●2000年(平成12年)

 三行の映画評


シュリ
2000.02.- 厚木シネマミロード 쉬리/Shuri
【01】1999年韓国 監督:カン・ジェギュ 脚本:カン・ジェギュ
CAST:ハン・ソッキュ、キム・ユンジン、チェ・ミンシク、ソン・ガンホ、ユン・ジュサン
●こういうストーリー展開で、こういう人間関係にして、こういうセリフを用意すればきっとカッコいい映画になるぞ。と思ったことをそのまま映像化したような映画。結果ムカつくほど面白かった。これくらいの映画を普通に作れない日本のアクション映画は本気で置いていかれるぞと思う。役者は誰一人カッコいいとは思わなかったが。


マグノリア
2000.03.- ワーナーマイカルシネマズみなとみらい  Magnolia
【02】2017年アメリカ 監督:ポール・トーマス・アンダーソン 脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
CAST:フィリップ・ベイカー・ホール、トム・クルーズ、ジュリアン・ムーア、フィリップ・シーモア・ホフマン
●こういう雑多なエピソードがシンクロし合って大きな世界観を作っていく映画が今は流行りなのか。長い映画だが、一つ一つの物語が醸し出す妙な可笑しさでまったく飽きさせなかった。女の口説き方を伝授するセックス界の教祖トム・クルーズはベストアクトだったのではないか。空から蛙が降ってくるのはやや既視感があった。


ザ・セル
2000.03.- シネプレックス平塚 The Cell
【03】1999年アメリカ 監督:ターセム・シン 脚本:マーク・プロトセヴィッチ
CAST:ジェニファー・ロペス、ヴィンス・ヴォーン、ヴィンセント・ドノフリオ、マリアンヌ・ジャン・バチスト
●『アウト・オブ・サイト』のジェニファー・ロペスがよかったので、勢いで観に行ってしまったが、治療目的に人の精神世界に入り込む精神科医の話で、さしずめ『ミクロの決死圏』のラクェル・ウェルチの役割か。しかし主体は万華鏡のような極彩色な映像が連続して、結局、これを見せたかったのかと。そのうちにどうでもよくなった(笑)。


ブエナ☆ビスタ☆ソシアル☆クラブ
2000.04.20 シネマライズ BUENA VISTA SOCIAL CLUB
【04】 1999年ドイツ=アメリカ=フランス=キューバ 監督:ヴィム・ベンダース 脚本:ヴィム・ベンダース(記録映画)
CAST:イブライム・フェレール、ライ・クーダ、コンパイ・セグンド、エリアデス・オチョア、ヨアキム・クーダー
●もうすっかりキューバの老シンガーたちに魅せられてしまい、映画館を出て即、CD店にアルバムを買いに行った。いやはや面白かった。そして国交断絶の社会主義の島これほどのエンターティナーたちが存在していたことに驚き、感動した。ラスベガス公演で異文化に触れて楽しそうな老人たちを見ているのが本当に楽しかった。大傑作だろう。


アメリカン・ビューティ
2000.05.- 厚木テアトルシネパーク American Beauty
【05】1999年アメリカ 監督:サム・メンデス 脚本:アラン・ボール
CAST:ケビン・スペイシー 、アネット・ベニング、ソーラ・バーチ、ウェス・ベントリー 、ミーナ・スバーリ
●こういう映画を観ると本当に一生独り者でいいやと思ってしまう。そしてそう思わせる映画のささくれだった展開をニヤニヤしながら楽しんでいる。そうこの手の映画は少し離れたところで「俺とは無関係だ」と笑っているに限る。下手に入り込んで主人公に共感などしてしまうと、嫌な感じが後々まで尾を引いて笑えなくなるから要注意だ。


オール・アバウト・マイ・マザー
2000.05.- 渋谷シネセゾン All About My Mother
【06】1999年スペイン 監督:ペドロ・アルモドバル 脚本:ペドロ・アルモドバル
CAST:セシリア・ロス、マリサ・パレデス、カンデラ・ペニャ、アントニア・サン・フアン、ペネロペ・クルス
●女であるために女を演じる女たちへ―。ポスターのコピーが映画館へ入る時と出た時ではまるで印象が違って思える。臓器移植、売春、男娼、同性愛、エイズ、麻薬中毒、痴呆症、、、そして夜のバルセロナ。現実社会と折り合えない様々なピースが母と子の記憶の中で融合していく。女であることはかくも痛ましく、愛しいものなのか。
※2000年キネマ旬報ベストテン第2位


ナビィの恋
2000.05.- 藤沢オデヲン座
【07】2000年東京テアトル 監督:中江裕司 脚本:中江裕司、中江素子
CAST:西田尚美、村上淳、平良とみ、登川誠仁、平良進、津波信一、兼嶋麗子、アシュレイ・マックアイザック、嘉手苅林昌
●おじいの知らないおばあの19の春。南国気質満開のハッピーワールドをこれぞ最高のエンターティメントで観客の心をさらってしまう傑作。サンラーさんと駆け落ちするおばあも凄いが、受け入れてしまうおじいも凄い。凄い人たちの極上のミュージカルなのかこの映画は(笑)。そしてリアルな土着を感じさせるのがまた凄い。
※2000年キネマ旬報ベストテン第2位


