◆三行の映画評

 三行の映画評 


灰とダイヤモンド
2018.10.14 TOHOシネマズ海老名 スクリーン5 Popiół i diament
【86】1958年ポーランド 監督:アンジェイ・ワイダ 脚本:イェジー・アンジェイエフスキー、アンジェイ・ワイダ
CAST:ズビグニエフ・チブルスキー、エヴァ・クジジェフスカ、バクラフ・ザストルジンスキー、アダム・パヴリコフスキー
●36年前はポーランドの時代背景を知らずに観て、殆ど理解できなかったのだが、今回は事前に勉強したおかげでマチェクの死に至るまでの諸々の物語がよくわかった。巨匠ワイダが国家体制を批判するのと同時にスタイリッシュな青春映画としても成立させていたことにも驚いた。なるほど名作だが、構成は『鉄砲玉ぴゅ~』ではないか。
※1959年キネマ旬報ベストテン第2位


日日是好日
2018.10.08 イオンシネマ新百合ヶ丘 スクリーン1
【85】2018年製作実行委員会 監督:大森立嗣 脚本:大森立嗣
CAST:黒木華、樹木希林、多部未華子、鶴田真由、鶴見辰吾、郡山冬果、山下美月、原田麻由、川村紗也、滝沢恵
●茶室での所作のひとつひとつが季節の移ろいを止め、その時々の歳時を鮮やかに浮かび上がらせるのだが、典子が武田先生の茶室を出ると堰を切ったように時間が飛んでいく。走る時間ではなく止まった時間こそが映画的パラドクスではないか。ほんの少しの厳格さとたっぷりのユーモア。樹木希林以外の誰が武田先生を演じることができよう。


マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ
2018.10.07 TOHOシネマズ海老名 スクリーン6 Mitt Liv Som Hund
【84】1985年スウェーデン 監督:ラッセ・ハルストレム 脚本:レイダル・イェンソン、ブラッセ・ブレンストレム他
CAST:アントン・グランセリウス、マンフレド・セルナル、アンキ・リデン、トーマス・フォン・ブレムセン
●想像だが、赤道でバナナを売っている不在の父は実は失踪していて、そのことで病んでいる母親がいる。こういう厳しい現実のなかで、精神的には人生を達観していながら、行動は子供そのものという12歳のイングマル少年。北欧の田舎町の風変わりな雰囲気に惹かれつつ、少年特有の危うさと切なさが、微笑に到達したハルストレムの出世作。
※1989年キネマ旬報ベストテン第5位


スカイスクレイパー
2018.10.06 TOHOシネマズららぽーと横浜 スクリーン6 SKYSCRAPER
【83】2018年アメリカ=中国 監督:ローソン・マーシャル・サーバー 脚本:ローソン・マーシャル・サーバー
CAST:ドウェイン・ジョンソン、ネーヴ・キャンベル、チン・ハン、ローランド・ムーラー、パブロ・シュレイバー
●ドウェイン・ジョンソンって誰?と思ったらロック様だったか。そのロック様が走って飛んでの大熱演。超高層ビル火災はスマホの再起動で消火するのが今風なのかと、所々の都合主義と粗めのディティールに難クセつけたら枚挙に暇はないが、面白さ問答無用!こういう映画を無邪気に楽しめる感性がなくなったら、シネコンに行く必要はない。


仁義なき戦い・完結篇
2018.09.29-30 新文芸坐
【82】1974年東映 監督:深作欣二 脚本:高田宏治
CAST:菅原文太、北大路欣也、小林旭、松方弘樹、梅宮辰夫、宍戸譲、山城新伍、桜木健一、野川由美子、金子信雄
●15年前のオールナイトの時「満塁ホームランの後で三遊間をしぶとく抜くヒットみたいな映画」とあまりに失礼なことを思っていたのだが、槙原や江田が射殺される深作タッチなど、迫力は傑出しており、決して及第点に収まる映画ではない。反省すべしは我々は笠原和夫の降板で高田宏治に膨大な時間をかけて貧乏くじを引かせていたことか。


仁義なき戦い・頂上作戦
2018.09.29-30 新文芸坐
【81】1974年東映 監督:深作欣二 脚本:笠原和夫
CAST:菅原文太、小林旭、松方弘樹、梅宮辰夫、夏八木勲、黒沢年男、小倉一郎、渚まゆみ、小池朝雄、加藤武、金子信雄
●「もうわしらの時代は終いで。口が肥えてきちょって、こう寒さが堪えるようになってはのぅ」。ラストの名場面で語られることの多い『頂上作戦』だが、何度も観ているのかと思いきや30年で2回しか観ていなかった。経年の成せる業か・・・どおりで昔、あんなに反発していた打本昇の軟弱さ、狡猾さを無邪気に笑い飛ばせない自分がいるはずだ。
※1974年キネマ旬報ベストテン第7位


仁義なき戦い・代理戦争
2018.09.29-30 新文芸坐
【80】1973年東映 監督:深作欣二 脚本:笠原和夫
CAST:菅原文太、小林旭、渡瀬恒彦、梅宮辰夫、成田三樹夫、田中邦衛、加藤武、山城新伍、池玲子、川谷拓三、金子信雄
●古今東西、ここまで素晴らしい群像劇を私は知らない。多くの人物たちの右往左往を可笑しくも緻密に活写され、それ故に回を重ねて観るほどに笠原和夫の執念の名人芸に感服していく。それだからこそ盃外交の埒外にいる倉本猛の生き急ぐ青春のギラつきがどこまでも鮮烈であり羨望してしまうのだ。永遠の傑作であることを改めて確信する。
※1973年キネマ旬報ベストテン第8位


仁義なき戦い・広島死闘篇
2018.09.29-30 新文芸坐
【79】1973年東映 監督:深作欣二 脚本:笠原和夫
CAST:菅原文太、千葉真一、北大路欣也、梶芽衣子、成田三樹夫、前田吟、小池朝雄、名和広、室田日出男、金子信雄
●山中正治と大友勝利。二人のどちらが好きかという設問が今も続いている。両者の無垢な純真さと残虐な野心という点で戦後派ヤクザの典型なのだろうが、どちらが好き?なんて答えられるわけがない。この突出した二人を輩出したことで『広島死闘篇』はシリーズの中でカルト化した。笠原和夫と深作欣二の情念が生み出した傑物だろう。


仁義なき戦い
2018.09.29-30 新文芸坐
【78】1973年東映 監督:深作欣二 脚本:笠原和夫
CAST:菅原文太、梅宮辰夫、松方弘樹、伊吹吾郎、渡瀬恒彦、三上真一郎、川地民夫、高宮敬二、木村俊恵、金子信雄
●6回目の「5部作一挙上映オールナイト」。私自身のそれぞれの年代でシリーズを体感してきたが、すっかり“映画史上の名作”の装飾をまとっていた。第一作目の最大の魅力は焼け跡闇市のエネルギシュな躍動感に尽きるだろう。そして以前から思っていたことだが、低音の広島弁を最大限に引き立てる録音・音響技術の素晴らしさも唯一無二だ。
※1973年キネマ旬報ベストテン第2位


ツイン・ピークス ― ローラ・パーマー最後の7日間 ―
2018.09.23 早稲田松竹 TWIN PEAKS;FIRE WALK WITH ME
【77】1992年アメリカ=フランス 監督:デヴィッド・リンチ 脚本:デヴィッド・リンチ、ロバート・エンゲルス
CAST:シェリル・リー、レイ・ワイズ、カイル・マクラクラン、デヴィッド・ボウイ、キーファー・サザーランド
●もう四半世紀以上も前の話だが、ビデオ屋を始めて最初の月の目玉がこれだった。ただTVシリーズにはまったく食指が動かなかったし、リンチにしてもこの劇場版は本編の前日譚との縛りがあるためダークな青春ものとしてもサイコスリラーとしても中途半端だ。ローラの悲鳴の連発に飽きてしまい早く終われと何度も腕時計を見てしまった。


