●2022年(令和4年)

 三行の映画評


悪なき殺人
2022.01.01 kino cinema横浜みなとみらい:シアター1 SEULES LES BÊTES [1200円/116分]
【01】2019年フランス=ドイツ 監督:ドミニク・モル 脚本:ドミニク・モル
CAST:ドゥニ・メノーシェ、ロール・カラミー、ダミアン・ボナール、ナディア・テレスキウィッツ、バスティアン・ブイヨン
●片田舎の殺人事件を当事者たちの視点を変えながら真相に辿り着く展開は珍しくはないが、「偶然」の重なりは神の目線からすれば必然なのだろう。なかなか面白く観たが、死体を遺棄するジョゼフの行動が作為的過ぎてパズルのピースとして不完全だったのが残念。題名は『悪なき殺人』だが、偶然を必然にしたのは悪意そのものだった。


レイジング・ファイア
2022.01.01 kino cinema横浜みなとみらい:シアター1 怒火 [1200円/126分]
【02】2021年香港=中国 監督:ベニー・チャン 脚本:ベニー・チャン
CAST:ドニ―・イェン、ニコラス・ツェー、チン・ラン、ロイ・リョンワイ、サイモン・ヤム
●原題が炎文字でドーンと出て、もうそこからアクション&バイオレンスの雨あられ。なにせ『怒火』だぜ、元旦からしっかり燃えさせてもらった。大晦日に観た韓国映画も合わせどんだけ死体が積みあがったか。このジャンルのアジア映画で日本の周回遅れは深刻の域まで達している。もっとも相手がドニ―・イェンでは勝負にならんだろうが。


スティール・レイン
2022.01.01 kino cinema横浜みなとみらい:シアター3 강철비2: 정상회담 [1200円/132分]
【03】2020年韓国 監督:ヤン・ウソク 脚本:ヤン・ウソク
CAST:チョン・ウソン、クァク・ドウォン、ユ・ヨンソク、アンガス・マクファーデン、白竜、シン・ジョングン、リュ・スヨン
●原潜の狭い一室に囚われた米大統領、韓国大統領に北朝鮮委員長。「ファック!」と罵倒し、挙句は喫煙と放屁合戦・・・って、コントか?それでもポリティカルアクションの体裁は維持し、「ハズレなし」の潜水艦アクションで盛り上げる。半島統一の夢と現実が交錯し、アメリカ、日本をチクリと非難する。旺盛なサービス精神は認めるが。


柳生一族の陰謀
2021.01.02 丸の内TOEI [1200円/130分] ※再観賞
【04】1978年東映=東映太秦映画村 監督:深作欣二 脚本:野上龍雄、松田寛夫、深作欣二
CAST:萬屋錦之介、千葉真一、松方弘樹、西郷輝彦、大原麗子、原田芳雄、成田三樹夫、真田広之、山田五十鈴、三船敏郎
●東映70周年で30年ぶりに東映本丸を訪れた。客は20人ほどだったが44年前の封切り初日は長蛇の列が劇場を3周した。実際『柳生一族の陰謀』は面白い。深作と錦之介の間で確執があったのは事実だろうし、批判が出やすい映画であることも承知だが、オールスターを捌き、錦之介の「夢じゃ夢でござりますー!」の大芝居まで一気に見せた。


長靴をはいた猫
2021.01.02 丸の内TOEI [1000円/80分]
【05】1969年東映動画=東映 監督:矢吹公郎 脚本:井上ひさし、山元護久
CAST:(声) 石川進、藤田淑子、水垣洋子、熊倉一雄、水森亜土、小池朝雄、益田喜頓、榊原るみ、愛川欽也、白石冬美
●子供の頃は実写の怪獣映画ばかりだったので「東映まんが祭り」を劇場で観るのは高校を卒業してからだった。これは50年以上前のシンボル的作品でも東映動画のクォリティの高さに今更ながら驚いた。クレジットに大塚康夫、宮崎駿の名前を見つけるが、クライマックスの魔王の城での大チェイスは今観てもアニメの粋に満ち満ちている。


ドント・ルック・アップ
2022.01.02 ヒューマントラストシネマ有楽町:シアター1 DON'T LOOK UP [1200円/145分]
【06】2021年アメリカ 監督:アダム・マッケイ 脚本:アダム・マッケイ
CAST:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ティモシー・シャラメ
●巨大彗星の激突で地球存亡の危機が訪れたとき人類はどうなってしまうのか。映画は皮肉を交えたブラックジョークを強調していたが、実際、突然そのような危機に見舞われた場合の日常生活はそんなものではないかと思った。とにかく見応え十分、オールスターに贅を尽くしたNETFLIX作品。本来これはどう考えても劇場で観るべき“映画”だ。


自由を我等に <4Kデジタルリマスター版>
2022.01.08 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 DON'T LOOK UP [1100円/84分]
【07】1931年フランス 監督:アントワーヌ・ヴィトキーヌ 脚本:ルネ・クレール
CAST:レイモン・コルディ、アンリ・マルシャン、ローラ・フランス、ポール・オリヴィエ、ジャック・シェリイ
●『モダンタイムズ』でチャップリンはオートメーション化による人間性の喪失を訴えたが、そのモチーフとなったルネ・クレールもやはり資本とカネに狂騒するドタバタを描きながらもっと洒脱に高らかに友情を謳いあげる。もう91年も前のトーキー初期の古典だけに人物は記号化されているが、群衆の動きの捌き方が巨匠たる所以だろう。
※1931年キネマ旬報ベストテン第1位


ダ・ヴィンチは誰に微笑む
2022.01.08 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 DON'T LOOK UP [1100円/100分]
【08】2021年フランス 監督:アダム・マッケイ 撮影:ザビエル・リーベルマン
CAST:(ドキュメンタリー)
●史上最高額510億円で落札されたダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」。そこまでカネと国家の威信が膨張するともはや絵画の芸術性やその真贋さえもどうでもよくなり、そこに群がる思惑だけが暴走していく。果てはルーブルの威信さえも魑魅魍魎の一部に思えてしまうのだが個人的には周囲の暴走より真贋論争を突き詰めて欲しかった。


スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
2022.01.08 イオンシネマ新百合ヶ丘:スクリーン1 SPIDER-MAN:NO WAY HOM [1100円/149分]
【09】2021年アメリカ 監督:ジョン・ワッツ 脚本:クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ
CAST:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ファヴロー、マリサ・トメイ、ウィレム・デフォー
●「平行世界」くらい便利な飛び道具はなく、歴代3人のスパイダーマンがいとも簡単に集結し、20年ぶりにトビー・マグワイヤとウィレム・デフォーが対峙する。ミステリオの顛末はわからないがMARVELの中でも一番馴染み深くサム・ライミの3部作を抑えていて助かった。今やアベンジャーズの一員となってもスパイダーマンの世界観は好きだ。


リラの門 <4Kデジタルリマスター版>
2022.01.08 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 PORTE DOS LILAS [1100円/145分]
【10】1957年フランス=イタリア 監督:ルネ・クレール 脚本:ルネ・クレール、ジャン・オーレル
CAST:ピエール・ブラッスール、ジョルジュ・ブラッサンス、アンリ・ヴィダル、ダニー・カレル、レイモン・ビュシェール
●子供たちのお遊びで銃撃事件を再現するテクニックに感服しつつ、主人公のあまりに無垢なお人好しぶりに苛々させられながらもパリ下町の人情喜劇の体裁の中にしっかりノワールサスペンスのテイストも残している。それにしても冷静に観れば悲惨な話でもギターの弾き語りが最高の“芸術家”ジュジュへの肯定がすべてを救っている。
※1957年キネマ旬報ベストテン第6位


巴里の屋根の下 <4Kデジタルリマスター版>
2022.01.09 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 SOUS LES TOITS DES PARIS [1100円/93分]
【11】1930年フランス 監督:ルネ・クレール 脚本:ルネ・クレール
CAST:アルベール・プレジャン、ポーラ・イレリー、ガストン・モド、エドモン・T・グレヴィル、ビル・ボケッツ
●ルネ・クレール初のトーキー作品ということで全編に歌声を響かせ、パリ下町の酒場の喧騒を拾い、各階層のアバルトマンをパンして屋根から人々を俯瞰する。思えば主人公アルベールは何ひとつも報われていないが、不思議と爽やかな余韻を残すのは屋根の上から眺めれば一人一人の人生なんてこんなものだという巨匠の達観か。
※1931年キネマ旬報ベストテン第2位


エッシャー通りの赤いポスト
2022.01.09 ユーロスペース [1200円/146分] ※再観賞
【12】2021年製作委員会=ガイエ 監督:園子温 脚本:園子温
CAST:藤丸千、黒河内りく、モーガン茉愛羅、山岡竜弘、上地由真、藤田朋子、田口主将、諏訪太朗、渡辺哲、吹越満
●一度観た印象のままの記憶でフタをしてしまうべきだったか(笑)。“小林監督心中クラブ”との追っかけっこは冗長。全員が主役といっても黒河内さんが頭一つ抜けていることを再確認。かつての満島ひかり、二階堂ふみのように園子温から羽ばたいて欲しい。ともに渋谷スクランプル交差点で絶叫した藤丸さんは鳥居みゆきになってしまった。


偶然と想像
2022.01.09 Binkamuraル・シネマ [1200円/101分] ※再観賞
【13】2021年NEOPA fictive= Incline LLP 監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介
CAST:古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉、大沢まりを、横田僚平、安倍萌生
●メインのル・シネマで再見。満席の場内が笑いに包まれるなど観客の熱量が心地良い。改めてカメラの前で演技することの本質に迫った濱口の視点が驚異的であり、それを成立させた俳優たちも凄い。三つの会話劇それぞれにエッジが効いており、演出の妙に何度も観ていられる。世界的評価の『ドライブ・マイ・カー』より圧倒的に支持する。
※2021年キネマ旬報ベストテン第3位


天使にラブ・ソングを
2022.01.10 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 SISTER ACT [1200円/100分]
【14】1993年アメリカ 監督:エミール・アルドリーノ 脚本:ジョゼフ・ハワード
CAST:ウーピー・ゴールドバーグ、マギー・スミス、ハーヴェイ・カイテル、キャシー・ナジミー、ウェンディ・マッケナ
●100分間をご都合主義で繋ぎながら一気に大団円まで持っていってしまう力技はいかにもレンタルビデオ全盛期のヒット作といった感じ。そうだった、みんなあの頃はウーピーが大好きだった。その好きに応えて歌って逃げて自由を叫ぶ彼女は確かに輝いている。配信に押され気味のハリウッド興行界も煌びやかだった。もう30年が経つのか・・・。


決戦は日曜日
2022.01.10 イオンシネマ海老名:スクリーン2 [無料/101分]
【15】2022年製作委員会=クロックワークス 監督:坂下雄一郎 脚本:坂下雄一郎
CAST:窪田正孝、宮沢りえ、赤楚衛二、内田慈、小市慢太郎、音尾琢真、たかお鷹、高瀬哲朗、今村俊一、小林勝也、原康義
●ポイント観賞で文句は言いたくないがつまらなかった。選挙戦はそれこそ映画ネタの宝庫なのだろうが、その有り余る素材を消化できずに羅列するのみで、決戦であるはずの日曜日にドラマを集約出来ないシナリオが致命的。「落選を目指す」という転換の飛躍も当選の想定の中で右往左往しているだけ。それなりに役者陣は頑張っていたけど。


マークスマン
2022.01.10 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 THE MARKSMAN [1100円/108分]
【16】2021年アメリカ 監督:ロバート・ロレンツ 脚本:ロバート・ロレンツ、クリス・チャールズ、ダニー・クラビッツ
CAST:リーアム・ニーソン、キャサリン・ウィニック、フアン・パブロ・ラバ、テレサ・ルイス、ジェイコブ・ペレス
●ジャンル映画好きとしてL・ニーソンの需要は意識しており、これは見逃せないと思ったが、イーストウッド最新作と同じような設定で予告編と絵面も似ており、しかもホテルのテレビで『奴らを高く吊るせ』が放映されているとなるともはやオマージュなのだろう。海兵隊の勲章に憧れるカルテルの首領のキャラクターは面白いが。


クライ・マッチョ
2022.01.15 109シネマズグランベリーパーク:シアター4 CRY MACHO [1200円/104分]
【17】2021年アメリカ 監督:クリント・イーストウッド 脚本:ニック・シェンク、N・リチャード・ナッシュ
CAST:クリント・イーストウッ、エドゥアルド・ミネット、ドワイト・ヨーカム、ナタリア・トラヴェン、フェルナンダ・ウレホラ
●正直、いつもよりリズムが悪く、編集もぎこちない気がしたが、キャリア集大成の枷をようやく解いた等身大の90歳として老いと弱さと晒しながら、マッチョな闘争心を雄鶏に仮託し、迷うことなく愛する女のもとに帰っていくイーストウッドに人生レベルの安堵を感じてしまった。そして中一からのファンも今日、またひとつ齢を重ねた。
※2022年キネマ旬報ベストテン第4位


シカゴ
2022.01.20 TOHOシネマズ池袋:スクリーン1 CHICAGO [1200円/113分] ※再観賞
【18】2002年アメリカ 監督:ロブ・マーシャル 脚本:ビル・コンドン
CAST:レニー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギア、ジョン・C・ライリー、ルーシー・リュー
●『ドリーム・ガールズ』との混同もあって内容は殆ど忘れていた。R・ギアの役はプロモーターだと思っていたら弁護士。ただC・Z=ジョーンズが圧倒的だったこととミュージカルシーンがステージで展開されることは憶えていた。殺人事件から始まる物語の大半が刑務所だったことに驚くも、ダイナミックなダンスを新鮮な心持ちで堪能出来た。
※2003年キネマ旬報ベストテン第8位


真夜中乙女戦争
2022.01.22 川崎チネチッタ:CINE4 [1200円/113分]
【19】2022年角川大映スタジオ=KADOKAWA 監督:二宮健 脚本:二宮健、小林達男
CAST:永瀬廉、池田エライザ、柄本佑、篠原悠伸、安藤彰則、山口まゆ、佐野晶哉、成河、渡辺真起子
●現状に不満を持つ大学生、既に富を得て満たされない二人が結社を作って東京を破壊する。ほぼ『ファイト・クラブ』じゃねぇかと思いつつ、この欺瞞を“乙女”と名付けるのは失礼すぎないか。まったく共感出来ないナレーションと擬音の乱発に辟易しつつ、悪相の柄本佑とお姉さんキャラのエライザが意外と魅力的。結局そういう感想しかない。


さがす
2022.01.22 川崎チネチッタ:CINE6 [1200円/123分]
【20】2022年アスミック・エース=DOKUSO映画館 監督:片山慎三 脚本:片山慎三、小寺和久、高田亮
CAST:佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也、森田望智、石井正太朗、松岡依都美、成嶋瞳子、内田春菊、品川徹
●“良い映画”を撮る必要がないことを『岬の兄妹』一発で確定させた片山慎三の「商業映画第一作」に期待した。確かに力作であるし衝撃作でもあるのだが、内容にミステリー要素を加味したことでエグ味よりエンタメに振れてしまい、上手くまとめた印象。もっととんでもない異物感が欲しかった。なにより佐藤二朗がメジャーになりすぎたか。
※2022年キネマ旬報ベストテン第9位


Codaコーダ あいのうた
2022.01.29 109シネマズグランベリーパーク:シアター7 CODA [1200円/112分]
【21】2021年アメリカ 監督:シアン・ヘダー 脚本:ニック・シェンク、N・リチャード・ナッシュ
CAST:エミリア・ジョーンズ、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、マーリー・マトリ、ダニエル・デュラント
●いやぁ泣けた、泣けた。安くて脆い涙腺が決壊した。この感動作に敢えて難癖をつけるならば、原版となった未見のブランス映画がこのハリウッドリメイクを超えていた場合のみだ。健気なヒロインの成長・成功物語の陰で聾唖の両親、兄たち家族全員の日常から人生観まで垣間見える中での手話による「青春の光と影」、早くも今年のベスト級。
※2022年キネマ旬報ベストテン第6位


ハウス・オブ・グッチ
2022.01.29 109シネマズグランベリーパーク:シアター5  HOUSE OF GUCCI [無料/159分]
【22】2021年アメリカ 監督:リドリー・スコット 脚本:ベッキー・ジョンストン、ロベルト・ベンティベーニャ
CAST:レディー・ガガ、アダム・ドライバー、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ、サルマ・ハエック
●編集の腕がいいのかも知れないが、84歳リドリー・スコットの瑞々しい演出は巨匠らしい重厚さよりもむしろリズミカルで軽快感すらあった。富豪一家の凋落と愛憎劇という鉄板の題材も歴史ではなく20数年前の内幕ものとして描き、それがGUCCIという巨大ブランドを伏字や仮名なしにロゴマークも商品もそのまま露出するのだから恐れ入る。


ノイズ
2022.01.30 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン1 [1100円/128分]
【23】2022年製作委員会=日テレ=ワーナー 監督:廣木隆一 脚本:片桐翔
CAST:藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介、黒木華、渡辺大知、永瀬正敏、酒向芳、余貴美子、鶴田真由子、柄本明
●話が島の閉鎖性の中で完結するのがいい。決して悪い映画ではない。ただ3人の幼馴染が殺人事件の当事者となる展開の辛さがオーソドックスに描かれ過ぎて面白味がないことと、テレビ局資本の悪癖で主役から脇まで有名俳優を揃えすぎて結局は演技合戦に終始してしまったのが残念。最後のオチも後味が悪く、もうひと捻り欲しかった。


前科者
2022.01.30 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン7 [1100円/133分]
【24】2022年WOWOW=日活 監督:岸善幸 脚本:岸善幸
CAST:有村架純、磯村勇斗、森田剛、若葉竜也、マキタスポーツ、石橋静河、北村有起哉、リリー・フランキー、木村多江
●NHKドラマのようになってしまったがBSだったか。ことほどさようにどこかテレビドラマ的な印象。いや出演者たちも劇場を意識して熱演で応えてはいるのだが、良質なドラマの枠内に収まってしまうのは保護司を主役としているからなのか。ひとつ前の廣木隆一といい、岸善幸といい、作家性がテレビの枠内から抜けられていないのは惜しい。


フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
2022.01.30 TOHOシネマズららぽーと横浜:シアター11 THE FRENCH DISPATCH OF THE LIBERTY、KANSAS EVENING SUN [1100円/120分]
【25】2021年アメリカ 監督:ウェス・アンダーソン 脚本:ウェス・アンダーソン
CAST:ベニチオ・デル・トロ、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン、レア・セドゥ、フランシス・マクドーマンド、ティモシー・シャラメ
●饒舌すぎる映像から洪水のように溢れ出る情報量に力が尽きてしまった。ウェス・アンダーソンなのだからこのくらいの覚悟はしておけってなものだが、何とか必死についていくことばかりを考えてしまう。とにかく観客以前にここまで自己完結されるともうお手上げか。ただ「恐れ入りました」と率直に降参出来る奇特な映像作家ではある。


麻希のいる世界
2022.02.04 新宿武蔵野館:スクリーン2 [1200円/89分]
【26】2022年シマフィルム 監督:塩田明彦 脚本:塩田明彦
CAST:新谷ゆづみ、日高麻鈴、窪塚愛流、鎌田らい樹、八木優希、大橋律、松浦祐也、青山倫子、井浦新
●死の影から逃れられない由希と性犯罪者の父を持つ麻希。八方塞がりの彼女たちに音楽が一筋の光明なのかと思い始めた先に待っ暗闇。物語は由希の麻希への絶望的な片思いとして呆気なく終幕する。ダークで切羽詰まった青春劇は嫌いではないが、刹那な人生に塩田明彦が斬り込めたかといえば表層を追うだけで、やや物足りなかった。


大怪獣のあとしまつ
2022.02.05 イオンシネマ座間:スクリーン3 [無料/116分]
【27】2022年東映=松竹 監督:三木聡 脚本:三木聡
CAST:山田涼介、土屋太鳳、濱田岳、ふせえり、六角精児、岩松了、オダギリジョー、嶋田久作、菊地凛子、西田敏行
●タイトル通りの内容。レビューを見ると悪評ふんぷんだが、最初から70点満点を目指していると思うとそれほど出来の悪い映画ではない。主人公たちは真面目に周辺はおバカにという設定の中で、くだらないコントも数打ちゃ当たるとばかり、個人的には何発かはまともに食らい吹き出す場面もあった。なにより敬礼で終わる後味は好きだ。


