◆三行の映画評

 三行の映画評


エンドロールのつづき
2023.01.29 新宿ピカデリー:シアター4 छेलो शो CHHELLO SHOW [1200円/112分]
【20】2021年インド=フランス 監督:パン・ナリン 脚本:パン・ナリン
CAST:バヴィン・ラバリ、リチャー・ミーナー、バヴェーシュ・シュリマリ、ディペン・ラヴァル、ピーカス・バータ
●インド版『ニュー・シネマ・パラダイス』という趣向で、監督のフィルムへの郷愁で全篇作られたような映画だ。私の好きな“祭りの準備”感はトルナトーレよりこちらが鮮烈で、ラスト、家族や仲間に見送られ故郷を旅立つサマイが力強かった。そして彼が見たものはジャンクされたフィルムで作られたブレスレット。再生を叶えるのは喪失なのか。


キャバレー
2023.01.29 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 CABARET [1200円/124分]
【19】1972年アメリカ 監督:ボブ・フォッシー 脚本:ジェイ・アレン、ヒュー・ホイーラ
CAST:ライザ・ミネリ、マイケル・ヨーク、ジョエル・グレイ、ヘルムート・グリーム、フリッツ・ウェッパー、ヘレン・ヴィタ
●この享楽と退廃をライザ・ミネリが高らかに「人生はキャバレー!」と歌い上げるのだがアートと娯楽のいかがわしさを体現したジョエル・グレイの狂言回しが素晴らしかった。そして忍び寄るナチズム。ミュージカルの枠組で戦争をここまでアバンギャルドに描き切った作品を初めて観た。決して好きではないがボブ・フォッシーってやはり凄い。
※1972年キネマ旬報ベストテン第9位


イニシェリン島の精霊
2023.01.28 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン7 HE BANSHEES OF INISHERIN [無料/109分]
【18】2022年イギリス=アメリカ=アイルランド 監督:マーティン・マクドナー 脚本:マーティン・マクドナー
CAST:コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、ケリー・コンドン、バリー・コーガン、ゲイリー・ライドン
●対岸で内戦が激化する100年前のアイルランドを象徴したのかも知れないが、風光明媚な島の憎悪の表明も倫理観の方向も突拍子のない男同士の感情移入の枠外で繰り広げられる諍いに「何んだこの話?」と思い、今まで映画で味わったことのない「何んだ?」を推進力にハラハラしながら、妙な面白味にやられてしまう不思議な映画体験だった。


モリコーネ 映画が恋した音楽家
2023.01.22 イオンシネマ座間:スクリーン10 ENNIO [1100円/157分]
【17】2022年イタリア 監督:ジュゼッペ・トルナトーレ 脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
CAST:エンニオ・モリコーネ、クリント・イーストウッド、クエンティン・タランティーノ、ベルナルド・ベルトルッチ、ハンス・ジマー、ジョン・ウィリアムズ
●お前は何様だ!ってなもんだが、77人にも及ぶ映画人、音楽家たちから絶賛されるモリコーネが誇らしかった。なにせ50年間寄り添ってきた私の神だ。コンサートにも二度行った。いやそんなアピールは抜きに『荒野の用心棒』の垂涎のメイキングから若き日の苦悩、晩年の栄光と、稀代のマエストロを掘り下げたトルナトーレには絶賛しかない。


SHE SAIDシー・セッド その名を暴け
2023.01.21 109シネマズグランベリーパーク:シアター7 SHE SAID [1200円//129分]
【16】2022年アメリカ 監督:マリア・シュラーダー 脚本:レベッカ・レンキェヴィチ
CAST:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー
●#MeTooのムーブメントは知っていたが、取材と証言を積み上げ巨人ワインスタインを追い詰めたのが二人の主婦であったことに驚く。何より女同士であってもフェミニズムに落とし込まないのが素晴らしく、NYタイムズのリアルな雰囲気も実名主義もさすがだった。日本はいつまで“毎朝新聞”をやってくつもりなのかと暗澹たる気分にもなった。


