●2004年(平成16年)

三行の映画評


ミスティック・リバー
2004.01.11 ヴァージンシネマズ海老名 Mystic River
【01】2003年アメリカ 監督:クリント・イーストウッド 脚本:ブライアン・ヘルゲランド
CAST:ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコン、ローレンス・フィッシュバーン
●ある悲劇で疎遠になっていった男たち。25年ぶりの再会でそれぞれの思いがまた新たな悲劇を生み出していく。暗い闇の中にお互いが呼応してしまったのだろうか。憎しみそのものが誘われるように甦っていき、川の流れの底に沈殿していく。確かに後味は悪い。しかしイーストウッドはそんな後味でしか心の闇を描けないことを知っている。
※2004年キネマ旬報ベストテン第1位


ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
2004.02.21 ヴァージンシネマズ海老名 The Lord of the Rings:The Return of the King
【02】2003年アメリカ 監督:ピーター・ジャクソン 脚本:フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン、P・ジャクソン
CAST:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、リヴ・タイラー、ヴィゴ・モーテンセン、ケイト・ブランシェット
●3時間32分の上映時間ほどの長さは感じなかったが、第二作目の『二つの塔』が面白すぎたので、自分はチームより個人の冒険の方が嗜好に合っているのかも知れない。RPGでラストのエンディングを迎えたような達成感は、所詮映画では叶えられないのはわかっていたというオチか。この三部作を通してマップがまったく頭に入らなかった。
※2004年キネマ旬報ベストテン第5位


イノセンス
2004.03.27 ヴァージンシネマズ海老名
【03】2004年プロダクションI.G=電通他 監督:押井守 脚本:押井守
CAST:(声)大塚明夫、田中敦子、山寺宏一、大木民夫、仲野裕、榊原良子、武藤純美、竹中直人
●私の中での押井守は、延々と学園祭前日を描きながら友引高校を亀に乗せたあの作品であり、天才プログラマーの自殺から端を発した事件をイングラムとゼロ式の壮絶な戦闘で描いたあの作品である。『攻殻機動隊』を未見のままに本作を観たのはストーリーよりも、世界感の掌握という意味で無謀だったと言わざる得ないか。


キル・ビル VOL.2  ザ・ラブ・ストーリー
2004.05.04 TOHOシネマズ海老名 Kill Bill vol.2
【04】2004年アメリカ 監督:クエンティン・タランティーノ 脚本:クエンティン・タランティーノ
CAST:ユマ・サーマン、デイヴィッド・キャラダイン、マイケル・マドセン、ダリル・ハンナ、サミュエル・L・ジャクソン
●細切れに聞こえる音楽にニヤリとしながら、香港映画はゴールデンハーベスト止まりだった私には、ショーブラザースの領域に入り込むタランティーノと若干の距離を感じてしまった。だから面白さという点ではサブカル全開の前作には及ばなかったが、ここまで己の趣味を二部作で押し切って存在証明をやってのけた映画小僧には感服。


レディ・キラーズ
2004.05.23 TOHOシネマズ海老名 The Ladykillers
【05】2004年アメリカ 監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 脚本:ジョエル&イーサン・コーエン
CAST:トム・ハンクス、イルマ・ピー・ホール、マーロン・ウェイアンズ、J・K・シモンズ、ツィ・マ、ライアン・ハースト
●コーエン兄弟フリークではないが、どうもトム・ハンクスの「コーエン兄弟の映画で遊んだぜ」という自己満足が鼻について、自由自在で縦横無尽なコーエンワールドが楽しめなかった気がする。皮肉なエンディングはそれらしいが、本来ならB・ワイルダー調の笑わせも効いたと思うのだが、どこか映画全体がずれているのではないか。


ロスト・イン・トランスレーション
2004.05.28 新宿武蔵野館3 Lost in Translation
【06】2005年アスミックエース 監督:ソフィア・コッポラ 脚本:ソフィア・コッポラ
CAST:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン、ジョヴァンニ・リビシ、アンナ・ファリス、藤井隆、ダイアモンド・ユカイ
●喧騒と混沌のTokyo city。異文化に馴染めずに気分が疎外感と孤独間で彷徨していく主人公の心象は切ないが、しかしソフィア・コッポラの演出のリズムは心地よい。ラストシーンでボブとシャーロットは何を囁き合ったのか。彼らが集めた風のイメージはどうだったのか。こういう最後の回答よりも余韻を大切にする映画は決して嫌いではない。