ゴーストバスターズ/アフターライフ
2022.02.05 イオンシネマ座間:スクリーン3  GHOSTBUSTERS:AFTERLIFE [1100円/124分]
【28】2021年アメリカ 監督:ジェイソン・ライトマン 脚本:ジェイソン・ライトマン、ギル・キーナン
CAST:マッケンナ・グレイス、ポール・ラッド、フィン・ウルフハード、キャリー・クーン、ダン・エイクロイド、ビル・マーレイ
●孫世代の俄か悪霊退治ジュブナイル・ファンタジーをボケ~と観ていていたら、最後に爺々となったダン・エイクロイドやビル・マーレイ、何と故ハロルド・ライミスまで揃い踏み、レイ・パーカーJrの主題歌の後にシガニー・ウィーバーまで登場してしまうとリアルタイム世代として強引に持ってかれた気分になる。たまには同窓会もいいかな。


ウエスト・サイド・ストーリー
2022.02.11 109シネマズグランベリーパーク:シアター1 WEST SIDE STORY [1200円/157分]
【29】2021年アメリカ 監督:スティーブン・スピルバーグ 脚本:トニー・クシュナー
CAST:アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デボーズ、デビィット・アルヴァレス、リタ・モレノ
●「この物語を“ロミオとジュリエット”から独立させる」とスピルバーグ。確かにユートピアを自ら失っていく若者たちの衝動は悲恋を超えて新鮮ではあった。やはりリタ・モレノのセリフにアニータがオーバーラップする場面が素敵すぎる。今度のアニータも良かった。マリアは歌声は綺麗だが顔の癖が強すぎてヒロインとしてはどうだったかな。
※2022年キネマ旬報ベストテン第8位


声もなく
2022.02.06 シネマート新宿:スクリーン2 소리도 없이 [1200円/99分]
【30】2020年韓国 監督:ホン・ウィジョン 脚本:ホン・ウィジョン
CAST:ユ・アイン、ユ・ジェミョン、ムン・スンア、イ・ガウン、イム・ガンソン、チョ・ハソク、スン・ヒョンベ、ユ・ソンジュ
●韓国の男性偏重問題はいくつかの映画で描かれているが、誘拐された女児に父親が身代金を出し渋るなんてことが本当にあるのだろうか。ただここで強烈なのは男女格差よりも社会格差そのもので、底辺で死体処理の仕事に澱む声を失った青年の致し方なさはどうだろう。そのうえでよくこんな物語を思いつくものだと心底驚いてしまった。


ギャング・オブ・アメリカ
2022.02.12 イオンシネマ座間:シアター7 LANSKY [無料/119分]
【31】2021年アメリカ 監督:エタン・ロッカウェイ 脚本:エタン・ロッカウェイ
CAST:ハーヴェイ・カイテル、サム・ワーシントン、ジョン・マガロ、アナソフィア・ロブ、デヴィッド・J・エリオット
●なにを勘違いしたか不明だが、先日H・カイテルが亡くなったと思い込んでいたものだから不遜にも追悼の眼差しで彼のランスキーを観ていた。しかしそんなことを抜きにしてもカイテルは作劇の全体のゆるさを補填するだけの重みを映画にもたらしていた。ただ作家のFBIとの絡みやランスキーと家族愛を共有する描写は致命的に軽すぎて残念。


ちょっと思い出しただけ
2022.02.12 イオンシネマ座間:スクリーン6 [1100円/115分]
【32】2022年東京テアトル 監督:松居大悟 脚本:松居大悟
CAST:池松壮亮、伊藤沙莉、永瀬正敏、河合優実、屋敷裕政、國村隼、成田凌、尾崎世界観、高岡早紀、大関れいか
●こういうストーリーは主人公たちを離れ、自分自身の恋愛歴にはまり込んでいくので本当に困る。同じ日付けを表示するパネル時計、猫、観葉植物、お地蔵さん、妻を待つ男からコロナのマスク。羅列しただけで目頭が熱くなる。どうして俺は…じゃなくて、、どうして映画の二人は別れてしまったのだろう。つくづく「時間」こそドラマだ。


フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
2022.02.19 109シネマズ湘南:シアター3 THE FRENCH DISPATCH OF THE LIBERTY、KANSAS EVENING SUN [1200円/120分] ※再観賞
【33】2021年アメリカ 監督:ウェス・アンダーソン 脚本:ウェス・アンダーソン
CAST:ビル・マーレイ、オーエン・ウィルソン、エドワード・ノートン、シアーシャ・ローナン、アンジェリカ・ヒューストン、ウィレム・デフォー
●ワケわからないまま済ませられる映画ではないとリベンジ。もちろん美術から調度品のセンス、シンメトリーの構図がシネスコからスタンダードとなり、モノクロからアニメまで自由自在のウェス・アンダーソンの趣味を丸ごと理解できたわけではないが、この映画はクセになる。何回でも観ていられることを確信。なんなら明日また観てもいい。


ボクたちはみんな大人になれなかった
2021.02.20 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン1 [1000円/124分]
【34】2022年NETC&Iエンタテイメント= 監督:森義仁 脚本:高田亮
CAST:森山未來、伊藤沙莉、東出昌大、SUMIRE、篠原篤、平岳大、片山萌美、高嶋政伸、原日出子、大島優子、萩原聖人
●大人になれなかったというが、では大人になるとはなんだろう。そのことのアプローチを抜きに現在から90年代に遡っていく設定で『ちょっと思い出しただけ』には遠く及ばないと思った。時代のアイコンをカタログ的に羅列しただけでは単なる懐古趣味ではないか。主人公・佐藤誠より森山未來が前に出てしまったら絶対にダメなのだ。


渚の果てにこの愛を
2022.02.19 あつぎのえいがかんkiki:シアター3 LA ROUTE DE SALINA [1000円/95分]
【35】1970年フランス=イタリア 監督:ジョルジュ・ロートネル 脚本:J・ロートネル、P・ジャルダン、ジャック・ミラー他
CAST:ミムジー・ファーマー、ロバート・ウォーカー.Jr、リタ・ヘイワース、エド・ベグリー、ソフィー・アルディ
●中学の時『ロードショー』誌を愛読していた時点でかろうじてミムジー・ファーマーは引っ掛かっていたが、高校から『キネマ旬報』になると完全に消えていた。なんでここに来て彼女なのかは不明だが、ベリーショートと男物の白シャツが似合う70年代フランス映画のミューズであることには間違いない。映画はまったく面白くなかったが。


ドリームプラン
2022.02.23 イオンシネマ座間:スクリーン1 KING RICHARD [1100円/144分]
【36】2021年アメリカ 監督:レイナルド・マーカス・グリーン 脚本:ザック・ベイリン
CAST:ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、サナイヤ・シドニー、デミ・シングルトン、トニー・ゴールドウィン
●ヴィーナス&セリーナという誰もが知るスーパー姉妹のサクセスストーリーゆえ出口は決まっている。ゆえに物語の意外性は望めない中で “キング・リチャード” の「プラン」なる破天荒な支配を、抑圧ではなく抑制に留めた塩梅で家族愛と夫婦愛を立ち上らせた演出は手堅いと思ったが、果たして2時間24分も必要だったか?との疑問は拭えない。


ファーゴ
2022.02.24 TOHOシネマズ新宿:スクリーン1 FARGO [1200円/98分]
【37】1996年アメリカ 監督:ジョエル・コーエン 脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
CAST:フランシス・マクドーマンド、スティーヴ・ブシェーミ、ウィリアム・H・メイシー、ピーター・ストーメア
●アメリカ人しかわからないような小ネタが満載で、ただでさえ噛み合わない人間関係をさらに芯をずらして進めていく作劇の巧さ。やっぱコーエン兄弟は滅法面白い。絶対に古びることのない映画だが、F・マクドーマンドがやけにチャーミングなのが歳月を物語る。シネマライズの封切りで観たかったなと、四半世紀分の後悔を味わった気分。
※1996年キネマ旬報ベストテン第4位


ちょっと思い出しただけ
2022.02.26 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 [1200円/115分] ※再観賞
【38】2022年東京テアトル 監督:松居大悟 脚本:松居大悟
CAST:池松壮亮、伊藤沙莉、永瀬正敏、河合優実、屋敷裕政、國村隼、成田凌、尾崎世界観、高岡早紀、大関れいか
●伊藤沙莉があまりに魅力的だったので間を置かず再見してみて、この映画は恋愛を描いているが、はっきり人生を描いていると確信。逆行する一日の時間は人生の刹那であるがゆえに季節はあっという間に移ろい、その儚さをちょっと思い出したとき、重ねて来た一瞬が永遠となることをラストの朝焼けが教えてくれる。間違いなく傑作。


ナイル殺人事件
2022.02.26 イオンシネマ座間:スクリーン10 DEATH ON THE NILE [1100円/127分]
【39】2020年アメリカ 監督:ケネス・ブラナー 脚本:マイケル・グリーン
CAST:ケネス・ブラナー、ガル・ギャドット、アーミー・ハマー、アネット・ベニング、トム・ベイトマン、アリ・ファザール
●顔ぶれの豪華さでは1978年版と比べ見劣りするが、現代的にブラッシュアップされた細部の演出に見応えはあった。邦題は『ナイルに死す』にすべきだろう。オリエント急行の事件が意外な犯人なら、これは意外な共犯者といったところか。ただ銃を手にアグレッシブルなわりに連続殺人を見逃し過ぎなポワロにとてつもなく違和感は残る。


愛なのに
2022.02.27 新宿武蔵野館:スクリーン1 [1200円/107分]
【40】2022年レオーネ=東映ビデオ 監督:城定秀夫 脚本:今泉力哉、城定秀夫
CAST:瀬戸康史、さとうほなみ、河合優美、中島歩、向理祐香、飯島大介、丈太郎、毎熊克哉、守屋文雄、佐倉萌
●何ひとつとして成就しそうもない恋愛模様が薄ぼんやり展開していく中で、補助線もないまま愛に翻弄されっぱなしの主人公の「愛を否定すんな!」の絶叫と怒号。そう女子高生の純愛も大人の女たちの性愛も不確かではあるが愛は愛なのだ。今泉力哉の脚本を城定秀夫が撮る。この冗談みたいな好企画には当然飛びつかざる得なかった。


イングリッシュ・ペーシェント
2022.03.12 TOHOシネマズ海老名:スクリーン10 THE ENGLISH PATIENT [1200円/162分]
【41】1997年アメリカ 監督:アンソニー・ミンゲラ 脚本:アンソニー・ミンゲラ
CAST:レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、クリスティン・S・トーマス、ウィレム・デフォー、コリン・ファース
●ざっくりいえば大戦中の不倫メロドラマでも、洞窟の「泳ぐ人」の壁画の造形にシンクロさせたような広大な砂漠の印影が美しく、それだけで大作感にスクリーンを堪能した気分となる。ややラズロとキャサリンが情事に落ちる様があまりに刹那過ぎたのと、あの状況でハナがキップと関係を持つものかとやや腑に落ちない点もあった。
※1997年キネマ旬報ベストテン第5位


香川1区
2022.03.12 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン2 [1000円/156分]
【42】2021年ネツゲン 監督:大島新 撮影:高橋秀典
CAST:小川淳也、平井卓也、町川順子、大島新 (ドキュメンタリー)
●アバン部分の50歳政界引退を撤回するモジモジ感だけで小川淳也は観る者を味方につけてしまった。おかげで彼の純粋無垢な選挙戦を追うだけでドキュメンタリーの構図が勧善懲悪的に単純化してしまう。その面白さはあったがM・ムーアとまではいかなくも大島新にもう少し突破力があれば、選挙戦の本質を問う視点が醸されたのではないか。


Ribbon
2022.03.13 テアトル新宿 [1200円/115分]
【43】2022年フィルムパートナーズ 監督:のん 脚本:のん
CAST:のん、山下リオ、渡辺大知、小野花梨、岩井俊二、春木みさよ、菅原大吉
●のんに純粋なファンっているのだろうか。ファンというより無数の支持者がいて、それが共同幻想となって彼女を消費しているような気がする。実は私もその一人なのだが、同時にスレっからしの映画好きでもあるので表現者としてのんの監督・脚本作品には楽しめない要素が多過ぎた。この稚拙を彼女らしさと認めてしまえば楽なのだろうが。


グラディエーター
2022.03.20 TOHOシネマズ上大岡:スクリーン2 GLADIATOR [1200円/155分]
【44】2000年アメリカ 監督:リドリー・スコット 脚本:デヴィッド・フランゾーニ、ジョン・ローガン、W・ニコルソン
CAST:ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、オリヴァー・リード、リチャード・ハリス
●こういう男臭さ全開の娯楽活劇がオスカーを獲る2000年はハリウッドにとってもリドリー・スコットにとってもまだまだ良い年だったのだろう。今観ると屈折した暴君コモドゥスを演じたホアキンの存在感が強烈過ぎて、主役たるラッセルの将軍マキシマスの復讐譚が単純に思えてならないが、堂々たる大作との評価は揺るぎないと思った。
※2000年キネマ旬報ベストテン第8位


パワー・オブ・ザ・ドッグ
2022.03.20 イオンシネマ座間:スクリーン2 THE POWER OF THE DOG [1100円/128分]
【45】2000年イギリス、アメリカ、カナダ、ニュージーランド 監督:ジェーン・カンピオン 脚本:ジェーン・カンピオン
CAST:ベネディクト・カンバーバッチ、キルスティン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィー
●西部劇が古き良きマッチョイムズだけで成立できなくなった時代性を痛感。フィルはピーターに謀殺されたのではなく“現代”という時代に抹殺されたのではないか。「男らしさ」の虚妄性を際立たせるための恰好の装置に西部劇が使われがちなのがつらく、さらにそれを女性の手で描写されるともはやイジメられているとしか思えなくなるのだ。
※2021年キネマ旬報ベストテン第8位


猫は逃げた
2022.03.21 新宿武蔵野館:スクリーン1 [1200円/109分]
【46】2022年レオーネ=東映ビデオ 監督:今泉力哉 脚本:城定秀夫、今泉力哉
CAST:山本奈衣瑠、毎熊克哉、手島実優、井之脇海、伊藤俊介、中村久美、芹澤興人、詩野、海沼未羽、萌菜
●実際読んでいないので不確かだが、城定秀夫の脚本は会心の出来だったのではないか。それを今泉力哉が自分のワールドに取り込んで広げて見せたのだから面白くないはずはない。中心となる4人の男女が織りなすあーでもないこーでもないを、猫のカンタがタテにヨコに翻弄していく。が、断じて人間模様の映画であってネコ映画ではない。


余命10年
2022.04.02 109シネマズグランベリーパーク:シアター4 [1200円/124分]
【47】2022年製作委員会=ワーナー 監督:藤井道人 脚本:岡田惠和、渡邉真子
CAST:小松菜奈、坂口健太郎、山田裕貴、奈緒、黒木華、田中哲司、原日出子、リリー・フランキー、井口理、松重豊
●自分の余命を考えざる得ない齢となった私でさえ、あらかじめ難病ものであるとの前提はきつかったが、鼻水垂らしながらの小松菜奈の熱演に持っていかれた。桜、花火、ビデオカメラなどいかにもなアイテムを駆使しつつ、藤井道人の演出に薄命の天使による単なるお涙頂戴にはしないとの気概を感じる。なにより映画として面白かった。


ベルファスト
2022.04.02 109シネマズグランベリーパーク:シアター7 BELFAST [1200円/98分]
【48】2021年イギリス 監督:ケネス・ブラナー 脚本:ケネス・ブラナー
CAST:カトリーナ・バルフ、ジュディ・デンチ、ジェイミー・ドーナン、キアラン・ハインズ、ジュード・ヒル
●北アイルランドのベルファストは高村薫の小説で知ったが、過酷を極める暴力を背景にしながら描かれているのが少年の郷愁であるがゆえ、家族の日常の中の笑いとユーモアがいちいち面白い。そんな「かけがえのないもの」に満ち溢れた故郷との決別はつらいが、同時に新たな人生への出発だとも謳う。今年のオスカーノミネートで一番好き。
※2022年キネマ旬報ベストテン第7位


女子高生に殺されたい
2022.04.02 109シネマズグランベリーパーク:シアター7 [1200円/113分]
【49】2022年ダブ=日活 監督:城定秀夫 脚本:城定秀夫
CAST:田中圭、南沙良、河合優実、莉子、茅島みずき、細田佳央太、加藤菜津、久保乃々花、キンタカオ、大島優子
●城定秀夫にはオートアサシノフィリア、多重人格、アスペルガー症候群など特異な心理を掘り下げて欲しかったが、高校生たちのあまりに類型な描き方に少なからず失望してしまった。最後のクライマックスなど安手の深夜ドラマ並みのサスペンス手法だ。注目していた河合優美も存在感が希薄で残念。マンガ原作となるとこんなものか。


ゴッドファーザー
2022.04.03 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン7 THE GODFATHER [1200円/177分] ※再観賞
【50】1972年アメリカ 監督:フランシス・フォード・コッポラ 脚本:フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーヅォ
CAST:マーロン・ブランド、アル・パシーノ、ジェームズ・カーン、ロバート・デュヴァル、ダイアン・キートン
●原則「午前十時の映画祭」の再上映は観ないことにしていたが、もうスクリーンで観る機会がないのでは思い映画館に駆け込んだ。正解だった。むしろまだ3回目かよと思った。脚本、撮影、音楽と映画史に名作は数あれど金字塔と呼べる数少ない一本。マファア抗争の全容を把握しながらマイケルの変節を追いかけた至福の3時間。
※1972年キネマ旬報ベストテン第8位


ゴッドファーザー PARTⅡ
2022.04.11 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン2 THE GODFATHER PARTⅡ [1200円/200分] ※再観賞
【51】1974年アメリカ 監督:フランシス・フォード・コッポラ 脚本:フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーヅォ
CAST:アル・パシーノ、ロバート・デ・ニーロ、リー・ストラスバーグ、ロバート・デュヴァル、タリア・シャイア
●過酷なマイケルの現実から若きビトーの立志伝的なパートになると息苦しさから解放された気分にはなる。しかしよくいわれるデ・ニーロの映画ではなくやはりパチーノの映画だ。キューバ革命の場面はやや冗長だが、マイケルの孤独と非情を強調するためのビトーのエピソードであり、だからこそ時代が創り出す陰影がどの場面でも際立つ。
※1975年キネマ旬報ベストテン第8位


THE BATMAN ザ・バットマン
2022.04.16 109シネマズグランベリーパーク:シアター5 THE BATMAN [無料/176分]
【52】2021年アメリカ 監督:マット・リーヴス 脚本:マット・リーヴス、マットソン・トムリン
CAST:ロバート・パティンソン、ゾーイ・クラヴィッツ、コリン・ファレル、ポール・ダノ、ジョン・タートゥーロ
●戦いや争いは“正義”と“復讐”の相関で成り立っているもの。その狭間に立つヒーローの苦悩をDCもMCUも繰り返し描いているが、アヴェマリアを変調させながらゴッサムシティの都市論まで描かれると、元々ダークでノワールなバットマンの世界観がより深層まで響き渡る。キャットウーマンとの恋路は蛇足と思えたが、最後の別離は秀逸だ。


名探偵コナン/ハロウィンの花嫁
2022.04.16 イオンシネマ座間:スクリーン10 [1100円/111分]
【53】2022年小学館=TMS=よみうり=東宝 監督:満仲勧 脚本:大倉崇裕
CAST:(声)高山みなみ、古谷徹、山崎和佳奈、小山力也、高木渉、湯屋敦子、白石麻衣、緒方賢一、岩居由希子、林原めぐみ
●対象年齢は別として毎年GW前のお楽しみとしているが、安室透にハズレなしで、前2作の失速を補うだけの満足感はあった。オープニングの振り返りも凝りに凝っていて楽しい。コナンがロシア語を話せたりのご都合主義は目をつむるとしても、クライマックスの爆破回避のお約束がインフレの一途を辿り大味になるのは考えて欲しい。


ゴッドファーザー 最終章:マイケル・コルレオーネの最期
2022.04.23 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン10 THE GODFATHER CODA: THE DEATH OF MICHAEL CORLEONE [1200円/158分]
【54】1990年アメリカ 監督:フランシス・フォード・コッポラ 脚本:フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーヅォ
CAST:アル・パシーノ、アンディ・ガルシア、ダイアン・キートン、ソフィア・コッポラ、タリア・シャイア
●『PARTⅢ』は未見のまま再編集された『最終章』を観たが、さすがに前2作と続けると見劣りする。老マイケルの贖罪というテーマは良しとしても、年輪の重みがなく、新たに捻出された抗争劇も面白味がない。ヒッチコックばりのオペラ座のクライマックスも別ジャンルの映画を観ているようだ。ただ評判に反しソフィアは美しかった。


