●2010年(平成22年)
◎アバター
2010.01.13 109シネマズグランベリーモール AVATAR
【01】2009年アメリカ 監督:ジェームズ・キャメロン 脚本:ジェームズ・キャメロン
CAST:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、ミシェル・ロドリゲス、シガニー・ウィーバー
●私は、映画が「どう描かれたのか」ではなく「何を描きたかったのか」というのが大事であると思うので、必然は感じたとしても立体映像の凄さが『アバター』の凄さとは思っていない。3Dといっても所詮はスクリーンに投影される二次元映像であるに過ぎず、これをトーキー、テクニカラーに次ぐ映画の革新だとは思えないのだ。
◎ディア・ドクター
2010.01.22 三軒茶屋シネマ
【02】2009年アスミックエース他 監督:西川美和 脚本:西川美和
CAST:笑福亭鶴瓶、瑛太、余貴美子、井川遥、松重登、八千草薫、香川照之
●これが映画賞を独占するほどの秀作であるならば、その功績はキャスティングに拠るところが大きい。どこか切ない映画ではあるのだが、切ないという感覚には哀しさや寂しさもがあるが、滑稽であったり、愛らしかったりという要素も含まれるのだ。主役が鶴瓶でなかったら、こんなに切ない映画にはならなかったのではないだろうか。
※2009年キネマ旬報ベストテン第1位
◎フォロー・ミー
2010.02.08 TOHOシネマズららぽーと横浜 Follow Me!/The Public Eye ※再観賞
【03】1972年イギリス 監督:キャロル・リード 脚本:ピーター・シェーファー
CAST:ミア・ファロー、ハイアム・トポル、マイケル・ジェイストン、マーガレット・ローリングス
●ベスト1映画は?と尋ねられれば、必ず洋画ならこの作品と答えてきた。ジョン・バリー作曲の主題歌が流れ、38年前のロンドンの街が映し出される。もう懐かしくてたまらないのだが、不思議とつい昨日観ていたような感覚にも陥る。おそらく記憶の隅に追いやることなく、時々この映画を記憶から取り出しては更新してきたのだろう。
◎ライムライト
2010.02.11 TOHOシネマズ海老名 Limelight
【04】1952年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、クレア・ブルーム、ナイジェル・ブルース、バスター・キートン
●自殺未遂をした女優に、命の意味を諭すセリフの一言一言がそのまま格言としての重さに満ち、逆に道化として落ちぶれていく後半は、顔に深く刻み込まれた皺が人生の悲哀を醸し出す。しかしいざ白塗りでステージに立つと華が開いたように躍動して見せる。この映画はよく言われるペーソスばかりではなく、エンターティナーの映画だ。
※1953年キネマ旬報ベストテン第2位
◎独裁者
2010.02.13 TOHOシネマズ海老名 The Great Dictator
【05】1940年アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン
CAST:チャールズ・チャップリン、ヘンリー・ダニエル、ジャック・オーキー、レジナルド・ガードナー
●最大の名場面は有名なラストの大演説ではなく、独裁者が地球儀を模した風船で戯れながら世界制服を夢見るブラックなシーンにある。恍惚とした表情を浮かべながら風船に頬ずりをする独裁者の不気味さ。喜劇王が築き上げたパントマイムの技術を駆使して醸し出される滑稽さは、権力欲にとり憑かれた男の憐れみを表現して笑いを誘う。
※1960年キネマ旬報ベストテン第1位
◎アパートの鍵貸します
2010.02.18 TOHOシネマズららぽーと横浜 The Apartment ※再観賞
【06】1960年アメリカ 監督:ビリー・ワイルダー 脚本:I・A・L・ダイヤモンド、ビリー・ワイルダー
CAST:ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン、フレッド・マクマレー、レイ・ウォルストン
●スクリーンを見つめながら心の中で「いいな、いいな」を連発していた。とにかく1シーン1シーンが実に丁寧に作り込まれており、いちいち挙げたらキリがないが、随所にニヤリとするアイディアが織り込まれ、何度も観ているにもかかわらず、新たな発見がある。どの場面もしっかりと名匠の仕事が施されているのだ。素晴らしい。
◎お熱いのがお好き
2010.02.21 TOHOシネマズららぽーと横浜 Some Like It Hot ※再観賞
【07】1959年アメリカ 監督:ビリー・ワイルダー 脚本:I・A・L・ダイヤモンド、ビリー・ワイルダー
CAST:マリリン・モンロー、トニー・カーティス、ジャック・レモン、ジョージ・ラフト、パット・オブライエン