マルホランド・ドライブ
2018.09.23 早稲田松竹 MULHOLLAND DRIVE
【76】2001年アメリカ=フランス 監督:デヴィッド・リンチ 脚本:デヴィッド・リンチ
CAST:ナオミ・ワッツ、ローラ・ハリング、ジャスティン・セロー、アン・ミラー、ダン・ヘダヤ、リー・グラント
●リンチ最高傑作との呼び声高い一作。ベタなサスペンスを思わせる前半からナオミ・ワッツとローラ一・ハリングのキャラが逆転し、物語の縦糸と横糸がこんがらがって混乱と混沌の淵に観客を叩き落とすリンチ。この謎を解釈する作業の膨大な労力を思うと、難解さを難解のまま受け入れることこそが最良ではないかと開き直りながら観た。
※2002年キネマ旬報ベストテン第4位


ロスト・ハイウェイ
2018.09.23 早稲田松竹 LOST HIGHWAY
【75】1997年アメリカ=フランス 監督:デヴィッド・リンチ 脚本:バリー・ギフォード、デヴィッド・リンチ
CAST:ビル・プルマン、パトリシア・アークエット、バルサザール・ゲティ、ロバート・ロッジア、ジョヴァンニ・リビシ
●なんとなく気が病んでいる時は病んでる映画に惹かれるわけでもないだろうが、やはり思った通りのリンチ展開に頭がクラっと来た。ただ内容のシュールさは主人公のすべての妄想だと片づけたとして、シネスコを生かしきった画面造形と色彩感覚は今も鮮烈ではある。ファンやマニアより多くのフリークを集めたリンチの真骨頂を垣間見た。


プラトーン
2018.09.16 TOHOシネマズ海老名 スクリーン10 PLATOON
【74】1986年アメリカ 監督:オリバー・ストーン 脚本:オリバー・ストーン
CAST:チャーリー・シーン、トム・ベレンジャー、ウィレム・デフォー、フォレスト・ウィテカー、ジョニー・デップ
●明らかに映画が9.11以前の思想で作られている。ヘリの爆風で死体袋が捲れ上がる描写が衝撃的で、そこしか憶えていなかったし、虚構を排し、無名の俳優たちでひたすら戦場の地獄を見せた映画だといわれていたが、実にドラマに満ち溢れていて驚いた。今ではちょっとしたオールスター映画ではないか。31年の歳月とはこういうことなのか。
※1987年キネマ旬報ベストテン第2位


トップガン
2018.09.09 TOHOシネマズ海老名 スクリーン6 TOP GUN
【73】1986年アメリカ 監督:トニー・スコット 脚本:ジム・キャッシュ、ジャック・エップスJr.
CAST:トム・クルーズ、ケリー・マクギリス、ヴァル・キルマー、アンソニー・エドワーズ、メグ・ライアン、トム・スケリット
●元々好きな映画ではなかったし、むしろミュージッククリップのような映像と挿入曲が氾濫する典型的な80年代スタイルを毛嫌いしていたわけだが、30数年ぶりの再見でも相変わらず受け入れ難いものを感じつつ、これは大ヒットするわなと頷かざる得ないとも思った。マーヴェリックのF-14によるドッグファイトはひたすら退屈ではある。


ペンギン・ハイウェイ
2018.09.09 TOHOシネマズ海老名 スクリーン6
【72】2018年東宝 監督:石田祐康 脚本:上田誠
CAST:(声)北香那、蒼井優、釘宮理恵、潘めぐみ、福井美樹、能登麻美子、久野美咲、西島秀俊、竹中直人
●齢をとってユルくなる一方の涙線には困ったものだが、早熟少年・アオヤマ君が人との別れを通して成長するひと夏の物語を、ミットを動かすことなくストライクど真ん中で受け止めた。何故ペンギンなのか、“海”なのか、そもそもお姉さんはどこから来たのか、説明されないのが不思議と心地良く、原作未読の森見ワールドを大いに楽しんだ。


SUNNY 強い気持ち・強い愛
2018.09.02 イオンシネマ新百合ヶ丘 スクリーン4
【71】2018年東宝 監督:大根仁 脚本:大根仁
CAST:篠原涼子、広瀬すず、板谷由夏、渡辺直美、山本舞香、リリー・フランキー、小池栄子、ともさかりえ、池田エライザ
●ルーズソックスもT.Kサウンドもついこの間のことのようだが、世代によっては過ぎ去った遠い日の輝きとなるのか。いやツッコミどころ満載ではあるのだが、ベタを承知でドストレートに泣かせにかかる大根仁の意図にまんまと目頭を熱くしてしまった。元の韓国版は観ていないが、どんな客層も門外漢にしない許容の広さは特筆ものだろう。


検察側の罪人
2018.08.31 イオンシネマ新百合ヶ丘 スクリーン3
【70】2018年東宝 監督:原田眞人 脚本:原田眞人
CAST:木村拓哉、二宮和也、吉高由里子、松重豊、大倉孝二、矢島健一、音尾琢真、酒向芳、平岳大、八嶋智人、山崎努
●あまり芳しくないとのレヴューもあったが、クソ面白かった。キムタクとニノの共演云々より脚本・演出の原田眞人の迫力あるセリフの応酬にスピーディな展開、そしてキレッキレの編集。確かに2時間に様々なエピソードを詰め混んだ拙速感がないわけではなかったが、それは最上が重層的なストレスの中でもがく姿そのもののではなかったか。


グリース
2018.08.26 TOHOシネマズららぽーと横浜 PREMIER GREASE
【69】1992年アメリカ 監督:ミック・ジャクソン 脚本:ブロント・ウッダード、アラン・カー
CAST:ジョン・トラボルタ、オリビア・ニュートン・ジョン、ストッカード・チャニング、ジェフ・コナウェイ、ディディ・コン
●パッとしない高校生活を終えた年、アメリカのハイスクールを羨望の眼差しで観ていたが、多分、酒、煙草つきの学園主催のダンパがあったとしてもそこに飛び込むような高校生ではなかった。それにしてもユルい、トラボルタもオリビアもここまで脳天気なキャラだったか?フランキー・ヴァリの主題歌にはつーんとする懐かしさがあったが。


ボディガード
2018.08.25 TOHOシネマズ海老名 スクリーン8 THE BODYGUARD
【68】1992年アメリカ 監督:ミック・ジャクソン 脚本:ローレンス・カスダン
CAST:ケビン・コスナー、ホイットニー・ヒューストン、ゲイリー・ケンプ、ビル・コッブス、トーマス・アラナ
●公開時、会社の後輩が「I Will Always Love You」だけの映画といっていたが、確かにサスペンスとしてもラブロマンスとしても首を傾げることが多かった。絶頂時のケビコスとホイットニーの共演というフレーズも四半世紀前のトピックだったということか。厳しい見方かも知れないが、未見のヒット作を劇場クリア出来たので良しとしたい。


カメラを止めるな!
2018.08.24 T・ジョイ PRINCE品川 シアター6 ONE CUT OF THE DEAD
【67】2018年ENBUゼミナール=アスミックエース 監督:上田慎一郎 脚本:上田慎一郎
CAST:秋山ゆずき、長屋和彰、濱津隆之、しゅはまはるみ、真魚、細井守、山﨑俊太郎、市原洋、大沢真一郎、竹原芳子
●全国配給に伴いアスミックのマークがつき、場末の上映館からシネコンスクリーンに拡大。しかし「カメ止め」は「カメ止め」だ。インディーズもメジャーもない。完全にツボにハマってしまい、ツレを伴ってこの映画を観るのは本当にヤバいことが判明。クライマックスで涙腺が決壊し、上映後に熱く語ろうにも涙が溢れてどうしようもない。


ミッション:インポッシブル/フォールアウト
2018.08.18 TOHOシネマズ海老名 スクリーン9 MISSION:IMPOSSIBLE- FALLOUT
【66】2018年アメリカ 監督:クリストファー・マッカリー 脚本:クリストファー・マッカリー
CAST:トム・クルーズ、ヘンリー・カヴィル、ヴィング・レイムス、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン
●ビルを飛び越え、車にバイクにスカイダイブにヘリチェイス。56歳トム・クルーズの「お前は馬鹿か?」といいたくなる決死のスタントには「ありがとう」と惜しみない拍手を送らせてもらうが、147分間のこれでもかと畳みかけるアクションのつるべ打ちと、その間に誰が敵で誰が味方なのかを見極めるのはあまりにしんどい。情けないが・・・。


