●2024年(令和6年)

 三行の映画評


aftersun アフターサン
2024.01.01 キネカ大森:スクリーン3 AFTERSUN [1300円/101分]
【01】 2022年イギリス=アメリカ 監督:シャーロット・ウェルズ 脚本:シャーロット・ウェルズ
CAST:ポール・メスカル、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン・ホール、ケリー・コールマン、サリー・メッシャム
●11歳の娘時代の父との旅行映像を進行させながら、当時の父の年齢となってビデオを再生する。シングルマザーか?赤ん坊が泣いている。一方、自分のスマホには母からの留守電が残っているが不義理を詰られて聴き直す気になれないものの消すことは出来ない。親の気持ちで親に共感出来ない身にもどかしさは残るが良作であるのはわかる。


フロリダ・プロジェクト 真夏の宝物
2024.01.01 キネカ大森:スクリーン3 THE FLORIDA PROJECT [1300円/112分]
【02】2017年アメリカ 監督:クリス・バーゴッチ 脚本:ショーン・ベイカー、クリス・バーゴッチ
CAST:ブルックリン・キンバリー・プリンス、ブリア・ヴィネイト、ウィレム・デフォー、メイコン・ブレア
●無反省な悪ガキが苦手な私には地獄めぐりのようで、ダサい副題も呪わずにいられなかったが、ラストの90秒で印象が一変する。貧困が理由としても社会不適格者は間違いない母親と悪戯の手数では負けない娘。実は地獄めぐりをしていたのはこの母娘だった。W・デフォーのモーテル支配人が最高。ダサい副題も早々に胡散霧消することだろう。


ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-
2024.01.01 T・ジョイ横浜:シアター5 ONECE UPON A STUDIO [1300円/9分]
【03】2022年アメリカ 監督:ダン・エイブラハム、トレント・コーリー 脚本:D・エイブラハム、T・コーリー
CAST:(声)星野貴紀、遠藤綾、山寺宏一、小鳩くるみ、川原瑛都、鈴木より子、鵜澤正太郎、小此木麻里、三木眞一郎
●幼い頃の思い出はディズニー時計。20代の頃はTDLによく行った。しかしスクリーンで観たのは大学時代『ファンタジア』のリバイバルで、そこから『アナ雪』まで飛ぶ。とんだディズニー弱者だ。それでも9分で500以上のキャラクターが「星に願いを」の大合唱と記念写真。変にユニバース化していないのでオールスター感は半端ない。


ウィッシュ
2024.01.01 T・ジョイ横浜:シアター5 WISH [ 〃 /95分]
【04】2022年アメリカ 監督:クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン 脚本:ジェニファー・リー、アリソン・ムーア
CAST:(声)生田絵梨花、福山雅治、山寺宏一、鹿賀丈史、檀れい、恒松あゆみ、大平あひる、落合福嗣、蒼井翔太
●ディズニー100周年記念作。まぁ当然面白いわな。準備、装置、美術、音楽に膨大な時間と金を投じ、技術の総力を結集したわけだから。しかし何よりハリウッド・エンターティメントの伝統とショービジネスの土壌が有無を言わさず鉄壁だ。内容が単純な分、ミュージカルに仕立てたのも大きい。やや急ぎ過ぎて情感が薄いとは思ったが。


マエストロ:その音楽と愛と
2024.01.02 イオンシネマ新百合ヶ丘:スクリーン3 MAESTRO [1100円/129分]
【05】2023年アメリカ 監督:ブラッドリー・クーパー 脚本:ブラッドリー・クーパー、ジョシュ・シンガー
CAST:キャリー・マリガン、ブラッドリー・クーパー、マット・ボナー、マヤ・ホーク、サリー・シルバーマン
●圧巻。バースタインの伝記映画の雛形を借りて情熱と野心、愛と嫉妬、若さと老い、そして生と死。すべてを見せ演じきったクーパーとマリガンはネトフリ作品ながら間違いなくオスカーもの。とくに脚本・監督・主演のクーパー。寝室から劇場へのジャンプショットの鮮やかさ。オーケストラの迫力。劇場で観ずして配信などあり得ない傑作。