暴走パニック 大激突
2023.01.17 新文芸坐 [無料/85分] ※再観賞
【15】1976年東映 監督:深作欣二 脚本:神波史男、田中陽造、深作欣二
CAST:渡瀬恒彦、杉本美樹、川谷拓三、室田日出男、小林稔侍、渡辺やよい、潮健児、風戸佑介、曽根晴美、三谷昇
●潮健児曰く「知恵の遅れた人たち」によるブチ切れっぷりに飽きれてもいいが白けず乗っていけるかが肝。ついでにスター監督にも関わらず東映に懐ろを抑えられていた深作のヤケクソぶりを川谷拓ボンの阿鼻叫喚と同列に笑えるかも重要だ。ただ今回は渡瀬と杉本の致し方ない関係をバックアップした津島利章の音楽がやけに心に沁みた。


資金源強奪
2023.01.17 新文芸坐 [無料/92分] ※再観賞
【14】1975年東映 監督:深作欣二 脚本:高田宏冶
CAST:北大路欣也、梅宮辰夫、太地喜和子、川谷拓三、室田日出男、名和宏、安倍徹、天津敏、渡辺やよい、林彰太郎
●深作演出が急展開の高田脚本を軽快なテンポで刻む津島サウンドに乗せてスピード感を加速させていく。70年代深作映画を面白がるための文脈が身に沁みついてさえいれば、とことん楽しめる映画。昔はそれを共有した客が大勢いて、最後は映画館の雰囲気で程良い軽みの映画に仕上げていく。そんな時代の末席に座っていたことの至福を思う。


ヘアー
2023.01.15 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン4 HAIR [1200円/121分]
【13】1979年アメリカ 監督:ミロシュ・フォアマン 脚本:マイケル・ウェラー
CAST:ジョン・サヴェージ、トリート・ウィリアムズ、ビヴァリー・ダンジェロ、アニー・ゴールデン、ドーシー・ライト
●オープニングは“AQUARIUS”、ラストが“Let the Sunshine In”。大好きなナンバーに挟まれたミュージカルはさぞ最高だろうと思いきや、すぐに彼らの独善に耐えられなくなる。M・フォアマンは「映画にするには遅すぎた、ノルタルジィには早過ぎた」というが、まるで体制側にもカウンター側にも違和感を覚える中途半端な私に似ている。


ひとり狼
2023.01.14 角川シネマ有楽町 [1200円/83分]
【12】1968年大映 監督:池広一夫 脚本:直居欽哉
CAST:市川雷蔵、長門勇、小川真由美、長谷川明男、岩崎加根子、小池朝雄、浜村純、内田朝雄、丹阿弥谷津子、伊達三郎
●雷蔵のイメージから徹底的なニヒリズムで押してくるのかと思いきや、長谷川伸的な因果話が軸となって少しアテを外したが、股旅映画として最高の出来だ。とくに追分の伊三蔵の人となりを孫八に語らせることで情緒を嚙み殺した渡世人の孤高が最大現に際立っている。ある展開からいきなり雪が降りしきる効果も大映京都の粋って奴なのか。


離ればなれになっても
2023.01.14 TOHOシネマズ シャンテ3 GLI ANNI PIÙ BELLI [1200円/135分]
【11】2020年イタリア 監督:ガブリエレ・ムッチーノ 脚本:ガブリエレ・ムッチーノ、パオロ・コステッラ
CAST:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ミカエラ・ラマッツォッティ、キム・ロッシ=スチュアート
●つくづく若い頃に仲間とつるんでバカやった者の勝ち。孤独老人にリーチを掛けたこちらは羨ましい限りだ。でもこの映画好きだな。イタリア人気質というかおしなべて女性陣の貞操観念のなさが4人の人生物語を彩っている。もっと後味をホロ苦くしても良かったのではと思いつつ、ジェンマのラストショットの表情に何ともいえぬ余韻がある。