どら平太
2000.05.- 藤沢オデヲン座
【08】2017年日活=東宝 監督:市川崑 脚本:黒澤明、木下惠介、市川崑、小林正樹
CAST:役所広司、浅野ゆう子、菅原文太、宇崎竜童、片岡鶴太郎、石倉三郎、石橋蓮司、大滝秀治、江戸家猫八
●[四騎の会]による超豪華すぎる脚本陣の割にはわりと普通の痛快時代劇というか、そもそも一体誰がメガホンをとるつもりだったのか。出来あがった映画は良くも悪くも唯一の生き残り、市川崑らしい映画だった。悪くはないしつまらなくもないのだが、結局、物語がテレビサイズのスケールで、映画として広がりようがなかった気がする。


ミッション:インポッシブル2
2000.07.- ワーナーマイカルシネマズ海老名  Mission: Impossible II
【09】2000年アメリカ 監督:ジョン・ウー 脚本:ロバート・タウン
CAST:トム・クルーズ、ダグレイ・スコット、ダンディ・ニュートン、ビング・レイムス、リチャード・ロクスバーグ
●冒頭のクライミングからハラハラさせ、観客の高まったテンションを最後まで持続させている。有名なテレビシリーズの映画化でありトム・クルーズの人気作の続編というハードルがありながら、ほぼ自分のスタイルを貫き、独特のアクション美学を披露したジョン・ウ―は本当に凄いと思った。マスク剥ぎの小細工の多用は気にはなったが。


17歳のカルテ
2000.10.- シネプレックス平塚 Girl, Interrupted
【10】1999年アメリカ 監督:ジェームズ・マンゴールド 脚本:ジェームズ・マンゴールド、リサ・ルーマー他
CAST:ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー、ブリタニー・マーフィ、クレア・デュヴァル、ウーピー・ゴールドバーグ
●精神病棟の話は『カッコーの巣の上で』を思い出すが、こちらの方は実話らしい。よくいわれることだが、製作総指揮まで買って出たウィノナ・ライダーよりもエキセントリックな病棟のリーダー役、アンジェリーナ・ジョリーが映画そのものを支配してあまりに素晴らしすぎる。ただなんで17歳なのか最後まで意味不明だ。


新・仁義なき戦い。
2000.11.- フジサワ中央劇場
【11】2000年東映 監督:阪本順治 脚本:高田宏治
CAST:豊川悦司、布袋寅泰、佐藤浩市、岸部一徳、村上淳、小沢仁志、松重豊、大和武士、哀川翔、早乙女愛、余貴美子
●光化学スモッグが発令されて下校する少年たち。これは原爆から始まったあのシリーズへの阪本流のオマージュなのか、謙遜なのか。モー娘ばりにタイトルに「。」をつけた本作はトヨエツのモデルばりのルックスと、津島利章のテーマ曲をカッコ良くアレンジした布袋の音楽で完全に別モノとして観た。『仁義なき戦い』の20世紀は完全終了。


PARTY 7
2000.12- 渋谷シネセゾン
【12】2000年東北新社 監督:石井克人 脚本:石井克人
CAST:永瀬正敏、浅野忠信、原田芳雄、堀部圭亮、岡田義徳、小林明美、我修院達也、森下能幸、島田洋八、大杉漣
●インディーズ映画の飛車角競演がこんなぶっ飛んだ作品で実現した。その是非はともかくビデオで観た石井克人の前作『鮫肌男と桃尻女』のテンションにさらに輪をかけたノリで最後までイってしまう。ただし永瀬と浅野は完全に原田芳雄のキャプテンバナナに食われてしまったが。オープニングのマッドハウスのアニメが一番良かった気も。


バトル・ロワイアル
2000.12.16 ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘
【13】2000年東映 監督:深作欣二 脚本:深作健太
CAST:藤原竜也、前田亜季、山本太郎、安藤政信、柴咲コウ、栗山千明、塚本高史、美波、ビートたけし
●余命を宣告された70歳のシジイがぶっ放す最後の咆哮か。隔離された教室のカーテンを開けるとヘリコプターの轟音が生徒たちを狙う。「おお!」と思わず身を乗り出した。「文芸映画の巨匠におさまったまま死ぬのかよ」との非難の答えがこれだったとしたら、我々は深作欣二に最大の感謝を込めて「おかえりなさい」と頭を下げよう。
※2000年キネマ旬報ベストテン第5位


バトル・ロワイアル
2000.12.21 ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘 ※再観賞
【14】2000年東映 監督:深作欣二 脚本:深作健太
CAST:藤原竜也、前田亜季、山本太郎、安藤政信、柴咲コウ、栗山千明、山村美智子、宮村優子、ビートたけし
●あまりに反社会的すぎる。教育上好ましくないとの批判からR-15に指定されたことに「中学生よ、映画館の便所の窓から入って来い!」とカマした深作欣二。そもそも中学のクラスメイトが殺し合うお馬鹿映画に何の理屈が必要なのか。今は社会的な衝撃より、自分のような深作狂を楽しませるための映画であることに一切の疑問はない。
※2000年キネマ旬報ベストテン第5位


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