菊とギロチン
2018.08.15 テアトル新宿
【65】2018年スタンスカンパニー=国映 監督:瀬々敬久 脚本:相澤虎之助、瀬々敬久
CAST:木竜麻生、韓英恵、東出昌大、寛一郎、嘉門洋子、前原麻希、仁科あい、大西礼芳、小木戸利光、渋川清彦
●名前は十数年も前から聞いていた瀬々敬久をようやく観る。3時間越えの力作であったが、大正時代、女相撲とアナーキズムを織り交ぜて見せた生き様は、娼婦に堕ちながらしたたかに生きる朝鮮人女力士の十勝川を誰も超えられていない。画面作りに今村昌平と神代辰巳を想起させるのは瀬々が私と同学年だからか。それでは既視感の範疇だ。


ちはやふる -結 び-
2018.08.11 新文芸坐
【64】2018年日テレ=講談社=東宝 監督:小泉徳宏 脚本:小泉徳宏
CAST:広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、優希美青、佐野勇斗、清原果耶、松岡茉優、賀来賢人
●2年が経ち、前作の上下篇をたっぷり時間をかけて再検証した脚本演出の小泉徳宏の仕事は見逃せない。そして登場人物たちと若いキャストたちの成長物語がシームレスにシンクロし、何度か目頭が熱くなる。完結編として最上の青春映画に仕上がったのではないか。エンディングの拍手は「お前らー、よくガンバッタ!」という賞賛だ。


ちはやふる -下の句-
2018.08.11 新文芸坐
【63】2016年日テレ=講談社=東宝 監督:小泉徳宏 脚本:小泉徳宏
CAST:広瀬すず、野村周平、真剣佑、松岡茉優、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、清水尋也、松田美由紀、國村隼
●テンションを敢えて抑えたような展開と、これまた少女コミック特有のクサミで疾走感は失速する。「みんなで戦う、ひとりじゃない」の押しつけも気になった。しかしその間隙を縫うように“孤高のクイーン”が持って行ってしまう。もう松岡茉優が痛快すぎる後篇。おかげで下の句も「お前らー、ガンバレ~!」の部活映画に無事、帰結した。


ちはやふる -上の句-
2018.08.11 新文芸坐
【62】2016年日テレ=講談社=東宝 監督:小泉徳宏 脚本:小泉徳宏
CAST:広瀬すず、野村周平、真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、清水尋也、津嘉山正種、松田美由紀、國村隼
●個人的にこの機会を待っていた三部作一挙上映。原作はまったく読んでいないが、広瀬すずの突進力に、少女コミック特有のケレンが見事シンクロ。さらに競技かるたをきっちりと描くことで「お前らー、ガンバレ~!」と思わず応援したくなるティーン部活ムービーとしてジャンル映画史上、最上の世界観を生み出したのではないか。


レディ・バード
2018.08.03 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 Lady Bird
【61】2017年アメリカ 監督:グレタ・ガーウィグ 脚本:グレタ・ガーウィグ
CAST:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、トレイシー・レッツ、ルーカス・ヘッジズ、ティモシー・シャラメ
●故郷=母親の呪縛は強力だ。しかしクリスティン、君の背中には翼があるのだ。と飛べなかったオヤジは悶々と彼女を応援しながら、終始クスクス笑いが止まらず、この旅立ちの物語に共感し、少し嫉妬しながらも、最後は目頭を熱くさせられてしまうのだ。老いも若きも性別も越え、43年の時空を超え海も越えた『祭りの準備』がここにある。


カメラを止めるな!
2018.07.31 池袋シネマ・ロサ ONE CUT OF THE DEAD
【60】2018年ENBUゼミナール 監督:上田慎一郎 脚本:上田慎一郎
CAST:濱津隆之、秋山ゆずき、しゅはまはるみ、真魚、長屋和彰、浅森咲希奈、合田純奈、市原洋、大沢真一郎、竹原芳子
●初見から3週間。“感染”などと些かチープな表現で今夏全国100館以上に拡がる奇跡。そう、あらゆる奇跡が小さな映画に起こっている。その奇跡を丸ごとドキュメンタリックに体感することこそが醍醐味であり、もはやネタバレだとか伏線回収だとかメタ構造だとかはどうでもいい。一枚の写真に向かって「突破」した男の笑顔に涙すべし。


ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アイディオス
2018.07.28 TOHOシネマズららぽーと横浜 PREMIER BUENA VISTA SOCIAL CLUB ADIOS
【59】2017年イギリス 監督:ルーシー・ウォーカー 脚本:(ドキュメンタリー)
CAST:オマーラ・ポルトゥオンド、イブライム・フェレール、コンパイ・セグンド、ファン・デ・マルコス、ルーベン・ゴンザレス
●あの感涙から18年。時代に翻弄され続けたBVSCの老ミュージシャンたちの死を伝えていく。胸も詰まったがどこか晴れがましい最後。「さようなら」より「アディオス」の響きがいい。コンパイもルーベンも幸福な哲学者の逝去とさえ思えたが、イブライムとオマーラのラブストーリーではないかと思えるほど濃密なデュオが忘れられない。


バトル・オブ・ザ・セクシーズ
2018.07.28 TOHOシネマズららぽーと横浜 PREMIER BATTLE OF THE SEXES
【58】2017年アメリカ 監督:ヴァレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン 脚本:サイモン・ボーフォイ
CAST:エマ・ストーン、スティーブ・カレル、アンドレア・ライズブロー、ビル・プルマン、エリザベス・シュー
●テニス界だけではなく、あの時代の男女同権運動やLGBTへの無理解を声高に主張するのではなく、根底に据えならがらキング夫人とボビーとの男女対決に至るスポーツ映画の昂揚感の中にそれらを描く。実に真っ当なエンターティメントだ。試合終了後に控室で流したビリーの涙は、主義主張より「勝利」の解放感にあふれていた。そこがいい。


未来のミライ
2018.07.21 TOHOシネマズ海老名 スクリーン3
【57】2018年スタジオ地図=東宝 監督:細田守 脚本:細田守
CAST:(声)上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司、福山雅治
●この度の細田守にはまったく乗れなかった。くんちゃんが全編ダダこねるのに閉口し、腹が立ってイライラし通しだったのは、上白石萌歌の下手糞で不快なアフレコと相俟って、改めて人の親にはなれないことを思い知らされた。成長物語としても家族のサーガとしても設定が突飛だし、そもそも4歳児に特異な成長物語が必要なのか?


ファントム・スレッド
2018.07.18 新宿武蔵野館 スクリーン3 Phantom Thread
【56】2017年アメリカ 監督:ポール・トーマス・アンダーソン 脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
CAST:ダニエル・デイ=ルイス、ヴィッキー・クリープス、レスリー・マンヴィル、カミラ・ザフォード、ジーナ・マッキー
●豪奢な装飾を纏い、雰囲気で酔わせる映画だ。しかし物語はどこに着地していくのだろうとやや緊張していたら、予想だにしなったラストとなる。しかし考えてみれば通俗的な話であり、それ故に不変的な男女の愛の帰結ともいえる。寝不足で覚悟のレイトも、D・D=ルイスの演技で130分を一気に観させられ、やや癪に障る気もするが。


女と男の観覧車
2018.07.13 新宿ピカデリー シアター10 WONDER WHEEL
【55】2017年アメリカ 監督:ウディ・アレン 脚本:ウディ・アレン
CAST:ケイト・ウィスレット、ジム・ベルーシ、ジュノー・テンプル、ジャスティン・ティンバーレイク、ジャック・ゴア
●「これもまた人生」と綴るウディの諦観。観覧車の縦回転も木馬の横回転もどちらも堂々巡りの人生模様だろうか。しかし軽い皮肉劇では収まらない激しさも垣間見せる。巨匠ストラーロの撮る美しい映像と対象となるジニーの独善と焦燥が、軽やかに登場する青年の語り部さえままならぬ泥沼の中で黙らせてしまう。でも恋の映画だった。


