●2018年(平成30年)

 三行の映画評


サニー/32
2018.02.17 イオンシネマ海老名 スクリーン2
【23】2018年製作委員会=日活 監督:白石和彌 脚本:高橋泉
CAST:北原里英、ピエール瀧、リリー・フランキー、門脇麦、駿河太郎、音尾琢真、蔵下穂波、カトウシンスケ、山崎銀之丞
●率直におバカな映画だったが、先読みがまったく不可能なためか最後まで楽しめた。ある意味、白石和彌としても前作のような原作に縛られず自由に撮った感もあった。しかしダークなバイオレンスの連続で緊張させられる前半から、突然の後半の転調はあまりにも突飛だった。瀧とリリーは『凶悪』のテンションもう一度とはならなかったか。


マンハント
2018.02.14 TOHOシネマズ海老名 スクリーン10 Man Hunt 追捕
【22】2018年中国 監督:ジョン・ウー 脚本:ニップ・ワンフン、ゴードン・チャン、ジェームズ・ユエン他
CAST:チャン・ハンユー、福山雅治、チー・ウェイ、ハ・ジウォン、國村隼、竹中直人、倉田保昭、池内博之、桜庭ななみ
●何度か「えー?」と苦笑する。荒っぽすぎる展開が、粗い編集で矢継ぎ早に繰り出されるダメ要素満載の映画だが、それを逐一指摘したところで何になる。ジョン・ウーが目当てなのだから、お約束の二挺拳銃、スローモーション、白鳩を「待ってました!」と楽しみ、桜の散る中、純白のドレスが血で染まるベタさを堪能しなければ損だ。


ブレードランナー 〈ファイナル・カット〉
2018.02.13 新文芸坐 BLADE RUNNER:THE FINAL CUT
【21】1982=2007年アメリカ 監督:リドリー・スコット 脚本:ハンプトン・ファンチャー、デヴィッド・ピープルズ
CAST:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、エドワード・ジェームズ・オルモス、ダリル・ハンナ
●「強力ワカモト」の看板の他は一場面も憶えていなかったが、35年前の初見をまざまざと思い出した。そう私はこの映画を見ながら襲ってくる睡魔と戦っていたのだ。そして今夜もまた何度も落ちそうになった。どうしようもない相性の悪さは如何ともし難く、この映画を語る資格のなさに改めて納得した。去年公開の続編の方がずっと好きだ。


マッドマックス/怒りのデス・ロード
2018.02.13 新文芸坐 MAD MAX:FURY ROAD
【20】2015年オーストラリア=アメリカ 監督:ジョージ・ミラー 脚本:G・ミラー、B・マッカーシー、N・ラサウリス
CAST:シャーリーズ・セロン、トム・ハーディ、ライリー・キーオ、ヒュー・キース・バーン、リチャード・カーター
●俄かに“マッドマックス病”にかかりつつある。もう断言したいのは、これは映画史に残るエポックメーキングだ。爆音と阿鼻叫喚の渦中においてさえこの静謐な美しさはなんだろう。フェリオサももちろん、イモータン・ジョー、武器商人、人喰い男爵に至る悪役までもが愛おしい。そしてニュークスが最期に見せる凛とした表情の見事さよ。
※2015年キネマ旬報ベストテン第1位


マッドマックス2
2018.02.11 新文芸坐 MADMAX2:THE ROAD WARRIR
【19】1981年オーストラリア 監督:ジョージ・ミラー 脚本:テリー・ヘイズ、ジョージ・ミラー、ブライアン・ハナント
CAST:メル・ギブソン、ブルース・スペンス、マイク・プレストン、ケル・ニルソン、ヴァーノン・ウェルズ
●一介の警察官だったマックスが伝説の英雄譚として語られる。学生時代に観た時、冒頭のナレーションからぶっ飛んだ。バイオレンス映画の革命であり、あらゆる世界観をこの映画は更新してしまったのだと思う。とにかく素晴らしいのは常に観客の心を揺さぶられるように作られていること。また『怒りのデス・ロード』が観たくなる。


マッドマックス
2018.02.11 新文芸坐 MADMAX
【18】1979年オーストラリア 監督:ジョージ・ミラー 脚本:ジェームズ・マッカウスランド、ジョージ・ミラー
CAST:メル・ギブソン、ジョアン・サミュエル、スティーヴ・ビズレー、ヒュー・キース・バーン、ジョフ・パリー
●まだ近未来の世界観が確立する以前の、牧歌的ですらある地平線まで続く豪州の一本道。製作費の殆んどを車の改造代に使い、低予算剥き出しでロケ中心の“ヌケ”の多い画面の中で炸裂する気違いじみたスピードとバイオレンス。あゝやっぱり学生時代に観たヤバさのままの映画だった。そしてリアルな狂気という点でこの第一作は本当に怖い。