●男優二人は殆ど女装で、ヒロインはお色気ムンムンのシースルードレス。ジャズにタンゴに機関銃と実に騒々しく、キワモノ要素満載のノリとしては完全にドタバタ喜劇なのだが、観客に愛されることでこの映画はコメディの金字塔になった。そしてそう仕向けたワイルダーとダイヤモンドの名コンビ。この先もずっと愛することを誓いたい。
◎スタンド・バイ・ミー
2010.02.25 MOVIXさいたま新都心 Stand by Me ※再観賞
【08】1986年アメリカ 監督:ロブ・ライナー 脚本:レイノルド・ギデオン、ブルース・A・エヴァンス
CAST:ウィル・ウォートン、リバー・フェニックス、キーファー・サザーランド、リチャード・ドレイファス、ジョン・キューザック
●彼らはまだ非力で思慮も浅い。年長者には屈服し、鉄橋の上で汽車に追いかけられ、犬に追いかけられ、コヨーテの咽び鳴きに怯え、沼にはまってズブ濡れになってヒルに吸われたりもする。そんな彼らのエピソードがロードムービーの面白さを加味して89分というタイトな時間を駆け巡る。26年前よりも味わい深く観た。
※1987年キネマ旬報ベストテン第6位
◎おとうと
2010.02.28 TOHOシネマズららぽーと横浜
【09】2010年松竹 監督:山田洋次 脚本:山田洋次、平松恵美子
CAST:吉永小百合、笑福亭鶴瓶、蒼井優、加瀬亮、小林稔侍、石田ゆり子、森本レオ
●監督が山田洋次であることが信じられないくらい全体が平板。しかし民間ホスピスをリアルに描きながら、映画は「死んでゆく者を克明に綴る」ことを目指すが、「死んでいく者を看取る」役割も担う。長い間家族を描き続けてきた山田洋次は、ここでライフワークの到達を目指したのではないだろうか。
◎エデンの東
2010.03.04 MOVIXさいたま新都心 East of Eden ※再観賞
【10】1955年アメリカ 監督:エリア・カザン 脚本:ポール・オスボーン
CAST:ジェームズ・ディーン、ジュリー・ハリス、レイモンド・マッシー、リチャード・ダヴァロス
●映画の冒頭で序曲が三分間続く。文豪スタインベックと巨匠エリア・カザンが組んだ一大叙事詩というノリなのだろうが、やはりディーンの一挙手一投足から放たれる光の強さは眩しいほどで、作品そのものが彼のプロモーション映画になっているのではないかとの錯覚すら覚えた。
※1955年キネマ旬報ベストテン第1位
◎ある日どこかで
2010.03.05 TOHOシネマズ六本木ヒルズ Somewhere in Time
【11】1980年アメリカ 監督:ヤノット・シュワルツ 脚本:リチャード・マシスン
CAST:クリストファー・リーヴ、ジェーン・シーモア、テレサ・ライト、クリストファー・プラマー
カルト的な支持があるという。確かに映像が煩くないのでそこに観る者の想像力が入り込む余地がある。例えば突然リチャードとの愛を引き裂かれたエリーズが、若きリチャードとの再会を果たし懐中時計を手渡すまでどのような人生を送っていたのか。ファンはそんなことを想像することで、この映画への思いを募らせていったのではないか。
◎ショーシャンクの空に
2010.03.10 TOHOシネマズららぽーと横浜 The Shawshank Redemption
【12】1994年アメリカ 監督:フランク・ダラボン 脚本:フランク・ダラボン
CAST:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン、クランシー・ブラウン、ボブ・ガントン、ギル・ベロウズ
●このプリズン映画が脱獄に進んでいくことは知っていた。知っていたにも関わらず、私は映画の途中まで絶望の中で折り合いをつけて余生に臨む群像映画でもいいのではないかと思いはじめていた。実はここにこの映画の巧妙さがある。観客の情動を掌に乗せてコントロールしているのだ。だから最後の30分間は本当に息を飲んだ。
※1995年キネマ旬報ベストテン第1位
◎フィールド・オブ・ドリームス
2010.03.14 TOHOシネマズららぽーと横浜 Field of Dreams
【13】1989年アメリカ 監督:フィル・アルデン・ロビンソン 脚本:フィル・アルデン・ロビンソン
CAST:ケビン・コスナー、エイミー・マディガン、レイ・リオッタ、ジェームズ・アール・ジョーンズ、バート・ランカスター
●とにかく琴線を直撃される。暴論を吐かせてもらえば、この映画が好きではないという映画ファンとは付き合えるが、この映画が嫌いだという野球ファンとは付き合えないと思った。これはファンタジーの素晴らしさを十分に堪能できる映画だが、同時に野球の素晴らしさを再認識させてくれる映画であることが何よりも素晴らしい。
※1989年キネマ旬報ベストテン第2位
◎ロミオとジュリエット
2010.03.22 TOHOシネマズららぽーと横浜 Romeo and Juliet ※再観賞
【14】1968年イタリア=イギリス 監督:フランコ・ゼフィレッリ 脚本:フランコ・ブルザーティ、フランコ・ゼフィレッリ
CAST:オリビア・ハッセー、レナード・ホワイティング、マイケル・ヨーク、ブルース・ロビンソン