カメラを止めるな!
2018.07.10 池袋シネマ・ロサ ONE CUT OF THE DEAD
【54】2018年ENBUゼミナール 監督:上田慎一郎 脚本:上田慎一郎
CAST:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、山﨑俊太郎、大沢真一郎、竹原芳子、吉田美紀
●大傑作!拍手喝采の内に劇場を出るなんていつ以来のことだろう。観ている最中からもう一度観たいとの思いが湧く。こんな辺境の映画評でさえネタばらしはならぬと芽生える使命感はなんだろう?無名と無茶を信条とするインディーズ映画だが、19歳の冬、大学落ちたら映画学校にでも行こうと考えていたあの頃の自分が疼いて仕方がない。


ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
2018.07.08 イオンシネマ新百合ヶ丘 スクリーン3 SOLO: A STAR WARS STORY
【53】2018年アメリカ 監督:ロン・ハワード 脚本:ジョナサン・カスダン、ローレンス・カスダン
CAST:オールデン・エアエンライク、ウディ・ハレルソン、エミリア・クラーク、ドナルド・グローヴァー
●隣にチューバッカがいなければ、とてもソロとは思えないキャスティングに違和感を抱きつつ、本編前作の阿呆な展開や『ローグワン』の無理な自滅劇を思えばずっと良かった。ロン・ハワードの力かもしれないが、久々の冒険活劇であったことが嬉しく、前半の列車での活劇はシリーズ白眉の迫力だった。ただ『SW』の乱発は気になるところ。


パンク侍、斬られて候
2018.07.08 イオンシネマ新百合ヶ丘 スクリーン6
【52】2018年東映 監督:石井岳龍 脚本:宮藤官九郎
CAST:綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏、村上淳、近藤公園、渋川清彦、國村隼、豊川悦司
●観終わった後の印象がいかにもクドカン的というか、クドカンが台本を書き下ろした新感線みたいというか。しかし原作が町田康となればやはり往年の石井岳龍の世界なのだろうとも思った。確かに学生時代『爆裂都市』を観終わったときもこんな印象だったか。それほどパンクでもなかったのは監督が大人になってしまったからか。


バーフバリ 王の凱旋 ー完全版ー[オリジナルテルグ語版]
2018.06.27 新宿ピカデリー シアター2 baahubali2: THE CONCLUSION
【51】2017年インド 監督:S・S・ラージャマウリ 脚本:S・S・ラージャマウリ
CAST:プラバース、ラーナー・ダッグバーティ、アヌシュカ・シェッティ、タマンナー・バティア、ラムヤ・クリシュナ
●なんだろう、この有無を言わさず“あがる”感じは。167分、終電に遅れまいと新宿駅へ急ぎながら、またしても昂揚しっ放しだった。バーフバリやカッタッパばかりではなくバラーラデーヴァ、デーヴァセーナ、シヴァガミが織りなすドラマがひとつの巨大な塊となって我々を押し潰していく。もう異質で稀有な映画体験としか言いようがない。


恋は雨上がりのように
2018.06.25 TOHOシネマズ新宿 スクリーン6
【50】2018年東宝=AOI Pro 監督:永井聡 脚本:坂口理子
CAST:小松菜奈、大泉洋、清野菜名、磯村勇斗、葉山奨之、松本穂香、山本舞香、濱田マリ、戸次重幸、吉田羊
●17歳女子高生と45歳中年の恋物語。ここはひとつ惚れられる大泉洋に肩入れして、小松菜奈と恋愛を謳歌してやるとキモく企むのだが、45歳はひと回りも下じゃねぇの、と、あっさり我に返る。ただ女子高生相手に精一杯抑制しつつ、青春への回顧が痒みから痛みに変わっていく中年男の、ほんの数センチの成長物語として楽しめなくもない。


椿三十郎
2018.06.23 TOHOシネマズ海老名 スクリーン10
【49】1962年東宝=黒沢プロ 監督:黒澤明 脚本:菊島隆三、小国英雄、黒澤明
CAST:三船敏郎、仲代達矢、加山雄三、小林桂樹、田中邦衛、平田昭彦、入江たか子、団令子、志村喬、伊藤雄之助
●長年テレビ観賞に甘んじていたが、黒澤全30作中ようやく劇場で観る21本目の待望作。4Kデジタルともなると椿の花が落ちる音まで拾うのかと驚くものの、改めて話が良く出来ていることに感銘。私の好みでは『用心棒』なのだが、ラストの三船の居合い斬りは再三のビデオ検証で手法は知っていても、4Kでさえ早すぎて見えなかった。
※1962年キネマ旬報ベストテン第5位


用心棒
2018.06.10 TOHOシネマズ海老名 スクリーン8
【48】1961年東宝=黒沢プロ 監督:黒澤明 脚本:菊島隆三、黒澤明
CAST:三船敏郎、仲代達矢、山田五十鈴、東野英治郎、加東大介、司葉子、河津清三郎、山茶花究、藤田進、志村喬
●今更ながらこんなに面白い映画だったか、と思った。三船と久世竜の創造した殺陣ばかりに目がいくが、名手・宮川一夫のシネスコを生かしきったカメラワーク、美術、物語構成、どれもこれも溜息が出るばかり。主演はもちろん、脇役、端役に至るまで最高の娯楽映画を作るのだと意気込んでいる。これぞ活動屋クロサワの粋というものか。
※1961年キネマ旬報ベストテン第2位


万引き家族
2018.06.03 イオンシネマ新百合ヶ丘 スクリーン8
【47】2018年フジテレビ=ギャガ=AOI Pro. 監督:是枝裕和 脚本:是枝裕和
CAST:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、城桧吏、佐々木みゆ、柄本明、池松壮亮、高良健吾、樹木希林
●傷の嘗め合いのようにも思えるし、随所に彼らの打算も見える。しかしそれも含め人が寄り添うということなのだろうか。70年代的重喜劇を思わせつつ、是枝はドキュメンタリストの凄味で不安定な空気感を維持し、随所に演技者たちの才能で作為を散りばめ、それを再構築する。多分、最高傑作か。・・・少女は最後に何を見つけたのだろう。


地獄の黙示録
2018.05.19 TOHOシネマズ日本橋 スクリーン6 Apocalypse Now
【46】1979年アメリカ 監督:フランシス・フォード・コッポラ 脚本:ジョン・ミリアス、フランシス・フォード・コッポラ
CAST:マーティン・シーン、マーロン・ブランド、ロバート・デュヴァル、デニス・ホッパー、フレデリック・フォレスト
●学生時代、前半100点後半0点という当時喧伝された評価そのままの印象だった。改めて後半も80点は行っているのではないか。そして前半は200点だと思った。いやそんな真っ二つに割れる映画ではないのだが、やはりギルゴア大佐のワルキューレの騎兵隊の狂気に、撮影現場が地獄だったこともわかる。決して好きな映画ではないが。
※1980年キネマ旬報ベストテン第3位


オール・ザット・ジャズ
2018.05.13 TOHOシネマズ海老名 スクリーン7 ALL THAT JAZZ
【45】1979年アメリカ 監督:ボプ・フォッシー 脚本:ロバート・アラン・アーサー、 ボブ・フォッシー
CAST:ロイ・シャイダー、ジェシカ・ラング、アン・ラインキング、エリザベート・フォルディ、リランド・パーマー
●大学生の時に観賞を見送ったのは、ショービジネスにさほど興味が湧かなかったからで、それでもTVスポットに映された尖った振付けの斬新さは目を惹いていた。フォッシーが死を予感したミュージカルも今の私よりも若かったのか。70年代を席巻したロイ・シャイダーの引き出しに驚きつつ、正直、今も面白く観られたわけではなかった。
※1980年キネマ旬報ベストテン第8位


孤狼の血
2018.05.12 イオンシネマ新百合ヶ丘 スクリーン8
【44】2018年東映 監督:白石和彌 脚本:池上純哉
CAST:役所広司、松坂桃李、真木よう子、江口洋介、滝藤賢一、田口トモロヲ、石橋蓮司、中村獅童、ピエール瀧
●往年の旧東映三角マークで始まり広島やくざの怒号が飛び交う。手持ちカメラの荒々しさも相俟って、なんだオヤジ接待映画かいな・・・と鼻白んでいたら、あるストーリーの急展開から一気に引き込まれた。原作が素晴らしいのかも知れないが、演出と脚本が上手かった。ラスト、偽ジッポーのシュパッという音は軟弱な邦画界への宣戦布告か。