ルイの9番目の人生
2018.02.09 ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター3 The 9th Life of Louis Drax
【17】2016年カナダ=イギリス 監督:アレクサンドル・アジャ 脚本:マックス・ミンゲラ
CAST:ジェイミー・ドーナン、サラ・ガドン、エイダン・ロングワース、オリバー・プラット、モリー・パーカー
●ルイ少年の人となりをナレーションに乗せて『アメリ』チックなユーモアで綴った冒頭から急転換して、映画はグロテスクな闇に落ちてゆく。子供が怖い映画は気色悪くて好きではないが、事件の真相を憑依して語らせるのはミステリーとしても釈然としない。なにもかもすべてダークファンタジーで片付けてしまう強引さも気になった。


ジュピターズ・ムーン
2018.02.09 ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター2 JUPITER HOLDJA
【16】2017年ハンガリー=ドイツ 監督:コーネル・ムンドルッツォ 脚本:カタ・ヴェーベル
CAST:メラーブ・ニニッゼ、ゾンボル・ヤェーゲル、ギェルギ・ツセルハルミ、モーニカ・バルシャイ
●空を飛ぶ少年のファンタジーと思いきや、本質はシリア難民の流入とテロリズムに混乱する東欧の現実を背景に、許されざる者たちの焦燥がヒリヒリと痛む強烈なドラマ。やがて神の真偽まで踏み込むのだが、特筆すべきは映像の迫真性で、ハンガリーはこんなものを創造するのかと驚く。今月観た2本のオスカー候補作よりもずっと凄かった。


デトロイト
2018.02.06 TOHOシネマズ海老名 スクリーン5 DETROIT
【15】2017年アメリカ 監督:キャスリン・ビグロー 脚本:マーク・ボール
CAST:ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、ジャック・レイナー、アンソニー・マッキー、アンジー・スミス
●治安維持のためという大義名分を権力が持ったときの「使命感の残虐性」になるほどなと思いつつ、根本にあるレイシズムの気色悪さにぞっとする。評判の40分間の尋問に名を借りた拷問は確かに緊張感はあったが、それよりも黒人たちが次第に暴動へと駆り立てられていく高揚感を活写した冒頭に、剛腕ビグロー女史の極限の凄味を見る。


アメリ
2018.02.06 イオンシネマつきみ野 スクリーン3 Le Fabuleux destin d'Amelie Poulain
【14】2001年フランス 監督:ジャン=ピエール・ジュネ 脚本:ジャン=ピエール・ジュネ、ギョーム・ローラン
CAST:オドレイ・トトゥ、マチュー・カソヴィッツ、セルジュ・メルラン、ドミニク・ピノン、イザベル・ナンティ
●去年15年ぶりに観て、改めてこの映画を素晴らしいと思い、もしや私のフェイバリット・ムービーになるのではないかと予感し、その確信を得るため再見した。23歳の妄想好きの女子の話を57歳のオッサンが愛してしまってもいいではないか。アメリだけではなくアパルトマンの住民、カフェ・ド・ムーランに集う人々の何たる愛くるしさよ。
※2001年キネマ旬報ベストテン第6位


羊の木
2018.02.05  TOHOシネマズ新宿 スクリーン4
【13】2018年アスミックエース 監督:吉田大八 脚本:香川まさひと
CAST:錦戸亮、木村文乃、北村一輝、優香、市川実日子、水澤紳吾、田中泯、安藤玉恵、深水三章、山口美也子、松田龍平
●じわじわ広がってゆく不穏な空気感も、『桐島、部活やめるってよ』の日常の学園生活が壊れていくヤバさと違い、あらかじめ特異なシュチュエーションが設定された分だけジャンル映画に陥ってしまったか。願わくは吉田大八にはオリジナルストーリーで勝負してもらいたい。もちろん一定の緊張感を持続させていく力量に疑いの余地はないが。