●人は一生のうちに一度だけ奇跡的に眩い輝きを放つ一瞬があるのかも知れない。この映画に抜擢されたときのオリビア・ハッセーがその瞬間にあったのではないか。若干15歳。人生の輝きというには早すぎるのだろうが、映画の魔術がその瞬間を捉えてみせたのではないかと確信してしまった。
※1968年キネマ旬報ベストテン第2位
◎ローマの休日
2010.04.08 TOHOシネマズららぽーと横浜 Roman Holiday ※再観賞
【15】1953年アメリカ 監督:ウィリアム・ワイラー 脚本:アイアン・マクラレン・ハンター、ジョン・ダイトン
CAST:オードリー・ヘプバーン、グレゴリー・ペック、エディ・アルバート、ハートリー・パワー
●今更『ローマの休日』にどうのこうのはない。ある意味『ローマの休日』は絶対的に“みんなの映画”であって、決して“オレの映画”にはなり得ない。そして、そのことは自分が多くの映画ファンのひとりであるに過ぎないことを自覚させられることでもある。それくらいこの映画の普遍性は動かし難くも偉大であるのだ。
※1954年キネマ旬報ベストテン第6位
◎太陽がいっぱい
2010.04.09 MOVIXさいたま新都心 Plein Soleil
【16】1960年フランス=イタリア 監督:ルネ・クレマン 脚本:ポール・ジェゴフ、ルネ・クレマン
CAST:アラン・ドロン、マリー・ラフォレ、モーリス・ロネ、エルヴィール・ポペスコ
●真っ青な大海原に浮かぶヨット。ギラギラと照りつける太陽のように映画そのものが何かに乱反射しているような感覚。ギラギラとした質感を生み出すものは欲望か、殺意か、それとも心の闇がもたらす得体の知れぬ焦燥か。アラン・ドロンの出世作だが、やはり巨匠ルネ・クレマンが生んだ青春クライムムービーの傑作というべきだろう。
※1960年キネマ旬報ベストテン第3位
◎昼下りの情事
2010.04.25 TOHOシネマズららぽーと横浜 Love in the Afternoon ※再観賞
【17】1957年アメリカ 監督:ビリー・ワイルダー 脚本:ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド
CAST:オードリー・ヘプバーン、ゲーリー・クーパー、モーリス・シュバリエ、ジョン・マクギバー
●「20人目の恋人にも誘われているの、いえ、あなたが20人目だわ。だから寂しくないわよ」と泣きじゃくるヘプバーンを「もういいんだよ」と、クーパーが腕を取って汽車に乗せ旅立っていくラストシーン。ふたりを祝福する『魅惑のワルツ』を奏でる楽士たち。やっぱりワイルダーはいい。問答無用にいい。
◎雨に唄えば
2010.05.08 TOHOシネマズららぽーと横浜 Singin' in the Rain ※再観賞
【18】1952年アメリカ 監督:ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン 脚本:アドルフ・グリーン、ベティ・カムデン
CAST:ジーン・ケリー、デビー・レイノルズ、ドナルド・オコナー、ジーン・ヘイゲン
●ミュージカルを超えて映画史上に燦然と輝くジーン・ケリーの土砂降りのダンスは別格としても、オコナーのソロとコンビで踊るボードビルでのステージなど何度観ても楽しい。またヒロインのキャシーとシンクロさせたD・レイノルズのシンデレラ物語という側面もあり、シンデレラは作られて行く過程に面白さがあることを教えてくれる。
◎大脱走
2010.05.18 MOVIXさいたま新都心 The Great Escape ※再観賞
【19】1965年アメリカ 監督:ジョン・スタージェス 脚本:W・R・バーネット、ジェームズ・クラベル
CAST:スティーブ・マックイーン、リチャード・アッテンボロー、ジェームズ・ガーナー、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーン
●我々世代の多くの中学生は2週に分けて放映された『大脱走』に夢中になった。みんなマックイーンのオートバイアクションに痺れまくった。しかし30年ぶりに劇場で見直してみると脱獄を計画する捕虜とそれを阻止しようとする独軍の誇りのぶつかり合いに目を瞠る。その両者のプライドを蹂躙するナチスの非情さ。群像ドラマとして秀逸だ。
◎ウエスト・サイド物語
2010.05.21 TOHOシネマズ海老名 West Side Story ※再観賞
【20】1961年アメリカ 監督:ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス 脚本:アーサー・ローレンツ、アーネスト・リーマン
CAST:ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ジョージ・チャキリス、リタ・モレノ、ラス・タンブリン
