいいし決して悪い映画ではない。ただ3人の幼馴染が殺人事件の当事者となる展開の辛さがオーソドックスに描かれ過ぎて面白味がないことと、テレビ局資本の悪癖で主役から脇まで有名俳優を揃えすぎて結局は演技合戦に終始してしまったか。事件解決後のオチも後味が悪く、最後にもうひと捻り欲しかった。


ハウス・オブ・グッチ
2022.01.29 109シネマズグランベリーパーク:シアター5  HOUSE OF GUCCI [0円/159分]
【22】2021年アメリカ 監督:リドリー・スコット 脚本:ベッキー・ジョンストン、ロベルト・ベンティベーニャ
CAST:レディー・ガガ、アダム・ドライバー、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ、サルマ・ハエック
●編集の腕がいいのかも知れないが、84歳リドリー・スコットの瑞々しい演出は巨匠らしい重厚さよりもむしろリズミカルで軽快ですらある。富豪一家の凋落と愛憎劇という鉄板の題材も歴史ではなく20数年前の内幕ものとして描き、それがGUCCIという巨大ブランドを伏字や仮名なしにロゴマークも商品もそのまま露出するのだから恐れ入る。


Codaコーダ あいのうた
2022.01.29 109シネマズグランベリーパーク:シアター7 CODA [1200円/112分]
【21】2021年アメリカ 監督:シアン・ヘダー 脚本:ニック・シェンク、N・リチャード・ナッシュ
CAST:エミリア・ジョーンズ、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、マーリー・マトリ、ダニエル・デュラント
●いやぁ泣けた、泣けた。安くて脆い涙腺が決壊した。この感動作に敢えて難癖をつけるならば、原版となった未見のブランス映画がこのハリウッドリメイクを超えていた場合のみだ。健気なヒロインの成長・成功物語の陰で聾唖の両親、兄たち家族全員の日常から人生観まで垣間見える中での手話による「青春の光と影」、早くも今年のベスト級。


さがす
2022.01.22 川崎チネチッタ:CINE6 [1200円/123分]
【20】2022年アスミック・エース 監督:片山慎三 脚本:片山慎三、小寺和久、高田亮
CAST:佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也、森田望智、石井正太朗、松岡依都美、成嶋瞳子、内田春菊、品川徹
●“良い映画”を撮る必要がないことを『岬の兄妹』一発で確定させた片山慎三の「商業映画第一作」に期待した。確かに力作であるし衝撃作でもあるのだが、内容にミステリー要素を加味したことでエグ味よりエンタメに振れてしまい、上手くまとめた印象。もっととんでもない異物感が欲しかった。なにより佐藤二朗がメジャーになりすぎたか。


真夜中乙女戦争
2022.01.22 川崎チネチッタ:CINE4 [1200円/113分]
【19】2022年角川大映スタジオ=KADOKAWA 監督:二宮健 脚本:二宮健、小林達男
CAST:永瀬廉、池田エライザ、柄本佑、篠原悠伸、安藤彰則、山口まゆ、佐野晶哉、成河、渡辺真起子
●現状に不満を持つ大学生、既に富を得て満たされない二人が結社を作って東京を破壊する。ほぼ『ファイト・クラブ』じゃねぇかと思いつつ、この欺瞞を“乙女”と名付けるのは失礼すぎないか。まったく共感出来ないナレーションと擬音の乱発に辟易しつつ、悪相の柄本佑とお姉さんキャラのエライザが意外と魅力的。結局そういう感想しかない。


シカゴ
2022.01.20 TOHOシネマズ池袋:スクリーン1 CHICAGO [1200円/113分] ※再観賞
【18】2002年アメリカ 監督:ロブ・マーシャル 脚本:ビル・コンドン
CAST:レニー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギア、ジョン・C・ライリー、ルーシー・リュー
●『ドリーム・ガールズ』との混同もあって内容は殆ど忘れていた。R・ギアの役はプロモーターだと思っていたら弁護士。ただC・Z=ジョーンズが圧倒的だったこととミュージカルシーンがステージで展開されることは憶えていた。殺人事件から始まる物語の大半が刑務所だったことに驚くも、ダイナミックなダンスを新鮮な心持ちで堪能出来た。
※2003年キネマ旬報ベストテン第8位


