●2001年(平成13年)

 三行の映画評


ダンサー・イン・ザ・ダーク
2001.1.-丸の内プラゼール Dancer in the Dark
【01】2000年デンマーク 監督:ラース・フォン・トリアー 脚本:ラース・フォン・トリアー
CAST:ビョーク、カトリーヌ・ドヌーヴ、デヴッド・モース、ピーター・ストーメア、ジャン=マルク・バール
●セルマの世界が暗転していくと同時に、彼女の妄想が鮮明な画像となって現れる。しかし刻まれる映像はビュークの振り絞るような歌声の中で、それが決して救済になることはない。唯一の救済は息子の手術の成功なのだろうが、その直後に示される刹那の衝撃に観客は慄然とする。映画のカタルシスとは何だろうと問いかけられた気がする。
※2000年キネマ旬報ベストテン第9位


太陽は、ぼくの瞳
2001.2.-厚木テアトルシネパーク  رنگ خدا‎ Rang-e Khodā
【02】2000年イラン 監督:マジッド・マシディ 脚本:マジッド・マシディ
CAST:モフセン・ラマザーニ、ホセイン・マージドゥーブ、サリム・フェジ、エルハム・シャフリ、ファラナズ・サファリ
●モントリオールでグランプリを獲るなど「良作」には違いないが、文部省選定的な良作として、ある意味家長制度の中で人生の皮肉すら感じさせた『運動靴と赤い金魚』ほどの感銘はなかった。ただ急流に盲目のモハマド少年が呑み込まれる場面は迫力満点で、マジッド・マシディのエンターティメント志向は垣間見えた気がした。


ザ・カップ 夢のアンテナ
2001.2.-Bunkamuraル・シネマ Phorpa
【03】1999年ブータン=オーストラリア 監督:ケンツェ・ノルブ 脚本:ケンツェ・ノルブ
CAST:ジャムヤン・ロドゥ・ウゲン、ネテン・チョックリン、ウゲン・トップゲン、ラマ・チョンジョル
●デンマーク、イランに続いて観たのが、おそらくもう二度と観る機会はないだろうと思うブータン映画。監督も出演者もチベット仏教僧という異色作だが、寄宿舎を抜けてサッカーW杯を観に行く少年僧の話をユーモアたっぷりに見せるあたり、チベット仏教も捨てたものではないのかもしれない。どんな国でも子供たちはキラキラして眩しい。


BROTHER
2001.2.23シネプレックス平塚 BROTHER
【04】2001年イギリス=オフィス北野 監督:北野武 脚本:北野武
CAST:ビートたけし、オマー・エップス、寺島進、真木蔵人、石橋凌、渡哲也、大杉漣 、ロイヤル・ワトキンス
●滅茶苦茶やりすぎて日本に居られなくなったヤクザたちがアメリカに乗り込んでマフィアと戦争する。ダイナミックすぎる筋書きだが、考えてみればヤクザvsマフィアの抗争という発想はシンプルだが一歩間違えたら茶番になる。北野バイオレンスはそれらの懸念をクールに乗り越えるのだが、カタルシスは今イチ感じなかった。


バトル・ロワイアル 特別篇
2001.4.8シネプレックス平塚
【05】2001年東映 監督:深作欣二 脚本:深作健太
CAST:藤原竜也、前田亜希、柴咲コウ、山本太郎、ビートたけし、安藤政信、栗山千明、片岡礼子、美波、宮村優子
●ケレン味たっぷりのオープニングに笑いながら深作ワールドに誘われる快感を再び味わえた。光子の痛々しい過去が垣間見え、これは本編に残しても良かったのではないかと思った。結局、自分の周辺でも賛否両論が分かれ、現実にアフォな映画だったかもしれないが、この時代にリアルにバイオレントな深作が君臨したのことが今は嬉しい。


ハンニバル
2001.4.84.31ワーナーマイカルシネマズ海老名 HANNIBAL
【06】2001年アメリカ 監督:リドリー・スコット 脚本:デイヴィッド・マメット、スティーヴン・ザイリアン
CAST:アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア、レイ・リオッタ、ゲイリー・オールドマン、ジャンカルロ・ジャンニーニ
●映画に先駆けてトマス・ハリスの原作を読んで、レクターとクラリスの結末に唖然としつつ、結局、幼少時に受けた虐待のトラウマという定番からレクターも逃れられていないことに失望した。リドリー・ススコットはその点、概ね原作に沿いながら恐怖と爆笑(ある意味)の最後を印象に残したことで、ムードをひとつ押し上げてはいる。


名探偵コナン/天国へのカウントダウン
2001.5.8シネプレックス平塚
【07】2001年東宝=小学館=讀賣テレビ 監督:こだま兼嗣 脚本:古内一成
CAST:(声)高山みなみ、山崎和佳奈、神谷明、林原めぐみ、田中秀行、茶林坊、松井菜桜子、永井一郎、小杉十郎太
●黒の組織メインに少年探偵団が活躍する。ほぼ文句なしに面白かった。どうやら劇場版のコナンは「爆破」を最大のクライマックスにストーリーが帰結するようだが、そこに至る歩ちゃんの30秒のカウントダウンの伏線が秀逸。興奮度満点の決死のビル乗り移りのダイブは『ダイ・ハード』の域まで行った。褒めすぎたが、ま、いいか。