●およそ30年ぶりに観て、序曲の後、マンハッタンの空撮からウエストサイドの公園にジェット団が結集していく流れは、少しゾクゾクした。これは初見の時にはなかった感覚だった。若者たちの躍動を映し出すカメラもいい。しかしストリートの躍動感と比べるとラブストーリーとしての濃度は薄く、主役二人の弱さも依然として気になった。
※1961年キネマ旬報ベストテン第4位
◎天井桟敷の人々
2010.05.23 TOHOシネマズららぽーと横浜 Les Enfants du Paradis ※再観賞
【21】1944年フランス 監督:マルセル・カルネ 脚本:ジャック・プレヴェール
CAST:アルレッティ、ジャン・ルイ・バロー、マルセル・エラン、ピエール・ブラッスール、マリア・カザレス
●30年ぶりの再会。時代は人々の生によって作られる。その「生」を背中にしてこの映画は「愛」を語る。そしてヒロインは愛されることで自己の「生」を自立させていく。“誰も愛さない絶対の孤独。誰からも愛されない絶対の自由”。20代のときには聞き流せた言葉が今は胸にざわっと突き刺さる。ナチ占領下で凄い映画が生まれたものだ。
※1952年キネマ旬報ベストテン第3位
◎鉄道員
2010.05.30 TOHOシネマズ海老名 Il Ferroviere ※再観賞
【22】1956年イタリア 監督:ピエトロ・ジェルミ 脚本:P・ジェルミ、A・ジャンネッティ、L・ヴィンセンツォーニ他
CAST:ピエトロ・ジェルミ、エドアルド・ネヴォラ、シルヴァ・コシナ、ルイザ・デラ・ノーチェ
●「お父さんは眠るように亡くなった」「お母さんは部屋が広くなったといっている」ラストで子供たちを送り出す妻がふと放心したような表情を見せる。大黒柱の喪失ではあるが、日常の流れの中での出来事であることを噛み締めるようでもある。家族の話は「究極の日常話」として、万国共通であり、それゆえに共感があるのかもしれない。
※1958年キネマ旬報ベストテン第5位
◎羊たちの沈黙
2010.06.13 TOHOシネマズららぽーと横浜 The Silence of the Lambs
【23】1991年アメリカ 監督:ジョナサン・デミ 脚本:テッド・タリー
CAST:ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン、ブルック・スミス、アンソニー・ヒールド
●クラリスが最初にレクターと謁見する場面で、不協和音ともいえる重低の効果音がバックに鳴り響く。その効果音と州立精神病院の暗い廊下のアンサンブルはスクリーンでの鑑賞ならではの臨場感だと思った。原作も読んだ。ビデオでも見た。しかし劇場では初見となる。やはり映画は劇場でという当たり前のことを再認識した瞬間だった。
※1991年キネマ旬報ベストテン第2位
◎男と女
2010.06.19 TOHOシネマズ海老名 Un Homme et Une Femme
【24】1966年フランス 監督:クロード・ルルーシュ 脚本:クロード・ルルーシュ、ピエール・ユイッテルヘーヴェン
CAST:アヌーク・エーメ、ジャン・ルイ・トランティニャン、ピエール・バルー、ヴァレリー・ラグランジュ
●それほど若くはない男と女。過去に連れ合いを亡くし子持ち同士。彼らは食事をして車に乗る。浮ついた会話はなくどちらかといえば寡黙。途切れがちの会話に雨の音が割り込み、濡れるフロントガラスに蘇る過去のフラッシュバック。深夜テレビではあんなに大人の映画に思えたのに、今観るとなんと瑞々しくも若々しいのだろう。
※1966年キネマ旬報ベストテン第5位
◎薔薇の名前
2010.07.04 TOHOシネマズ海老名 The Name of the Rose ※再観賞
【25】1986年フランス=イタリア=西ドイツ 監督:ジャン・ジャック・アノー 脚本:ジェラール・ブラッシュ他
CAST:ショーン・コネリー、クリスチャン・スレーター、ミシェル・ロンダール、F・マーリー・エイブラハム
●宗教を背景とした物語は苦手で、とくに中世ヨーロッパの修道院が取り巻く教皇派やら異端審官やらを背景とした戒律世界にはつい食わず嫌い状態になってしまう。だから封切時には「コネリーは上手に歳を重ねた」ぐらいにしか思わなかった。ミステリーでありアドベンチャー的な要素に気づかされても、やはり相性の悪さは拭えない。
※1987年キネマ旬報ベストテン第10位
◎告 白
2010.07.08 TOHOシネマズ海老名
【26】2010年東宝 監督:中島哲也 脚本:中島哲也
CAST:松たか子、高橋努、井野脇海、岡田将生、木村佳乃、田中雄士、能年玲奈、橋本愛、三吉彩花
●この映画、2/3まではベストワン級の素晴らしさだった。しかし残りの1/3で迷走してしまったと思う。少年が木っ端微塵に壊れていく様子を逆回転時計やCGを駆使した爆発シーンなどで表現するのはなく、女教師の「パチンじゃなくてドッカーン!」という台詞で幕を引いたとしたら相当な映画になったのではないだろうか。残念。
※2010年キネマ旬報ベストテン第2位
◎踊る大捜査線 THE MOVIE3/ヤツらを解放せよ!