TALK TO ME トーク・トゥ・ミー
2024.01.03 イオンシネマ海老名:スクリーン4 TALK TO ME [1100円/129分]
【06】2023年オーストラリア 監督:ダニー&マイケル・フィリッポウ 脚本:D・フィリッポウ、ビル・ハインツマン
CAST:ソフィー・ワイルド、ジョー・バード、アレクサンドラ・ジェンセン、オーティス・ダンジ、ミランダ・オットー
●登場人物と同じ画角に魔物が現れたり、暴力や自傷が痛みを想像させるリアルさだったりするのが本当に苦手。突然デカい音が鳴るのも勘弁だ。要は「ドキっ」としたくないのだ。『エクソシスト』を克服した勢いで憑依ホラーを観たのだが、主人公の身勝手な性格と合わせこのオージーホラーは不快感しかなかった。どこがA24やねん。


市 子
2024.01.03 TOHOシネマズ海老名:スクリーン8 [1300円/125分] ※再観賞
【07】2023年製作委員会=ハピネットファントム 監督:戸田彬弘 脚本:上村奈帆、戸田彬弘
CAST:杉咲花、若葉竜也、中村ゆり、森永悠希、渡辺大知、宇野祥平、中田青渚、石川瑠華、倉悠貴、大浦千佳
●最近よく聞く「ファムファタール」。市子は本当に悪女なのか。ミステリー仕立てだが本質はノワールか。旧態依然とした法律が生んだ悲劇のヒロインとして市子に寄り添うことは出来るが、彼女はひとり歪な人生を歩いてゆく。そんな市子の母親が娘の恋人だった長谷川を乗せた船に深々と頭を下げる場面、去年観た中の最高の名シーンだ。


朝がくるとむなしくなる
2024.01.07 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン2 [1100円/76分]
【08】2023年IPPO=イーチタイム 監督:石橋夕帆 脚本:石橋夕帆
CAST:唐田えりか、芋生悠、石橋和磨、安倍乙、中山雄斗、矢柴俊博、石本径代、森田ガンツ、太志、佐々木怜、小野塚省吾
●女友達との何気ないふれあいで主人公の心が解放される様をドラマ的な起伏もなく終わらせる。それが妙に面白い。タイトな上映時間だがなんだかんだ言っても唐田えりかの画面持ちの良さでずっと観ていられる。芋生悠とのシスターフットも女性監督らしく丁寧に描かれて心地よく、むしろ派手な展開にしてくれるなと思ってしまった。


ほかげ
2024.01.07 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン2 [1100円/95分]
【09】2023年海獣シアター=新日本映画社 監督:塚本晋也 脚本:塚本晋也
CAST:趣里、森山未來、塚尾桜雅、河野宏紀、利重剛、大森立嗣
●まず焼け跡の美術の凄さに目を奪われる。戦場で身も心も削られた復員兵が目にした故郷の衝撃は幾ばかりだったことか。焦土の中、瓦礫に埋もれた防空壕に茫然と座り込む敗残兵の描写だけでも観る価値ありだ。そして『生きてるだけで、愛。』のエキセントリックな趣里が復活。朝ドラヒロインを健気にこなしているが資質はこちらにある。
※2023年キネマ旬報ベストテン第3位


ロスト・フライト
2024.01.07 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン1 PLANE [無料/107分]
【10】2022年アメリカ 監督:ジャン・フランソワ・リシェ 脚本:チャールズ・カミング、J・P・デイヴィス
CAST:ジェラルド・バトラー、マイク・コルター、トニー・ゴールドウィン、ヨソン・アン、ダニエラ・ピネダ
●得てしてこの手のジャンルものは軽く評価され勝ちで「そこそこ面白い」なるレヴューが散見される。ならば「そこそこ」じゃない映画は他に何本あるというのか。ツッ込みどころ満載?・・・いやそれを想定せずして度を越えた面白さにはならない。航空パニック、銃撃戦、決死の脱出劇に娯楽映画の職人たちのプロの技がある。めっぽう面白い。


過去負う者
2024.01.07 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン3 [1100円/125分]
【11】2023年BIG RIVER FILMS 監督:舩橋淳 脚本:舩橋淳
CAST:辻井拓、久保寺淳、平井早紀、田口善央、紀那きりこ、みやたに、峰あんり、満園雄太、伊藤恵、小林なるみ
●元受刑者の生きづらさと支援する人々を描く。上映後、監督に「あの場面は必要だったのか?」と質問する機会を得た。長い映画鑑賞歴で初めての経験だ。作劇をドキュメンタリー風に撮る映画は珍しくはないが、議論の場面では無名俳優たちの熱量が迫真性を生む。受刑者支援の是非が主題だが、一方で有名俳優の必要性って何だろうと思う。