ハッチング -孵化-
2022.04.28 新宿シネマカリテ:スクリーン1 PAHANHAUTOJA [1200円/91分]
【55】2021年フィンランド 監督:ハンナ・ベルイホルム 脚本:イルヤ・ラウチ
CAST:シーリ・ソラリンナ、ソフィア・ヘイッキラ、ヤニ・ヴォラネン、レイノ・ノルディン
●ホラーに耐性のない身としてはクローゼットやベッドの下に何か居る?覗き込む…こんなオーソドックスな場面にドギマギしまうのだが、巨大化してすぐ孵化する卵ではなく、何か得体の知れないものを密かに育てる少女が、母親への愛憎を暴走させ母性が凶器化する設定の方が怖かった。モンスターホラーとなり悪い意味で安心してしまった。


林檎とポラロイド
2022.04.29 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 MILA [1100円/91分]
【56】2021年ギリシア=ポーランド=スロベニア 監督:クリストス・ニク 脚本:クリストス・ニク、スタヴロス・ラプティス
CAST:アリス・セルヴェタリス、ソフィア・ゲオルゴヴァシリ、アナ・カレジドゥ、アルギリス・バキルジス
●記憶喪失からの再生は世界中で作られているようだが、多国籍資本が多くなって、映し出される街並み・風俗が一体どこの国の風景なのか覚束なくなっている。記憶を失った主人公が自分探しや居場所探しに執着するわけでもなく、私にとってのっぺらぼうな街並みで「第2人生」の構築プランを遂行する。なんか観葉植物みたいな映画だった。


オートクチュール
2022.04.29 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 HAUTE COUTURE [1100円/100分]
【57】2021年フランス 監督:シルヴィー・オハヨン 脚本:シルヴィー・オハヨン
CAST:ナタリー・バイ、リナ・クードリ、パスカル・アルビロ、クロード・ペロン、スーメイ・ボクゥーム、アダム・ベッサ
●面白かった。私は何故かシスターフットというか女バディものに惹かれる趣向があり、ディオールのアトリエという女の園で母子、友人、同僚たちとの世代を超えた泣き笑いのコミョニティが気持ちよく、それでいて人種、移民問題にも言及し、既に凡百のフェミニズムからアップデートしていることも垣間見せるなど大満足の一篇になった。


英雄の証明
2022.04.29 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 GHAHREMAN [1100円/100分]
【58】2021年イラン=フランス 監督:アスガー・ファルハディ 脚本:アスガー・ファルハディ
CAST:アミル・ジャディディ、モーセン・タナバンデ、サハル・ゴルデュースト、マルヤム・シャーダイ、サリナ・ファルハディ
●彼はごく普通の人間だ。その境遇は確かに不幸で状況の不条理に同情はするが全面的に支持できない。ファルハディのヒリヒリする人間観がそう思わせる。そもそも善悪併せ持つのが普通の人間であるのだが、普通であることが善か悪かの二元論でのみ判断しようとする社会正義に晒されるといかに脆いのか。そこにイランも日本もない。


焼け跡クロニクル
2022.04.29 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 [1100円/84分]
【59】2022年製作プロジェクト=マジックアワー 監督:原まおり、原將人 撮影:原まおり、原將人
CAST:原將人、原まみや、原かりん、原鼓卯、原まおり、佐藤眞理子(ドキュメンタリー)
●8mmをひと齧りした世代にとって原將人は有名人だが、何十年ぶりに見せた姿はすっかり老人になっていた。しかし自宅が全焼し自身も火傷を負いながらもそれで映画を作ってしまうのは執念というより飄々とした趣味人の佇まいだ。その変わらぬ“らしさ”に感服しつつ、双子の娘を前面に出すあざとさも感じずにはいられなかった。


アネット
2022.04.29 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 ANNETTE  [1100円/140分]
【60】2021年フランス=ドイツ=ベルギー=日本 監督:レオン・カラックス 脚本:レオン・カラックス
CAST:アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーグ、デヴィン・マクドウェル
●名前だけは知らされていたカラックスの映画をようやく観た。確かに一時代を駆け抜けた鬼才だけにポスターのキャッチにある“愛がたぎる”映像の圧倒感は凄いと思ったが、ヘンリーとアネットの物語になって、ヘンリーへの共感を外しにかかった辺りから麻酔が切れたように醒めてしまった。そういう意図なのだろうが私は残念だった。
※2022年キネマ旬報ベストテン第5位


ナイトメア・アリー
2022.04.30 立川シネマシティ・ワン:h studio NIGHTMARE ALLEY [1000円/150分]
【61】2021年アメリカ 監督:ギレルモ・デル・トロ 脚本:ギレルモ・デル・トロ、キム・モーガン
CAST:ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、ルーニー・マーラ
●傑作!見世物小屋が象徴する因果応報のロジックにあって、誰もが予感する決着に向けてデル・トロは巧妙に暗示を仕掛け、めくるめく因果応報ノワールを加速させていく。どこか懐かしい通俗的な世界観を残しつつ、ほぼモチーフの散りばめだけで1本の傑作を作ってしまうのだから凄い。個人的に『シェイプ・オブ・ウォーター』の数十倍は好き。


カモン カモン
2022.05.01 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン10  C'MON C'MON [1200円/108分]
【62】2021年アメリカ 監督:マイク・ミルズ 脚本:マイク・ミルズ
CAST:ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、モリー・ウェブスター、スクート・マクネイリー
●うるせぇしムカつくガキだなぁと中盤までは辟易していたが、ぎこちなかった伯父と甥、兄と妹の関係が醸成されて人生再生の物語となり、合衆国の現在地から未来図まで示されると俄然感動作に差し替わる。台詞なのか自然なのかの境界線が見えないウディ君の達者ぶりとそれを受けるホアキンの卓抜ぶりに最後は引き込まれ目頭を熱くした。


ツユクサ
2022.05.02 シネ・リーブル池袋2 [1200円/95分]
【63】2022年朝日新聞=東映ビデオ=東京テアトル 監督:平山秀幸 脚本:安倍照雄
CAST:小林聡美、松重豊、斎藤汰鷹、平岩紙、江口のりこ、桃月庵白酒、水間ロン、鈴木聖奈、泉谷しげる、渋川清彦
●作り手が設定したスローライフな作風、絵作りに合わせた芝居や台詞回しに何とも不自由で窮屈な時間が続いていたが、唐突に松重豊が小林聡美に接吻を懇願する辺りから作劇の面白さが立ち上ってくる。そうなると大好きな二人の役者を囲む脇の人たちも躍動してくる。そうか「ママ、久しぶりに女の子しちゃいました」か。いいね。


親愛なる同志たちへ
2022.05.03  川崎市アートセンターアルテリオ映像館 ДОРОГИЕ ТОВАРИЩИ! [無料/121分]
【64】2020年ロシア 監督:アンドレイ・コンチャロフスキー 脚本:アンドレイ・コンチャロフスキー、エレナ・キセリョワ
CAST:ユリア・ビソツカヤ、ウラジスラフ・コマロフ、アンドレイ・グセフ、ユリヤ・ブロワ、セルゲイ・アーリッシュ
●ロシアのウクライナ侵攻が世界に暗雲をもたらせているが、ほんの2年前まで旧ソ連時代の暗部を描くことを許容するカルチャーがロシアにあったことに驚く。ノボチェルカッスク事件は知らなかったが、路上の死体処理の手際など今ではドキリとさせられる。共産党員の母親とKGB職員の娘探しの検問越えはやや盛り過ぎの感は否めなかったが。


不気味なものの肌に触れる
2022.05.04 横浜シネマリン [1100円 /54分]
【65】2013年SUNBORN=fictive 監督:濱口竜介 脚本:高橋知由
CAST:染谷将太、石田法嗣、渋川清彦、瀬戸夏実、河井青葉、水越朝弓、村上淳、砂連尾理
●互いに触りそうで触らない不思議なダンス。こういうワークショップ的な振付の反復を物語とシームレスに重ねていく手法は濱口竜介の発明かもしれない。この中編は構想中の長編のパイロット版ということで、抽象的な場面が少なくなく、ややとっつきにくくはあるが、走る染谷将太を追う川辺の平行撮影と遠近撮影が印象深い。


天国はまだ遠い
2022.05.04 横浜シネマリン [ 〃 /38分]
【66】 2016年NEOPA=KWCP 監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介
CAST:岡部尚、小川あん、玄理
●『偶然と想像』にこの短編をエピソード4として付け加えてもいいくらい面白かった。そうか台詞を役者を通して生きた言葉として伝えていく濱口イズム(!)の設定に憑依、口寄せという手があったか。もちろんそれ故にリアルというよりファンタジーに傾かざるえないが、どの濱口作品より爽やかな後味が楽しめる好編といえる。


THE DEPTHS
2022.05.04 横浜シネマリン [1100円/121分]
【67】2010年東京藝術大学大学院映像研究科=韓国国立フィルムアカデミー 監督:濱口竜介 脚本:大浦光太、濱口竜介
CAST:キム・ミンジュン、石田法嗣、パク・ソヒ、米村亮太朗、菅原大吉、村上淳
●日韓フィルムメーカーたちの習作としての非商業映画なのだろうが、シネスコによる堂々たるノワールサスペンス以外の何ものでもなく、逆にプロフェッショナルって何?と問いたくなる。日本人青年の男娼と気鋭の韓国人カメラマンによるラブストーリーとしても秀逸で、濱口が職人的なエンタメ演出でも超一級であることが証明された。


何食わぬ顔 (longversion)
2022.05.04 横浜シネマリン [1100円/98分]
【68】2002年自主=fictive 監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介
CAST:松井智、濱口竜介、岡本英之、遠藤郁子、石井理恵、渡辺淳、野村岬、林泰明
●昔ながらの学生8mm映画だが解像度の悪い画面の中でさえ、濱口イズムがすでに存在していたことに驚く。確かに8mmで98分の長丁場はきつかったが、画面の中で高校時代のエピソードを語る学生然とした濱口本人が20年後にタキシード姿でオスカー像を握りしめていることの感慨はあった。早くからイズムを抱き、貫いた者の成功物語だ。


PASSION
2022.05.04 横浜シネマリン [1100円/115分]
【69】2008年東京藝術大学大学院映像研究科 監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介
CAST:河井青葉、岡本竜汰、占部房子、岡部尚、渋川清彦、宮前希依、太田正幹、佐間るい
●この後に『親密さ』『ハッピーアワー』『ドライブ・マイ・カー』と継続させていくのは執念としかいいようがないが、『偶然と想像』のロジックに『寝ても覚めても』の衝撃を加味した本作はそれら作品群と比べても一切の見劣りはない。それどころか115分、登場人物たちの言動に翻弄されっぱなしだった。なんて楽しい映画体験だったことか。


いつも2人で
2022.05.05 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7  TWO FOR THE ROAD [1200円/112分] ※再観賞
【70】2020年アメリカ 監督:スタンリー・ドーネン 脚本:フレデリック・ラファエル
CAST:オードリー・ヘプバーン、アルバート・フィニー、ウィリアム・ダニエルス、ジャクリーン・ビセット
●高校生の時に観てピンとこなかった夫婦の倦怠というテーマが、44年後経って映画そのものにピンと来ていないのではないかと思った。“ヘプバーン映画”という確固たるジャンルの中で、幾重にも時間を重ねたところで軸が飛躍しないことに釈然としなかったのと、アルバート・フィニーとのカップリングに決定的に乗れないものがあった。


永遠に君を愛す
2022.05.05 横浜シネマリン [1100円/58分]
【71】2009年自主=fictive 監督:濱口竜介 脚本:渡辺裕子
CAST:河井青葉、杉山彦々、岡部尚、菅野莉央、天光真弓、小田豊、百瀬陽子
●河井青葉と岡部尚という座組で同じような題材でも製作年を考えると『PASSION』の後でこの中編はいかにも軽いし、掘り下げも浅い。脚本を他人に委ねた結果だろうか。結婚式当日の花嫁の反乱というありがちなシチュエーションを過不足なくまとめてみましたということだろうか。非商業映画だから習作として許されるのかも知れないが。


浪華悲歌
2022.05.07 新文芸坐 [1300円/71分]
【72】1936年第一映画社=松竹 監督:溝口健二 脚本:依田義賢
CAST:山田五十鈴、梅村蓉子、大倉千代子、浅香新八郎、志賀廼家弁慶、進藤英太郎、田村邦男、竹川誠一、原健作、志村喬
●資料的見地で戦前の大阪の風俗をあろうことか大ミゾグチから読み取ろうというのは所詮ムリとしても、船場あたりの大商家の旦那が妾囲いを競うなんてことは日常的にあったことなのだろう。家父長制度にふんぞり返っていても養子の肩身の狭さが憐れで、女の生きづらさを描けば描くほど、右往左往する男たちの滑稽さが際立ってくる。
※1936年キネマ旬報ベストテン第3位


祇園の姉妹
2022.05.07 新文芸坐 [ 〃 /70分]
【73】1936年第一映画社=松竹 監督:溝口健二 脚本:依田義賢
CAST:山田五十鈴、梅村蓉子、志賀廼家弁慶、久野和子、大倉文男、深見泰三、進藤英太郎、いわま櫻子、林家染之助
●祇園花街の特殊コミュニティの中で芸妓・おもちゃが対峙するのはカネと欲絡みの“遊び”の世界であり、そこに「男に虐げられている女」というステレオタイプを見出すのは、それこそ“粋”でない気がした。むしろ相当祇園に散財したであろう溝口が作り上げた世界観に19歳の山田五十鈴が躍動する姿の圧倒感を味わえばいいのではないか。
※1936年キネマ旬報ベストテン第1位


死刑にいたる病
2022.05.08 イオンシネマ座間:スクリーン9 [無料 /129分]
【74】2022年製作委員会=RIKIプロジェクト 監督:白石和彌 脚本:高田亮
CAST:阿部サダヲ、岡田健史、中山美穂、岩田剛典、宮崎優、鈴木卓爾、佐藤玲、赤ペン瀧川、大下ヒロ、吉澤健、音尾琢真
●悪くはない。ただ「そこは違うんじゃないか?監督」と思える画面作りや説明ゼリフの頻発も少なくなかった。ただシリアルキラー=幼少時の虐待という手垢に塗れた切り口でも最後まで飽きさせなかったのは原作の展開の面白さかもしれないし、阿部サダヲの怪演の賜物だったかもしれない。が、白石和彌には毎回期待させる何かはある。


シン・ウルトラマン
2022.05.14 109シネマズグランベリーパーク:シアター1 [1200円/112分]
【75】2022年東宝=円谷プロ=カラー 監督:樋口真嗣 総監修:庵野秀明 脚本:庵野秀明
CAST:斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、山本耕史、岩松了、嶋田久作、益岡徹、長塚圭史
●オープニングの数シークエンスで一気に心を掴まれた感じ。怪獣ならぬ禍威獣がなんで日本ばかりに?と、遠い昔の少年みんなが思っていた疑問を通奏低音にしてしまう皮肉も効いているし、科特隊ならぬ禍特対の面子もいい。巨大フジ隊員ならぬ巨大浅見担当官があまりにフェチ全開なのにも笑えた。多少のチープさも空想特撮映画のご愛嬌。


流浪の月
2022.05.14 109シネマズグランベリーパーク:シアター3 [1200円/150分]
【76】2022年UNO-FILMS=ギャガ 監督:李相日 脚本:李相日
CAST:広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、趣里、三浦貴大、白鳥玉季、増田光桜、内田也哉子、柄本明
●フミとサラサの純愛に似た絆に共感すればするほど世間の正義がとんでもなく理不尽に思えてくるのだが、所詮、我々だって正義の側の人間。だから李相日の演出力を以てしてもフミは実際には罪から逃れられないがゆえに純愛であることの物足りなさも感じていた。最後にフミの秘密が明かされ、現代ならではの不条理劇の誕生に驚く。


ゆけゆけ二度目の処女
2022.05.21 シネマヴェーラ渋谷 [800円/65分]
【77】1969年若松プロダクション 監督:若松孝二 脚本:出口出(足立正生、小水一男)
CAST:小桜ミミ、山未痴汚、善兵世志男、風雅超邪丸、青木幽児、花村亜流芽、保根桂和、加上玲、マダム・エドワルド
●とうとうここに踏み込んだ。ずっと以前より若松孝二のとくに初期作品に抱いていた暗黒イメージが本作で払拭されたわけではないが、屋上という閉鎖空間で繰り広げられる殺戮はやがて自死を待つ若い二人にとっては地獄だったのか天国だったのか。それでもお互いが夜から朝までの時間を共有したことの確かさに一条の光が見えた気はした。


処女ゲバゲバ
2022.05.21 シネマヴェーラ渋谷 [無料/66分]
【78】1969年若松プロダクション 監督:若松孝二 脚本:出口出(大和屋竺)
CAST:谷川俊之、芦川絵理、乱孝寿、木俣堯喬、林美樹、大和屋竺、真鍋由紀、宮瀬健二、花村亜流芽、小水一男
●強烈なタイトルの命名は大島渚だそうだ。荒涼とした吹きっ晒しの原野で磔にされている裸女。若松プロの象徴的ビジュアルとして有名だが、このディストピアに暴力が横溢するにつれ妙な無邪気さが漂い始め、私にはどうにもアングラごっこにしか見えなくて退屈だった。きっと若松以下、撮影隊にはこの場こそユートピアだったのだろう。


血は太陽よりも赤い
2022.05.21 シネマヴェーラ渋谷 [800円/80分]
【79】1966年若松プロダクション 監督:若松孝二 脚本:大谷義明(足立正生)
CAST:大塚和彦、一の瀬弓子、峯阿矢、和達五郎、若原珠美、山吹ゆかり、真弓田一夫、笠間雪男、桂奈美、寺島幹夫
●渋谷の雑踏で鶏の首を切断するなど強烈な場面を配しながら、少年の大人社会への絶望と怒りという二元論的単純なテーマは恐ろしく牧歌的であり、青春ノワールとしても、機関銃で大人たち全員ぶっ殺すと激昂する少年の将来にテロルやゲバルトの匂いは皆無だ。そもそも恋人の父親を手にかけたことまで大人の責任にするつもりか。


ブルジョワジーの秘かな愉しみ
2022.05.21 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 LE CHARME DISCRET DE LA BOURGEOISIE [1100円/102分]
【80】1972年フランス 監督:ルイス・ブニュエル 脚本:ルイス・ブニュエル、ジャン=クロード・カリエール
CAST:フェルナンド・レイ、ポール・フランクール、デルフィーヌ・セイリグ、ピエール・カッセル、ミシェル・ピッコリ
●私は『アンダルシアの犬』にシュールリアリズムの洗礼を受けてしばらく、ブニュエルに傾倒していた。月光を切り裂いたナイフの切っ先は退廃的享楽に耽るブルジョワたちに向けられていると思いたいが、実はブニュエル自身が自ら刺さりにいっている風でもあり、そんな皮肉が余裕にも感じられるのは人生を喜劇に見立てているからなのか。
※1974年キネマ旬報ベストテン第6位


自由の幻想
2022.05.21 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 LE FANTOME DE LA LIBERTE [1100円/104分]
【81】1974年フランス 監督:ルイス・ブニュエル 脚本:アンドレイ・コンチャロフスキー、エレナ・キセリョワ
CAST:ジャン=クロード・ブリアリ、モニカ・ヴィッティ、ミシェル・ピッコリ、ジャン・ロシュフォール
●断片的なエピソードを連鎖的に繋げて一本の映画として貫いた挙句「くだばれ!自由」と笑い飛ばすブニュエル。こんな巨匠の名のもとに無双としか思えない傍若無人な作劇が実に面白い。そう何からしらの比喩なのか暗喩なのかわからないながらもブニュエルの映画は面白いのだ。シュールだがまったくもって日常的。もはや無敵か。
※1977年キネマ旬報ベストテン第3位


理由なき反抗
2022.05.22 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン2 REBEL WITHOUT A CAUSE [1200円/105分]
【82】1955年アメリカ 監督:ニコラス・レイ 脚本:スチュワート・スターン、アーヴィング・シュルマン
CAST:ジェームズ・ディーン、ナタリー・ウッド、サル・ミネオ、ジム・バッカス、デニス・ホッパー、エドワード・プラット
●泣き笑いのJ・ディーンのクシャクシャな表情だけが印象に残っていたが、40年ぶりの再会で確信した。この映画のディーンがもっともディーンたらしめている。家族の再生を願う無垢な反抗が愛らしいが、何より白いシャツに赤のスウィングトップは50年代若者のロールモデル。伝説のスターにスクリーンで再会することの至福を味えた気分。