クライ・マッチョ
2022.01.15 109シネマズグランベリーパーク:シアター4 CRY MACHO [1200円/104分]
【17】2021年アメリカ 監督:クリント・イーストウッド 脚本:ニック・シェンク、N・リチャード・ナッシュ
CAST:クリント・イーストウッ、エドゥアルド・ミネット、ドワイト・ヨーカム、ナタリア・トラヴェン、フェルナンダ・ウレホラ
●正直、いつもよりリズムが悪く、編集もぎこちない気がしたが、キャリア集大成の枷をようやく解いた等身大の90歳として老いと弱さと晒しながら、マッチョな闘争心を雄鶏に仮託し、迷うことなく愛する女のもとに帰っていくイーストウッドに人生レベルの安堵を感じてしまった。そして中一からのファンも今日、またひとつ齢を重ねた。


マークスマン
2022.01.10 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 THE MARKSMAN [1100円/108分]
【16】2021年アメリカ 監督:ロバート・ロレンツ 脚本:ロバート・ロレンツ、クリス・チャールズ、ダニー・クラビッツ
CAST:リーアム・ニーソン、キャサリン・ウィニック、フアン・パブロ・ラバ、テレサ・ルイス、ジェイコブ・ペレス
●ジャンル映画好きとしてL・ニーソンの需要は意識しており、これは見逃せないと思ったが、イーストウッド最新作と同じような設定で予告編と絵面も似ており、しかもホテルのテレビで『奴らを高く吊るせ』が放映されているとなるともうイーストウッド・オマージュなのだろう。海兵隊の勲章に憧れるカルテルの首領のキャラクターは面白いが。


決戦は日曜日
2022.01.10 イオンシネマ海老名:スクリーン2 [0円/101分]
【15】2022年製作委員会=クロックワークス 監督:坂下雄一郎 脚本:坂下雄一郎
CAST:窪田正孝、宮沢りえ、赤楚衛二、内田慈、小市慢太郎、音尾琢真、たかお鷹、高瀬哲朗、今村俊一、小林勝也、原康義
●ポイント観賞で文句は言いたくないがつまらなかった。選挙戦はそれこそ映画ネタの宝庫なのだろうが、その有り余る素材を消化できずに羅列するのみで、決戦であるはずの日曜日にドラマを集約出来ないシナリオが致命的。「落選を目指す」という転換の飛躍も当選の想定の中で右往左往しているだけ。それなりに役者陣は頑張っていたけど。


天使にラブ・ソングを
2022.01.10 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 SISTER ACT [1200円/100分]
【14】1993年アメリカ 監督:エミール・アルドリーノ 脚本:ジョゼフ・ハワード
CAST:ウーピー・ゴールドバーグ、マギー・スミス、ハーヴェイ・カイテル、キャシー・ナジミー、ウェンディ・マッケナ
●100分間をご都合主義で繋ぎながら一気に大団円まで持っていってしまう力技はいかにもレンタルビデオ全盛期のヒット作といった感じ。そうだった、みんなあの頃はウーピーが大好きだった。その好きに応えて歌って逃げて自由を叫ぶ彼女は確かに輝いている。配信に押され気味のハリウッド興行界も煌びやかだった。もう30年が経つのか・・・。


偶然と想像
2022.01.09 Binkamuraル・シネマ [1200円/101分] ※再観賞
【13】2021年NEOPA fictive= Incline LLP 監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介
CAST:古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉、大沢まりを、横田僚平、安倍萌生
●メインのル・シネマで再見。満席の場内が笑いに包まれるなど観客の熱量が心地良い。改めてカメラの前で演技することの本質に迫った濱口竜介の視点が驚異的であり、それを成立させた俳優たちも凄い。三つの会話劇それぞれにエッジが効いており、演出の妙に何度も観ていられる。世界的評価の『ドライブ・マイ・カー』より圧倒的に支持する。
※2021年キネマ旬報ベストテン第3位


エッシャー通りの赤いポスト
2022.01.09 ユーロスペース [1200円/146分] ※再観賞
【12】2021年製作委員会=ガイエ 監督:園子温 脚本:園子温
CAST:藤丸千、黒河内りく、モーガン茉愛羅、山岡竜弘、上地由真、藤田朋子、田口主将、諏訪太朗、渡辺哲、吹越満
●一度観た印象のままの記憶でフタをしてしまうべきだったか(笑)。“小林監督心中クラブ”との追っかけっこは冗長。全員が主役といっても黒河内さんが頭一つ抜けていることを再確認。かつての満島ひかり、二階堂ふみのように園子温から羽ばたいて欲しい。ともに渋谷スクランプル交差点で絶叫した藤丸さんは鳥居みゆきになってしまった。