ディ・アフター・トゥモロー
2004.05.29 TOHOシネマズ海老名 The Day After Tommorow
【07】2004年アメリカ 監督:ローランド・エメリッヒ 脚本:ローランド・エメリッヒ、ジェフリー・ナクマノフ
CAST:デニス・クエイド、ジェイク・ギレンホール、エミィ・ロッサム、セーラ・ウォード、イアン・ホルム、ペリー・キング
●こういう金をかけて脂肪過多となり、身動き取れないままどんどんドツボにはまっていく「超大作」は何年か一度の確率で出現する。そしてそれは往々にしてかつて大ヒット作をものにした監督の手によって起こる。その意味では典型的な失敗作ともいえるのだが、少なくともシナリオの段階でもうひと工夫する知恵が欲しかった。


スパイダーマン2
2004.07.03  TOHOシネマズ海老名 Million Dollar Baby
【08】2004年アメリカ 監督:サム・ライミ 脚本:アルヴィン・サージェント
CAST:トビー・マグワイア、キルスティン・ダンスト、ジェームズ・フランコ、アルフレット・モリーナ、ウィレム・デフォー
●「誰もが、ヒーローを愛してる。ヒーローが必要なの」。もう全編わくわくしながら手に汗握り、ときには吹き出しながら気分よく巻末のエンドロールを迎えた。巨費を投じたハリウッド超大作なのだが、どこかサブカル的なカルト感も漂わせている。全部を観ていないので何とも言えないが、もしかするとサム・ライミの最高傑作か。


スチームボーイ
2004.07.18 TOHOシネマズ海老名
【09】2004年バンダイ=電通=TBS他 監督:大友克洋 脚本:大友克洋、村井さだゆき
CAST:(声)鈴木杏、小西真奈美、津嘉山正種、中村嘉葎雄、児玉清、沢村一樹、斉藤暁、寺島進、稲田徹、相沢恵子
●『AKIRA』のアニメ版をまったく評価していなかったので、ようやく大友克洋が漫画家からアニメーターへと換骨堕胎を遂げたことを最大評価したい。そう我々が大友の登場に驚いたのはメカニズム細部への異常なこだわりだったはずだ。蒸気で駆動するアナログチックな機械の詳細な描写の中で少年の冒険ロマンを活写した。


ディープ・ブルー
2004.08.13 TOHOシネマズ海老名 Deep Blue
【10】2003年イギリス=ドイツ 監督:アラステア・フォザーギル、アンディ・バイヤット
CAST:マイケル・ガンボン(記録映画)
●製作7年、撮影4年半、ロケは200箇所以上。いつも英BBCのドキュメンタリーの本気度には驚かされているが、何せ地球の表面面積の7割を占めるという海。たまにはテレビではなくスクリーンでこういう映像を堪能するのも悪くない。例え、あまりの映像美に襲ってきたのはシャークではなく睡魔だったとしても(笑)。


スウィングガールズ
2004.09.18 TOHOシネマズ海老名
【11】2004年フジテレビ=アルタミラピクチャーズ=東宝 監督:矢口史靖 脚本:矢口史靖
CAST:上野樹里、平岡祐太、貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、豊島由佳梨、関根香菜、中村知世、西田尚美、竹中直人
●ストーリーの面白さもさることながらJAZZのビッグバンドを結成する女子高生たちを通じて、若い女優たちが楽器と対峙して苦悩する姿を描くある種のドキュメンタリーにもなっているが、そこからこぼれるユーモアこそが真骨頂だ。前作に続いて矢口史靖は「合宿映画」という新境地を日本映画にもたらしたのではないだろうか。
※2004年キネマ旬報ベストテン第7位


ハウルの動く城
2004.12.21 TOHOシネマズ海老名 King Kong
【12】2004年徳間書店=スタジオジブリ=日本テレビ=電通=ディズニー=東宝 監督:宮崎駿 脚本:宮崎駿
CAST:(声)木村拓哉、倍賞千恵子、美輪明宏、我修院達也、神木隆之介、伊崎充則、大泉洋、大塚明夫、原田大二郎
●もしかしたら『天空の城・ラピュタ』の手に汗握る少年の冒険ロマンの再現か?と期待したものの、宮崎駿自身が作ったフォーマットが自らを呪縛してしまっているのではないか。「こうでなくては宮崎アニメじゃない」と思いながら宮崎アニメなるものを試行する宮崎駿がいたのだとすると、それは閉塞感以外の何物でもない。


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