哀しみのトリスターナ
2022.05.22 川崎市アートセンターアルテリオ映像館  TRISTANA [1200円/105分]
【83】1970年フランス=イタリア=スペイン 監督:ルイス・ブニュエル 脚本:ルイス・ブニュエル、J・アレジァントロ
CAST:カトリーヌ・ドヌーヴ、フェルナンド・レイ、フランコ・ネロ、ロラ・ガオス、アントニオ・カサス
●是枝裕和が云うようにモンロー、ヘプバーン同様にドヌーブ映画というジャンルが存在する。主従逆転の男女のドラマにブニュエルは大女優に様々な負荷をかけながら、フェルナンド・レイ、フランコ・ネロという強面たちを翻弄させていく。なんたる器用な資質か。個人的にはドヌーブと対峙しているネロの硬質感がたまらないのだが。
※1971年キネマ旬報ベストテン第7位


実録・連合赤軍 あさま山荘への道程みち
2022.05.26 早稲田松竹 [1000円/190分]
【84】2007年若松プロダクション=スコーレ 監督:若松孝二 脚本:若松孝二、掛川正幸、大友麻子
CAST:井浦新、地曵豪、並木愛枝、坂井真紀、大西信満、菟田高城、タモト清嵐、小木戸利光、中泉英雄、伊達建士
●小学生の時、街角に貼られた永田洋子の手配写真がとにかく怖かった。「総括」というワードも暗いトラウマを残したが、それを蘇らせた若松孝二。これを撮るのにもっとも相応しいというより、若松が連合赤軍を描くことの必然で190分を一気に見た感じ。間違いない力作だが「みんな勇気がなかった」と激昂する加藤元久は残念な自己批判だ。
※2008年キネマ旬報ベストテン第3位


犬 王
2022.05.28 イオンシネマ新百合ヶ丘:スクリーン9 [1100円/98分]
【85】2022年サイエンスSARU=アスミックエース 監督:湯浅政明 脚本:野木亜紀子
CAST:(声) アヴちゃん、森山未來、柄本佑、津田健次郎、本多力、松重豊、石田郷太、酒井善史、松重豊
●♪でっかいでっかいクジラ~の大音響が耳から離れない。昨年の細田守を思い出すまでもなく長編アニメは草創期から音楽劇との融合を試みていた。今回はその圧倒的決定版。能楽師と琵琶法師のバディが室町時代のストリートからやがて一大ロック・フェスに結実していくのと同様、大友良英の音楽力と湯浅政明の映像力が見事に重奏している。


トップガン マーヴェリック
2022.05.29 イオンシネマ座間:スクリーン10 TOP GUN:MAVERICK [1100円/131分]
【86】2022年アメリカ 監督:ジョセフ・コジンスキー 脚本:クリストファー・マッカリー、A・クルーガー、E・W・シンガー
CAST:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、ジョン・ハム、エド・ハリス、バル・キルマー
●冒頭の"Danger Zone”がとことんチープに聴こえる。前作の唾棄すべきMTV風も律儀に踏襲したりもしているのだが、エンディングはがっちりインストで締めた。要はすべてがブラッシュアップしているのだ。戦闘の大迫力、世代を超えた友情、まさに一大エンターティメント。そして忘れてはならないトム・クルーズのあまりに純真な映画愛。
※2022年キネマ旬報ベストテン第2位


胎児が密猟する時
2022.05.30 シネマヴェーラ渋谷 [800円/72分]
【87】1966年若松プロダクション 監督:若松孝二 脚本:大谷義明(足立正生)
CAST:山谷初男、志摩はるみ
●マンションの一室を羊水と見立て、そこで繰り広げられる男一人に女一人の密室劇。ある時期までもっとも有名な若松作品だったが、聖書の一説に教会音楽が奏でられる中、鞭を振るいナイフで凌辱する丸木戸定男の自己陶酔に満ちた饒舌の繰り返しに「あ、やばい」と思った途端、睡魔が襲ってきた。残念ながら古さしか感じられなかった。


ハケンアニメ!
2022.06.05 渋谷TOEI [1200円/129分]
【88】2022年製作委員会=東映 監督:吉野耕平 脚本:政池洋佑
CAST:吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子、工藤阿須加、小野花梨、古舘寛治、徳井優、六角精児、前野朋哉
●予告編を見た限り、これ2時間9分も要る?と訝しんだが、観終わってみると何処を削るのか思いつない。東京撮影所の製作で舞台は東映アニメーション。オール東映いいね、という趣きで有名無名賑やかな顔たちの現場の空気感がいい。SNS書き込みの羅列が喧しかったものの、仕事の成果を実作品で見せた誠実さはとてもフェアだ。
※2022年キネマ旬報ベストテン第6位


マイスモールランド
2022.06.05 新宿ピカデリー:スクリーン10 [1200円/72分]
【89】2022年製作委員会=フランス=バンダイナムコ 監督:川和田恵真 脚本:川和田恵真
CAST:嵐莉菜、奥平大兼、平泉成、池脇千鶴、アラシ・カーフィザデー、チョーラク・マズルム、藤井隆、チョーラク・ロビン
●結論としてサーリャの視点から難民に対してこの国がいかに無慈悲であるのかを思い知らされる映画だが、クルド人家族のさりげない日常に家父長主義を匂わしチクリと皮肉るところなどしっかり是枝印のドラマになっている。確かにあまりの理不尽に義憤にも駆られるのだが、我々は無力であることを無関心の理由にしているのも現実だろう。


TITANE チタン
2022.06.05 シネマート新宿:スクリーン2 TITANE [1200円/108分]
【90】2021年フランス 監督:ジュリア・デュクルノー 脚本:ジュリア・デュクルノー、ジャック・アコティ他
CAST:ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル、ギャランス・マリリエ、ライス・サラメ、ベルトラン・ボネロ、ドミニク・フロ
●本作を「生涯ベスト」と言い切る女性が多いと聞いた。母体をここまでグロテスクに描いた映画は初めてで、それが女性監督から放たれたことに身を怯ませながら、終始アレクシアの視点が男の性を見下していることで腑に落ちるものも感じた。生身の肉体より機械、快感より痛感、その突き抜けた暴力に作家性を捉えたカンヌの先見も凄い。


トップガン マーヴェリック
2022.06.12 イオンシネマ座間:スクリーン3 TOP GUN:MAVERICK [1100円/131分] ※再観賞
【91】2022年アメリカ 監督:ジョセフ・コジンスキー 脚本:クリストファー・マッカリー、A・クルーガー、E・W・シンガー
CAST:トム・クルーズ、ジェニファー・コネリー、マイルズ・テラー、ジョン・ハム、エド・ハリス、バル・キルマー
●計算され尽くしたドッグファイトの超絶編集をじっくり堪能するため、吹替版にて再観賞。いやいやじっくりなんてとても無理。この齢でハリウッド大作に没入させてくれたトムには感謝しかない。ご都合主義的に進む展開や人間関係のあまりの単純化を指摘する声もあるが、あえて前作の『トップガン』らしさの踏襲なのだと解釈したい。
※2022年キネマ旬報ベストテン第2位


メタモルフォーゼの縁側
2022.06.19 イオンシネマ座間:スクリーン9 [1200円/118分]
【92】2022年日活=日本テレビ 監督:狩山俊輔 脚本:岡田惠和
CAST:芦田愛菜、宮本信、高橋恭平、古川琴音、汐谷友希、伊東妙子、菊池和澄、大岡周太朗、生田智子、光石研
●ボーイズラブで結ばれた年の差58歳の女の友情物語。きっと原作コミックは面白いのだろう。ただ宮本信子と芦田愛菜のお互いにもたれ合うような芝居は退屈だった。対比としてガールズラブまで昇華出来ればもっと刎ねただろう。陰キャ女子高生の成長譚としても物足りなく、キャストに古川琴音の名前がなかったら観なかったと思う。


野性の少年
2022.06.24 角川シネマ有楽町 L'ENFANT SAUVAGE [1200円/86分]
【93】1969年フランス 監督:フランソワ・トリュフォー 脚本:フランソワ・トリュフォー
CAST:ジャン・ピエール・カルゴル、フランソワ・トリュフォー、ポール・ビレ、ジャン・ダステ、フランソワ・セニエ
●森林の中で孤独に育ち野性化した少年の話と聞いて、かなり昔からトリュフォーらしくないと勝手に思っていた。いやいやとんでもない。野生児を異物としてではなく無垢と捉えることでこれほどトリュフォーが描くべき題材もなかったのだ。ただ価値観の共有より一方的に教育が先行してしまうのは時代の致し方なさということだろうか。


ベイビー・ブローカー
2022.06.25 109シネマズグランベリーパーク:シアター6 브로커 BROKER [1200円/129分]
【94】2022年韓国 監督:是枝裕和 脚本:是枝裕和
CAST:ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン、ペ・ドゥナ、イ・ジュヨン、イム・スンス
●是枝作品を観ていつも思うのは高いレベルで可もなく不可もなくということ。ただこの韓国映画はイリーガルな世界に閉じられつつ彼らを乗せたライトバンの半開きのバックドアが常に世間に晒されている開放感があって、ロードムービーとして口当たりがよかった。ソン・ガンホ、カン・ドンウォンありきの物語も正解だったのではないか。


アデルの恋の物語
2022.06.26 角川シネマ有楽町 L' HISTOIRE D' ADELE H. [1200円/96分]
【95】1975年フランス 監督:フランソワ・トリュフォー 脚本:フランソワ・トリュフォー
CAST:イザベル・アジャーニ、ブルース・ロビンソン、シルヴィア・マリオット、ジョゼフ・ブラッチリー、イヴリー・ギトリス
●高校生の封切り時、イザベル・アジャーニって綺麗だなと思いつつ、まだこれを観るのは早いと見送ったのだった。還暦を過ぎてしまい45年、ここまで激しい女の業を描いた映画だったことに面食らう。恋情の果てに狂人と化したアデルを演じるイザベルへの印象が今更ながら一変してしまったが、トリュフォーのあまりの冷徹な視線に唸った。
※1976年キネマ旬報ベストテン第7位


オフィサー・アンド・スパイ
2022.06.26 TOHOシネマズ シャンテ1 J’ACCUSE [無料/96分]
【96】2019年フランス=イタリア 監督:ロマン・ポランスキー 脚本:ロマン・ポランスキー、ロバート・ハリス
CAST:ジャン・デュジャルダン、ルイ・ガレル、エマニュエル・セニエ、グレゴリー・ガドゥボワ、メルヴィル・プポー
●歴史的に有名な冤罪事件らしいが知らなかった。ただドレファス事件そのものよりも背景となった19世紀のフランス全土でここまでユダヤ人が嫌悪されていたことに驚かされる。迫害する側の軍上層部の醜悪さなどポランスキーの真骨頂なのだろうが、背景となる時代の潮流を予備知識なしで観るのは少しきつかった。予習して観直してみたい。


恋は光
2022.06.26 TOHOシネマズ日比谷:スクリーン13 [無料/111分]
【97】2022年ハピネット=KADOKAWA 監督:小林啓一 脚本:小林啓一
CAST:神尾楓珠、西野七瀬、平祐奈、馬場ふみか、伊東蒼、宮下咲、花岡咲、森日菜美、山田愛奈、田中壮太郎
●内容は実に他愛ない。馬鹿馬鹿しくさえある。しかし北野ブルーならぬ小林ホワイトが全編に躍動する間違いなく今年のベスト級。この監督、前作でも思ったが原作のチョイスが素晴らしい。今更「恋とは何か」をノート一冊丸々と真剣に考える映画なんてありか?と思うだけでニヤついてしまった。還暦オヤジの胸キュンには自嘲しかないが。


アポロンの地獄
2022.06.27 新文芸坐 EDIPO RE [1300円/104分]
【98】1967年イタリア 監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ 脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ
CAST:フランコ・チッティ、シルヴァーナ・マンガーノ、アリダ・ヴァリ、ルチアノ・バルトリ、アーメッド・バルハチミ
●ここに至って漸くパゾリーニを体感した。嗚呼これがパゾリーニか。タイトル通りまさに荒涼たる地獄をめぐった104分。殺戮と阿鼻叫喚が断続的に繰り返され、日々の疲れもあって夢心地な気分となり睡魔と闘うはめとなる。エディプスとオイディプス王が同じ人物であることも知らず、ギリシア悲劇への素養のなさが致命的に仇となったか。
※1969年キネマ旬報ベストテン第1位


恋のエチュード
2022.07.02 角川シネマ有楽町 LES DEUX ANGLAISES ET LE CONTINENT [1200円/106分]
【99】1971年フランス 監督:フランソワ・トリュフォー 脚本:ジャン・グリュオー、フランソワ・トリュフォー
CAST:ジャン=ピエール・レオ、キカ・マーカム、ステイシー・テンデター、フィリップ・レオタール、ジョルジュ・ドルリュー
●アンとミュリエルの姉妹の熱情に立ち尽くすクロードの苦悩と母からの呪縛。女1人に男2人のドラマには甘酸っぱくも爽やかな傑作が多いが、男1人に女2人となるとかくも濃厚な愛のドラマとなる。私はトリュフォーなら前者にあたる『突然炎のごとく』より断然こちらを推す。展開をナレーションで繋げてみせるのもさほど気にならなかった。


華氏451
2022.07.02 早稲田松竹 FAHRENHEIT 451 [1000円/112分]
【99】1966年イギリス 監督:フランソワ・トリュフォー 脚本:フランソワ・トリュフォー、ジャン=ルイ・リシャール
CAST:オスカー・ウェルナー、ジュリー・クリスティ、シリル・キューザック、アントン・ディフリング、アレックス・スコット
●タイトルの意味をようやく知ったが、トリュフォーが近未来SFを手掛けていたことに驚く。しかし画面はいかにも60代年代風であることの可笑しさにB・ハーマンによるヒッチコック映画ばかりの劇伴。「本を燃やす者はやがて人を燃やす」は有川浩の小説の言葉だが、焚書によって膨大な数の本が焼かれる様に映画の原罪も見た気がした。


リコリス・ピザ
2022.07.03 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン9 LICORICE PIZZA [1200円/134分]
【101】2021年アメリカ 監督:ポール・トーマス・アンダーソン 脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
CAST:アラナ・ハイム、クーパー・ホフマン、ショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディ
●ウェスほどではないがこちらのアンダーソンも画面から放たれる情報が多い。70年代の『グローイング・アップ』からモチーフと太っちょの少年をいただいたような設定だが面白かった。グラフィティ調の懐かしさを湛えつつ、しっかり時代を捉えているのはさすが。何より年の差10以上のふたりの青春ラブストーリーとして瑞々しいのが嬉しい。
※2022年キネマ旬報ベストテン第1位


神は見返りを求める
2022.07.03 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン4 [無料/105分]
【102】2022年製作委員会=パルコ 監督:吉田恵輔 脚本:吉田恵輔
CAST:ムロツヨシ、岸井ゆきの、若葉竜也、吉村界人、淡梨、栁俊太郎、田村健太郎、中山求一郎、廣瀬祐樹、下川恭平
●見返りを求める男とそれに応じようとしない女。どちらにも共感しづらいがどちらの気持ちもよくわかる。結局は普遍的な人間の業というもなのか。Youtuberの話で前作『空白』より軽いし笑えるのだが、吉田惠輔の作家性はそれ以上に厳しく主人公たちを奈落に沈めていく。そもそもオリジナル脚本というだけで素晴らしいではないか。


アポロ13
2022.07.05 TOHOシネマズ西宮OS:スクリーン12 APOLLO 13 [1200円/141分] ※再観賞
【103】1995年アメリカ 監督:ロン・ハワード 脚本:W・ブロイルス・Jr、A・レイナート、J・セイルズ
CAST:トム・ハンクス、ケヴィン・ベーコン、ビル・パクストン、ゲイリー・シニーズ、エド・ハリス、ローレン・ディーン
●何故かエド・ハリス演じるジーンが着ていたベストは赤だと記憶していた。それが白だった時、ああもう27年経ったのかと思う。当時はとくに引っ掛かるものなく観終わったが、今回はハラハラハドキドキ面白かった。失敗した計画ではなく栄光の帰還であると3人の宇宙飛行士だけではなく、NASAのスタッフたちも共有した胸熱の映画。


GONIN
2022.07.09 新文芸坐 [1150円 /109分]
【104】1995年ぶんか社=イメージファクトリー=松竹 監督:石井隆 脚本:石井隆
CAST:佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、椎名桔平、永島敏行、鶴見辰吾、ビートたけし、木村一八、永島暎子
●大学時代、劇画に夢中にさせてくれた石井隆の追悼上映。もう5人の仲間が誰だったか忘れてしまって、唯一、竹中直人の帰宅場面の惨劇しか憶えていなかったが改めて面白かった。まさかここまでオールスターキャストだったとは。あの頃のチーム・オクヤマの勢いのまま閃光のごとく狂い咲いた和製ノワールの最高の仇花となったか。


GONIN2
2022.07.09 新文芸坐 [ 〃 /105分]
【105】1996年衛星劇場=松竹 監督:石井隆 脚本:石井隆
CAST:緒形拳、大竹しのぶ、余貴美子、喜多嶋舞、夏川結衣、西山由海、松岡俊介、永島敏行、鶴見辰吾、多岐川裕美
●ヤクザ相手に牙を剥く女たち。いかにも石井隆の世界だが、緒形拳の“重し”でなんとか映像は繋ぐが、劇画なら許せたであろう歴代名美を演じた女優陣の生身の存在感が弱い。ずっと援交女子高生・大竹しのぶの土壇場での復活を期待したが、途中離脱で肩透かしを食った気分だ。最後をファンタジーで逃げるならなんとかして欲しかった。残念だ。


ビリーバーズ
2022.07.16 イオンシネマ座間:スクリーン4 [1100円/118分]
【106】2022年レオーネ=クロックワークス 監督:城定秀夫 脚本:城定秀夫
CAST:磯村勇斗、北村優衣、宇野祥平、毎熊克哉、山本直樹
●山本直樹の原作はもっと衝撃的なのだろうが、生身の役者がこの世界観を熱演すると山本晋也ばりのギャグポルノとなる瞬間があり、笑うべきなのか迷いながら、城定秀夫は我々を何処に連れて行くつもりなのかまったく読めなかった。・・・あんなド派手なクライマックスが待っていようとは。結局、何だかんだインパクトのある映画は楽しい。


ボイリング・ポイント|沸 騰
2022.07.17 イオンシネマ港北ニュータウン:スクリーン8 BOILING POINT [1100円/95分]
【107】2021年イギリス 監督:フィリップ・バランティーニ 脚本:ジェームズ・カミングス、フィリップ・バランティーニ
CAST:スティーブン・グレアム、ハンナ・ウォルターズ、レイ・パンサキ、ジェイソン・フレミング、マラカイ・カービー
●面白かった。最初こそハンディカメラが誰の視線なのか途惑ったものの、やがて全編ワンショットであることの必然に納得していた。演劇的な仕上がりを想像していたが、むしろ映画そのものだと思った。現場が嫌がうえにも緊張とストレスに覆われることで矢継ぎ早に入れ替わる人物たちの生理がはっきり浮かびあがる効果は劇的ですらある。


映画 『ゆるキャン△』
2022.07.17 イオンシネマ港北ニュータウン:スクリーン8 [1100円/118分]
【108】2022年野外活動委員会=松竹 監督:京極義昭 脚本:田中仁、伊藤睦美
CAST:(声) 花守ゆみり、東山奈央、原紗友里、豊崎愛生、高橋李依、黒沢ともよ、伊藤静、井上麻里奈、松田利冴、大塚明夫
●原作マンガもTVアニメも知らず、一切の予備知識もタイトルの意味すら不詳のまま評判に乗せられて観た。「キャン」はキャンプで「△」はテントだったか。シスターフットものは嫌いではないが、評判ほどは楽しめなかった。前提としてなんでこの手のアニメの女の子たちの髪の毛が青や赤や緑なのか。青毛の雑誌編集者?有り得んだろ。


神々の山嶺
2022.07.18 池袋HUMAXシネマズ:シネマ5 LE SOMMET DES DIEUX [1200円/94分]
【109】2021年フランス=ルクセンブルク 監督:パトリック・インバート 脚本:マガリ・ポーゾル、ジャン=C・オストレロ
CAST:(声)堀内賢雄、大塚明夫、逢坂良太、今井麻美
●まず夢枕獏の原作を愛する立場から舞台をパリやフランス人に翻訳することなくまともに東京と日本人を描いたフランス製作陣の限りない原作愛に感謝したい。ただエヴェレストの荒天を行く人物の硬質感が精巧に書き込まれた背景とシンクロしていない印象が拭えないのは、羽生という過酷な人物像の描き込みが希薄だったからだろう。