2010.07.08 TOHOシネマズ海老名
【27】2010年日本 監督:本広克行 脚本:君塚良一、金澤達也
CAST:織田裕二、深津絵里、柳葉敏郎、ユースケ・サンタマリア、小泉今日子、伊藤淳史、小栗旬
●またもテレビ屋の無駄遣いに付き合ってしまった。前作も前々作も酷かったが、更に輪をかけて最悪。この新作もすべてが楽屋落ちで脚本があまりにも下手。ドラマツゥルギーもなければ、テーマもない。おまけにキャラクターたちも周辺をうろつくだけ。要するに観客の程度を低く見積もってナメきっているのだろう。
◎パピヨン
2010.07.11 TOHOシネマズ海老名 Papillon ※再観賞
【28】1973年フランス 監督:フランククリン・J・シャフナー 脚本:ダルトン・トランボ
CAST:スティーブ・マックイーン、ダスティン・ホフマン、ロバート・デマン、ウッドロー・パーフリー、ドン・ゴードン
●あれから36年。スティーブ・マックイーンが鬼籍に入ってからもすでに20年。『パピヨン』が「世紀の大公開」と銘打たれた封切り当時のスケールを映画史の中で敢然と位置づけているのかといえば、残念ながら「否」だろう。中学時代の思い出に残る映画に対して、こんなことを書くのも無粋のような気がしないでもないのだが。
◎ブリット
2010.07.19 TOHOシネマズ海老名 Bullitt ※再観賞
【29】1968年アメリカ 監督:ピーター・イェーツ 脚本:アラン・R・トラストマン
CAST:スティーブ・マックイーン、ロバート・ヴォーン、ジャクリーン・ビゼット、ロバート・デュバル
●ラロ・シフリンの音楽に乗ってマックイーンが疾走する。私は今でもカーチェイスの最高峰は『ブリット』だと思っている。今やカーチェイスにまでCGが使われる時代となって鼻白むばかりだが、刑事アクションといえばカーチェイスが出てくるお約束を作ったばかりか、元祖にして既に最上級を作り上げてしまったのではないだろうか。
◎戦場にかける橋
2010.08.01 TOHOシネマズ海老名 The Bridge on the River Kwai
【30】1957年アメリカ 監督:デヴィッド・リーン 脚本:カルダー・ウィリンガム、デヴィッド・リーン
CAST:ウィリアム・ホールデン、アレック・ギネス、早川雪州、ジャック・ホーキンス、ジェームズ・ドナルド
●あからさまな反日映画だとは思わなかったが、間違いなく反戦映画だった。それでも兵士たちの栄誉と誇りを高らかに謳い上げるという後味も残している。そのあたりがD・リーンの素晴らしさだ。残虐な殺し合いを描けば反戦映画になるが、後世にまで残すべき功績が一瞬にして崩壊していくことで戦争の空虚さを物語ることもできるのだ。
※1957年キネマ旬報ベストテン第5位
◎ゴッドファーザー
2010.08.12 TOHOシネマズ海老名 The Godfather ※再観賞
【31】1972年アメリカ 監督:フランシス・フォード・コッポラ 脚本:フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーヅォ
CAST:マーロン・ブランド、アル・パシーノ、ジェームズ・カーン、リチャード・カステラーノ、ロバート・デュヴァル
●凄まじくも素晴らしい。この映画を評して「残虐な場面も多いが、本質には移民たちの家族の絆を描いたことが見事」という声をよく聞く。それは確かにその通りだと思うが、それでも私は第一義的に稀有のバイオレンス映画だという印象があり、それはこうして午前十時の上映で30年ぶりに再会しても揺るぎないことのように思えた。
※1972年キネマ旬報ベストテン第8位
◎ワイルドバンチ
2010.08.15 TOHOシネマズ海老名 The Wild Bunch
【32】1969年アメリカ 監督:サム・ペキンパー 脚本:サム・ペキンパー、ワロン・グリーン
CAST:ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ロバート・ライアン、ウォーレン・オーツ
●いやはや面白かった。映画史的にはバイオレンスウエスタンの代名詞となっているが、当時の観客がド肝を抜かれたであろう暴力のテンションに、製作から41年目の“遅れすぎた観客”である私も最後までド肝を抜かれていた。まさに「時代の終わりを描いた西部劇」ではなく「西部劇を終わらせた西部劇」という形容がぴったりではないか。
◎カサブランカ
2010.08.26 TOHOシネマズ海老名 Casablanca ※再観賞
【33】1942年アメリカ 監督:マイケル・カーティス 脚本:ジュリアス・J・エプスタイン、フィリップ・G・エプスタイン他
CAST:ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、ポール・ヘンリード、クロード・レインズ