レザボア・ドッグス <デジタルリマスター版>
2024.01.07 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン1 RESERVOIR DOGS [1100円/100分]
【12】1991年アメリカ 監督:クエンティン・タランティーノ 脚本:クエンティン・タランティーノ
CAST:ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、スティーヴ・ブシェーミ、クリス・ペン、エディ・バンカー
●俳優の加藤雅也とこの映画を語ったことがある。初見はビデオ観賞だった。もう30年以上経つのか。今観ると当時思えた革新性を感じないほどすでに基盤になってしまったが、確かにこの作品から世界のキャング映画は一気に変わり、皆、本作を真似た。だから『レザボア・ドックス』が観賞履歴にないことが恥ずかしかった。やっと大願成就だ。
※1993年キネマ旬報ベストテン第6位


ショコラ
2024.01.08 TOHOシネマズ海老名:スクリーン8 CHOCOLAT [1200円/121分]
【13】1991年アメリカ 監督:ラッセ・ハルストレム 脚本:ロバート・ネルソン・ジェイコブス
CAST:ジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップ、ジュディ・デンチ、レナ・オリン、アルフレッド・モリーナ
●アウトサイダーが古い価値観に凝り固まった街を変えていく。似た設定の映画は何本か浮かぶもののアート系の監督と思っていたL・ハルストレムが、ベタな娯楽作を志向していたのがわかる。チョコレートがどれだけ人を幸福に出来るのかわからないが、冒頭と同じ鳥瞰の家並みが三角チョコに見えてくるラストは美味い…いや上手いと思う。


コンクリート・ユートピア
2024.01.08 イオンシネマ海老名:スクリーン6 콘크리트 유토피아 [1100円/130分]
【14】2023年韓国 監督:オム・テファ 脚本:イ・シンジ、オム・テファ
CAST:イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン キム・ソニョン、パク・ジフ、キム・ドユン
●『白頭山大噴火』『非常宣言』と毎年イ・ビョンホン主演の超大作が公開される中、韓国映画のスケールと見せ方の凄さで驚かなくなった分、中身の良し悪しに目がいくようになった。正直、群衆の力学と同調圧力の噴出、あるいは文明批判の点で弱いと思った。なにより“王”の対立概念がヒロイン然とした若妻だけなのが物足りない。


笑いのカイブツ
2024.01.08 イオンシネマ座間:スクリーン7 [1100円/116分]
【15】2024年製作委員会=ショウゲート 監督:滝本憲吾 脚本:足立伸、滝本憲吾、山口智充
CAST:岡山天音、片岡礼子、仲野太賀、菅田将暉、松本穂香、前原滉、板橋駿谷、淡梨、前田旺志郎、管勇毅、松角洋平
●「M-1」を見ていると「笑いがカイブツ」化しているのを感じるが、自己中心の主人公がときに刹那的、衝動的である姿に石川力男の情念を思い出す瞬間があった。熱血サクセスストーリーかと思ったが破滅劇としてなかなかの力作ではある。ただ岡山天音の熱演のテンションが上がるほど嫌悪感が増していくのは否めず、面白くはなかった。


ゴジラ -1.0/C
2024.01.14 イオンシネマ新百合ヶ丘:スクリーン2 [1100円/125分]
【16】2023年ROBOT=東宝 監督:山崎貴 脚本:山崎貴
CAST:神木隆之介、浜辺美波、吉岡秀隆、佐々木蔵之介、山田裕貴、青木崇高、安藤サクラ、永谷咲笑、田中美央、飯田基祐
●「モノクロ映像版」で再観賞。ゴジラはポリティカルな存在から逃れられない筈なので冷戦を理由に米ソが傍観するなど、人物配置が敷島を中心に極力ミニマムにした傲慢さで評価出来なかったが、モノクロでリアルさにバイアスがかかるとゴジラの迫力が際立ってこんな面白かったのかと思う。さらに軍部の不条理が描ければもっと良かった。


ゴーストワールド
2024.01.14 川崎市アートセンター:アルテリオ映像館 GHOSTWORLD [1100円/111分]
【17】2001年アメリカ 監督:テリー・ツワイゴフ 脚本:ダニエル・クロウズ、テリー・ツワイゴフ
CAST:ソーラ・バーチ、スカーレット・ヨハンソン、スティーヴ・ブシェーミ、ブラッド・レンフロ、イリーナ・ダグラス
●公開時の女の子二人のメインビジュアルはよく憶えている。こんな大物だったとは。ただ『ブックスマート』的なシスターフットを期待してしまったことそのものが2000年初頭の青春像とズレていたのかも知れないし、当時の風俗、ファッションにまったく無知なので、最後に幻のバスに乗車するイネードの行動原理もよくわからなかった。
※2001年キネマ旬報ベストテン第9位