モガディシュ 脱出までの14日間
2022.07.18 グランドシネマサンシャイン:シアター7 모가디슈 [1200円/121分]
【110】2021年韓国 監督:リュ・スンワン 脚本リュ・スンワン
CAST:キム・ユンソク、チョ・インソン、ホ・ジュノ、ク・ギョファン、キム・ソジン、チョン・マンシク、キム・ジェファ
●大使館脱出のトゥルーストーリーとして『アルゴ』の何十倍も面白い。目を瞠るモガディシュの群衆場面の迫力に的確な掌握。カメラ、美術、完璧に世界標準だ。「我々の闘争目標は生存だ」と北朝鮮・大使にいわせながら、食卓では情緒過多な台詞を極力排す上手さ、そしてド派手なカーアクションに雪崩れ込むエンタメ展開。まさに一級品。


キャメラを止めるな!
2022.07.18 TOHOシネマズ池袋:スクリーン4 COUPEZ ! [1100円/112分]
【111】2022年フランス 監督:ミシェル・アザナヴィシウス 脚本ミシェル・アザナヴィシウス
CAST:ロマン・デュリス、ベレニス・ベジョ、グレゴリー・ガドゥボワ、竹原芳子、フィネガン・オールドフィールド
●池袋ロサの舞台で出演者が「友達にお薦めください」と訴えてた4年前のことを思うとアカデミー賞監督で海外リメイクされるなど冗談か奇跡みたいな話。ただ仕掛けを知ったうえでフランス版は『カメ止め』に遠く及ばない。真珠湾の例えがチープで不愉快なうえ、「映画を面白くして大勢に観て欲しい」との無垢な熱情の差がモロに出た。


ブレードランナー <4Kファイナル・カット>
2022.07.24 TOHOシネマズ上大岡:スクリーン2 BLADE RUNNER:THE FINAL CUT [1200円/117分] ※再観賞
【112】1982=2007年アメリカ 監督:リドリー・スコット 脚本:ハンプトン・ファンチャー、デヴィッド・ピープルズ
CAST:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、エドワード・ジェームズ・オルモス、ダリル・ハンナ
●世界的評価をされているにも関わらず、どこが良いのか理解不能な映画が黒澤明の『野良犬』と本作だ。全体を象徴する“酸性雨降りしきる退廃した多国籍な町”は4Kで鮮明となったが、結局は美術先行。欲しいのはドラマトゥルギーなのだ。いっそディカード=レプリカントに振り切るべきだったと壊れたネオン管の喧しさの中でまた思う。


こちらあみ子
2022.07.24 kino cinema 横浜みなとみらい:シアター3 [1200円/104分]
【113】2022年ハーベストフィルム=エイゾーラボ 監督:森井勇佑 脚本:森井勇佑
CAST:大沢一菜、井浦新、尾野真千子、奥村天晴、大関悠士、橘高亨牧、播田美保、黒木詔子、兼利惇哉、一木良彦
●上映後、主演子役の一菜ちゃんの登壇で和やかな空気で映画館を出たものの、天真爛漫なあみ子の無邪気さの後ろで人々が壊れ、家族が崩壊していく中で、あみ子の唯我独尊をどこまで許容出来るのか問われている気がした。「こちらあみ子」と繰り返し応答なきトランシーバーに語りかける子役の個性に作品が依存し過ぎなのは気になった。
※2022年キネマ旬報ベストテン第4位


炎のデス・ポリス
2022.07.24 kino cinema 横浜みなとみらい:シアター1 COP SHOP [1200円/107分]
【114】2021年アメリカ 監督:ジョー・カーナハン 脚本ジョー・カーナハン、クルト・マクラウド
CAST:ジェラルド・バトラー、フランク・グリロ、アレクシス・ラウダー、トビー・ハス、ライアン・オナン、チャド・コールマン
●B級ジャンル映画臭が漂いすぎる邦題にリボルバーのアップ。そこからのまさかのラロ・シフリン“Magnum Force”。ご機嫌すぎる。どこまで俺を喜ばす気?と信じられない気分のまま、要塞と化した警察署で4すくみのバトルが展開する。もう最高!そして滅法面白え。こういうジャンル映画が底辺を支えてこそ映画興行は活性するのだ。


カラフル
2022.07.30 目黒シネマ [1000円/127分]
【115】2010年フジテレビ=サンライズ=東宝 監督:原恵一 脚本:丸尾みほ
CAST:(声)冨澤風斗、宮崎あおい、南明奈、まいける、入江甚儀、藤原啓治、中尾明慶、麻生久美子、高橋克実
●ありかちな“甦りもの”としてお気楽に観つつ、どこか変てこな展開に途惑っていたら、玉電をめぐる小さな旅で突然のトーンチェンジ。なるほど原恵一はこれをやりたかったのかと得心した途端、登場人物たちがカラフルに輝き始めた気がして、主人公の再生が家族の再生に繋がっていく結末に、例によって安い涙腺が大いに疼き出して困った。


映画クレヨンしんちゃん/嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
2022.07.30 目黒シネマ [ 〃 /89分]
【116】2001年シンエイ動画=テレビ朝日 監督:原恵一 脚本:原恵一
CAST:(声)矢島晶子、藤原啓治、ならはしみき、こうろぎさとみ、嘉津山正種、小林愛、真柴摩利、林玉緒、一龍斎貞友
●落涙必至アニメであることは先にビデオで観てわかっていたが、新世紀も22年経った今、還暦を過ぎて観るともはや落涙どころか爆涙だった。懐古趣味よりも家族愛、未来へ向かう物語だと知りつつも、例えば夕焼けの町に豆腐屋のラッパが鳴って近所からカレーの匂いが立ち上るといちいち持っていかれる。原恵一による揺るぎない名作だ。


MIND GAME
2022.07.30 目黒シネマ [1100円/103分]
【117】2004年アスミックエース=STUDIO4℃ 監督:湯浅政明 脚本:湯浅政明
CAST:(声)今田耕司、前田沙耶香、藤井隆、山口智充、中條健一、たくませいこ、坂田利夫、島木譲二、西凛太郎
●観賞というより体感。湯浅政行を世界に知らしめた一作だが、『夜は短し歩けよ乙女』や『犬王』と違い、設定に制限がないためブレーキの壊れた新幹線の如く映像が爆走し、膨大な情報量もろとも津波化してイメージのカオスとなる。この湯浅ワールドとスタジオ4℃の偏執狂的アニメ映像が正直しんどく、とっととクジラから脱出したかった。


アルマゲドン
2022.07.31 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 ARMAGEDDON [1200円/150分] ※再観賞
【118】1998年アメリカ 監督:マイケル・ベイ 脚本:ジョナサン・ヘンスレー、J・J・エイブラムス
CAST:ブルース・ウィリス、ベン・アフレック、リヴ・タイラー、スティーヴ・ブシェーミ、ビリー・ボブ・ソーントン
●お涙頂戴展開に律儀に泣けたのは24年前と同じだが、隕石落下、打ち上げ、着陸、掘削、脱出、帰還とクライマックスが羅列されて食傷し、さらに序盤のライフル乱射から宇宙ステーションの燃料漏れ、ブシェーミの乱心など要らない場面が次々と盛られていく。まあブラッカイマー&ベイの入場料を倍返してやるとの精神には頭が下がるが。


海上48hours 悪夢のバカンス
2022.08.06 イオンシネマ座間:スクリーン6 SHARK BAIT [1100円/85分]
【119】2021年イギリス 監督:ジェームズ・ナン 脚本:ニック・ソルトリーズ
CAST:ホリー・アール、ジャック・トゥルーマン、キャサリン・ハネイ、マラキ・プラー=ラッチマン、トーマス・フリン
●100本は越えるという「サメ映画」。もはや一大ジャンルだが、時間と生産の蓄積も空しく『JAWS』演出の亜流をまだやっている。浮かれた若者たち5人が次々と餌食になるスラッシャーホラーの王道展開も広い海を持て余し気味で、観ながら勝手に頭に浮かぶ展開予想を悉く下回っていく。この“つかまされた”感も「サメ映画」の味わいなのか。


プアン/友だちと呼ばせて
2022.08.11 新宿武蔵野館:スクリーン1 วันสุดท้าย.. ก่อนบายเธอ|ONE FOR THE ROAD [1200円/129分]
【120】2021年タイ 監督:バズ・プーンピリヤ 脚本:バズ・プーンピリヤ、ノタポン・ブンプラコープ
CAST:トー・タナポップ、アイス・ナッタラット、プローイ・ホーワン、ヌン・シラパ、ヴィオーレット・ウォーティア
●スタイリッシュであることと作品の評価とはまったく別モノだが、こうもカメラ、サウンド、編集をキレっキレに決められると格好良さに溜息が出る。バンコクとニューヨーク、過去と現在。振り返れば通俗の域を出ないものの、だからこそ描かれる友情や恋愛には動かし難い普遍があり、それぞれの人生が焙られ、愛おしさに到達している。


空、みたか?
2022.08.24 シネマヴェーラ渋谷 [1100円/102分]
【121】1971年田辺プロ 監督:田辺泰志 脚本:田辺泰志
CAST:吉澤健、吉岡ゆり、工藤和子、宮崎ふみえ、岩崎恵美子、草野大悟、吉田日出子、堤玲子、斎藤正治、殿山泰司
●大学時代の友人が「これぞ坂口安吾の現代的解釈によるアヴァンギャルドな傑作」との熱弁を受けて待つこと40年。確かに特異な青春映画だったが、青年が自ら「堕落論」を実践していたのか、単なる行き当たりばったりに女を抱きまくっていたのかは不明。その思考に同化するには私は齢をとりすぎたのかも知れない。実に寂しいが。


Zola ゾラ
2022.08.27 イオンシネマ座間:スクリーン2 ZOLA  [1000円/86分]
【122】2021年アメリカ 監督:ジャニクサ・ブラヴォー 脚本:ジャニクサ・ブラヴォー、ジェレミー・O・ハリス
CAST:テイラー・ペイジ、ライリー・キーオ、ニック・ブラウン、コールマン・ドミンゴ、ミーガン・ヘイズ、ネルシー・スフラン
●白人親父どもの醜悪なチンコの羅列は場末の洋ピン専門館の懐かしさがあったが気分のいいものではない。しかしそこはA24の製作。ポールダンサーの黒人女性がツイッターに投稿した計148のツイートの再現を試みた実録映像で、殆どが脳天気なバカなので先の展開は読めないが、妙に作家性を押し出してくるからまったく油断ならない。


アキラとあきら
2022.08.28 イオンシネマ座間:スクリーン2 [無料/128分]
【123】2022年WOWWOW=東宝 監督:三木孝浩 脚本:池田奈津子
CAST:竹内涼真、横浜流星、髙橋海人、ユースケサンタマリア、上白石萌歌、児嶋一哉、江口洋介、宇野祥平、奥田瑛二
●冒頭の3分でこりゃダメだと思った。人物の内面を掘り下げることなく単純に記号化し、意味なく雨を降らせてエモく見せるところは再現VTRの感動手法を駆使し、展開の殆どをセリフで進行させる。それでもダレ場を作らずまとめてしまうのは量産監督のソツのなさなのか。なにせ新作3本をシネコンに同時公開させたのだから中々の処世術だ。


今夜、世界からこの恋が消えても
2022.08.28 イオンシネマ座間:スクリーン7 [1000円/121分]
【124】2022年製作委員会=東宝 監督:三木孝浩 脚本:月川翔、松本花奈
CAST:福本莉子、道枝駿佑、古川琴音、前田航基、西垣匠、松本穂香、野間口徹、野波麻帆、水野真紀、萩原聖人
●それぞれジャンルの違う三木孝浩の監督作を一日で3本観るという趣向だが、これが一番面白かった。記憶喪失者の恋愛という既視感ありありのストーリーはお手のものか。かなりの部分を古川琴音が救っていたが、美大志望や突然死など伏線なしのご都合主義も胸キュンという最終局面に着地させるために手段を選ばないのはすごい。


TANG タング
2022.08.28 イオンシネマ座間:スクリーン8 [1000円/115分]
【125】2022年製作委員会=ワーナー 監督:三木孝浩 脚本:金子ありさ
CAST:二宮和也、満島ひかり、市川実日子、小手伸也、奈緒、京本大我、山内健司、濱家隆一、景井ひな、武田鉄矢
●キャラクター味に乏しいタングを相手に二宮が一生懸命盛りあげようとする姿は日光の猿回し的な涙ぐましさだ。美術をはじめVFX製作陣の頑張りに監督は何をやっていたのだろうと思いつつも、メジャー資本によるシネコン3本同時公開は快挙としておこう。満島ひかりから毒気を抜いて可愛く撮り切るあたりはさすがなのかも知れない。


さかなのこ
2022.09.03 イオンシネマ座間:スクリーン4 [1000円/139分]
【126】2022年東京テアトル=バンダイナムコ 監督:沖田修一 脚本:沖田修一、前田司郎
CAST:のん、柳楽優弥、夏帆、磯村勇斗、岡山天音、宇野祥平、鈴木拓、豊原功補、さかなクン、三宅弘城、井川遥
●製作ニュースの段階でキャスティングに「えっ?」と思ったが、沖田修一作品として興味は持てた。ところが海中を泳ぐのんを見た途端に個人的ファンムービーと化してしまう。確かに観終わると他に誰がさかなクンを演じられたか?と思ってしまう。変な部分も少なくないが「普通って何?」というテーマは観客に響いたのではないか。


ブレット・トレイン
2022.09.03 イオンシネマ座間:スクリーン1 BULLET TRAIN [1000円/126分]
【127】2022年アメリカ 監督:デヴィッド・リーチ 脚本:ザック・オルケウィッツ
CAST:ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、真田広之
●原作は未読だが、後半、テントウ虫と運命の蘊蓄など伊坂節が炸裂すると未読であるのが悔やまれた。ただそこまでPop&Violentな初期タランティーノ味が喧し過ぎて辟易していたのも事実。重厚に展開しろとはいわないが、「何でもあり」になると殺し殺されの連続が絵空事に思え、クライマックスのケレンがどうでもよくなってしまった。


NOPE ノープ
2022.09.03 イオンシネマ座間:スクリーン6 NOPE [1000円/131分]
【128】2022年アメリカ 監督:ジョーダン・ピール 脚本:ジョーダン・ピール
CAST:ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、スティーヴン・ユァン、マイケル・ウィンコット、ブランドン・ペレア
●“そのもの”がチープ過ぎないか?とのレビューが飛び交いそうだが、牧場での兄妹の日常ドラマに次第に得体の知れない何かが侵食していくサスペンスは大いに楽しめた。舞台がアメリカ西部の閑散とした町というのも効いていて、馬の描写も含めて終わってみれば黒人なりのカウボーイ賛歌になっているのも面白い。なかなか拾い物ではないか。


ドライビング Miss デイジー
2022.09.04 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン4 DRIVING MISS DAISY [1200円/99分]
【129】1989年アメリカ 監督:ブルース・ベレスフォード 脚本:アルフレッド・ウーリー
CAST:モーガン・フリーマン、ジェシカ・タンディ、ダン・エイクロイド、パティ・ルポーン、クリスタル・フォックス
●観ていてそうかな?と思ったらやっぱりオフ・ブロードウェイの映画化だった。「老い」や「人種差別」という問題をちらつかせながらふたりの名優が25年間を紡いでいく。ブレーキとアクセルを踏み間違えれば大抵ロクなことにならないが、そのことでmissデイジーは人生の友を得る。そう思うとラストの余韻が愛おしくも楽しい。
※1990年キネマ旬報ベストテン第8位


PLAN75
2022.09.04 港南台シネサロン1 [1100円/112分]
【130】2022年製作委員会=ハピネットファントム 監督:早川千絵 脚本:早川千絵、ジェイソン・グレイ
CAST:倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン、大方斐紗子、串田和美
●75歳安楽死政策に応募することはないが、これが「PLAN85」だとしたら迷うだろう。老いに対する根源的な畏怖とはそういうことか。姿勢も正しく声に張りもある倍賞千恵子がそこまでの老人とは思えなかったが、むしろそこに「PLAN75」の制度矛盾が浮き彫りとなる。ただ老人の背中を長回しで撮る演出にあさとさを感じたのも確か。
※2022年キネマ旬報ベストテン第6位


百 花
2022.09.10 109シネマズグランベリーパーク:シアター6 [1200円/104分]
【131】2022年東宝=テレビ朝日=ギャガ 監督:川村元気 脚本:川村元気、平瀬謙太朗
CAST:菅田将暉、原田美枝子、長澤まさみ、北村有起哉、岡山天音、河合優実、長塚圭史、板谷由夏、占部房子、永瀬正敏
●川村元気という当代随一の製作者が単に企画・人脈・金集めだけでなく文学的、映像作家的にも非凡であることを見せつけた。かつて映画青年たちを熱狂させた十代の原田美枝子とはまったくの別人に思えるが、久々に彼女を本気にさせた(?)手腕は大いに評価したい。もっとも母を送る前に観ていたらまた違った感想になるかも知れないが。


キングメーカー 大統領を作った男
2022.09.11 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 킹메이커 [1100円/123分]
【132】2021年韓国 監督:ビョン・ソンヒョン 脚本:ビョン・ソンヒョン
CAST:ソル・ギョング、イ・ソンギュン、ユ・ジェミョン、チョ・ウジン、パク・イナン、ペ・ジョンオク、キム・ソンオ
●光が眩しいほど影の色は濃くなっていく。その影を演じたイ・ソンギョンの好青年キャラはミスキャストだったと思う。おそらく欠点はそれくらいで、カメラ、照明、美術のどれもが一級品。相変わらず滅法面白いポリティカルエンターティメントを作るものだと感心する。この影の存在が金大中の生涯史のほんの初端に過ぎないのも悲しい。


三姉妹
2022.09.11 川崎市アートセンターアルテリオ映像館 세자매 [1100円/115分]
【133】2021年韓国 監督:イ・スンウォン 脚本:イ・スンウォン
CAST:ムン・ソリキ、ム・ソニョン、チャン・ユンジュ、チョ・ハンチョル、ヒョン・ボンシク、キム・カヒ
●それぞれ人生を詰みかけている三姉妹。狂気に囚われているのか、突き抜けてしまったのか、薄いガラス一枚に踏み留まっているのか。ラストの記念写真のストップモーションが幼少期のトラウマからの解放のようでいて、単にひとつの句読点を打ったに過ぎないのだとしたら、エグ味は残るが贖罪と救済のドラマは成立していたのではないか。


三人の名付親
2022.09.12 シネマヴェーラ渋谷 3 GODFATHERS [800円/107分]
【134】1948年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:ローレンス・スターリングス、フランク・S・ニュージェント
CAST:ジョン・ウェイン、ペドロ・アルメンダリス、ハリー・ケリーJr、ジェーン・ダーウェル、ベン・ジョンソン
●中学生の時、テレビで面白かった記憶のままスクリーンで再会。ただ三人の荒くれ者と赤ん坊の“THREE MEN AND A BABY”な内容に対し、砂漠の描写が過酷過ぎて正直面食らった。終始死の影に覆われて最後は宗教にすがるかと思いきや飛びきり明るい大団円に転換。大巨匠にしては重さと軽さのバランスがうまくいってなかったのではないか。


男の敵
2022.09.12 シネマヴェーラ渋谷 THE INFORMER [800円/92分]
【135】1935年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:ダドリー・ニコルズ
CAST:ヴィクター・マクラグレン、ヘザー・エンジェル、プレストン・フォスター、マーゴット・グレアム、ウォーレス・フォード
●これだけ主人公に思い入れを抱かせないジョン・フォード映画もあるものだ。観客の誰もがジポの数時間の物語に反発し、嫌悪し、冷やかに憐憫しながら、やがて人間の悲しさを見るのではないか。ダブリンの街並みの印影に足にまとわりつく手配ポスターの不気味さ、レジスタンスの暗い質感と相俟ってノワールの深淵に沈ませていく演出力よ。
※1935年キネマ旬報ベストテン第5位


駅馬車
2022.09.12 シネマヴェーラ渋谷 STAGECOACH [800円/99分] ※再観賞
【136】1939年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:ダドリー・ニコルズ
CAST:ジョン・ウェイン、クレア・トレヴァー、トーマス・ミッチェル、ルイーズ・プラット、ジョン・キャラダイン
●最初に矢に射抜かれるのがJ・キャラダインと記憶していたのは初見から40年余の歳月による誤りとしても、単純にアパッチの急襲に駅馬車が応戦するアクション西部劇だと思い込んでいた。まさかここまでストーリーの起伏や細やかな人間描写に富んだドラマだったことに唖然。小粋なラストのカタルシスといい、改めて映画史の金字塔だった。
※1940年キネマ旬報ベストテン第2位