バーフバリ 王の凱旋
2018.05.04 川崎チネチッタ CINE10 baahubali2: THE CONCLUSION
【43】2017年インド 監督:S・S・ラージャマウリ 脚本:S・S・ラージャマウリ
CAST:プラバース、ラーナー・ダッグバーティ、アヌシュカ・シェッティ、タマンナー・バティア、ラムヤ・クリシュナ
●決してハリウッドがエンターティメントの頂点ではなかったことを確信できた。もし20代の頃だったら、帰宅する最中にも「バーフバリ!バーフバリ!」と連呼していただろう、この齢になってそれはしないが、脳内ではずっとリフレインさせていた。民主主義からするとカーストは悪だろうが、しばらくは「王を称えよ!」と叫ぼうか。


バーフバリ 伝説誕生
2018.05.04 川崎チネチッタ CINE10 baahubali:THE BEGINNING
【42】2015年インド 監督:S・S・ラージャマウリ 脚本:S・S・ラージャマウリ
CAST:プラバース、ラーナー・ダッグバーティ、アヌシュカ・シェッティ、タマンナー・バティア、ラムヤ・クリシュナ
●救い出された赤ん坊が成長し、あり得ない滝登りを敢行し理想の女を射止める。以降、まったく自分の好みの対岸にあるアトラクションみたいな映像が夢のように過ぎていく。しかしアホみたいに面白い。もはや映画が面白さを本気で追求した結果がこうなったのだとしか言いようがなく、日増しに膨らんできた噂に間違いはなかった。


蜜のあわれ
2018.05.03-04 新文芸坐
【41】2016年ファントム・フィルム 監督:石井岳龍 脚本:港岳彦
CAST:二階堂ふみ、大杉漣、真木よう子、高良健吾、永瀬正敏、韓英恵、上田耕一、渋川清彦、岩井堂聖子
●石井岳龍が石井聰亙の改名だと知ったのはつい最近のこと。我々世代の悪ガキの代表も小娘に翻弄される小説家の老境を描くに至ったのかと感慨もあったが、金魚の化身を演じた二階堂ふみのチャームぶりがすべての肝で、大杉漣のなりふり構わぬ快演のアンサンブルを楽しむ映画か。オールナイト最終回で明け方の睡魔でチト眠かったが。


エクステ
2018.05.03-04 新文芸坐
【40】2007年東映 監督:園子温 脚本:園子温、安達正軌、真田真
CAST:栗山千明、大杉漣、佐藤めぐみ、つぐみ、町本絵里、佐藤未来、山本未來、田中哲司、光石研、田中要次
●ホラー映画に耐性のない身には、襲いかかる髪の毛に臓器売買の犠牲となる少女が挿入され、評判以上に怖かった。そしてこの時期の園子温の露悪趣味の振り切り方の半端なさに「そろそろ勘弁して」と思わずにはいられなかったが、ただ髪の毛フェチど変態男の大杉漣のやり過ぎ演技が恐怖場面を笑いで相殺してしまったのは否めない。


ポストマン・ブルース
2018.05.03-04 新文芸坐
【39】1997年日活 監督:SABU 脚本:SABU
CAST:堤真一、大杉漣、遠山景織子、堀部圭亮、清水宏、寺島進、田口トモロヲ、麿赤兒、近藤敦、DIAMOND☆YUKAI
●そういえば90年代の日本映画にサブのムーブメントがあったなとビデオ屋時代を思い出していた。正直、シチェーションコメディとしてもスラップスティックとしても中途半端に思えた。今夜の主役たる大杉漣の殺し屋は惚れ惚れするほど恰好良かったが、主人公の郵便配達人が予め犯罪者ではストーリーそのものに共感できず笑えなかった。


ソナチネ
2018.05.03-04 新文芸坐
【38】1993年松竹=バンダイ=オフィス北野 監督:北野武 脚本:北野武
CAST:ビートたけし、大杉漣、国舞亜矢、寺島進、勝村政信、渡辺哲、森下能幸、北村晃一、津田寛治、木下ほうか
●『アウトレイジ』で既成のやくざ映画との差異に驚いた我が身を嘲笑いたくなった『ソナチネ』初観賞。青い空に白い砂浜、投げやりでぶっきらぼうに暇を弄ぶやくざたち。そして愛想がない故に感情移入の余地を挟ませない衝動的な殺戮。これが北野クオリティか。バイオレンスの革命は四半世紀の昔に既に狼煙が上がっていたわけか。
※1993年キネマ旬報ベストテン第4位


ベルリン・シンドローム
2018.04.22 イオンシネマ港北ニュータウン スクリーン10 BERLIN SYNDROME
【37】2018年オーストラリア 監督:ケイト・ショートランド 脚本:ショーン・グラント
CAST:テリーサ・パーマー、マックス・リーメルト、マティアス・ハビッヒ、エマ・ディング、クリストフ・フランケン
●女性旅行者を狙った監禁犯罪。しかし監禁する側のドイツ人に視点を映すと、監禁したオージー娘の逆襲がストレスにならないものかと思った。湿気を伴う緊張感は続くが、それが決定的な衝撃性に転化されないまま、むしろその緊張感が次第に日常化していく。それはそれで気持ち悪いのだが、どちら側にも感情移入が出来ないのは辛い。


タイタニック
2018.04.21 TOHOシネマズららぽーと横浜 PREMIER TITANIC
【36】2018年アメリカ 監督:ジェームズ・キャメロン 脚本:ジェームズ・キャメロン、ジョン・ランドー
CAST:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、ビリー・ゼーン、キャシー・ベイツ、ビル・パクストン
●もう21年前の映画になったのかとディカプリオの若々しさに感嘆しつつ、194分の長尺でもケツが痛くならない面白さに驚嘆。そう、今観てもこの映画は感嘆と驚嘆に満ちた記念碑的な映画だ。誰もが知る結末に向かいながら誰もの想像を超えるストーリーとスペクタクル。そして再見した誰もが各々の21年分の記憶を回想せずにはいられない。
※1998年キネマ旬報ベストテン第4位


生きものの記録
2018.04.17 国立映画アーカイブ 長瀬記念ホールOZU
【35】1955年東宝 監督:黒澤明 脚本:橋本忍、小国英雄、黒澤明
CAST:三船敏郎、志村喬、千秋実、清水将夫、三好栄子、青山京子、千石規子、上田吉二郎、東野英治郎、藤原釜足
●もし原田という裁判調停人が喜一老への思いを吐露しなければ、我々も家族が見舞われる不条理に同調していたかもしれない。それでも喜一老を贔屓してしまうのは、彼の原水爆への恐怖に共鳴したのではなく、孤立する老人への同情だったに過ぎないのか。それも含めて黒澤が突きつけた、我々日本人という生きものの記録なのだろう。
※1955年キネマ旬報ベストテン第4位


レッド・スパロー
2018.04.15 TOHOシネマズ海老名 スクリーン1 RED SPARROW
【34】2018年アメリカ 監督:フランシス・ローレンス 脚本:ジャスティン・ヘイス
CAST:ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ、シャーロット・ランプリング
●映画に入り込もうとするとき、物語のヒロインへの感情移入と現実の主演女優への賞賛を混同するのは評価の根本的な矛盾だ。しかしこれは間違いなくハニ―トラップの専門に訓練されたロシアの女スパイ、ドミニクの過酷な暗闘を通してジェニファー・ローレンスを堪能するための140分だった。そこに境界線を感じさせない凄さがある。


名探偵コナン/ゼロの執行人
2018.04.15 TOHOシネマズ海老名 スクリーン1
【33】2018年東宝=小学館=日テレ 監督:立川譲 脚本:櫻井武晴
CAST:(声)高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、古谷徹、上戸彩、博多大吉、茶風林、緒方賢一、大谷育江、林原めぐみ
●宙を舞う車でのダイブなどアクションのインフレ化は制御不能のレベルまで行ってしまったが、毎年春のお楽しみとしても、今回の出来こそシリーズでもトップクラスではないか。正義と真実は二律背反の関係にあるのかというテーマを、例によって大爆破クライマックスに邪魔されることなくしっかり描き切っている。いや~面白かった。