神々の深き欲望 <4Kデジタル修復版>
2023.01.09 横浜シネマリン [1200円/175分]
【10】1968年日活 監督:今村昌平 脚本:今村昌平、長谷部慶治
CAST:三國連太郎、河原崎長一郎、沖山秀子、嵐寛寿郎、松井康子、北村和夫、加藤嘉、原泉、浜村純、小松方正、扇千景
●神話の国造りがきっと架空であるように今村昌平も架空の島の人間の生と性に挑む。架空の祭祀でも土着を渾身の熱量で追求すれば神話の域に到達するということか。4K映像の海と森の動物、昆虫の生態が鮮やかで、それ自体が神々しいのだが、上映後にゴジの爆笑トークがあり、撮影現場も生と性の土着に塗れ大変なことになっていたとは。
※1968年キネマ旬報ベストテン第1位


恋のいばら
2023.01.08 109シネマズグランベリーパーク:シアター5 [無料/98分]
【09】2023年パルコ=テレビ東京=ポニー 監督:城定秀夫 脚本:澤井香織、城定秀夫
CAST:松本穂香、玉城ティナ、渡邊圭祐、中島歩、北向珠夕、吉田ウーロン太、吉岡睦雄、不破万作、片岡礼子、白川和子
●オリジナルでこれだけの話を作ったのかと感心していたら韓国映画のリメイクと知って少し残念。しかし城定秀夫らしい力感で女同士の連帯劇を一気に見せて痛快だ。作風が適度に泥臭いのが私にはちょうどよく、興行界に猛攻を仕掛けている城定には伴走していきたい。それにしても玉城ティナ、前回は女子高生だったのに、、、役者ってすごい。


非常宣言
2023.01.07 イオンシネマ座間:スクリーン4 비상선언 [1100円/141分]
【08】2022年韓国 監督:ハン・ジェリム 脚本:ハン・ジェリム
CAST:ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン
●おそらく韓国エンタメに対しここまで面白くないと思ったのは初めてだ。ウィルスに襲われた旅客機パニックがつまらない筈はないし、まして二大スターの共演だ。最後の着陸サスペンスも中盤で派手なダッチロールがあってまるで効いていない。コロナ禍もないことになっていることも含め構成が下手過ぎる。それがあまりに冗長なのだ。


カンフースタントマン 龍虎武師
2023.01.07 イオンシネマ座間:スクリーン5 龍虎武師|KUNG FU STUNTMEN [1100円/92分]
【07】2022年香港=中国 監督:ウェイ・ジェンツー (ドキュメンタリー)
CAST:サモ・ハン、ユエン・ウーピン、ドニー・イェン、ユン・ワー、ブルース・リャン、ツイ・ハーク、ジェット・リー
●不勉強ゆえ香港二大スタジオが既に消滅しているを知り、サモ・ハンもジェット・リーも代役スタントを使っていたことを知る。戦場の武勇伝のように懐述するスタントマンたちのやられっぷりをそこまで気にしたことはなかったが、香港アクション全盛時代を支えていたのは間違いなく彼らだ。栄枯盛衰といってしまえばそれまでだが。


昭和残侠伝 唐獅子牡丹
2023.01.02 ラピュタ阿佐ヶ谷 [900円/89分]
【06】1967年東映 監督:佐伯清 脚本:山本英明、松本功
CAST:高倉健、池部良、三田佳子、津川雅彦、菅原謙二、河津清三郎、保積ペペ、花澤徳衛、田中春男、芦田伸介、山本麟一
●シリーズで唯一のビデオ観賞で劇場未見だった。『沓掛時次郎』と『冬の華』を2で割ったような因果話で、殴り込みにダイナマイトを放り投げたかと思えば石切り場の殺陣に迫力がないなど、そこそこに残念な作品である。それでも健サンと池部良の道行きは雪降りしきる中での相合傘が屈指の名場面となっているだけに惜しい一篇でもある。