荒野の決闘
2022.09.12 シネマヴェーラ渋谷 MY DARLING CLEMENTINE [800円/97分] ※再観賞
【137】1946年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:サミュエル・G・エンゲル、ウィンストン・ミラー
CAST:ヘンリー・フォンダ、ビクター・マチュア、リンダ・ダーネル、ウォルター・ブレナン、キャシー・ダウンズ
●9年前に同じ劇場で観ているが、その時の何十倍も良かった。一体「いとしのクレメンタイン」の何を観ていたのか。モニュメントバレーの雄大な風景を脳に刷り込ませてからフォードが醸し出す叙情に身を委ねるべき映画で、案外トゥームストンもOK牧場も借景に過ぎなかったのか。何度観てもビクター・マチュアのドクが魅力的すぎる。
※1947年キネマ旬報ベストテン第2位


洲崎パラダイス 赤信号
2022.09.13 早稲田松竹 [800円/81分]
【138】1956年日活 監督:川島雄三 脚本:井手俊郎、寺田信義
CAST:新珠三千代、三橋達也、轟夕起子、河津清三郎、芦川いづみ、牧真介、津田朝子、植村謙二郎、田中筆子、小沢昭一
●今や名画座では川島雄三はスター監督の感があるが、なかなか機会に恵まれず、やっと観られたこの有名な本作で5本目となる。意外だったのは色街のナカの話ではなく、その手前でくっついたり離れたりする男女の致し方のなさの物語になっていたこと。馬鹿馬鹿しさが突き抜けて可笑しさを醸し出すと、そこに人間賛歌が焙り出されていく。


サブマリン爆撃隊
2022.09.17 シネマヴェーラ渋谷 SUBMARINE PATROL [無料/95分]
【139】1938年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:ライアン・ジェームズ、ダレル・ウェア、ジャック・イェレン
CAST:リチャード・グリーン、ナンシー・ケリー、プレストン・フォスター、ジョージ・バンクロフト、ジョン・キャラダイン
●昭和13年の製作といえば日中戦争突入の年で第二次世界大戦の前年に当たる。あくまでも戦争娯楽映画としてフォード映画のコクは見られないものの、あからさまな米海軍礼賛のプロパカンダ映画にもなっていない。しかし恋の告白を大合唱で応答する思わず頬がほころぶラストにまだまだこの国には余裕があったのだろうと思う。


わが谷は緑なりき
2022.09.17 シネマヴェーラ渋谷 HOW GREEN WAS MY VALLEY [800円/118分]
【140】1941年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:フィリップ・ダン
CAST:ウォルター・ピジョン、モーリン・オハラ、ドナルド・クリスプ、ロディ・マクドウォール、サラ・オールグッド
●圧巻。名作といわれる映画が持つ豊潤な香りが映画館に広がる。ウェールズの炭鉱で働く家族。過酷な労働に伴う怒りや悲しみ、日々の歓喜や愛情。様々な出来事が流れていく中で、それらすべて受け入れる家族のあり方。何と心地よかった2時間だったか。 “西部劇の巨人” は同時にアイリッシュ出身のヒューマニストだったのだ。
※1951年キネマ旬報ベストテン第3位


LOVE LIFE
2022.09.19 TOHOシネマズ海老名:スクリーン6 [1100円/123分]
【141】2022年製作委員会=めーてれ 監督:深田晃司 脚本:深田晃司
CAST:木村文乃、永山絢斗、砂田アトム、山崎紘菜、神野三鈴、田口トモロヲ、嶋田鉄太、三戸なつめ、福永朱梨
●ふたりの視線が交わったところでメインタイトル。やられた!今年の邦画ベストワン決定、おめでとう深田晃司(違っ)。とにかく何気ない言葉や目線の位置で観る側を揺さぶってくる人間洞察の鋭さ。それに応える演技陣。「愛」と「人生」も人間は過去の堆積から逃れられず最後は誰もが個として死んでいく。読み解き甲斐は無限大か。


ヘルドッグス
2022.09.19 TOHOシネマズ海老名:スクリーン3 [1100円/138分]
【142】2022年ソニー=東映=エイベックス 監督:原田眞人 脚本:原田眞人
CAST:岡田准一、坂口健太郎、松岡茉優、北村一輝、大竹しのぶ、MIYAVI、金田哲、木竜麻生、吉原光夫、酒向芳
●もともとキレ味の鋭い演出に息子、遊人の編集技術が堪能出来そうで久々に史実から解放された原田眞人作品に大いに期待した。結果、緊迫感満点のアクションの畳み掛けは申し分なし。しかし坂口健太郎が岡田准一のみならず映画全体の足を引っ張っている。どこがサイコキラーだ。奥野瑛太あたりをバディに据えたら最高だったと思うが。


リバティ・バランスを射った男
2022.09.23 シネマヴェーラ渋谷 THE MAN WHO SHOT LIBERTY VALANCE [1600円/123分]
【143】1962年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:ジェームズ・ワーナー・ベラ、ウィリス・ゴールドベック
CAST:ジェームズ・スチュアート、ジョン・ウェイン、ヴェラ・マイルズ、リー・マーヴィン、エドモンド・オブライエン
●「拳銃ではなく法が支配する世界」を願いながらも最後に「ここは西部、伝説と真実なら伝説をとる」と言い放つ。時代の変わり目を描きつつ合衆国がこの葛藤から抜け出せていないことを前提に、フォードとウェイン、最後のコンビ作品であることがどこまでも感慨深い。ただJ・スチュアートがいかに名優であるのかを見せつけられた。


捜索者
2022.09.25 シネマヴェーラ渋谷 THE SEARCHERS [1600円/119分]
【144】1956年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:フランク・S・ニュージェント
CAST:ジョン・ウェイン、ジェフリー・ハンター、ナタリー・ウッド、ヴェラ・マイルズ、ラナ・ウッド、ハリー・ケリーJr
●ゴダールを始め史上最高の西部劇との呼び名も高く、立ち見札止めの大盛況だった。確かに扉の向こうのモニュメントバレーは素晴らしかったが、今の倫理的尺度で評価するべきではないと重々承知のうえでインディアンを一方的な害悪として描くことが許されていた時代の産物であり、単純二極による復讐譚に過ぎないとしか思えなかった。


秘密の森の、その向こう
2022.09.25 Bunkamuraル・シネマ1 PETITE MAMAN [1200円/73分]
【145】2021年フランス 監督:セリーヌ・シアマ 脚本:セリーヌ・シアマ
CAST:ジョセフィーヌ・サンス、ガブリエル・サンス、ニナ・ミュリス、マルゴ・アバスカル、ステファン・ヴァルペンヌ
●森で出会ったふたり、それは8歳のママだった・・・。同い年8歳の少女の後ろ姿に大人が透けて見えてどぎまぎしてしまう。『燃ゆる女の肖像』でも視線交錯のインパクトで唸らさせたセリーヌ・シアマ監督が表現したふたりの女。時空を超えた出会いの中で喪失と癒しを同時に描き切って見事だ。前作同様、繰り返し観なければと心に決めた。



2022.09.25 ヒューマントラストシネマ渋谷:シアター1 [1200円/99分]
【146】2022年日活=アークエンタテインメント 監督:松居大悟 脚本:舘そらみ
CAST:福永朱梨、金子大地、津田寛治、大渕夏子、田村健太郎、岩本晟夢、宮田早苗、金田明夫、三上市朗、中村まこと
●“ROMAN PORNO NOW”と銘打たれた50周年企画だが、松居大悟はR18に力むことなく、かつての日活ロマンポルノのどれにも属さない形で「恋愛のようなもの」を描く。確かにヒロインの恋愛遍歴が最後に父と娘の和解に帰結させるのは多少無理があったかも知れないが、前作『ちょっと思い出しただけ』に続いて絶好調なのは間違いない。


リオ・グランデの砦
2022.09.25 シネマヴェーラ渋谷 RIO GRANDE [800円/105分]
【147】1950年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:フランク・S・ニュージェント
CAST:ジョン・ウェイン、モーリン・オハラ、ベン・ジョンソン、クロード・ジャーマンJr、チル・ウィルス、ハリー・ケリーJr
広大なモニュメントバレーをバックにジョン・ウェイン隊長が指揮の騎兵隊がインディアンを追撃する。まさにずっとイメージしていたジョン・フォード映画の典型だ。進撃ラッパと歌声で誇りと熱情で綴られる騎兵隊賛歌。当然ながら今、この典型で撮ることは不可能だろう。こうして映画史の時代論として資料に収められる。これはこれで寂しい。


黄色いリボン
2022.09.28 シネマヴェーラ渋谷 SHE WORE A YELLOW RIBBON [800円/103分]
【148】1949年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:フランク・S・ニュージェント、ローレンス・スターリングス
CAST:ジョン・ウェイン、ジョーン・ドルー、ジョン・エイガー、ベン・ジョンソン、ハリー・ケリーJr、ビクター・マクラグレン
●私は整地された芝やダート、人工的な障害物を駈ける馬しか馴染みがないので、騎馬の一群が荒野の谷を川を平原を疾走するダイナミズムに圧倒される。そして夕陽に照らされるモニュメントバレーの叙情。マカロニに毒される以前にテレビで興奮した子供の頃の記憶込みで楽しんだ。そして老け役を演じたジョン・ウェイン。改めてお見事だ。


渇きと偽り
2022.10.02 イオンシネマ座間:スクリーン9 SHE WORE A YELLOW RIBBON [1100円/117分]
【149】2020年オーストラリア=アメリカ 監督:ロバート・コノリー 脚本:ハリー・クリップス、ロバート・コノリー
CAST:エリック・バナ、ジェネヴィーヴ・オーライリー、キア・オドネル、ジョン・ポルソン、ジュリア・ブレイク
●人の深層を描く人間ドラマかと思いきやハヤカワミ文庫に収録されたコテコテのミステリーだった。決して悪くはなく、現在と過去が交錯する謎解き展開が推進力となって最後まで飽きさせない。ただ干ばつに疲弊した辺境の村の状況や閉鎖的な村人たちの描き込みが明らかに弱いし薄い。もっと匂いを漂わせる濃口の味わいが欲しかった。


恋する惑星
2022.10.08 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 重慶森林/CHUNGKING EXPRESS [無料/100分]
【150】1994年香港 監督:ウォン・カーワァイ 脚本:ウォン・カーワァイ
CAST:トニー・レオン、フェイ・ウォン、ブリジット・リン、金城武、チャウ・カーリン
●公開年にビデオで観た。フェイの歌と「カルフォルニ・アドリーミン」がやけに耳に残っている。そんなに昔の映画という気はしないが、金城武のパートは綺麗に抜け落ちていた。返還前の香港をケレンたっぷりに切り取った映像はそれほど古びていなとしても、私の趣向とは対極の映画。レビューは無理せんとこ。どうしたって肌が合わない。


天使の涙
2022.10.08 川崎市アートセンター アルテリオ映像館 堕落天使/FALLEN ANGELS [1100円/96分]
【151】1995年香港 監督:ウォン・カーワァイ 脚本:ウォン・カーワァイ
CAST:レオン・ライ、ミシェル・リー、金城武、チャーリー・ヤン、カレン・モク、チン・マンライ、斎藤徹
●最初からストーリーなど追う気はなかったが、映像と音楽の羅列で眩暈を通り越して胃がもたれた。でもミュージッククリップ風ではないのが当時のウォン・カーワァイの新しさだったのだろう。スタイリッシュなノワールは嫌いではないが、このエナメル感というかセルロイド感はやっぱりつらい。続けてカーウァイを浴びて心底疲れ果てた。


家族の肖像
2022.10.11 TOHOシネマズ上大岡:スクリーン3 GRUPPO DI FAMIGLIA IN UN INTERNO [1200円/121分] ※再観賞
【152】1974年イタリア=フランス 監督:ルキノ・ヴィスコンティ 脚本:L・ヴィスコンティ、S・C・ダミーコ他
CAST:バート・ランカスター、ヘルムート・バーガー、シルヴァーナ・マンガーノ、クラウディア・マルサーニ
●敷居を越えた20歳そこそこの時はお勉強のためというより“ヴィスコンティを観ている自分”が欲しかった。情けなくもいじましい話だ。改めて観ると闖入者に翻弄される人生の末路で困惑とほくそ笑みを浮かべる巨匠の等身大が透けて見える気がした。不条理が突き抜けて理不尽と化すと笑うしかなく、もっと笑っていいのかとも思った。
※1978年キネマ旬報ベストテン第1位


川っぺりムコリッタ
2022.10.11 MOVIX橋本:シアター2 [1200円/120分]
【153】2021年KADAKAWA=朝日新聞 監督:荻上直子 脚本:荻上直子
CAST:松山ケンイチ、ムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆、江口のりこ、柄本佑、田中美佐子、笹野高史、緒形直人
●ちんこで笑わせ母性を謳いあげた前作ほど人間を描き切ったとは思わないが、死の影をちかつかせたにしてはシネスコ画面が空に抜ける気持ち良さがあり、映画を観ている多幸感を味わうことが出来た。共感しづらい人物たちも最後はパスカルズの演奏で列を作って楽しそう。うーん、パスカルズを余韻に使ったか・・・卑怯なり荻上直子(笑)


愛してる!
2022.10.15 横浜シネマ・ジャック&ベティ [1200円/94分]
【154】2022年日活 監督:白石晃士 脚本:白石晃士、谷口恒平
CAST:川瀬知佐子、鳥之海凪紗、乙葉あい、ryuchell、髙嶋政宏、根矢涼香、今成夢人、山口森広、大迫茂生、木村圭作
●ただただ面白かった。これがロマンポルノだとしたら過去のどの作品とも似ていないし、私が学生時代に入れ揚げた谷ナオミのSM映画とは思想も描写もまるで違う。そもそもこんなヒロイン像は初めてだ。まさに多様性が叫ばれる令和の時代に相応しい青春変態映画の怪作だが、最後は人間讃歌にまで昇華して感動すら呼ぶ。むしろ快作か。


百合の雨音
2022.10.15 横浜シネマ・ジャック&ベティ [1200円/84分]
【155】2022年日活 監督:金子修介 脚本:高橋美幸
CAST:小宮一葉、花澄、百合沙、行平あい佳、大宮二郎、宮崎吐夢、星野花菜里、宝保里実、細井じゅん
●金子修介なので“ROMAN PORNO NOW”で一番に期待していた。しかし一番つまらない。いちいち濡れ場が退屈で、助長する平坦な劇伴が延々と繰り返されるたびに苛々が募る。往年の昼メロ展開にも驚いたが、濡れ場を一定数入れなければならないお約束が枷となって物語が停滞するロマンポルノあるあるに嵌っている。要は古臭いのだ。


RRR
2022.10.22 イオンシネマ座間:スクリーン10 राइज़ रौर रिवोल्ट/RRR [1000円/188分]
【156】2021年インド 監督:S・S・ラージャマウリ 脚本:S.S.ラージャマウリ
CAST:N・T・ラーマ・ラオJr、ラーム・チャラン、アジャイ・デーヴガン、アーリヤー・バット、O・モリス、シュリヤー・サラン
●この秋最大に期待し、そしてまたもラージャマウリ監督に至福の3時間をもらった。英雄ふたりの友情、恋愛、裏切りとめくるめく戦闘に歌とダンス。もうぶっちぎりの面白さ。想像を超える映像を矢継ぎ早に繰り出されて突っ込む暇もない。ついでにインド映画の全部をボリウッドなどと知ったかぶりするバカ評論家どもに水と炎の鉄槌を!


四畳半タイムマシンブルース
2022.10.23 川崎チネチッタ:チネ9 [無料/84分]
【157】2022年KADOKAWA=アスミックエース=サイエンスSARU 監督:夏目真悟 脚本:上田誠
CAST:(声) 浅沼晋太郎、坂本真綾、吉野裕行、中井和哉、諏訪部順、甲斐田裕子、佐藤せつじ、本多力
●劇団ヨーロッパ企画のことは知らないが、彼らの原案に四畳半の空間で馬鹿やってる京大生のインテリジェンスが魅力の森見ワールドが融合していたかといえばどうだろう。面白くは観たがもともと中村佑介のキャラクターの内、樋口師匠と小津が私のイメージではないのが気になった。テレビシリーズの1エピソード風なのも残念だった。


耳をすませば
2022.10.23 川崎チネチッタ:チネ2 [1200 円/111分]
【158】2022年ソニー=松竹 監督:平川雄一朗 脚本:平川雄一朗
CAST:清野菜名、松坂桃李、山田裕貴、内田理央、安原琉那、中川翼、音尾琢真、松本まりか、小林隆、田中圭、近藤正臣
●清野菜名を目当てに観た。アクションを封印した彼女は健気に頑張っていたと思う。しかし中学時代を演じた子とあまりにも顔が違うし、この子のワークショップ風演技(?)にはかなり辟易した。しかも二人が同じ画面でシンクロするシーンもあるとなると目も当てられない。未だこんな情けないことが普通に罷り通るのは日本映画だけだ。


線は、僕を描く
2022.10.23 109シネマズグランベリーパーク:シアター10 [1200円/106分]
【159】2022年日本テレビ=東宝他 監督:小泉徳宏 脚本:片岡翔、小泉徳宏
CAST:横浜流星、清原果耶、三浦友和、江口洋介、細田佳央太、河合優実、夙川アトム、矢島健一、井上想良、富田靖子
●競技カルタから水墨画に移した部活ドラマだと軽く思っていた。作り手たちが担ったテーマのひとつに「水墨画の美しさ」の表現があるとすれば、それは十分に達成され、一気にラストまで見せる推進力になっている。ただ悲劇を抱えた主人公が乗り越えるきっかけとして水墨画でなければならなかった理由は乏しく、少しだけ残念に思えた。


アムステルダム
2022.10.29 109シネマズグランベリーパーク:シアター7 AMSTERDAM [1200円/134分]
【160】2021年アメリカ 監督:デヴィッド・O・ラッセル 脚本:デヴィッド・O・ラッセル
CAST:クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デヴィッド・ワシントン、ラミ・マレック、ロバート・デ・ニーロ
●久々に洋画らしい洋画を観た気がする。美術など作り込まれた世界観での名優たちの演技合戦が見どころ。それが結構楽いし、複雑な背景を端正に見せる演出も鮮やかで悪くない。二人が逃亡している筈なのにどこか牧歌的なのは “バディに割り込む謎の美女” の道具立てと戦後と戦前の狭間にある1930年代ニューヨークの雰囲気なのだろう。


天間荘の三姉妹
2022.10.30 イオンシネマ座間:スクリーン1 [1000円/150分]
【161】2022年東北新社=東映 監督:北村龍平 脚本:嶋田うれ葉
CAST:のん、門脇麦、大島優子、寺島しのぶ、高良健吾、山谷花純、永瀬正敏、柳葉敏郎、柴咲コウ、三田佳子、中村雅俊
●悪い映画ではないが、台詞に頼って上手く表現されていない箇所も少なくない。もっと工夫の余地もあったろうし、2時間半の長尺を持て余し大団円が何度も繰り返されるなど欠点は多い。ただ今まで当て書き台本を演じ続けていたであろうのんが初めて代替可能な役に挑み、多彩な顔ぶれの中で堂々と座長を全うしたことの感慨はある。


レイジング・ブル
2022.11.01 TOHOシネマズ海老名:スクリーン8 RAGING BULL [1200円/128分] ※再観賞
【162】1980年アメリカ 監督:マーティン・スコセッシ 脚本:ポール・シュレイダー、マーディク・マーティン
CAST:ロバート・デ・ニーロ、キャシー・モリアーティ、ジョー・ペシ、フランク・ヴィンセント、ニコラス・コラサント
●20歳のデートムービーだった。あの頃は『ロッキー』の続編があり、日常的に暴力映画ばかり観ていためか、ボクシング場面もDVもとくに感じるものはなく、デ・ニーロの超絶演技にただ驚いていた。今、この力作が突きつける「痛み」に喰らわせられるのは、ガタがきた肉体と相俟って暴力への耐性がなくなったからなのに違いない。
※1981年キネマ旬報ベストテン第6位


RRR
2022.11.01 109シネマズグランベリーパーク:シアター9 IMAX राइज़ रौर रिवोल्ट/RRR [1800円/179分] ※再観賞
【163】2021年インド 監督:S・S・ラージャマウリ 脚本:S.S.ラージャマウリ
CAST:ラーム・チャラン、N・T・ラーマ・ラオJr、アジャイ・デーヴガン、アーリヤー・バット、O・モリス、シュリヤー・サラン
●ビームが滾る、ラーマが爆ぜる。蹴散らされたのは無数の英兵とハリウッド超大作だ。まだ頭の中が火照ってる。これは大画面、大音響、高精彩のIMAXレーザーでの再見しかない!となったが、あらゆる唯一無二もさることながらラージャマウリ演出の目配せ、脚本の語り口の巧さも劇伴の使い方も絶妙。総じて「面白れぇ」への追求の結晶だ。


モダン・タイムス
2022.11.03 角川シネマ有楽町 CITY LIGHTS [1200円/86分] ※再観賞
【164】1936年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、ポーレット・ゴダード、ヘンリー・バーグマン、チェスター・コンクリン、アラン・ガルシア
●テアトル東京での追悼上映は高2の時。もちろん労働への共感は昔とは比較にならないが、とにかくラストの「スマイル」で嗚咽して周囲に悟られまいと身構えていたら、その前の「ティティーナ」を歌う喜劇王の孤高にもう落涙。そこからの曲名通りの「スマイル」のラストに制御不能となる。もちろん映画の偉大さは涙の量では測れないが。
※1938年キネマ旬報ベストテン第4位


街の灯
2022.11.03 角川シネマ有楽町 CITY LIGHTS [1200円/86分] ※再観賞
【165】1931年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、ヴァージニア・チェリル、フローレンス・リー、ハリー・マイアーズ、ハンク・マン
●最初にこの映画のラストに触れたのは映像ではなく淀川長治さんのラジオ番組での解説だった。もうその時点でうるっときて以来、全編を観なくても反射神経で泣いてきた。だから今の心の現在地を知る怖さもあった。そして「ハッピーエンドかバッドエンド」かの議論は花売り娘の仕草ひとつひとつが愛に満ちていることで前者を確信。
※1934年キネマ旬報ベストテン第10位


のらくら
2022.11.03 角川シネマ有楽町 THE IDLE CLASS [1200円 /29分]
【166】1921年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、エドナ・パーヴァイアンス、マック・スウェイン、ヘンリー・バーグマン
●このタイトルより『チャップリンのゴルフ狂時代』の方で憶えていた。そういえば昔、淀川さんが大男が出てきたら皆チャップリンの敵といっていたことを思い出し、それがあまりにもその通りなので笑ってしまった。もうひと役のスボンを履き忘れたうっかり紳士のギャグが笑えるが、放浪者はマジでゴルフをやりに現れたのだろうか?