ペルリンプスと秘密の森
2024.01.14 川崎市アートセンター:アルテリオ映像館 PERLIMPS [無料/111分]
【18】2020年ブラジル 監督:アレ・アブレウ 脚本:アレ・アブレウ
CAST:(声)ロレンゾ・タランテーリ、ジウリア・ベニッチ、ステーニオ・ガルシア、ホーザ・ホザー、ニウ・マルコンジス
●非ハリウッド系のアニメーションということでレミ・シャイエやカートゥーン・サルーンの作品をイメージし、森と文明破壊をモチーフにしていることから『ウルフ・ウォーカー』を想起したのだが、このブラジル映画はどこか違っていた。結局、ペルリンプスが神なのか英雄なのかわからないまま少年から大人への物語と解釈したがどうだろう。


カラオケ行こ!
2024.01.14 イオンシネマ新百合ヶ丘:スクリーン10 [1100円/107分]
【19】2024年製作委員会=KADOKAWA 監督:山下敦弘 脚本:野木亜紀子
CAST:綾野剛、齋藤潤、芳根京子、橋本じゅん、やべきょうすけ、吉永秀平、坂井真紀、宮崎吐夢、加藤雅也、北村一輝
●キネ旬ベストを連発していた頃の山下敦弘がすっぽり抜けていることは気になっていた。予告編を観るにいかにもコミックの映画化なのでこの監督でなければスルーしていただろう。主演二人のバディぶりが楽しくて面白く観られたが、山下敦弘が娯楽映画をきっちり撮れる職人の資質を持っていることはよくわかった。次回作も期待したい。


ある閉ざされた雪の山荘で
2024.01.20 イオンシネマ座間:スクリーン5 [1100円/109分]
【20】2024年製作委員会=ハピネットファントム 監督:飯塚健 脚本:加藤良太、飯塚健
CAST:重岡大毅、久我和幸、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵、間宮祥太朗
●そのままクローズドサーキットかと思いきや東野圭吾らしいトリッキーな構造。間取り図を使ったアイデアを生かして観客を虚実皮膜の空間に誘って欲しかったが、予感通り出演者が役者を演じその役者が役を仕掛ける多重レイヤーの面白さを作り手も演者も捻出できず、推理ものとしても演劇論としても終始弛緩してしまった。残念。


サン・セバスチャンへ、ようこそ
2024.01.21 イオンシネマ座間:スクリーン4 RIFKIN'S FESTIVAL [無料/88分]
【21】2020年スペイン=アメリカ=イタリア 監督:ウディ・アレン 脚本:ウディ・アレン
CAST:ウォーレス・ショーン、ジーナ・ガーション、ルイ・ガレル、エレナ・アナヤ、セルジ・ロペス、クリストフ・ヴァルツ
●俗にいう「東海岸の映画人はアートを語り、西海岸はマネーを語る」。フェリーニ、ベルイマンからヌーベルバーグまで縦断し、俗っぽく「皮肉と諦観」のセルフカバー(?)で楽しませてくれる。「なるようにならない」のが映画なら「なるようにしかならない」のがウディ節。羽根毟られようが悪戦苦闘のジタバタに健在を確信し嬉しかった。


哀れなるものたち
2024.01.28 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン2 POOR THINGS [1300円/142分]
【22】2023年イギリス 監督:ヨルゴス・ランティモス 脚本:トニー・マクナマラ
CAST:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ、クリストファー・アボット
●「女の束縛からの解放」が大きな幹なのか単なる枝葉なのか。それよりも根源的な生命とは何者か?に思いを馳せられる。しかしとにかく露悪的でグロテスクで奇っ怪な描写を推進力としているのは確か。しかし悪趣味とは思わない。むしろ全編を通しての印象は「美しい」だった。まだ1月、今年これを超える映画は現れるのだろうか。


ファースト・カウ
2024.02.04 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン3 FIRST COW [1100円/122分]
【23】2019年アメリカ 監督:ケリー・ライカート 脚本:ケリー・ライカート、ジョナサン・レイモンド
CAST:ジョン・マガロ、オリオン・リー、トビー・ジョーンズ、ユエン・ブレンナー、スコット・シェパード
●冒頭、船が右から左へとゆっくり移動する。こういうテンポの映画なのはわかるが、ストーリーには起伏があり料理次第でコメディ味のエンタメに展開させることも可能だったろう。しかしそうはならないし、それを否定はしない。ただ描かれる現実にとぼけたユーモアを見出せなかったことに“映画鑑賞者”としての自分の課題も見えた。