●激動の時代にアメリカからヨーロッパに渡り、ナチスドイツに陥落する直前のパリで恋に破れ、レジスタンス参加を経てアフリカに流れてきた男。理想を裏切られ、時代に翻弄されてニヒリズムに埋もれた男をハンフリー・ボガード以外の誰が演じられるものだろうか。何度見てもボギーこそ「男のプロだ」といわざるを得ない。
◎第三の男
2010.08.28 TOHOシネマズ海老名 The Third Man ※再観賞
【34】1949年イギリス 監督:キャロル・リード 脚本:グレアム・グリーン
CAST:ジョゼフ・コットン、アリタ・ヴァリ、オーソン・ウェルズ、トレヴァー・ハワード
●「映画史上に残る名場面」の宝庫だ。有名なハリー・ライムの登場シーンは鮮やかすぎて笑ってしまうが、観覧車での「スイス500年の平和がもたらしたものは鳩時計だけだ」という名台詞はO・ウェルズが考案したというし、ハッピーエンドで終えようとしたG・グリーンの台本をひっくり返して名ラストシーンを作り上げたC・リードも凄い。
※1952年キネマ旬報ベストテン第2位
◎アマデウス
2010.09.05 TOHOシネマズ海老名 Amadeus Director's Cut ※再観賞
【35】1984年アメリカ 監督:ミロシュ・フォアマン 脚本:ミロシュ・フォアマン、ピーター・シェーファー
CAST:F・マーリー・エイブラハム、トム・ハルス、エリザベス・ビレッジ、サイモン・カロウ
●まさかレイクエム『魔笛』を書かせるため、変装までして衰弱していたモーツァルトを追い込んで死に至らしめるなどということはなかったにしても、天賦の才能に嫉妬し、魂を悪魔に売った挙句に精神病棟で廃人扱いされるまでのサリエリをよくぞ描ききったものだ。『アマデウス』はモーツァルトではなくサリエリの映画だった。
※1985年キネマ旬報ベストテン第1位
◎ライトスタッフ
2010.09.11 TOHOシネマズ海老名 The Right Staff ※再観賞
【36】1983年アメリカ 監督:フィリップ・カウフマン 脚本:フィリップ・カウフマン
CAST:サム・シェパード、スコット・グレン、エド・ハリス、デニス・クエイド、バーバラ・ハーシー
●クーパーのロケットが漆黒の宇宙に光の筋を描いて飛んでいき、そこにビル・コンティの勇壮なテーマが高らかに鳴り響くラスト。思わず熱くなる。この映画に賭けた作り手たちの熱気が湧きあがり、本物の男たちの誇りとプライドを謳いあげるのだという心意気が四半世紀を過ぎた今も色褪せることなくビシビシと伝わってくるのが嬉しかった。
※1984年キネマ旬報ベストテン第2位
◎2001年宇宙の旅
2010.09.20 TOHOシネマズ海老名 2001: A Space Odyssey ※再観賞
【37】1968年アメリカ 監督:スタンリー・キューブリック 脚本:アーサー・C・クラーク、スタンリー・キューブリック
CAST:キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルヴェスター、レナード・ロシター
●進化以前の人類の祖先が武器を手に持つことで、未来への矜持を得るオープニングから、いきなりステーションが浮かぶ宇宙空間に画面が転換する鮮やかさ、クラシック音楽に乗って描かれる木星探査船ディスカバリー号の造形美、そして宇宙船内部の豊穣なイメージと卓抜した美術。解釈論よりも体験論としてこの映画は永遠の輝きを持つ。
※1968年キネマ旬報ベストテン第4位
◎十二人の怒れる男
2010.09.21 TOHOシネマズららぽーと横浜 12 Angry Men
【38】1957年アメリカ 監督:シドニー・ルメット 脚本:レジナルド・ローズ
CAST:ヘンリー・フォンダ、リー・J・コッブ、エド・ベグリー、E・G・マーシャル、ジャック・ウォーデン、マーチン・バルサム
●ラストを除くと全編が狭い陪審員室でディスカッションする男たちの話なので、それほど大スクリーンが要求される映画ではないとする人がいるのかもしれないが、暗がりの中でスクリーンに集中しながら他の観客たちと思いを共有していく映画館特有の空気感は、こういう卓抜した台本と役者の熱演で見せる映画こそ相応しいのではないか。
※1959年キネマ旬報ベストテン第1位
◎ミクロの決死圏
2010.09.25 TOHOシネマズ海老名 Fantastic Voyage ※再観賞
【39】1966年アメリカ 監督:リチャード・フライシャー 脚本:ハリー・クライナー
CAST:スティーブン・ボイド、ラクェル・ウェルチ、エドモンド・オブライエン、ドナルド・プリーゼンス、アーサー・ケネデイ
●今でも子供の頃に神戸のアーケードで見たポスターは鮮烈。もちろん当時の最先端映像も今観れば牧歌的で、ラクェル・ウェルチのピチピチのボディスーツも狙いが見え見えで笑ってしまうのだが、白血球に攻撃され、血液の急流を防ぐため心臓を数秒停止させ、鼓膜に響く大音響でパニックに陥るなど、アイディアは十分に面白い。
◎激 突!