トラフィック
2001.5.16シネプレックス平塚 Traffic
【08】2000年アメリカ 監督:スティーヴン・ソダーバーグ 脚本:スティーヴン・ギャガン
CAST:マイケル・ダグラス、ベニチオ・デル・トロ、キャサリン=ゼタ・ジョーンズ、エイミー・アーヴィング、ドン・チ―ドル
●ソダーバーグはワシントンDC、メキシコ、カルフォルニアの3地点を描きながら、観る者に集中を怠るなとの命題を突きつけたのではないか。メキシコに麻薬カルテルがはびこることは茫洋と知っていたが、それが組織悪ではなく社会悪なのだと映画は訴える。カタルシスに昇華しない暗闘を受け入れられるか否かはコンディション次第か。
※2001年キネマ旬報ベストテン第1位


千と千尋の神隠し
2001.7.20ワーナーマイカルシネマズ海老名
【09】2001年スタジオジブリ 監督:宮崎駿 脚本:宮崎駿
CAST:(声)柊留美、夏木マリ、入野自由、沢口靖子、菅原文太、上條恒彦、小野武彦、我修院達也、神木隆之介
●ナウシカ、ラピュタの頃と違い、主人公の冒険や成長よりも、その過程の世界観を見せようとするあまり、全編がクライマックスみたいになって、そこから脱出する千尋の冒険がおまけのカタルシスに思えて今ひとつ楽しめなかった。アニメに関しては完全なストーリー主義者なのだ。


みんなのいえ
2001.7.29シネプレックス平塚
【10】2001年東宝 監督:三谷幸喜 脚本:三谷幸喜
CAST:唐沢寿明、田中邦衛、田中直樹、八木亜希子、伊原剛志、八名信夫、吉村実子、清水ミチコ、白井晃、中井貴一
●新進気鋭の建築デザイナーと昔堅気の頑固な大工、そこに風水狂の母親が現れて・・・なんだろう、悪くはなくクスクス笑える場面も散りばめられているのだけど、おそらく三谷ドラマの予定調和のうちに物語が進んでいくことの安心感が背中合わせにあり、どうせ綺麗に着地するのだろうとわかっている物足りなさを感じながら観ていた。


山の郵便配達
2001.10.22シネプレックス平塚 那山、那人、那狗
【11】1999年中国 監督:フォ・ジェンチイ 脚本:チウ・シー、ス・ウ
CAST:トン・ルージュン、リィウ・イェ、ジャオ・シイウリ、ゴォン・イエハン、チェン・ハオ
●長年抱いていた中国の山村の集落ってこんな感じだよねと思わせて、何故だか少し懐かしかった。これで主人公の若者が現代っ子ではなく朴訥とした青年ならもっと良かったにとつい典型に嵌めつつも、容易に超えられない先達の長い歳月が浮かび上る。ルートが決められたロードムービーか。
※2001年キネマ旬報ベストテン第4位


ウォーターボーイズ
2001.10.22シネプレックス平塚 
【12】2001年フジテレビ=東宝 監督:矢口史靖 脚本:矢口史靖
CAST:妻夫木聡、玉木宏、三浦哲郁、金子貴俊、近藤公園、平山綾、眞鍋かをり、杉浦太陽、杉本哲太、竹中直人
●男子高校生たちの厚みのない胸が躍動する可笑しさ。「合宿映画」の面白さに満ち溢れながら、多少ギャグが滑ろうがなんだろうが、それが高校生のクオリティなのさと文字通り彼ら集団を泳がせた矢口史靖。もうさすが。そしておバカなりに凄いことをやり遂げてしまった爽快感。かなりの敬意を表して片仮名のケッサクと呼ぶ。
※2001年キネマ旬報ベストテン第8位


GO
2001.12.-ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘
【13】2001年フジテレビ=東宝 監督:行定勲 脚本:宮藤官九郎
CAST:窪塚洋介、山崎努、柴咲コウ、大竹しのぶ、新井浩文、大杉漣、塩見三省、キム・ミン、ミョン・ケナム
●最高の原作。そしてほぼ原作通りに物語を進行させるのに映画はさらに面白かった。ひとえに演出力、脚本力もあるが、本を読みがら抱いていた杉原父子演じた窪塚洋介と山崎努の想像力が私の上を行っていたからだろう。どこか冷めながらも簡単に社会に取り込まれてなるものかと喚き、心を精一杯暴れさせる様が観ていて清々しい。
※2001年キネマ旬報ベストテン第1位


メメント
2001.12.-渋谷シネクイント MEMENTO
【14】2000年アメリカ 監督:クリストファー・ノーラン 脚本:
CAST:ガイ・ピアース、キャリー=アン・モス、ジョー・バントリアーノ、マーク・ブーン.Jr、ジョージャ・フォックス
●10分で記憶がリセットしてしまう前向性健忘の男。ポラロイドとタトゥーを頼りに妻殺害の真相暴こうと過去を追体験していく。進行そのものが仕掛けになっているが、二度観ることを強いるようで観客に負荷を与える映画ではある。途中から考えるのが苦痛となってしまったが、ずっと記憶に残っていく映画だろう。


オー・ブラザー!
2001. 12.-渋谷シネセゾン O Brother, Where Art Thou?
【15】2000年アメリカ 監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 脚本:コーエン兄弟
CAST:ジョージ・クルーニー、ジョン・タトゥーロー、ティム・ブレイク・ネルソン、ホリー・ハンター、ジョン・グッドマン
●ビデオで観た『ビッグ・リボウスキ』の方が好きだが、コーエン兄弟の自由奔放のロードムービーとして何故だか『M*A*S*H』を思い出していた。ストーリーよりもディティール。深刻なのだが笑いで展開を切り飛ばして行く逞しさのようなものがある。異常に頭髪のセットに拘るジョージ・クルーニーが面白い。ただの二枚目ではない。


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