巴里の屋根の下 <4Kデジタルリマスター版>
2022.01.09 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 SOUS LES TOITS DES PARIS [1100円/93分]
【11】1930年フランス 監督:ルネ・クレール 脚本:ルネ・クレール
CAST:アルベール・プレジャン、ポーラ・イレリー、ガストン・モド、エドモン・T・グレヴィル、ビル・ボケッツ
●ルネ・クレール初のトーキー作品ということで全編に歌声を響かせ、パリ下町の酒場の喧騒を拾い、各階層のアバルトマンをパンして屋根から人々を俯瞰する。思えば主人公アルベールは何ひとつも報われていないのだが、不思議と爽やかな余韻を残すのは屋根の上から眺めれば一人一人の人生なんてこんなものという巨匠の達観なのか。
※1931年キネマ旬報ベストテン第2位


リラの門 <4Kデジタルリマスター版>
2022.01.08 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 PORTE DOS LILAS [1100円/145分]
【10】1957年フランス=イタリア 監督:ルネ・クレール 脚本:ルネ・クレール、ジャン・オーレル
CAST:ピエール・ブラッスール、ジョルジュ・ブラッサンス、アンリ・ヴィダル、ダニー・カレル、レイモン・ビュシェール
●子供たちの遊びで銃撃事件を再現するテクニックに感服しつつ、あまりに無垢なお人好しお馬鹿さんに苛々させられながらもパリ下町の人情喜劇の体裁の中にしっかりノワールサスペンスのテイストも残している。それにしても冷静に観れば悲惨な話でもギターの弾き語りが最高の“芸術家”のジュジュへの肯定がすべてを救っているのではないか。
※1957年キネマ旬報ベストテン第6位


スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
2022.01.08 イオンシネマ新百合ヶ丘:スクリーン1 SPIDER-MAN:NO WAY HOM [1100円/149分]
【09】2021年アメリカ 監督:ジョン・ワッツ 脚本:クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ
CAST:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ファヴロー、マリサ・トメイ、ウィレム・デフォー
●「平行世界」くらい便利な飛び道具はなく、歴代3人のスパイダーマンがいとも簡単に集結し、20年ぶりにトビー・マグワイヤとウィレム・デフォーが対峙する。ミステリオの顛末はわからないがMARVELの中でも一番馴染み深くサム・ライミの3部作を抑えていて助かった。今やアベンジャーズの一員となってもスパイダーマンの世界観は好きだ。


ダ・ヴィンチは誰に微笑む
2022.01.08 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 DON'T LOOK UP [1100円/100分]
【08】2021年フランス 監督:アダム・マッケイ 撮影:ザビエル・リーベルマン
CAST:(ドキュメンタリー)
●史上最高額510億円で落札されたダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」。そこまでカネと国家の威信が膨張するともはや絵画の芸術性やその真贋さえもどうでもよくなり、そこに群がる思惑だけが暴走していく。果てはルーブルの威信さえも魑魅魍魎の一部に思えてしまうのだが個人的には周囲の暴走より真贋論争を突き詰めて欲しかったが。


自由を我等に <4Kデジタルリマスター版>
2022.01.08 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 DON'T LOOK UP [1100円/84分]
【07】1931年フランス 監督:アントワーヌ・ヴィトキーヌ 脚本:ルネ・クレール
CAST:レイモン・コルディ、アンリ・マルシャン、ローラ・フランス、ポール・オリヴィエ、ジャック・シェリイ
●『モダンタイムズ』でチャップリンはオートメーション化による人間性の喪失を訴えたが、そのモチーフとなったルネ・クレールもやはり資本とカネに狂騒するドタバタを描きながらもっと洒脱に高らかに友情を謳いあげる。もう91年も前のトーキー初期の古典だけに人物は記号化されているが、群衆の動きの捌き方が巨匠たるゆえんなのだろう。
※1932年キネマ旬報ベストテン第1位