クソ野郎と美しき世界
2018.04.08 TOHOシネマズ海老名 スクリーン1
【32】2018年新しい地図=キノフィルムズ 監督・脚本:園子温、山内ケンジ、太田光、児玉裕一
CAST:稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾、浅野忠信、満島真之介、中島セナ、尾野真千子、馬場ふみか、健太郎、新井浩文
●最終話にすべてが帰結するオムニバスという方式ゆえ、各々のエピソードが完結を見ないまま終ってしまうのはいかがなものか。それが今の流行りなのだろうが、監督4人のカラーが相殺してしまったのは残念だった。ただ“クソ野郎”と自虐しながらNEXTに踏み出そうとする40代3人のメタ的決意表明は、まだ甘さはあるが意気は伝わったかな。


あゝ、荒野 後篇
2018.03.18 TOHOシネマズららぽーと横浜 スクリーン11
【31】2017年スターサンズ 監督:岸善幸 脚本:港岳彦、岸善幸
CAST:菅田将暉、ヤン・イクチュン、木下あかり、ユースケ・サンタマリア、モロ師岡、高橋和也、河井青葉、木村多江
●菅田将暉とヤン・イクチュンを始めとする演者たちの力量にあまりにも依存し過ぎではなかったか。前後篇合わせて5時間!かくも長尺の時間が必要だったのだろうか。とくに健二の父と自殺再生プログラムは蛇足。さらに新次たちのこれからに本当の荒野が待っているのだとすれば、何とも救われない風景が想像されるのも少々つらい気がした。
※2017年キネマ旬報ベストテン第3位


あゝ、荒野 前篇
2018.03.18 TOHOシネマズららぽーと横浜 スクリーン11
【30】2017年スターサンズ 監督:岸善幸 脚本:港岳彦、岸善幸
CAST:菅田将暉、ヤン・イクチュン、木下あかり、ユースケ・サンタマリア、モロ師岡、高橋和也、今野杏南、でんでん
●自分の居場所探しという極めて60~70年代的な寺山修司の原作に、東京オリンピック後の不穏な社会と震災の後遺症をぶち込んだ青春劇。行き場を失くした新宿新次とバリカン健二の二人がボクシングと出会い、殴り合うことで生を見つけていく物語は好きだし、何より本気で映画を作っている熱は十二分に伝わってくるのだが、(後篇に続く)
※2017年キネマ旬報ベストテン第3位


バクマン。
2018.03.17 TOHOシネマズららぽーと横浜 スクリーン11
【29】2015年製作委員会=東宝 監督:大根仁 脚本:大根仁
CAST:佐藤健、神木隆之介、小松菜奈、桐谷健太、新井浩文、宮藤官九郎、山田孝之、リリー・フランキー、染谷将太
●プロジェクションマッピングでの戦闘と、同業者との「友情、努力、勝利」にまつわるエピソード以外、文句なしだった。一番の成功は集英社「少年ジャンプ」を堂々と前面に出したことか。ここが架空の設定だとしたらここまでバディたる主人公たちが輝かなかった。エンディングのアイデアも含め、随所で大根仁の闊達な演出が光っている。


去年の冬、きみと別れ
2018.03.11 TOHOシネマズ海老名 スクリーン5
【28】2018年ワーナー 監督:瀧本智行 脚本:大石哲也
CAST:岩田剛典、斎藤工、山本美月、浅見れいな、土村芳、北村一輝、でんでん、円城寺あや、林泰文
●「純愛サスペンス」と謳っていたが「偏愛サスペンス」だ。序盤は編集と主役の演技のぎこちなさにイライラしていたが、中盤から展開の面白さと張りめぐらされた罠にすっかり乗せられてしまった。編集と演技下手すらミスリードの内だったとしたら完全に騙された。ただ意欲作なだけに、説明ゼリフでの種明かしは少々残念だった。


15時17分、パリ行き
2018.03.04 TOHOシネマズららぽーと横浜 スクリーン9 THE 15:17 TO PARIS
【27】2018年アメリカ 監督:クリント・イーストウッド 脚本:ドロシー・ブリスカル
CAST:スペンサー・ストーン、アンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、ジェナ・フィッシャー、ジュディ・グリア
●もうなんと表現したらいいのか。実話を追求し続けるイーストウッドが到達した境地がこんな映画を生み出したのか。「人はその時、前に踏み出せるか」というシンプルな問いの中で、普通の彼らが英雄譚を成し遂げたことに続き、ここまでの傑作を完成させてしまう。果敢な挑戦を止めない87歳の巨匠はもはや神の域に達してしまったか。


麦 秋
2018.03.04 TOHOシネマズららぽーと横浜 PREMIER
【26】1951年松竹 監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎
CAST:原節子、笠智衆、淡島千景、三宅邦子、菅井一郎、東山千栄子、杉村春子、二本柳寛、宮口精二、佐野周二
●3度目の観賞にして、今まで『麦秋』の何を観て来たのだろう。威厳を保たんとする長男。戦争から還らぬ次男に気を病む母。親友たちとガールズトークに花を咲かせる娘。わんぱく盛りの孫たち。しかし「家族にとって今が一番いい時かも知れんなぁ」と北鎌倉の踏切で無力感に耽る父親。散りゆく家族に託された小津の人生観なのだろうか。
※1951年キネマ旬報ベストテン第1位


シェイプ・オブ・ウォーター
2018.03.01 TOHOシネマズ海老名 スクリーン9 THE SHAPE OF WATER
【25】2017年アメリカ 監督:ギレルモ・デル・トロ 脚本:ギレルモ・デル・トロ、バネッサ・テイラー
CAST:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、オクタビア・スペンサー
●登場人物の殆んどがおバカという大変な映画で、寒色に彩られたダークな「アメリ」がウルトラQの1エピソードみないな話を展開すると思いきや、「おやおや、そこまでやるか」となって、窓の雨の滴で笑わせられて以降、これは愛とロマンのファンタジーではなく、グロとして楽しめる映画との結論に至った。※あくまで個人の感想です。


招かれざる客
2018.02.24 TOHOシネマズ海老名 スクリーン6 Guess Who's Coming to Dinner
【24】1967年アメリカ 監督:スタンリー・クレーマー 脚本:ウィリアム・ローズ
CAST:スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン、シドニー・ポワチエ、キャサリン・ホートン、セシル・ケラウェイ
●「午前十時の映画祭8」で意外にもベスト級によかった。白人と黒人の突然の結婚を双方の両親がどう受け止めるのかという社会性もさることながら、愛こそがすべてだとの決着はありきたりだが、オスカー俳優3人が舞台劇さながらの緊張感で一気に見せる。とくに撮影後に急死したスペンサー・トレイシーが絶品だった。


サニー/32
2018.02.17 イオンシネマ海老名 スクリーン2
【23】2018年製作委員会=日活 監督:白石和彌 脚本:高橋泉
CAST:北原里英、ピエール瀧、リリー・フランキー、門脇麦、駿河太郎、音尾琢真、蔵下穂波、カトウシンスケ、山崎銀之丞
●率直におバカな映画だったが、先読みがまったく不可能なためか最後まで楽しめた。ある意味、白石和彌としても前作みたいに原作に縛られず自由に撮ったのか。しかしダークなバイオレンスの連続で緊張させられる前半から、突然の後半の転調はあまりにも唐飛で、瀧とリリーは『凶悪』のボルテージよもう一度とはならなかった。


マンハント
2018.02.14 TOHOシネマズ海老名 スクリーン10 Man Hunt 追捕
【22】2018年中国 監督:ジョン・ウー 脚本:ニップ・ワンフン、ゴードン・チャン、ジェームズ・ユエン他
CAST:チャン・ハンユー、福山雅治、チー・ウェイ、ハ・ジウォン、國村隼、竹中直人、倉田保昭、池内博之、桜庭ななみ
●何度か「えー?」と苦笑する。荒っぽすぎる展開が、粗い編集で矢継ぎ早に繰り出されるダメ要素満載の映画だが、それを逐一指摘したところで何になる。ジョン・ウーが目当てなのだから、お約束の二挺拳銃、スローモーション、白鳩を「待ってました!」と楽しみ、桜の散る中、純白のドレスが血で染まるベタさを堪能しなければ損だ。