巴里の女性
2022.11.03 角川シネマ有楽町 A WOMAN OF PARIS [ 〃 /81分]
【167】1923年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:エドナ・パーヴァイアンス、エイドルフ・マンジュー、カール・ミラー、リディア・ノット、チャールズ・フレンチ
●フランスの片田舎とパリの社交界、葛藤と猜疑に囚われ、果ては悲劇に至るまでの男女の愛憎を描いてみせた驚くべき作品。この心理的ノワールとアイロニーを白黒の印影とサイレントで見せ切ってしまう演出こそ、まさしく天才であることの証明だ。この人が映画作家に徹していればまた別の映画史が生まれていたのかも知れない。
※1924年キネマ旬報ベストテン第1位


サニーサイド
2022.11.03 角川シネマ有楽町 SUNNYSIDE [1200円/30分]
【168】1919年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、エドナ・パーヴァイアンス、トム・ウィルソン、トム・テリス、アルバート・オースチン
●チャップリンがスランプに陥っていた頃の映画として有名。確かにギャグにキレがなく、スラップスティックとしても笑えず、橋の上での少女たちとの奇妙なダンスも不気味でしかない。オチも中途半端で唐突にエンドマークが出たときは呆気にとられた。悩める喜劇王の履歴として史料的価値はあるのだろうけど。


キッド
2022.11.03 角川シネマ有楽町 THE KID [ 〃 /53分] ※再観賞
【169】1921年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、ジャッキー・クーガン、エドナ・パーヴァイアンス、トム・ウィルソン、ヘンリー・バーグマン
●ジャッキー・クーガンは私が観てきた中で最高の子役であり、両手を差し出して泣き叫びながら父を乞うシーンのパンチラインは映画史に残る名場面だ。しかし天才子役のあまりの可愛さに依存しながらの“笑いとペーソス”はズルい。そして曖昧な記憶ではどころかもの悲しい結末だったはずが、ストレートなハッピーエンドだったことにも驚いた。


もっと超越した所へ。
2022.11.06 横浜ブルグ13:シアター8 [1200円/119分]
【170】2022年製作委員会=ハピネットファントム 監督:山岸聖太 脚本:根本宗子
CAST:前田敦子、菊池風磨、伊藤万理華、オカモトレイジ、黒川芽以、三浦貴大、趣里、千葉雄大
●ほぼ救いようのないクズ男3人に寄り添う3人のダメ女。それぞれの“バカップル”が笑うほどセリフがバキバキ立っているのでこれは舞台劇かと思ったらやはりそうだった。おそらく役者たちの熱量で持っていく芝居なのだろう。面白く観たが、突拍子もないラストシーンが映画のリアリティとの乖離を感じて少し鼻白んだのも確か。


窓辺にて
2022.11.06 kino cinema横浜みなとみらい:シアター3 [1200円/143分]
【171】2022年製作委員会=東京テアトル 監督:今泉力哉 脚本:今泉力哉
CAST:稲垣吾郎、中村ゆり、玉城ティナ、若葉竜也、志田未来、佐々木詩音、倉悠貴、穂志もえか、斉藤陽一郎、松金よね子
●まず稲垣吾郎ありきの映画だとすると、画面の安定感はほぼ完璧。ただ今までの今泉力哉作品と比べ間口の狭さを感じてしまうのは、その安定感ゆえ物語からはみ出る「何か」が欠けていたためだ。その何かを探ることが今泉作品の醍醐味だっただけに残念ではある。・・・・こちらの読み込みが浅かっただけなのかとの思いも残る。再見したい。


暴力脱獄
2022.11.06 相鉄ムービル5 COOL HAND LUKE [無料/127分]
【172】1967年アメリカ 監督:スチュアート・ローゼンバーグ 脚本:ドン・ピアース、フランク・ピアソン
CAST:ポール・ニューマン、ジョージ・ケネディ、J・D・キャノン、ルー・アントニオ、ハリー・ディーン・スタントン
●中学の時『パピヨン』と比較した記事を読んだ記憶がある。邦題こそ過激だが、ゆで卵丸呑みゲームに興じる拘置所の雰囲気も囚人たちの使役も過酷とは思えず、看守側もそこまで理不尽で悪辣だとも思えなかった。描写と編集に古さが顕在し過ぎたためだろう。もちろんP・ニューマンのタフガイとG・ケネディの変幻自在には納得した。


すずめの戸締り
2022.11.11 109シネマズグランベリーパーク:シアター6 [1200円/121分]
【173】2022年STORY inc.=コミックス・ウェーブ・フィルム 監督:新海誠 脚本:新海誠
CAST:(声)原菜乃華、松村北斗、深津絵里、松本白鸚、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、神木隆之介
●トンネルから現れる丸の内線と交差する高架の中央線。昔からお茶の水聖橋から見る風景は好きだった。まさかそのトンネルに災厄が潜んでいようとは。しかし恋バナに納得度が希薄で自然災害=異様で巨大な化身という既視感しかないクライマックスは退屈。ただ宮崎-愛媛-神戸-東京。移り行く旅の景色が楽しく前二作よりかなり楽しめた。


激 怒
2022.11.12 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン3 [1000円/100分]
【174】2022年国映=インターフィルム 監督:高橋ヨシキ 脚本:高橋ヨシキ
CAST:川瀬陽太、小林竜樹、奥野瑛太、彩木あや、水澤紳吾、中原翔子、森羅万象、松嵜翔平、安藤ヒロキオ、松浦祐也
●確実に鼻骨や頬骨の破壊を狙うマウントからの顔面打撃は見ていて気持ち良いものではない。主人公の反撃が必ずしもカタルシスになる必要はないが、ヨシキ氏と私とではバイオレンスの趣向がまるで違うことが分かった。応援したい気持ちもあっただけに残念。なにより川瀬陽太にそれほどの魅力も凄味も感じることが出来なかった。


キートンの探偵学入門
2022.11.13 新文芸坐 SHERLOCK JR. [2500円/44分]
【175】1924年アメリカ 監督:バスター・キートン 脚本:クライド・ブラックマン、J・ハヴェズ、ジョゼフ・ミッチェル
CAST:バスター・キートン、キャサリン・マクガイア、ジョー・キートン、ウォード・クレイン、(弁士)片岡一郎
●キートンの何が凄いってもう100年前になろうという映画でも超絶アクションで観客を惹きつけてしまうところ。しかし図らずも先日チャップリンを観たばかりで比べてしまうと無表情に愛嬌がなく、主人公が愛しく思えるまでには至らない。実はアイディアの効いた序盤の小ネタがクライマックス以降の軽業に吹っ飛んでしまったのが勿体ない。


キートンの大列車追跡
2022.11.13 新文芸坐 THE GENERAL [2500円/77分]
【176】1926年アメリカ 監督:バスター・キートン、クライド・ブラックマン 脚本:アル・ボースバーグ、C・スミス
CAST:バスター・キートン、マリアン・マック、グレン・キャベンダー、ジム・ファーレイ、チャールズ・スミス(弁士)澤登翠
●類まれな身体能力もさることながら、かなりの予算を投じて大スペクタクルで観客のど肝を抜くサービス精神は率直に凄く、そこにキートンの思想があるのだろう。ただ汽車が橋から落ちるまでキャグが一本調子に繰り返されるのは残念。また弁士の澤登翠さんは大好きだが、はたしてキートン映画に弁士は必要なのか疑問が残った。


パラレル・マザーズ
2022.11.13 Bunkamuraル・シネマ1 MADRES PAPALELAS [1200円/123分]
【177】2021年スペイン=フランス 監督:ペドロ・アルモドバル 脚本:ペドロ・アルモドバル
CAST:ペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、イスラエル・エレハルデ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ
●ル・シネマでアルモドバルとは「いかにも」って気もするが、そんな様式で語り尽くされるアルモドバルではない。いかにも通俗的な設定の中から母性の葛藤と激しさを浮かび上がらせ、最後はスペイン内乱の近代史と融合させていく。一筋縄にはいかない作家性に完全にやられてしまうのだが、それが面白くて仕方がないから凄いのだ。
※2022年キネマ旬報ベストテン第3位


MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない
2022.11.13 シネクイント:スクリーン2 [1200円/82分]
【178】2022年CHOCOLATE Inc.=パルコ 監督:竹林亮 脚本:夏生さえり、竹林亮
CAST:円井わん、マキタスポーツ、長村航希、三河悠冴、八木光太郎、高野春樹、島田桃依、池田良、しゅはまはるみ
●高評価につられて観た。世界的にタイムループものが大流行で、それも極小単位の過去が繰り返されるパターンが多い。延々と繰り返される芝居のちょっとした違いを探す作業は億劫だし、ループをどう抜けるのか予測するのも面倒。題材的に台詞回しに演劇的な臭味が漂い勝ちで、ならば生の舞台には勝てまいと高を括ってしまうのだ。


青春の殺人者
2022.11.14 新文芸坐 [950円/132分] ※再観賞
【179】1976年今村プロ=綜映社=ATG 監督:長谷川和彦 脚本:田村孟
CAST:水谷豊、原田美枝子、市原悦子、内田良平、白川和子、江藤潤、桃井かおり、地井武男、高山千草、三戸部スエ
●十代で2度観ているが、還暦過ぎの今回が最も鮮烈に観た気がする。ジュンもケイ子も行動は行き当たりばったりで、思考も幼稚で甘いのだが、その青さゆえの一瞬のギラつきの半端ない熱量は劇的ですらある。殺される両親や監督のゴジも含め、誰ひとりとて共感はしないが、70年代青春像への郷愁だけは簡単に拭い去れるものではなかった。
※1976年キネマ旬報ベストテン第1位


独裁者
2010.11.18 角川シネマ有楽町 THE GREAT DICTATOR [1200円/126分] ※再観賞
【180】1940年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、ポーレット・ゴダート、ヘンリー・ダニエル、ジャック・オーキー、レジナルド・ガードナー
●気になったのは、ラストの大演説でハンナに希望を与えた後、床屋の運命がどうなってしまったのかということ。後日談など不要の映画かもしれないが、圧倒的な熱量で民主主義を訴えたにも関わずアメリカ映画界から追放されたチャップリンの境遇と重さなり、恐ろしい想像が湧いてしまう。そして前回観たときより確実に世界情勢は不穏だ。
※1960年キネマ旬報ベストテン第1位


殺人狂時代
2010.11.18 角川シネマ有楽町 MONSIEUR VERDOUX [1200円/124分]
【181】1940年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、マーサ・レイ、イソベル・エルソム、マリリン・ナッシュ、ロバート・ルイス
●もしかすると私のベスト1チャップリンかもしれない。女性が「殺される」場面でハラハラさせる映画は多かれど、「殺せるか」でハラハラしたのは初めてだ。しかも笑いがついてくる。こんなサスペンスが作れるのはチャップリンだけだ。名ゼリフとされるラストは解説だけで何度も聞いたが、そこに至る天才監督の演出に完全にしてやられた。
※1952年キネマ旬報ベストテン第1位


ある男
2022.11.19 イオンシネマ座間:スクリーン9 [1000円/121分]
【182】2022年製作委員会=松竹 監督:石川慶 脚本:向井康介
CAST:妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、仲野太賀、真木よう子、河合優実、柄本明
●木は50年で伐採され家となって50年生きる。では受け継がれる人間の血はどうなのか。原作を読まずしても脚色、演技の素晴らしさは明白。そして3者の視点移行を淀みなく進行させた石川慶の凄腕はミステリとして人間ドラマとして完璧。二重の鏡像の後ろ姿の絵も怖いが、弁護士の妻がジョーカーとして潜伏していたのも怖かった。
※1985年キネマ旬報ベストテン第2位


蜘蛛巣城
2022.11.20 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン2 [1200円/110分] ※再観賞
【183】1957年東宝 監督:黒澤明 脚本:小国英雄、橋本忍、菊島隆三、黒澤明
CAST:三船敏郎、山田五十鈴、千秋実、志村喬、久保明、浪花千栄子、佐々木孝丸、太刀川洋一、小池朝雄、加藤武
●初見から歳月は経ってなおシェイクスピアをちゃんと読んでいないし、能舞台を見物したこともないのでその融合に言及は出来ないが、シンメトリーを多用した画面のアート性と疾走する騎馬と矢の波状攻撃の迫力は凄まじく、アートと活劇の融合は十分に伝わった。何より黒澤映画のとってつけたヒューマニズムが皆無なのがいい。
※1957年キネマ旬報ベストテン第4位


土を喰らう十二ヵ月
2022.11.20 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン4 [無料/111分]
【184】2022年製作委員会=日活 監督:中江裕司 脚本:中江裕司
CAST:沢田研二、松たか子、西田尚美、尾見としのり、奈良岡朋子、火野正平、瀧川鯉八、檀ふみ
●柔らかく煮たタケノコを出汁をかけて頬張る沢田研二と松たか子の姿に思わず涙が出る。ドラマ上のふたりの関係とかではなくとにかくタケノコの美味しそうなのに涙が出るとは我ながらどんな情緒なのだろう。他にも菜めしやゴマ豆腐など精進料理にここまで惹かれるとは。久しぶりの中江裕司監督、『ナビィの恋』以来の新感覚映画体験だ。
※2022年キネマ旬報ベストテン第6位


ザリガニの鳴くところ
2022.11.18 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン11 WHERE THE CRAWDADS SING [無料/125分]
【185】2022年アメリカ 監督:オリヴィア・ニューマン 脚本:ルーシー・アリバー
CAST:デイジー・エドガー=ジョーンズ、テイラー・ジョン・スミス、ハリス・ディキンソン、マイケル・ハイアット
●書店で早川文庫を何度レジに持っていこうか躊躇う内、映画になってしまった。確かにヒロインのトラウマとなるDV、差別からの法廷劇、時空が飛んでからのドンデン返しと、確かにこれは一気読みさせるだろう。ただ映画は「沼」をあまりに美しく撮りすぎた。そもそもワニは?もっと不気味で危険な場所であるべきではなかったか。


一日の行楽
2022.11.23 角川シネマ有楽町 A DAY'S PLEASURE [ 〃 /18分]
【186】1919年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、エドナ・パーヴァイアンス、マリオン・フェデゥーカ、ボブ・ケリー、ジャッキー・クーガン
●『サニーサイド』とこの『一日の行楽』は評判はあまり宜しくない。百年の長きにわたってその評価が覆ることがないのだからもはや確定事項なのだろう。最初の自動車のギャグも繰り返しの乱用でクドいと感じたが、一番笑えた船から橋渡しにされた挙句海に沈んだおばさんの体当たり演技は薄っすら記憶に留めておこう。


サーカス
2022.11.23 角川シネマ有楽町  THE CIRCUS  [ 〃 /72分] ※再観賞
【187】1928年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、マーナ・ケネディ、アラン・ガルシア、レックス・ハリー・クロッカー、ヘンリー・バーグマン
●サーカスの非日常舞台はスラップスティックには諸刃の剣。それ自体が見世物なのでいくらでもドタバタに出来る分、単調なギャグの羅列になりやすい。チャップリンはそこを十分承知の上で観客のド肝を抜く。檻の中のライオン、猿がアタックする綱渡りは喜劇王のプライドだろう。ただその分、失恋に至るドラマはやや平板な気がした。
※1928年キネマ旬報ベストテン第3位


ライムライト
2010.11.23 角川シネマ有楽町 LIMELIGHT [1200円/138分] ※再観賞
【188】1952年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、クレア・ブルーム、シドニー・チャップリン、ナイジェル・ブルース、バスター・キートン
●チャップリンが言葉を雄弁に駆使する。その一つ一つが人生の矜持となり格言ともなるのだが、同時に人の弱さや嫉妬、芸人の悲哀も焙り出す。カルヴェロとテリーの淡くも激しい恋心に行き止まりが見えた後、キートンとの競演が始まり、チャップリンはこのステージで背景の笑いを消す。まさに集大成であり、安易な賛辞すら憚られる名作。
※1953年キネマ旬報ベストテン第2位


給料日
2010.11.23 角川シネマ有楽町 PAY DAY [1200円/22分]
【189】1922年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、フィリス・アレン、マックス・スウェイン、エドナ・パーヴァイアンス
●上映プログラムの都合もあるが『ライムライト』の後だとちょっと苦しかった。放浪紳士は天涯孤独であるべきで妻帯者とは興ざめだ、などとチャップリンをわかった気でいるが、現場監督との対決で描かれる労働者の理不尽より、妻の猛烈ぶりが何倍も驚異的で、まさに鬼ババ。資本弱者でなく恐妻家の悲哀を描いた一篇との印象だった。


黄金狂時代
2010.11.23 角川シネマ有楽町 THE GOLD RUSH [ 〃 /72分] ※再観賞
【190】1925年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、ジョージア・ヘイル、マックス・スウェイン、ヘンリー・バーグマン、トム・マレイ
●最高傑作ともいわれる名作もそろそろ製作100年を迎える。飢えのあまり靴を食べる、ロールパンのダンス、断崖絶壁の山小屋など映画史に残る名場面の数々だが、人間の業の凄まじさ、浅ましさが強烈過ぎて学生のとき文芸坐で観たときの印象の更新はなかった。サイレントの魅力もチャップリン自身のナレーションが阻害していたと思う。
※1926年キネマ旬報ベストテン第1位


ニューヨークの王様
2010.11.23 角川シネマ有楽町 A KING IN NEW YORK [1200円/105分]
【191】1957年イギリス 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、ドーン・アダムズ、マイケル・チャップリン、マクシーン・オードリー、シドニー・ジェイムズ
●アメリカ資本メディアを強烈に皮肉った老喜劇王の意趣返しでイギリス映画。とにかく突然のCM撮影挿入には笑う。表明的には普通の風刺劇だが、捜査当局が子供に親を売らせて共産党員を追い詰める手口もシニカルに描かれる。それを自分の子供に演じさせるチャップリンに業を感じなくもないが、映画祭の最後にこれを観て正解だった。


秘密の森の、その向こう
2022.11.25 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン1 PETITE MAMAN [1000円/73分] ※再観賞
【192】2021年フランス 監督:セリーヌ・シアマ 脚本:セリーヌ・シアマ
CAST:ジョセフィーヌ・サンス、ガブリエル・サンス、ニナ・ミュリス、マルゴ・アバスカル、ステファン・ヴァルペンヌ
●二度観て味わうべき映画というのがある。過去と未来が地続きで境界線がなく、ふたりの少女がそれを淡々と受け入れていく中で「秘密は黙っていることではなく、話す人がいなかっただけ」と知る。三世代の時を超えてお互いの喪失と癒しを共有した瞬間に目頭が熱くなった。冒頭の老婆は亡くなった祖母ではなかったか。。。これは傑作。