ミツバチと私
2024.02.04 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン3 FIRST COW [1100円/128分]
【24】2023年スペイン 監督:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン 脚本:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
CAST:ソフィア・オテロ、パトリシア・ロペス・アルナイス、アネ・ガバライン、イツィアル・ラスカノ、マルチェロ・ルビオ
●思えば「性同一障害」の言葉も惨い。“彼女”が最初に違和感を覚えるのは呼ばれる名前だ。周囲の大人が𠮟責し、何とかしようと思えば思うほど、8歳の子供は自己を肯定出来なくなる。そして子供が自己否定を内面化しないよう努める意味で親たちの成長物語にもなる。エンドクレジットで主人公の名前が“Lucia”となっていることの素晴らしさよ。


カラーパープル
2024.02.10 イオンシネマ座間:スクリーン8 COLOR PURPLE [1000円/141分]
【25】2023年アメリカ 監督:ブリッツ・バザウレ 脚本:マーカス・ガードリー
CAST:ファンテイジア・バリーノ、タラジ・P・ヘンソン、ダニエル・ブルックス、コールマン・ドミンゴ、コーリー・ホーキンズ
●アカデミー賞には好まれなかったようだが十分に満足。まさか38年前の映画がミュージカルで蘇るとは思わなかったが、プロードウェイの映画化ということで、むしろ女達の勝利を称える物語としてミュージカルの躍動感は正解だと思う。お気に入りは蓄音機のターンテープの上で歌う場面。巨大セットが往年のMGMを彷彿とさせ気分が高揚。


夜明けのすべて
2024.02.11 109シネマズグランベリーパーク:シアター2 [1300円/119分]
【26】2024年製作委員会=バンダイナムコ=アスミックエース 監督:三宅唱 脚本:和田清人、三宅唱
CAST:松村北斗、上白石萌音、光石研、渋川清彦、芋生悠、藤間爽子、久保田磨希、足立智充、りょう、丘みつ子
●朝ドラではあっという間に恋に落ちたが、こちらの藤沢さんと松添くんは恋愛関係にならない。なんて新鮮なのだろうと思う。パニック障害とPMSを持つ同士、日常の戦友なのかもしれないが、過去の手記と何百万年前の光が輝く星に導かれての日常話はかなり素敵だ。劇伴使いにやや不満は残るが、三宅唱の確実なステップアップを実感した。


007/スカイフォール
2024.02.12 シオンシネマズ座間:スクリーン7 SKYFALL [1000円/143分] ※再観賞
【27】2012年イギリス=アメリカ 監督:サム・メンデス 脚本:ニール・パーヴィス、R・ウェイド、ジョン・ローガン
CAST:ダニエル・クレイグ、ジュディ・ディンチ、ハビエル・バルデム、レイフ・ファインズ、アルバート・フィニー
●今回の4Kレストア企画で絶対に観ると決めたのが未見の2本と本作だ。とにかくあまりの世界観の違いに度肝を抜かされて13年が経つ。当時シリーズが如何に岐路に立たされ、ボンドもろとも危機感の中にあったのか今は手に取るように解るが、本当に007映画なのかとの疑問も含め、間違いなくシリーズ屈指の衝撃作であり、もはや名作の域だ。


ナイト・オン・ザ・プラネット
2024.02.17 シオンシネマズ座間:スクリーン5 NIGHT ON EARTH [1600円/129分]
【28】1991年アメリカ=フランス=ドイツ=日本 監督:ジム・ジャームッシュ 脚本:ジム・ジャームッシュ
CAST:ウィノナ・ライダー、ジーナ・ローランズ、ジャンカルロ・エスポジト、ロベルト・ベニーニ、ベアトリス・ダル
●いきなり流れるトム・ウェイツ。ジャームッシュと対峙している妙な高揚感にシネコンが90年代ミニシアターと化す錯覚。咥え煙草のウィノナの後ろの女性はジーナだったか。各エピソードに甲乙はあるが順番は正解。どこか懐かしいのは、かつて夜のニューヨークの暗さをタクシーの車窓から眺めたことをちょっと思い出しただけ、か。
※1991年キネマ旬報ベストテン第10位