ドント・ルック・アップ
2022.01.02 ヒューマントラストシネマ有楽町:シアター1 DON'T LOOK UP [1200円/145分]
【06】2021年アメリカ 監督:アダム・マッケイ 脚本:アダム・マッケイ
CAST:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ティモシー・シャラメ
●巨大彗星の激突で地球存亡の危機が訪れたとき人類はどうなってしまうのか。映画は皮肉を交えたブラックジョークを強調していたが、実際、突然そのような危機に見舞われた場合の日常生活はそんなものではないかと思った。とにかく見応え十分、オールスターに贅を尽くしたNETFLIX作品。でもこれはどう考えても劇場で観るべき大作だ。


長靴をはいた猫
2021.01.02 丸の内TOEI [1000円/80分]
【05】1969年東映動画=東映 監督:矢吹公郎 脚本:井上ひさし、山元護久
CAST:(声) 石川進、藤田淑子、水垣洋子、熊倉一雄、水森亜土、小池朝雄、益田喜頓、榊原るみ、愛川欽也、白石冬美
●子供の頃は実写の怪獣映画ばかり見ていたので「東映まんがまつり」を劇場で観たのは高校を卒業してからだった。これは50年以上前のシンボル的作品でも東映動画のクォリティの高さに今更ながら驚いた。クレジットに大塚康生、宮崎駿の名前を見つけたが、クライマックスの魔王の城での大チェイスは今観てもアニメの粋に満ちている。


柳生一族の陰謀
2021.01.02 丸の内TOEI [1200円/130分] ※再観賞
【04】1978年東映=東映太秦映画村 監督:深作欣二 脚本:野上龍雄、松田寛夫、深作欣二
CAST:萬屋錦之介、千葉真一、松方弘樹、西郷輝彦、大原麗子、原田芳雄、成田三樹夫、真田広之、山田五十鈴、三船敏郎
●東映70周年で30年ぶりに東映の本丸を訪れた。客は20人ほどだったが44年前の封切り初日は長蛇の列が劇場を3周した。実際『柳生一族の陰謀』は面白い。深作と錦之介の間で確執があったのは事実だろうし、批判が出やすい映画であることも承知だが、オールスターを捌き、錦之介の「夢じゃ夢でござりますー!」の大芝居まで一気に見せる。


スティール・レイン
2022.01.01 kino cinama 横浜みなとみらい:シアター3 강철비2: 정상회담 [1200円/132分]
【03】2020年韓国 監督:ヤン・ウソク 脚本:ヤン・ウソク
CAST:チョン・ウソン、クァク・ドウォン、ユ・ヨンソク、アンガス・マクファーデン、白竜、シン・ジョングン、リュ・スヨン
●原潜の狭い一室に囚われた米大統領、韓国大統領に北朝鮮委員長。「ファック!」と罵倒し、挙句は喫煙と放屁合戦・・・って、コントか?それでもポリティカルアクションの体裁は維持し、「ハズレなし」の潜水艦アクションで盛り上げる。半島統一の夢と現実が交錯し、アメリカ、日本をチクリと非難する。どこまでサービス精神旺盛なのだ。


レイジング・ファイア
2022.01.01 kino cinama 横浜みなとみらい:シアター1 怒火 [1200円/126分]
【02】2021年香港=中国 監督:ベニー・チャン 脚本:ベニー・チャン
CAST:ドニ―・イェン、ニコラス・ツェー、チン・ラン、ロイ・リョンワイ、サイモン・ヤム
●原題が炎文字でドーンと出て、もうそこからアクション&バイオレンスの雨あられ。なにせ『怒火』だぜ、元旦からしっかり燃えさせてもらった。大晦日に観た韓国映画も合わせどんだけ死体が積みあがったか。このジャンルのアジア映画で日本の周回遅れは深刻の域まで達している。もっとも相手がドニ―・イェンでは勝負にならんだろうが。


悪なき殺人
2022.01.01 kino cinama 横浜みなとみらい:シアター1 SEULES LES BÊTES [1200円/116分]
【01】2019年フランス=ドイツ 監督:ドミニク・モル 脚本:ドミニク・モル
CAST:ドゥニ・メノーシェ、ロール・カラミー、ダミアン・ボナール、ナディア・テレスキウィッツ、バスティアン・ブイヨン
●片田舎の殺人事件を当事者たちの視点を変えながら真相に辿り着く展開は珍しくはないが、「偶然」の重なりが神の目線からすれば必然なのかと、なかなか面白く観た。ただ死体を遺棄するジョゼフの行動が作為的過ぎてパズルのピースとして不完全だったのが残念。題名は『悪なき殺人』だが、偶然を必然にしたのは悪意そのものだ。



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