男の紋章
2023.01.02 ラピュタ阿佐ヶ谷 [900円/96分]
【05】1963年日活 監督:松尾昭典 脚本:甲斐久尊
CAST:高橋英樹、石山健二郎、大坂志郎、和泉雅子、轟夕起子、近藤宏、名古屋章、小池朝雄、富田仲次郎、藤岡重慶
●私は途方もない歳月、高橋英樹の日活仁侠ものを亜流扱いしてきたが、今回の上映で日活が東映仁侠路線と変わらぬ歴史を持っていたことを知る。かつ、かなり面白かった。思えば高橋英樹は東映の居並ぶ大スターたちを向こうに回し一人で日活仁侠映画を支えてきたわけだ。比べるとコクの薄さは否めないがこれはこれでアリだと思った次第。


クレージーの無責任清水港
2023.01.02 ラピュタ阿佐ヶ谷 [900円/94分]
【04】1966年東宝=渡辺プロ 監督:坪島孝 脚本:小国英雄
CAST:植木等、谷啓、ハナ肇、団令子、平田昭彦、浜美枝、桜井センリ、安田伸、石橋エータロー、田崎潤、犬塚弘
●ナベプロ華やかりし頃の57年前の正月映画。今観ると植木等の追分三五郎のC調な強引さに辟易しなくもないが、脚本は小国英雄。黒澤明『生きる』から『乱』まで、100万で家一軒買えた時代に50万の脚本料をとっていた大脚本家がよくクレージーキャッツのキャラクターに寄り添ったホンを書いたものだと思うのは偏見と無知というものか。


座頭市血煙り街道
2023.01.02 ラピュタ阿佐ヶ谷 [900円/86分]
【03】1967年大映 監督:三隅研次 脚本:笠原良三
CAST:勝新太郎、近衛十四郎、高田美和、朝丘雪路、中尾ミエ、坪内ミキ子、磯村みどり、伊藤孝雄、小池朝雄、小沢栄太郎
●近衛十四郎と勝新の殺陣はYouTubeで何度も再生し、長らく本編の劇場観賞機会を待ちわびていた。ようやく念願叶って息を呑む果し合いを堪能。じりじりする間合いといい一瞬の殺気といい、座頭市と公儀隠密という役を離れて稀代の剣豪役者同士のプライドで斬り合う真剣勝負。もうこれ以上の本物は望めない筈。有難いのひと言だ。


マダムと女房
2023.01.02 ラピュタ阿佐ヶ谷 [900円/56分]
【02】1931年松竹 監督:五所平之助 脚本:北村小松
CAST:田中絹代、渡辺篤、伊達里子、井上雪子、小林十九二、関時男、月田一郎、横尾泥海男、日守新一、坂本武
●母の生まれ年に製作された古典的名作。その当時の風景を不思議な気分で観たが、東京の子は両親を「パパ」「ママ」と呼んでいることに驚く。日本初のトーキー映画として、周囲の音が喧しくて原稿が進まない文士の物語というのは思いつきやすいネタでも、そこに家族の絆や夫婦愛を織り込んでくるあたり、さすが名匠の手腕なのだろう。
※1931年キネマ旬報ベストテン第1位


アバター ウェイ・オブ・ウォーター
2023.01.01 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン11  AVATAR: THE WAY OF WATER [無料/192分]
【01】2022年アメリカ 監督:ジェームズ・キャメロン 脚本:リック・ジャファ、アマンダ・シルヴァー
CAST:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガーニー・ウィーバー、スティーブン・ラング、クリフ・カーティス
●キャメロンの意図とは別に二重眼鏡が没入感を削ぐ気がするので2Dで。テーマパークのアトラクションを体感するつもりはない。構図はインディアンと騎兵隊の西部劇フォーマット。森の戦闘では動体視力の衰えばかり感じてしまったが、やはり海の描写は驚きで、映像表現もここまで来たかとの感慨もあった。シガニーのキリが素晴らしい。



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