ブレードランナー 〈ファイナル・カット〉
2018.02.13 新文芸坐 BLADE RUNNER:THE FINAL CUT
【21】1982=2007年アメリカ 監督:リドリー・スコット 脚本:ハンプトン・ファンチャー、デヴィッド・ピープルズ
CAST:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、エドワード・ジェームズ・オルモス、ダリル・ハンナ
●「強力ワカモト」の看板の他は一場面も憶えていなかったが、35年前の初見をまざまざと思い出した。そう私はこの映画を見ながら襲ってくる睡魔と戦っていたのだ。そして今夜もまた何度も落ちそうになった。どうしようもない相性の悪さは如何ともし難く、この映画を語る資格のなさに改めて納得した。去年公開の続編の方がずっと好きだ。


マッドマックス/怒りのデス・ロード
2018.02.13 新文芸坐 MAD MAX:FURY ROAD
【20】2015年オーストラリア=アメリカ 監督:ジョージ・ミラー 脚本:G・ミラー、B・マッカーシー、N・ラサウリス
CAST:シャーリーズ・セロン、トム・ハーディ、ライリー・キーオ、ヒュー・キース・バーン、リチャード・カーター
●俄か“マッドマックス熱”に冒されつつある。もう断言したいのは、これは映画史に残るエポックメーキングだ。爆音と阿鼻叫喚の渦中においてさえこの静謐な美しさはなんだろう。フェリオサももちろん、イモータン・ジョー、イクタス、武器商人、人喰い男爵に至る悪役までもが愛おしい。そしてニュークスが最期に見せる凛とした潔さよ。
※2015年キネマ旬報ベストテン第1位


マッドマックス2
2018.02.11 新文芸坐 MADMAX2:THE ROAD WARRIR
【19】1981年オーストラリア 監督:ジョージ・ミラー 脚本:テリー・ヘイズ、ジョージ・ミラー、ブライアン・ハナント
CAST:メル・ギブソン、ブルース・スペンス、マイク・プレストン、ケル・ニルソン、ヴァーノン・ウェルズ
●一介の警察官だったマックスが伝説の英雄譚として語られる。学生時代に観た時、冒頭のナレーションからぶっ飛んだ。バイオレンス映画の革命であり、あらゆる世界観をこの映画は更新してしまったのだと思う。とにかく素晴らしいのは常に観客の心を揺さぶられるように作られていること。また『怒りのデス・ロード』が観たくなる。


マッドマックス
2018.02.11 新文芸坐 MADMAX
【18】1979年オーストラリア 監督:ジョージ・ミラー 脚本:ジェームズ・マッカウスランド、ジョージ・ミラー
CAST:メル・ギブソン、ジョアン・サミュエル、スティーヴ・ビズレー、ヒュー・キース・バーン、ジョフ・パリー
●まだ近未来の世界観が確立する以前の、牧歌的ですらある地平線まで続く豪州の一本道。製作費の殆んどを車の改造代に使い、低予算剥き出しでロケ中心の“ヌケ”の多い画面の中で炸裂する気違いじみたスピードとバイオレンス。あゝやっぱり学生時代に観たヤバさのままの映画だった。そしてリアルな狂気という点でこの第一作は本当に怖い。


ルイの9番目の人生
2018.02.09 ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター3 The 9th Life of Louis Drax
【17】2016年カナダ=イギリス 監督:アレクサンドル・アジャ 脚本:マックス・ミンゲラ
CAST:ジェイミー・ドーナン、サラ・ガドン、エイダン・ロングワース、オリバー・プラット、モリー・パーカー
●ルイ少年の人となりをナレーションに乗せて『アメリ』チックなユーモアで綴った冒頭から急転換して、映画はグロテスクな闇に落ちてゆく。子供が怖い映画は気色悪くて好きではないが、事件の真相を憑依して語らせるのはミステリーとしても釈然としない。なにもかもすべてダークファンタジーで片付けてしまう強引さも気になった。


ジュピターズ・ムーン
2018.02.09 ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター2 JUPITER HOLDJA
【16】2017年ハンガリー=ドイツ 監督:コーネル・ムンドルッツォ 脚本:カタ・ヴェーベル
CAST:メラーブ・ニニッゼ、ゾンボル・ヤェーゲル、ギェルギ・ツセルハルミ、モーニカ・バルシャイ
●空を飛ぶ少年のファンタジーと思いきや、本質はシリア難民の流入とテロリズムに混乱する東欧の現実を背景に、許されざる者たちの焦燥がヒリヒリと痛む強烈なドラマ。やがて神の真偽まで踏み込むのだが、特筆すべきは映像の迫真性で、ハンガリーはこんなものを創造するのかと驚く。今月観た2本のオスカー候補作よりもずっと凄かった。


デトロイト
2018.02.06 TOHOシネマズ海老名 スクリーン5 DETROIT
【15】2017年アメリカ 監督:キャスリン・ビグロー 脚本:マーク・ボール
CAST:ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、ジャック・レイナー、アンソニー・マッキー、アンジー・スミス
●治安維持のためという大義名分を権力が持ったときの「使命感の残虐性」になるほどなと思いつつ、根本にあるレイシズムの気色悪さにぞっとする。評判の40分間の尋問に名を借りた拷問は確かに緊張感はあったが、それよりも黒人たちが次第に暴動へと駆り立てられていく高揚感を活写した冒頭に、剛腕ビグロー女史の極限の凄味を見る。


アメリ
2018.02.06 イオンシネマつきみ野 スクリーン3 Le Fabuleux destin d'Amelie Poulain
【14】2001年フランス 監督:ジャン=ピエール・ジュネ 脚本:ジャン=ピエール・ジュネ、ギョーム・ローラン
CAST:オドレイ・トトゥ、マチュー・カソヴィッツ、セルジュ・メルラン、ドミニク・ピノン、イザベル・ナンティ
●去年15年ぶりに観て、改めてこの映画を素晴らしいと思い、もしや私のフェイバリット・ムービーになるのではないかと予感し、その確信を得るため再見した。23歳の妄想好きの女子の話を57歳のオッサンが愛してしまってもいいではないか。アメリだけではなくアパルトマンの住民、カフェ・ド・ムーランに集う人々の何たる愛くるしさよ。
※2001年キネマ旬報ベストテン第6位


羊の木
2018.02.05  TOHOシネマズ新宿 スクリーン4
【13】2018年アスミックエース 監督:吉田大八 脚本:香川まさひと
CAST:錦戸亮、木村文乃、北村一輝、優香、市川実日子、水澤紳吾、田中泯、安藤玉恵、深水三章、山口美也子、松田龍平
●じわじわ広がってゆく不穏な空気感も、『桐島、部活やめるってよ』の日常の学園生活が壊れていくヤバさと違い、あらかじめ特異なシュチュエーションが設定された分だけジャンル映画に陥ってしまったか。願わくは吉田大八にはオリジナルストーリーで勝負してもらいたい。もちろん一定の緊張感を持続させていく力量に疑いの余地はないが。


バクダッド・カフェ〈ニュー・ディレクターズ・カット版〉
2018.02.04 TOHOシネマズららぽーと横浜 PREMIER Out of Rosenheim/BAGDAD CAFE New directer's cut
【12】1987年西ドイツ 監督:パーシー・アドロン 脚本:パーシー・アドロン、エレオノーレ・アドロン
CAST:マリアンネ・ゼーゲブレヒト、CCH・パウンダー、ジャック・パランス、クリスティーネ・カウフマン、モニカ・カローン
●“Calling You”が耳から離れない何とも不思議な映画だが、ストレスフルな人々が、突然現れた「よそ者」によって明るく活気づく話は珍しくない。ある意味『シェーン』ではないか。ただアラン・ラッドがジャック・バランスを撃ち倒して去って行くのに対し、このヤスミンは見事ジャック・バランスのハートを撃ち抜いてカフェに留まる(笑)
※1989年キネマ旬報ベストテン第5位