2010.10.14 TOHOシネマズ海老名 Duel
【40】1972年アメリカ 監督:スティーヴン・スピルパーグ 脚本:リチャード・マシスン
CAST:デニス・ウィーバー、ジャクリーン・スコット、エディ・ファイヤーストーン
●スタンダードの窮屈な画面サイズを逆手にとって、トレーラーの突如のフレームインなど、シネスコでは出来ないことを存分にやっている。逃げるセダンと追うトレーラーを真横から捉えるのではなく、縦の構図で狙うと余分な風景が映り込まないことで、“ DUEL ”の関係がより鮮明となる。さすがに天才の天才たる所以か。
※1973年キネマ旬報ベストテン第8位
◎ベン・ハー
2010.10.17 TOHOシネマズ海老名 Ben-Hur ※再観賞
【41】1959年アメリカ 監督:ウィリアム・ワイラー 脚本:カール・タンバーク
CAST:チャールトン・ヘストン、スティーブン・ボイド、ジャック・ホーキンス、ハイヤ・ハラリート
●映画スタジオがその社運を賭けてまで、歴史的な大スペクタクルを観客に見せるのだという執念が画面の隅々に溢れている。そしてその粋が大スクリーンに展開されるのを客席で味わう贅沢、まさにこれが映画というものだろう。初見の際には競技場の大迫力に圧倒されたが、今回はベン・ハーとイエスとの最後の別れの情緒が胸に残った。
◎アラビアのロレンス
2010.10.23 TOHOシネマズ海老名 Lawrence of Arabia ※再観賞
【42】1962年イギリス 監督:デヴィッド・リーン 脚本:ロバート・ボルト
CAST:ピーター・オトゥール、オマー・シャリフ、アレック・ギネス、アンソニー・クイン、ジャック・ホーキンス
●碧眼を瞠きながら砂漠を駈けるピーター・オトゥール。砂嵐の中から陽炎のように現れるオマー・シャリフ。もう何から何まで素晴らしい。ところが恥ずかしながら初見のときは画面の大きさにばかり目を奪われ、映画に流れる心を読み切れていなかったように思う。映画の金字塔とは『アラビアのロレンス』のことをいう。
※1963年キネマ旬報ベストテン第1位
◎眺めのいい部屋
2010.10.31 TOHOシネマズ海老名 A Room With a View
【43】1986年イギリス 監督:ジェームズ・アイヴォリー 脚本:ルース・ブローワー・ジャブヴァーラ
CAST:ヘレナ・ボナム・カーター、ジュリアン・サンズ、ダニエル・デイ・ルイス、マギー・スミス、ジュディ・デンチ
●それにしても改めてキャスティングの豪華さには驚いてしまう。ジュリアン・サンズとダニエル・デイ・ルイスに恋の争奪戦を演じさせるのがヘレナ・ボナム・カーターだというのも趣向の妙味という奴で、それを二人のベテラン女優が見つめるという構図か。フィレンツェの街並みが出ていてもいかにも英国趣味に彩られた映画だった。
※1987年キネマ旬報ベストテン第6位
◎クレイマー、クレイマー
2010.11.03 TOHOシネマズららぽーと横浜 Kramer vs. Kramer ※再観賞
【44】1979年アメリカ 監督:ロバート・ベントン 脚本:ロバート・ベントン
CAST:ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ、ジャスティン・ヘンリー、ジェーン・アレクサンダー
●「子を持つ親になれば、もっと沁みてくるよ、この映画」といわれて30年。結局、この映画が心に沁みる機会を逃してしまったが、バイトのシフトの合間に付き合っていた彼女を誘って新宿ピカデリーに観に行ったことまでよく憶えているが、ここまでダスティン・ホフマンがカッコ良かったことまでは憶えていなかった。
※1980年キネマ旬報ベストテン第1位
◎スティング
2010.11.05 TOHOシネマズ海老名 The Sting ※再観賞
【45】1973年アメリカ 監督:ジョージ・ロイ・ヒル 脚本:デイヴィッド・ウォード
CAST:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、ロバート・ショー、チャールズ・ダーニング
●何回見ただろうこの映画。最初に観たときの「やられた」という気分はもう味えなくても、他の観客の反応を楽しむため映画館に行ったものだった。かつてはニューマンとレッドフォードがお互いの顔を見てニヤリと笑う場面にドッと沸いたものだったが、今のシネコンの空気なのか、笑い声がクスリとも聞こえないのは寂しい限り。
※1974年キネマ旬報ベストテン第4位
◎バベットの晩餐会
2010.11.07 TOHOシネマズ海老名 Babette's Feast Babettes Goestebud
【46】1987年デンマーク 監督:ガブリエル・アクセル 脚本:ガブリエル・アクセル
CAST:ステファーヌ・オードラン、ボディル・キェア、ビアギッテ・フェザースピール、ヤール・キューレ
●絢爛たる料理を食べて芸術への憧憬が甦るクライマックスは魔法のようでもあった。私の趣向からすると決して面白い映画ではないのだが、都会ズレしていないヨーロッパの海辺の寒村の人々の慎ましやかな生活感と、海亀やウズラが運び込まれて驚く表情がとても微笑ましかった。うーん、少々浅く観てしまった感あり。