バクダッド・カフェ〈ニュー・ディレクターズ・カット版〉
2018.02.04 TOHOシネマズららぽーと横浜 プレミアスクリーン Out of Rosenheim/BAGDAD CAFE New directer's cut
【12】1987年西ドイツ 監督:パーシー・アドロン 脚本:パーシー・アドロン、エレオノーレ・アドロン
CAST:マリアンネ・ゼーゲブレヒト、CCH・パウンダー、ジャック・パランス、クリスティーネ・カウフマン、モニカ・カローン
●“Calling You”が耳から離れない何とも不思議な映画だが、ストレスフルな人々が、突然現れた「よそ者」によって明るく活気づく話は珍しくない。ある意味『シェーン』ではないか。ただアラン・ラッドがジャック・バランスを撃ち倒して去って行くのに対し、このヤスミンは見事ジャック・バランスのハートを撃ち抜いてカフェに留まる(笑)
※1989年キネマ旬報ベストテン第5位


ギルバート・グレイプ
2018.02.03  TOHOシネマズ海老名 スクリーン7 What's Eating Gilbert Grape
【11】1993年アメリカ 監督:ラッセ・ハルストレム 脚本:ピーター・ヘッジス
CAST:ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス、ダーレーン・ケイツ、ローラ・ハリントン
●束縛からの脱出は旅立ちばかりが手段ではないのか。エピソードだけ聞くと何ともどんよりする話も、ヨーロッパの監督とカメラマンが撮るとアメリカの閉塞した田舎町がこんな感じになるのかと感心した。それにしても凄かったのはデップとディカプリオ。稀代の性格俳優とどう見ても天才としか思えない若手俳優の共演で一気に見せる。
※1994年キネマ旬報ベストテン第5位


勝手にふるえてろ
2018.02.02 ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター2
【10】2018年製作委員会=ファントムフィルム 監督:大九明子 脚本:大九明子
CAST:松岡茉優、北村匠海、渡辺大知、石橋杏奈、趣里、前野朋哉、古舘寛治、池田鉄洋、稲川実代子、片桐はいり
●松岡茉優ショーだった。「はい、出た正直!」の台詞に声を上げて笑ってしまった。綿矢りさの原作は読んでいないが、意外にも映画初主演という彼女の女優魂が全編を支配することで、この話は映画で何倍も面白くなっていると勝手に推測。アングルもあるだろうが、場面場面で彼女の表情が別人に変容する様が大いに楽しめた117分だ。


スリー・ビルボード
2018.02.01 池袋シネ・リーブル2 THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI
【09】2017年アメリカ=イギリス 監督:マーティン・マクドナー 脚本:マーティン・マクドナー
CAST:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、アビー・コーニッシュ、ジョン・ホークス
●面白かった!まったく先読み不可能な中で、どこか牧歌的なアメリカ片田舎に棲息するネジの曲がったエキセントリックな人物たちの「そこまでやるか!」的な暴走。観る者はミルドレットを応援しながらも、その怒り、焦燥、苛立ちに呆れ果てながら、そこからこぼれ落ちるブラックなユーモアに次第に心が温まっている。なんたる映画だ。


不能犯
2018.02.01 池袋シネ・リーブル1
【08】2018年製作委員会=ショウゲート 監督:白石晃士 脚本:山岡潤平、白石晃士
CAST:松坂桃李、沢尻エリカ、新田真剣佑、間宮祥太朗、テット・ワダ、菅谷哲也、芦名星、矢田亜希子、安田顕、小林稔侍
●Vシネかよ?と思わせるスカスカのストーリーに「いつまで同じことやってるの、もういいよ」といいたくなるようなグダグダな展開。瞬間のホラー妙味にドキッとはさせるものの、説明的なセリフの多用に白けてしまう。いくら冷血な笑みを湛えても桃李クンは桃李クンでしかなく、沢尻エリカの熱血女刑事は柄ではなく不相応でしかない。


セッション
2018.01.28 イオンシネマつきみ野 スクリーン9 Whiplash
【07】2014年アメリカ 監督:デミアン・チャゼル 脚本:デミアン・チャゼル
CAST:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、ポール・ライザー、メリッサ・ブノワ、オースティン・ストウェル、ネイト・ラング
●皮膚が破れ、太鼓とシンバルに血と汗が滴り落ちてくる大迫力。いやはやJAZZの激しいセッションに否応なく持って行かれる。まさに格闘技。スポ根映画のレギュレーションで殆んど暴力的に疾走していくが、この格闘の結末はありがちなカタルシスに着地させず、オブセッションの境地へと行ってしまう。J・K・シモンズには参った。
※2015年キネマ旬報ベストテン第7位