リバー・ランズ・スルー・イット
2024.02.18 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン9 BEAU IS AFRAID [1200円/124分]
【29】1992年アメリカ 監督:ロバート・レッドフォード 脚本:リチャード・フリーデンバーグ
CAST:クレイグ・シェイファー、ブラッド・ピット、トム・スケリット、ブレンダ・ブレシン、エミリー・ロイド
●モンタナの雄大な自然の中でフライフィッシングに講じる父と子、そして兄と弟。とにかく竿と糸のアンサンブルが美しい。レンタルビデオ屋時代、派手さはないがよく稼いだ。レッドフォードのきめ細かな演出でつくづくアメリカは父性の国だと感じさせるが、やはりスターになるべくしてなったブラピの存在感。高回転の理由はそれだろう。
※1993年キネマ旬報ベストテン第7位


ボーはおそれている
2024.02.18 イオンシネマ港北ニュータウン:スクリーン11 BEAU IS AFRAID [1000円/179分]
【30】1991年アメリカ 監督:アリ・アスター 脚本:アリ・アスター
CAST:ホアキン・フェニックス、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、パーカー・ポージー、パティ・ルポーン
●噂のアリ・アスター。前2作を見逃してこれが初見。正直、3時間のこれでもかの地獄めぐりはしんどかった。しかし不条理な事象の連続に誰かボーに救いの手を指し延ばしてやれよと思いつつ、すべては仕組まれていた結末に、もう一度観てもいいかなとも思った。ただその時は一転してボーを弄ぶ側の視点で観たい。そうしないと身が持たん。


スケアクロウ
2024.02.23 TOHOシネマズ海老名:スクリーン3 SCARECROW [1200円/113分] ※再観賞
【31】1974年アメリカ 監督:ジェリー・シャッツバーグ 脚本:ギャリー・マイケル・ホワイト
CAST:ジーン・ハックマン、アル・パチーノ、ドロシー・トリスタン、アン・ウェッジワース、リチャード・リンチ
●G・ハックマンとA・パチーノ。“映画史的競演”のバディものでロードムービー。私の大好物だが過去に2度観て中身の記憶がないのが観賞歴の七不思議のひとつだった。封切時の金曜夕刊のラテ欄の広告はよく覚えていたにも関わらず。ぶっきらぼうの大男は意外と饒舌で、口から生まれてきた小男は案外寡黙だった。またも掴めず終わったか。
※1973年キネマ旬報ベストテン第1位


エル・スール
2024.02.24 ヒューマントラストシネマ渋谷:シアター1 EL SUR [1200円/95分]
【32】1985年スペイン 監督:ビクトル・エリセ 脚本:ビクトル・エリセ
CAST:オメロ・アントヌッティ、ソンソレス・アラングーレン、イシアル・ボジャイン、ロラ・カルドナ
●未見のまま何十年も気なっていた。もし20代で観ていれば60を超えて再見した今、どう感じたろう。もちろん今日の初見でも素晴らしかったが、寡作の巨匠が醸す静謐さを穏やかに見つめるだけだった。娘にとって父を知ることは通過儀礼だろうが、胸に秘めたイレーネ・リオスは私の中にもいる。間違いなく墓まで持っていくのだろうが。


マッチング
2024.02.03 イオンシネマ新百合ヶ丘:スクリーン5 [1000円/110分]
【33】2024年製作委員会=KADOKAWA 監督:内田英治 脚本:内田英治、宍戸英紀
CAST:土屋太鳳、佐久間大介、金子ノブアキ、真飛聖、後藤剛範、片山萌美、片岡礼子、杉本哲太、斉藤由貴
●演出と演技が記号的でまるでいただけない。さらに二段落ちの構造ゆえミスリードしている意図が丸わかりで、それが延々と続くので全体の間延びが著しい。エンドロールは内容と脈絡のないJポップが流れ「またか」となる。一応良かった点は監督の原作によるオリジナルであることと、25年の時間経過を似た風貌の役者で演じ分けたことか。


落下の解剖学
2024.02.03 イオンシネマ新百合ヶ丘:スクリーン7 ANATOMIE D'UNE CHUTE [1100円/152分]
【34】2023年フランス 監督:ジュスティーヌ・トリエ 脚本:ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ
CAST:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ、サミュエル・タイス
●まさに“知性の因数分解”。パルムドームもさもありなんか。検察側と弁護側。被告審問、証拠として提出される録音記録。英語と仏語が交錯する「言葉」。その応酬が母と子の感情を二転三転させ、観客をも翻弄する。法廷で晒される母の性遍歴を聞かされながら、最後は母を胸に受け止めるダニエル少年。その早過ぎる大人の佇まいが悲しい。