ギルバート・グレイプ
2018.02.03  TOHOシネマズ海老名 スクリーン7 What's Eating Gilbert Grape
【11】1993年アメリカ 監督:ラッセ・ハルストレム 脚本:ピーター・ヘッジス
CAST:ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス、ダーレーン・ケイツ、ローラ・ハリントン
●束縛からの脱出は旅立ちばかりが手段ではないのか。エピソードだけ聞くと何ともどんよりする話も、ヨーロッパの監督とカメラマンが撮るとアメリカの閉塞した田舎町がこんな感じになるのかと感心した。それにしても凄かったのはデップとディカプリオ。稀代の性格俳優とどう見ても天才としか思えない若手俳優の共演で一気に見せる。
※1994年キネマ旬報ベストテン第5位


勝手にふるえてろ
2018.02.02 ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター2
【10】2018年製作委員会=ファントムフィルム 監督:大九明子 脚本:大九明子
CAST:松岡茉優、北村匠海、渡辺大知、石橋杏奈、趣里、前野朋哉、古舘寛治、池田鉄洋、稲川実代子、片桐はいり
●松岡茉優ショーだった。「はい、出た正直!」の台詞に声を上げて笑ってしまった。綿矢りさの原作は読んでいないが、意外にも映画初主演という彼女の女優魂が全編を支配することで、この話は映画で何倍も面白くなっていると勝手に推測。アングルもあるだろうが、場面場面で彼女の表情が別人に変容する様が大いに楽しめた117分だ。


スリー・ビルボード
2018.02.01 池袋シネ・リーブル2 THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI
【09】2017年アメリカ=イギリス 監督:マーティン・マクドナー 脚本:マーティン・マクドナー
CAST:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、アビー・コーニッシュ、ジョン・ホークス
●面白かった!まったく先読み不可能な中で、どこか牧歌的なアメリカ片田舎に棲息するネジの曲がったエキセントリックな人物たちの「そこまでやるか!」的な暴走。観る者はミルドレットを応援しながらも、その怒り、焦燥、苛立ちに呆れ果てながら、そこからこぼれ落ちるブラックなユーモアに次第に心が温まっている。なんたる映画だ。


不能犯
2018.02.01 池袋シネ・リーブル1
【08】2018年製作委員会=ショウゲート 監督:白石晃士 脚本:山岡潤平、白石晃士
CAST:松坂桃李、沢尻エリカ、新田真剣佑、間宮祥太朗、テット・ワダ、菅谷哲也、芦名星、矢田亜希子、安田顕、小林稔侍
●Vシネかよ?と思わせるスカスカのストーリーに「いつまで同じことやってるの、もういいよ」といいたくなるようなグダグダな展開。瞬間のホラー妙味にドキッとはさせるものの、説明的なセリフの多用に白けてしまう。いくら冷血な笑みを湛えても桃李クンは桃李クンでしかなく、沢尻エリカの熱血女刑事は柄ではなく不相応でしかない。


セッション
2018.01.28 イオンシネマつきみ野 スクリーン9 Whiplash
【07】2014年アメリカ 監督:デミアン・チャゼル 脚本:デミアン・チャゼル
CAST:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、ポール・ライザー、メリッサ・ブノワ、オースティン・ストウェル、ネイト・ラング
●皮膚が破れ、太鼓とシンバルに血と汗が滴り落ちてくる大迫力。いやはやJAZZの激しいセッションに否応なく持って行かれる。まさに格闘技。スポ根映画のレギュレーションで殆んど暴力的に疾走していくが、この格闘の結末はありがちなカタルシスに着地させず、オブセッションの境地へと行ってしまう。J・K・シモンズには参った。
※2015年キネマ旬報ベストテン第7位


嘘を愛する女
2018.01.28 イオンシネマつきみ野 スクリーン6
【06】2018年製作委員会=東宝 監督:中江和仁 脚本:中江和仁、近藤希実
CAST:長澤まさみ、高橋一生、吉田鋼太郎、DAIGO、川栄李奈、野波麻帆、初音映莉子、嶋田久作、奥貫薫、黒木瞳
●率直にいい映画だ。ポスターに原作者の名前がないだけで好感を抱く癖がついたものの、ミステリーかサスペンスものと決めつけていたので、この展開はないだろうと思えた場面が次々と裏切られ、描き方が浅くないか?という場面も後から巧みに回想で補っていく。そしてまさかのホロリとなる幕切れ。恋愛映画として完結したのも嬉しい。


マッドマックス/怒りのデス・ロード
2018.01.21 イオンシネマつきみ野 スクリーン9 MAD MAX:Fury Road
【05】2015年オーストラリア=アメリカ 監督:ジョージ・ミラー 脚本:G・ミラー、B・マッカーシー、N・ラサウリス
CAST:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース・バーン、ロージー・H=ホワイトリー
●初見では追う者と追われる者たちの旺盛なバイオレンスに圧倒され、私自身の破壊衝動の隆起を面白がっていたが、正直、どこか消化しきれていないもどかしさも感じていた。再見し、はっきりこの映画には「詩」があった。究極の破壊の末に辿りついた芸術性を抜きにこの映画の本質は語れないのだと確信する。改めて凄い作品だ。
※2015年キネマ旬報ベストテン第1位


アニー・ホール
2018.01.14 TOHOシネマズららぽーと横浜 PREMIER Annie Hall
【04】1977年アメリカ 監督:ウディ・アレン 脚本:ウディ・アレン
CAST:ウディ・アレン、ダイアン・キートン、トニー・ロバーツ、キャロル・ケイン、ポール・サイモン、シェリー・デュヴァルス
●高校生のときはどこが面白いのかさっぱり解らなかった。歳月の蓄積とウディ映画の蓄積でやはり名作に違いないと確信する。本人は否定しているが、やはりウディのD・キートンとの惜別を綴った個人映画だと思った方が、ラストのフラッシュバックの泣かせも含め圧倒的にコクが出る。そして改めてニューヨークLOVEなのだということも。
※1978年キネマ旬報ベストテン第10位


アラビアのロレンス 〈完全版〉
2018.01.07 国立近代美術館フィルムセンター 大ホール Lawrence of Arabia
【03】1962年イギリス 監督:デヴィッド・リーン 脚本:ロバート・ボルト
CAST:ピーター・オトゥール、オマー・シャリフ、アレック・ギネス、アンソニー・クイン、ジャック・ホーキンス
●金字塔ともいえる映画中の映画であることは変わらないが、8年ぶりに観てT・E・ロレンスをめぐる地獄が、壮大な歴史と広大な砂漠の中でずっとさまよい続けていたのに慄然とさせられた。ひたすらロレンスの内面を突き詰めていった結果、死ぬことでしか彼の魂の救済を得られなかったと巨匠は説く。本当の意味で唯一無二の映画だ。
※1963年キネマ旬報ベストテン第1位


ペーパー・ムーン
2018.01.03 TOHOシネマズららぽーと横浜 PREMIER PAPER MOON
【02】1973年アメリカ監督:ピーター・ボグダンヴィッチ 脚本:アルヴィン・サージェント
CAST:ライアン・オニール、テイタム・オニール、マデリーン・カーン、ジョン・ヒラーマン、P・J・ジョンソン
●あの頃「バディ・ムービー」なんて用語はなかったし「ロード・ムービー」も使われていたかどうか。これはどちらのジャンルでも最上の映画。ラストのモーゼとアディの往く道はもっと曲がりくねっていた記憶だったが、思ったより真っ直ぐだった。とてもいい映画なのだが、その後にテイタムが辿った道のりを思うと、ややほろ苦いか。
※1974年キネマ旬報ベストテン第5位


スター・ウォーズ/最後のジェダイ
2018.01.01 イオンシネマつきみ野 スクリーン9  STAR WARS: THE LAST JEDI
【01】2017年アメリカ 監督:ライアン・ジョンソン 脚本:ライアン・ジョンソン
CAST:デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、マーク・ハミル、ジョン・ボイエガ、キャリー・フィッシャー
●観る前からストーリーがグダグダという話ばかり入って困ったが、成程、ルーカスもズッコケたに違いない反乱軍のバカ丸出しの迷走ぶりはSW史でも前代未聞だろう。それでも私はカイロ・レンの成長物語(あえて)が、アダム・ドライバーの俳優としてのキャリアとシンクロしている様を楽しめた。ところでレイの親は誰なのだろう。



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