※1989年キネマ旬報ベストテン第2位
◎レインマン
2010.11.21 TOHOシネマズ海老名 Rain Man ※再観賞
【47】1988年アメリカ 監督:バリー・レヴィンソン 脚本:バリー・レヴィンソン、ロナルド・バス
CAST:トム・クルーズ、ダスティン・ホフマン、ヴァレリア・ゴリノ、マイケル・D・ロバーツ
●今回の映画祭で見直した作品のうち、70年代から以前の映画はしっかり憶えているのだが、80年代に封切りで観た映画は忘れていることが多い。そうだった『レインマン』は全編ハンス・ジマーの印象的な音楽に乗ったロードムービーだ。ダスティン・ホフマンの名演技ばかり脚光を浴びたが、トム・クルーズのニュートラルな視線が効いている。
※1989年キネマ旬報ベストテン第4位
◎ニューシネマ・パラダイス
2010.11.27 TOHOシネマズ海老名 Nuovo Cinema Paradiso
【48】1989年イタリア=フランス 監督:ジュゼッペ・トルナトーレ 脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
CAST:ジャック・ペラン、フィリップ・ノワレ、プペラ・マッジョ、アントネラ・アッティーリ、サルヴァトーレ・カシオ
●下手な8㎜映画制作に夢中になっていた頃、自室の窓から外の壁に向かって大写しをやってみようと思ったことがある。それにしても子供時代にここまで身近に映画館に寄り添えたらどんなに良かったことか。モリコーネのメロディに乗って検閲で切られたフィルムをつないだラブシーンの数々のなんたる愛おしくも圧巻なことだろう。
※1989年キネマ旬報ベストテン第7位
◎映画に愛をこめて/アメリカの夜
2010.12.05 TOHOシネマズ海老名 La Nuit américaine
【49】1973年フランス=イタリア 監督:フランソワ・トリュフォー 脚本:フランソワ・トリュフォー
CAST:ジャクリーン・ビセット、ジャン・ピエール・オーモン、ヴァレンティナ・コルテーゼ、ジャン・ピエール・レオ
●ずっと観たかった映画だった。一見するとトリュフォーの描く様々な人間模様を追いながら、彼の映画技法の何たるかを捉えようとしまいがちになるが、映画制作に携わってきた人たちには爆笑シーンのオンパレードだったのではないか。むしろトリュフォーが自虐的に監督哀歌を奏でた映画だと思っても構わないだろう。
※1974年キネマ旬報ベストテン第3位
◎武士の家計簿
2010.12.05 TOHOシネマズららぽーと横浜
【50】2010年松竹=アスミックエース 監督:森田芳光 脚本:柏田道夫
CAST:堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、中村雅俊、草笛光子、伊藤祐輝、茂山千五郎
●家族は一人ずつ順番に天寿を全うし、ドラマがフィクションではなく実話であることが明かされていく。激動の時代に、あえて普遍であることの素晴らしさ。冒頭からラストまで丁寧な描写で積み重ねていった森田は本当に上手かった。それでも、どこかで舌を出しているのではないかと思わせるのも森田の味なのだが。
◎明日に向って撃て!
2010.12.23 TOHOシネマズ海老名 Butch Cassidy and The Sundance Kid ※再観賞
【51】1969年アメリカ 監督:ジョージ・ロイ・ヒル 脚本:ウィリアム・ゴールドマン
CAST:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス、ストロザー・マーティン、ジェフ・コーリー
●どっぷりマカロニ少年だった私は、リバイバルで観たとき、こんなポップな西部劇もあるものかと思った。あれから時代も何巡目かすると、追われるブッチとサンダンスは結構移りゆく時代を彼らなりに謳歌していたのではないかと思えてくる。バディムービーとして理想的な映画であって、青春の破滅劇との見方は違うだろう。
※1970年キネマ旬報ベストテン第4位
◎裏 窓
2010.12.28 TOHOシネマズ海老名 Rear Window ※再観賞
【52】1954年アメリカ 監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
CAST:ジェームズ・ステュワート、グレイス・ケリー、ウェンデル・コーリー、セルマ・リッター、レイモンド・バー
●劇場では二度目だが、テレビやビデオでも何度か観ている。いや観てしまう。据え置きの巨大セットをまるで遊び場のように、不自由な空間をヒッチコックが自由自在に躍動しているのが楽しい。当然にしてショッキングな場面も多いが、ここまで設定を作り込まれると完全に巨匠の手のひらに乗せられているようで本当に楽しい。
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