DOG MAN ドッグマン
2024.03.09 109シネマズグランベリーパーク:シアター5 DOG MAN [1300円/114分]
【35】2023年フランス 監督:リュック・ベッソン 脚本:リュック・ベッソン
CAST:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジョージョー・T・ギッブス、クリストファー・デナム、クレーメンス・シック
●かつて一世を風靡するが、その後、俗化。過去の人になりつつあるも“リュック・ベッソン最新作”に惹かれて観賞。拘置所での懐述が回想場面となり、時間軸が近づいてラストで現実時間となる。ラストの宗教的臨終は悪くなく一定の面白さはあるのだが、犬を操っての犯罪組織殲滅となると「やり過ぎ感」は拭えず、許容を超えてしまった。


梟 フクロウ
2024.03.09 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン2 올빼미 [1100円/118分]
【36】2022年韓国 監督:アン・テジン 脚本:アン・テジン、ヒョン・ギュリ
CAST:リュ・ジュンヨル、ユ・ヘジン、チェ・ムソン、チョ・ソンハ、パク・ミョンフン、キム・ソンチョル、チョ・ユンソ
●目を狙う針のメインポスターで韓流ホラーと思って敬遠していたが評判の良さに厚木で捕まえた。つくづくビジュアルは大切だ。実際,見終わった印象は「よく出来てる」だった。17世紀朝鮮王朝を描きながら「見て見ぬふりをする」ことの是非を現代社会に突きつけながら、それをエンタメに落とし込んでゆく手腕。まさに一級品だろう。


瞳をとじて
2024.03.17 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン1 CERRAR LOS OJOS [1100円/169分]
【37】2023年スペイン 監督:ビクトル・エリセ 脚本:ビクトル・エリセ、ミシェル・ガスタンビデ
CAST:マノロ・ソロ、ホセ・コロナド、アナ・トレント、ベトラ・マルティネス、マリア・レオン、マリオパルド、エレナ・ミケル
●傑作。単純に「人生万歳」を謳った映画ではないが、観終わった直後の感想はそれだった。巨匠エリセ31年ぶりの新作は絶望によって失われた記憶を、169分の時間を使って丁寧に静謐にある意味トリッキーにカットを積み重ね蘇らせていく。忘れたままでも良かったのかもしれないが、やはり人生は空白を埋めたうえで自己肯定が得られるのだ。


ゴールド・ボーイ
2024.03.17 TOHOシネマズ海老名:スクリーン5 [無料/129分]
【38】2024年チームジョイ=東京テアトル 監督:金子修介 脚本:港岳彦
CAST:岡田将生、羽村仁成、星乃あんな、黒木華、前出燿志、松井玲奈、北村一輝、江口洋介
●思えば金子修介とはデビュー作から「ガメラ」に「ゴジラ」にと付き合いも古くなった過程で前作のレズポルノは最低だったが今回は面白かった。確かに二転三転のストーリーの起伏を馬なりに駆け抜けた故の荒っぽさはあったが、細かいことより突っ走った者勝ち的な勢いが功を奏したか。とにかく岡田将生の存在感が見惚れるほど凄い。


変な家
2024.03.20 109シネマズグランベリーパーク:シアター2 [1300円/110分]
【39】2024年製作委員会=東宝 監督:石川淳一 脚本:丑尾健太郎
CAST:間宮祥太朗、佐藤二朗、川栄李奈、長田成哉、DJ松永、瀧本美織、根岸季衣、高嶋政伸、斉藤由貴、石坂浩二
●驚いたのが座間のイオンシネマが札止めで、河岸を替えた南町田も満杯だったこと。映画館の盛況は喜ばしいが、それに見合う映画であって欲しかった。序盤の間取り図をめぐる謎かけは面白かったものの、中盤以降の無理やりな筋書きに呆れ返る。動画の映像をもっと生かせばマシなJホラーに仕上がったろうに、結局、茶番に終わったか。


愛と哀しみのボレロ
2024.03.23 TOHOシネマズ新宿:スクリーン1 LES UNS ET LES AUTRES [1200円/184分]
【40】1981年フランス 監督:クロード・ルルーシュ 脚本:クロード・ルルーシュ
CAST:ロベール・オッセン、ニコール・ガルシア、マニュエル・ジェラン、ジェラルディン・チャップリン、ジェームズ・カーン
●日々の疲労故にラヴェルを聴きながら睡魔に耐える184分と思いきや、世界的アーティスト4人の2世代の物語を大戦を真ん中にアルジェリア戦争に至るフランス近代を通史したルルーシュの語り口に集中して観られた。カラヤン指揮でヌレエフが踊り、G・ミラーの娘が歌う大嘘も「ボレロ」の圧巻のフィナーレにこれぞ大団円と唸らせる。