ザ・メニュー
2022.11.27 109シネマズグランベリーパーク:シアター5 THE MENU [1200円/107分]
【193】2022年アメリカ 監督:マイク・マイロッド 脚本:セス・ライス、ウィル・トレイシー
CAST:レイフ・ファインズ、アニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト、ジョン・レグイザモ、ホン・チャウ
●すべての物語が背景、設定、相関関係に整合性をもたせる必要はない。むしろそこで得られる予測不能な展開を楽しむのも映画の要素だとは思う。しかし本作のようなクローズなデストピアを描く以上はもう少しロジカルにやってくれないと観客を驚かすだけの道具の羅列になってしまう。チーズバーガーだけはマジで美味しそうだったが。


桐島、部活やめるってよ
2022.11.27 109シネマズグランベリーパーク:シアター10 [1600円/103分] ※再観賞
【194】2012年映画「桐島」映画部=日テレ=ショウゲート 監督:吉田大八 脚本:喜安浩平、吉田大八
CAST:神木隆之介、橋本愛、東出昌大、大後寿々花、松岡茉優、山本美月、落合モトキ、浅香航大、前野朋哉、仲野太賀
●間違いなく2010年代随一の青春映画の傑作。いや青春映画の表現も陳腐だ。本作をきっかけに学園カーストや同調圧力という言葉が巷に溢れてきたが、そのヒエラルキーの頂点にいた筈の「桐島」を失うことで、まだ何者でもない高校生たちの関係が焙り出される。結果として最後に泣き顔で気づきを示せた宏樹君には大いに救われたと思う。
※2012年キネマ旬報ベストテン第2位


窓辺にて
2022.12.01 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン2 [1000円/143分] ※再観賞
【195】2022年製作委員会=東京テアトル 監督:今泉力哉 脚本:今泉力哉
CAST:稲垣吾郎、中村ゆり、玉城ティナ、若葉竜也、穂志もえか、志田未来、佐々木詩音、倉悠貴、斉藤陽一郎、松金よね子
●再観賞は圧倒的に良かった。初見と違い茂巳が中盤まで黙っていた妻の秘密を最初から知って観たことで、稲垣の人物への理解度が完璧だったことがわかる。それゆえ喫茶店での長回しに思いが交錯している様子が緊張感を生んで、違う映画に思えたのが面白かった。今泉作品として間口が狭いのではなくステージを上げていたことを確信。


母 性
2022.12.01 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン13 [1000円/115分]
【196】2022年製作委員会=ワーナー 監督:廣木隆一 脚本:堀泉杏
CAST:戸田恵梨香、永野芽郁、大地真央、高畑淳子、三浦誠己、中村ゆり、山下リオ、吹越満、深水元基、落井実結子
●もともと“嫌な感じ”が魅力の湊かなえの文章に役者がセリフを乗せると妙な違和感が生じキツかった。この話「母性」を描いているようで実は娘の「母恋慕」を独白させているところに気持ち悪さがあり、一転して爽やかな幕切れの原作に対し、映画はどこか不穏なテイストを残して終わる。この後味は決して嫌いではないのだが・・・。


あちらにいる鬼
2022.12.03 新宿ピカデリー:シアター6 [1200円/139分]
【197】2022年カルチュア=ハピネット=ホリプロ 監督:廣木隆一 脚本:荒井晴彦
CAST:寺島しのぶ、豊川悦司、広末涼子、高良健吾、村上淳、蓮佛美沙子、佐野岳、宇野祥平、丘みつ子、高橋侃
●『全身小説家』は未見。井上荒野の実父、井上光晴は名前しか知らず、『地の群れ』『TOMRROW/明日』の原作者で、この人との関係を清算するため瀬戸内寂聴が出家したことを知る。物語は井上、その妻、瀬戸内の視点で描かれるが、三者を演じた俳優たちが手堅く好演し、荒井脚本も廣木演出もその手堅さ故に深堀り出来ていない。惜しい。


月の満ち欠け
2022.12.03 新宿ピカデリー:シアター1 [1200円/128分]
【198】2022年製作委員会=松竹 監督:廣木隆一 脚本:橋本裕志
CAST:大泉洋、有村架純、柴咲コウ、目黒蓮、伊藤沙莉、田中圭、菊池日菜子、寛一郎、波岡一喜、安藤玉恵、丘みつ子
●夏の三木孝浩に次ぐまさかの廣木隆一3連打。山田風太郎の忍法帖よろしく簡単に生まれ変わりが発生し、そんなレギュレーションで感動話を仕立てられてもなぁ・・・と思いつつ最後のビデオ再生で不覚の涙が。80年代高田馬場の再現など気合は感じつつ廣木隆一が御用監督化し、早稲田松竹がすっかり青春のアイコンになっていたことを知る。


ラーゲリーより愛を込めて
2022.12.11 109シネマズグランベリーパーク:シアター2 [1200円/134分]
【199】2022年製作委員会=TBS=東宝 監督:瀬々敬久 脚本:林民夫
CAST: 二宮和也、松坂桃李、北川景子、桐谷健太、安田顕、中島健人、寺尾聰、奥野瑛太、中島歩、朝加真由美、市毛良枝
●ソ連のシベリア抑留の無法は語り継がなくてはならないが、極端なお涙頂戴に落とし込むのはどんなものだろう。それでもラスト近くの涙々の波状攻撃は嗚咽ものだった。瀬々のメジャー感は完全に確立したがエンディングの曲はJポップではなく「いとしのクレメンタイン」が映画の脈絡というものだ。これ以上コマーシャリズムに溺れるな。


THE FIRST SLAM DUNK
2022.12.11 イオンシネマ座間:スクリーン4 [無料/124分]
【200】2022年東映アニメ=ダンデライオンアニメ=東映 監督:井上雄彦 脚本:井上雄彦
CAST:(声)仲村宗悟、木村昴、瀬戸麻沙美、三宅健太、笠間淳、神尾晋一郎、岩崎諒太、こばたけまさふみ、宝亀克寿
●思えば「ジャンプ」で唯一全巻呼んだマンガだ。夢中で読んだが細かい設定は忘れていたがそれは関係ない。バウンド、木床に響くバッシュウ、リングに吸い込まれるボール。大絶賛のアニメ映像だけではなく音表現も最高。試合の没入感もさることながら最後のリョータの到達点に胸熱になる。間違いなく本年度、記憶に留めるべき一本。


潮 騒
2022.12.16 シネ・リーブル池袋2 LE HASARD ET LA VIOLENSE [1100円/84分]
【201】1974年フランス=イタリア 監督:フィリップ・ラブロ 脚本:フィリップ・ラブロ、ジャック・ランツマン
CAST:イヴ・モンタン、キャサリン・ロス、リカルド・クッチョーラ、ジャン・クロード・ドーファン、カトリーヌ・アレグレ
●中坊時代「ロードショー」誌を定期購読していたので公開は知っていたが、ブルース・リー狂のマカロニ好きに甘いラブロマンスは用はなかった。K・ロスへの郷愁で観てみると驚きのバイオレンス。しかも映画全体のトーンが歪みまくっている。とにかく変な映画だったが70年代らしいといえばらしい。モンタンがあえなく殺されて唖然とした。


それから
2022.12.17 新文芸坐 [1800円/124分] ※再観賞
【202】1985年東映 監督:森田芳光 脚本:筒井ともみ
CAST:松田優作、藤谷美和子、小林薫、笠智衆、草笛光子、中村嘉葎雄、羽賀健二、イッセー尾形、森尾由美、美保純
●85年当時は東映のビデオ販売会社にいて、地味すぎて難しいセールスになるなとミラノ座で苦笑いしていた。今日初めて本作ときちんと向き合えた気がする。代助の高等遊民としての自我が生来の純真さと葛藤し崩れていく姿が見事に描かれ、緊張の内に芳醇さを匂い立たせた森田芳光渾身の一篇。37年前の私は一体何を観ていたのだろう。
※1985年キネマ旬報ベストテン第1位


そろばんずく
2022.12.17 新文芸坐 [1800円/109分] ※再観賞
【203】1986年フジテレビ=ニッポン放送=東宝 監督:森田芳光 脚本:森田芳光
CAST:石橋貴明、木梨憲武、安田成美、小林薫、渡辺徹、名取裕子、石立鉄男、イッセー尾形、三木のり平、小林桂樹
●明治の文芸作を格調高く描いて映画賞を総ナメした次がこれなのか!という馬鹿馬鹿しさで森田芳光の作家論が出来上がる。その意味で新文芸坐のプログラムは意味があるのだろうが、元々とんねるずは好きではなく、小林薫の大怪演も含めて綺麗さっぱり忘れていた。宇多丸氏と三沢和子さんの観賞後のトークショーを以てしてもキツかった。


未来の想い出 Last Christmas
2022.12.18 新文芸坐 [1800円/109分]
【204】1992年光和インターナショナル=藤子・F・不二雄プロ=東宝 監督:森田芳光 脚本:森田芳光
CAST:工藤静香、清水美砂、デビット伊東、和泉元彌、橋爪功、宮川一朗太、うじきつよし、唐沢寿明、真行寺君枝
●すごく面白かったしキュンと来た。確かに真っ直ぐなエンタメに「森田らしくない」との批評はわからなくもないが、それはトリッキーな仕掛けが成熟したがゆえのことと上映後のトークショーで語られた通りとすると4年のブランクを強いた事実が腹立たしくもある。流行のシスターフット、タイムリープの先取りというより格の違いを見た。


(ハ ル)
2021.12.18 新文芸坐 [1800円/118分] ※再観賞
【205】1996年光和インターナショナル=東宝 監督:森田芳光 脚本:森田芳光
CAST:深津絵里、内野聖陽、戸田菜穂、宮沢和史、竹下宏太郎、鶴久政治、山崎直子、平泉成、潮哲也、八木昌子
●一年間隔での再観賞でさえラストに向けてドキドキときめかせる技術と見事な語り口。何より全編に漂う瑞々しさとほんの少しの緊張感。そして一生懸命な深津絵里のなんて健気なことだろう。この映画は心地よく呼吸している。もはや名作の域に踏み込んだのは間違いない。これで私の森田芳光は「ハル」とともにあると言い切ってしまおう。
※1996年キネマ旬報ベストテン第4位


昇天峠
2022.12.18 新文芸坐 SUBIDA AL CIELO [1100円/75分]
【206】1951年メキシコ 監督:ルイス・ブニュエル 脚本:L・ブニュエル、M・アルトラギーレ、F・デ・ラ・ガバダ
CAST:エステバン・マルケス、カルメン・ゴンサレス、リリア・プラド、ルイス・アセヴェス・カスタニェダ、レオノーラ・ゴメス
●メキシコ時代のブニュエルは『忘れられた人々』の強烈なイメージが印象に残っているが、これは社会派リアリズムというより一種の群像喜劇なのだろう。これほど神経を逆撫でされる映画もない(もちろん褒めている)。迷惑顧みずおのれの欲望と都合と時間の概念がまったくない空間に身を置くことの不条理さこそ前衛そのものだ。


銀 河
2022.12.18 新文芸坐 LA VOIE LACTEE [1100円/102分]
【207】1974年フランス=イタリア 監督:ルイス・ブニュエル 脚本:ルイス・ブニュエル、ジャン・クロード・カリエール
CAST:ポール・フランクール、ローラン・テルズィエフ、アラン・キュニー、エディット・スコブ、ベルナール・ヴェルレー
●反キリスト教的テーマによって上映禁止、脅迫、国外追放の憂き目を繰返してきたブニュエルが筋金入りの無神論者を公言し、キリスト教の異端事典を元に脚本を仕上げる。まったくこのキリスト教を揶揄しまくるロードムービーを痛快だと思うのは、ブニュエルこそ異端の巨匠だという位置付けが私の中で勝手に出来上がっているからだろう。


獲物の分け前
2022.12.22 池袋HUMAXシネマズ:シネマ4 LA CUREE [1100円/95分]
【208】1966年フランス 監督:ロジェ・ヴァディム 脚本:ロジェ・ヴァディム、ジャン・コー
CAST:ジェーン・フォンダ、ピーター・マッケナリー、ミシェル・ピッコリ、ティナ・オーモン、ジャック・モノ
●私がジェーンを知った時、ウーマンリブの闘士ですでに大女優だったが、そうだヴァディム夫人の頃は若さに任せたお色気で売ってたのだ。確かに彼女は魅力的で、義理の息子にふざけてライフルをぶっ放す奔放さまでは良かった。それが妙な東洋的サイケ趣味が目立ちシリアスになったあたりから睡魔が襲ってきて記憶が飛んでしまった。


THE FIRST SLAM DUNK
2022.12.24 109シネマズグランベリーパーク:シアター1 [1200円/124分] ※再観賞
【209】2022年東映アニメ=ダンデライオンアニメ=集英社=東映 監督:井上雄彦 脚本:井上雄彦
CAST:(声)仲村宗悟、木村昴、瀬戸麻沙美、三宅健太、笠間淳、神尾晋一郎、岩崎諒太、こばたけまさふみ、宝亀克寿
●どうも6割程度しか本作の魅力を把握していないとの予感があり再見した。それは主としてテクニカルな見せ方の部分だったが、リョータの物語に完全にやられた。沖縄の海と湘南の海、そこで紡がれる母子の思い。前回は画もさることながらエッジの効いた幾多のサウンドが脳天に響いたが今回は無音であることの豊かさ、密度を受け取った。


かがみの孤城
2022.12.25 イオンシネマ座間:シアター1 [無料/116分]
【210】2022年日本テレビ=松竹 監督:原恵一 脚本:丸尾みほ
CAST:(声)當真あみ、北村匠海、吉柳咲良、板垣李光、横溝菜帆、高山みなみ、麻生久美子、芦田愛菜、宮崎あおい
●話題作アニメに挟まれて割を食った感はあるが原恵一の新作は必見にしている。この人の持ち味がウエットな泣かせばかりとは思えないのは、ファンタジーの中に中学生たちのヒリヒリとした現実を描いているあたりか。とにかく喜多嶋先生の真実には感動したものの、小さな感嘆詞多めのヒロインに終始苛々させられたのが悔やまれる。


LOVE LIFE
2022.12.26 新文芸坐 [950円/123分] ※再観賞
【211】2022年製作委員会=めーてれ 監督:深田晃司 脚本:深田晃司
CAST:木村文乃、永山絢斗、砂田アトム、山崎紘菜、神野三鈴、田口トモロヲ、嶋田鉄太、三戸なつめ、福永朱梨
●再見してベストワンを確信。演出、脚本、演技、編集の総てが最上級。とにかく素晴らしい映画は映画自体が呼吸している。悪意のない言葉に狼狽えてからの決定的な地獄に直面する一連の流れはまさに衝撃。目と目が合ってめし屋に連れ添うふたりの後ろ姿を追うラストの長回し。こんな救済の描き方があることを深田晃司に教えられた。


そばかす
2022.12.28 新宿武蔵野館:スクリーン3 [1100円/104分]
【212】2022年メ~テレ=ラビットハウス 監督:玉田真也 脚本:アサダアツシ
CAST:三浦透子、前田敦子、伊藤万理華、伊島空、前原滉、前原瑞樹、田島令子、坂井真紀、三宅弘城、北村匠海
●くわえ煙草で佇む姿が相変わらず絵になる三浦透子。そんな彼女がとびきり素敵な物語を見せてくれる。人は好きにはなるけど恋愛感情を持てない、一部で話題とされながらまだカテゴライズされていない性をさまよいながら家族や女友達とのふれあいの中で自分らしく生きようとする。年の瀬の土壇場で大好きな映画に出会ったものだ。


空の大怪獣ラドン <4Kデジタルリマスター版>
2022.12.29 TOHOシネマズ海老名:スクリーン8 [1200円/82分] ※再観賞
【213】1956年東宝 監督:本多猪四郎 特技監督:円谷英二 脚本:村田武雄、木村武
CAST:佐原健二、白川由美、平田昭彦、田島義文、小堀明男、村上冬樹、中田康子、山田巳之助、中島春雄、中谷一郎
●東宝の怪獣映画として『モスラ』の倍は良く出来ていると思うが、確かにファン待望の4Kリマスターで画像は驚くほど鮮明になったものの、本来のフィルムの質感が失われ、ラドンの羽根を吊るピアノ線がモロ見えになったことに違和感を覚えてしまう。ありのままを残すのはいいが、それが本多猪四郎や円谷英二の意志とは思えないのだが。


奈落のマイホーム
2022.12.29 あつきのえいがかんkiki:スクリーン2 싱크홀 [1000円/117分]
【214】2021年韓国 監督:キム・ジフン 脚本:チョン・チョロン、キム・ジョンハン
CAST:キム・ソンギュン、チャ・スンウォン、クァン・ソヒョン、キム・へジュン、ナム・ダルム、チャン・グアン、キム・ジェファ
●コント芝居が続く序盤に大丈夫なのか?と訝しんだが、いざマンションが穴に沈む大災害から、極限を打開すべくサバイブする人物たちの熱量、命の尊厳の捉え方に否応なしに引き込まれる。そして最後の脱出劇に「えっー?」と思わせるも序盤のコント芝居が効いて何となく許せてしまう。これが韓国エンタメの余裕なのか。面白かった。


ウォレスとグルミット チーズ・ホリディ/ペンギンに気をつけろ!/危機一髪!
2022.12.30 TOHOシネマズ池袋:スクリーン1  WALLACE AND GROMIT [1200円/85分]
【215】1989/1993/1995年イギリス 監督:ニック・パーク 脚本:ニック・パーク
CAST:(声)ピーター・サリス、アン・ニード
●英国BBC発の映像コンテンツの素晴らしさはこのクレイアニメでも証明されている。この手のストップモーションものには作り手たちの努力と胆力、たっぷりの愛情込みで楽しむものなのだろうが、そんな背景は関係なく画面に引き込まれる。笑いあり、サスペンスあり、痛快アクションありで映画の原点ってこれだよなと思わせる短編3本だ。


ケイコ 目を澄ませて
2022.12.30 テアトル新宿 [1200円/99分]
【216】2022年メ~テレ=朝日新聞=ハピネットファントム 監督:三宅唱 脚本:三宅唱、酒井雅秋
CAST:岸井ゆきの、三浦友和、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中原ナナ、丈太郎、渡辺真起子、仙道敦子
●劇伴を廃した16mmの質感が捉えるのはケイコの射すくめる目だったり、ミットにパシッと響かすコンビネーションパンチだったりするが、なぜ彼女が瞼から流血してまで闘うのかと問えばボクシングに魅せられたから、と思いたい。必ずしも試合を物語の頂上に持ってこない構成は無観客の閑けさ、荒川の街並みに溶け込んで静謐ですらある。
※2022年キネマ旬報ベストテン第1位


セッソ・マット
2022.12.30 シネ・リーブル池袋1 SESSOMSTTO [1100円/116分]
【217】1973年イタリア 監督:ディーノ・リージ 脚本:ディーノ・リージ、ルッジェーロ・マッカリ
CAST:ラウラ・アントネッリ、ジャンカルロ・ジャンニ―ニ、アルベルト・リオネロ、デュリオ・デル・プレト
●わが青春のラウラ・アントネッリ。いや『青い体験』の衝撃は中坊の時なので青春以前か。そのミューズも亡くなって7年が過ぎた。名匠たちに愛されつつ晩年は不遇だったかな。まさか本作がリバイバルされるとは思わなかったが、内容は本当にくだらない艶笑オムニバス。今思えばジャンニ―ニとの競演でこれはあまりに勿体ない。


夜、鳥たちが啼く
2022.12.30 新宿ピカデリー:シアター8 [1200円/115分]
【218】2022年クロックワークス 監督:城定秀夫 脚本:高田亮
CAST:山田裕貴、松本まりか、森優理斗、中村ゆりか、カトウシンスケ、藤田朋子、宇野祥平、吉田浩太、加治将樹
●面白かった。終わってみれば喪失と再生と癒しの物語だったが、城定秀夫の演出がジャンル映画のどぎつさを際立たせ、終始不気味なトーンが継続され胸騒ぎにザワザワしていた。道路とフラットに窓があるプレハブ小屋は住み心地がわるそうだ。頼むからカーテンを閉めろ、しっかり鍵をかけろ。エンドロールをインストで締めたのは見事。


ミセス・ハリス、パリへ行く
2022.12.31 あつぎのえいがかんkiki:スクリーン1 Mrs. HARRIS GOES TO PARIS [1000円/116分]
【219】2022年イギリス=フランス他 監督:アンソニー・ファビアン 脚本:C・カートライト、K・トンプソン他
CAST:レスリー・マンヴィル、イザベル・ユペール、ランベール・ウィルソン、アルバ・バチスタ、リュカ・ブラヴォー
●同じディオールを舞台にした『オートクチュール』も好きな映画だったが、本作を昔の満員の東急名画座で観たら最高だったろうと思う。多国籍製作陣が目指したのは多少の強引さやご都合主義を顧みない起承転結がガッチリ決まった往年のハリウッドコメディへの回帰だったか。バイオレンス好きだがほっこり終われる映画も好きなのだ。



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