嘘を愛する女
2018.01.28 イオンシネマつきみ野 スクリーン6
【06】2018年製作委員会=東宝 監督:中江和仁 脚本:中江和仁、近藤希実
CAST:長澤まさみ、高橋一生、吉田鋼太郎、DAIGO、川栄李奈、野波麻帆、初音映莉子、嶋田久作、奥貫薫、黒木瞳
●率直にいい映画だ。ポスターに原作者の名前がないだけで好感を抱く癖がついたものの、ミステリーかサスペンスものと決めつけていたので、この展開はないだろうと思えた場面が次々と裏切られ、描き方が浅くないか?という場面も後から巧みに回想で補っていく。そしてまさかのホロリとなる幕切れ。恋愛映画として完結したのも嬉しい。


マッドマックス/怒りのデス・ロード
2018.01.21 イオンシネマつきみ野 スクリーン9 MAD MAX:Fury Road
【05】2015年オーストラリア=アメリカ 監督:ジョージ・ミラー 脚本:G・ミラー、B・マッカーシー、N・ラサウリス
CAST:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース・バーン、ロージー・H=ホワイトリー
●初見では追う者と追われる者たちの旺盛なバイオレンスに圧倒され、私自身の破壊衝動の隆起を面白がっていたが、正直、どこか消化しきれていないもどかしさも感じていた。再見し、はっきりこの映画には「詩」があった。究極の破壊の末に辿りついた芸術性を抜きにこの映画の本質は語れないのだと確信する。改めて凄い作品だ。
※2015年キネマ旬報ベストテン第1位


アニー・ホール
2018.01.14 TOHOシネマズららぽーと横浜 プレミアスクリーン Annie Hall
【04】1977年アメリカ 監督:ウディ・アレン 脚本:ウディ・アレン
CAST:ウディ・アレン、ダイアン・キートン、トニー・ロバーツ、キャロル・ケイン、ポール・サイモン、シェリー・デュヴァルス
●高校生のときはどこが面白いのかさっぱり解らなかった。歳月の蓄積とウディ映画の蓄積でやはり名作に違いないと確信する。本人は否定しているが、やはりウディのD・キートンとの惜別を綴った個人映画だと思った方が、ラストのフラッシュバックの泣かせも含め圧倒的にコクが出る。そして改めてニューヨークLOVEなのだということも。
※1978年キネマ旬報ベストテン第10位


アラビアのロレンス 〈完全版〉
2018.01.07 国立近代美術館フィルムセンター 大ホール Lawrence of Arabia
【03】1962年イギリス 監督:デヴィッド・リーン 脚本:ロバート・ボルト
CAST:ピーター・オトゥール、オマー・シャリフ、アレック・ギネス、アンソニー・クイン、ジャック・ホーキンス
●金字塔ともいえる映画中の映画であることは変わらないが、8年ぶりに観てT・E・ロレンスをめぐる地獄が、壮大な歴史と広大な砂漠の中でずっとさまよい続けていたのに慄然とさせられた。ひたすらロレンスの内面を突き詰めていった結果、死ぬことでしか彼の魂の救済を得られなかったと巨匠は説く。本当の意味で唯一無二の映画だ。
※1963年キネマ旬報ベストテン第1位


ペーパー・ムーン
2018.01.03 TOHOシネマズららぽーと横浜 プレミアスクリーン PAPER MOON
【02】1973年アメリカ監督:ピーター・ボグダンヴィッチ 脚本:アルヴィン・サージェント
CAST:ライアン・オニール、テイタム・オニール、マデリーン・カーン、ジョン・ヒラーマン、P・J・ジョンソン
●あの頃「バディ・ムービー」なんて用語はなかったし「ロード・ムービー」も使われていたかどうか。これはどちらのジャンルでも最上の映画。ラストのモーゼとアディの往く道はもっと曲がりくねっていた記憶だったが、思ったより真っ直ぐだった。とてもいい映画なのだが、その後にテイタムが辿った道のりを思うと、ややほろ苦いか。
※1974年キネマ旬報ベストテン第5位


スター・ウォーズ/最後のジェダイ
2018.01.01 イオンシネマつきみ野 スクリーン9  STAR WARS: THE LAST JEDI
【01】2017年アメリカ 監督:ライアン・ジョンソン 脚本:ライアン・ジョンソン
CAST:デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、マーク・ハミル、ジョン・ボイエガ、キャリー・フィッシャー
●観る前からストーリーがグダグダという話ばかり入って困ったが、成程、ルーカスもズッコケたに違いない反乱軍のバカ丸出しの迷走ぶりはSW史でも前代未聞だろう。それでも私はカイロ・レンの成長物語(あえて)が、アダム・ドライバーの俳優としてのキャリアとシンクロしている様を心の底から楽しめた。・・・ところでレイの親は誰なのか。


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