荒野の用心棒 <4K復元版>
2024.03.24 ムービル:シアター1 A FISTFUL OF DOLLARS [1300円/99分] ※再観賞
【41】1964年イタリア他 監督:セルジオ・レオーネ 脚本:セルジオ・レオーネ、ヴィクトル・A・カテナ、ハイメ・コマス
CAST:クリント・イーストウッド、ジャン・マリア・ヴォロンテ、ジョン・ウェルズ、ヨゼフ・エッガー、ロレンツォ・ロブレド
●≪ドル三部作≫のリバイバル。ならばMyマエストロを堪能しようと4K上映のムービルへ。映画観賞の原点に相応しい場所。おそらく自分史上最高音質で「さすらいの口笛」を聴く。そしてブーツの歯車からのローアングルのパンフォーカス。またレオーネ節に酔う。さらにイーストウッド。ここまで恰好良いウエスタンヒーローを私は知らない。


夕陽のガンマン <4K復元版>
2024.03.24 ムービル:シアター1 FOR A FEW DOLLARS MORE [1300円/132分] ※再観賞
【42】1965年イタリア他 監督:セルジオ・レオーネ 脚本:セルジオ・レオーネ、ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
CAST:クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、ジャン・マリア・ヴォロンテ、マリオ・ブレガ、クラウス・キンスキー
●テーマ曲は何千回と聴いたがスクリーンとは中学生以来ほぼ50年ぶりの邂逅。改めて良く出来た傑作だ。レオーネはクリントより悪役ヴォロンテへの愛を隠そうとせず、リー・ヴァンの鋭く静かな佇まいと対比させる。とんでもない“男のプロ”達によるカッコよさを一層引き立てる演出と音楽。これに夢中になれた中坊の日々までもが誇らしい。


続・夕陽のガンマン/地獄の決斗 <4K復元版>
2024.03.30 ムービル:シアター4 THE GOOD、THE BAD AND THE UGLY [1300円/178分] ※再観賞
【43】1966年イタリア他 監督:セルジオ・レオーネ 脚本:セルジオ・レオーネ、ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
CAST:クリント・イーストウッド、イーライ・ウォラック、リー・ヴァン・クリーフ、アル・ムロック、ルイジ・ピスティッリ
●よく「モリコーネの音楽が映像を盛り上げる」は聞くが、サッドヒル墓地以降は「映像がモリコーネの音楽を盛り上げている」。これは神々のシンフォニーだと思っていて、多幸感は他と比べようがない。ただ3時間、物語の面白さに喜んでいた今までと違い、戦争の愚かしさや死に往く者への慈しみが散りばめられているのが痛く胸を突いた。


アイアンクロー
2024.04.06 109シネマズグランベリーパーク:シアター5 THE IRON CLAW [1300円/130分]
【44】2023年アメリカ 監督:ショーン・ダーキン 脚本:ショーン・ダーキン
CAST:ザック・エフロン、ホルト・マッキャラニー、ジェレミー・アレン・ホワイト、モーラ・ティアニー、リリー・ジェームズ
●実際の彼らを見てきたこと、また当時の記事を熟読していたことで家族の悲劇が再現VTRに思えてしまう。さらに「呪われた一家」の元凶に、極端な家父長制があり、フリッツの「鉄の爪」が兄弟たちの精神をも鷲掴みにした絶対悪として、逃れたケビンが得た平穏という決着が短絡に感じた。彼らは「栄光の一家」でもあったわけだから。


ピアノ・レッスン
2024.04.13 kino cinema横浜みなとみらい:シアター1 THE PIANO [1300円/121分]
【45】1993年オーストラリア=ニュージーランド=フランス 監督:ジェーン・カンピオン 脚本:ジェーン・カンピオン
CAST:ホリー・ハンター、ハーヴェイ・カイテル、サム・ニール、アンナ・パキン、ケリー・ウォーカー、タンギア・ベイカー
●神代辰巳が絶賛していた記事を見つけて以来、未見の課題だった。視界を隠す指、鍵盤を叩く指、柔肌を這う指、そして浜辺に置かれたピアノ。海上のエイダの行動が自殺なのか事故なのか判らなかったのが悔しいが、総合芸術としての映画の“特権”である映像と音と演技の「言語一致」を極限に研ぎ澄ますことで醸し得る官能美に酔わされた。
※1994年キネマ旬報ベストテン第1位



a:140 t:1 y:2

powered by HAIK 7.6.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional