●2002年(平成14年)

 三行の映画評


アメリ
2002.01.11 シネマライズ Le Fabuleux destin d'Amelie Poulain
【01】2001年フランス 監督:ジャン=ピエール・ジュネ 脚本:ジャン=ピエール・ジュネ、ギョーム・ローラン
CAST:オドレイ・トトゥ、マチュー・カソヴィッツ、ヨランド・モロー、ジャメル・ドゥブーズ、リュフュ
●アメリのプロフィールを紹介する冒頭から恋に落ちるまでの映像、音楽、演出が素晴らしすぎたので、やや終盤は失速した感は否めないが、モンマルトルのひとりの女の子の個人的な趣味趣向だけで、小さな幸福感が全身を駆け抜けるような不思議な気分を味わえる。こういう映画が突如出てくるからフランス映画は本当に侮れないのだ。
※2001年キネマ旬報ベストテン第6位


バニラ・スカイ
2002.01.18 ヴァージンシネマズ海老名 Vanilla Sky
【02】2001年アメリカ 監督:キャメロン・クロウ 脚本:キャメロン・クロウ
CAST:トム・クルーズ、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、カート・ラッセル、ジェイソン・リー、ノア・テイラー
●ハンサムで女たらしをやらせば俺が一番だが、ハリウッドスターの色気なんて所詮は虚実皮膜さといわんばかりのプロデューサー兼任のトム・クルーズ。なかなか自信と自虐の入った立ち位置だが、実際この主人公で作品を支配できるのは彼が随一かもしれない。個人的に仮面が150年後に目覚める冷凍保存はあまりピンとこなかったが。


ロード・オブ・ザ・リング
2002.02.08 ワーナーマイカルシネマズ海老名 The Lord of the Rings
【03】2001年アメリカ=ニュージーランド 監督:ピーター・ジャクソン 脚本:フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン
CAST:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、リヴ・タイラー、ヴィゴ・モーテンセン、ケイト・ブランシェット
●絶大なファンを持つロールプレーイングの原点とのことだが、これはもう最初の段階で乗れるかどうかにかかっているのではないか。個人的にはどの映画でもダンジョンの場面は好きになれない。テーマパークのアトラクションとしか思えないからだ。総じて特撮技術は目を見張るものの同じようなテンションで3時間は少々きつすぎた。


キリング・ミー・ソフトリー
2002.02.12 ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘 Killing Me Softly
【04】2001年アメリカ 監督:チェン・カイコー 脚本:カーラ・リンドスドロウム
CAST:ヘザー・グラハム、ジョセフ・ファインズ、ターシャ・マケルホーン、ウルリク・トムセン、イアン・ハート
●はっきりいってチェン・カイコーってこの程度だったのかとびっくりした。おそらく本人もこのハリウッド進出は無念だったのではないか。プロデューサーは中国人監督独特の官能美に期待したのだろうが、ヘザー・グラハムが脱ぎまくり、ジョセフ・ファインズが妖しい眼光で力んだものの官能サスペンスとしてもあまりにお粗末すぎた。


アメリカン・スウィートハート
2002.03.03 相鉄ムービル America's Sweethearts
【05】2001年アメリカ 監督:ジョ-・ロス 脚本:ビリー・クリスタル、ピーター・トーラン
CAST:ジュリア・ロバーツ、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ジョン・キューザック、ビリー・クリスタル
●ジュリア・ロバーツとキャサリン・ゼタ・ジョーンズの競演が見どころだとしても、ハリウッドの楽屋話での恋愛模様に、はっきりいって「勝手にやってください」というのが正直なところ。憎まれ役を堂々と演じたキャサリンの迫力が地味な役どころのジュリアを圧倒し、おそらくそれを望んでいない観客とのバランスを欠いたと思う。


ハッシュ!
2002.05.22 シネクイント
【06】2002年クロックワークス 監督:橋口亮輔 脚本:橋口亮輔
CAST:田辺誠一、高橋和也、片岡礼子、秋野暢子、冨士眞奈美、光石研、つぐみ、沢木哲、斉藤洋介
●男二人に女が一人の青春映画は多い。そして大概、男二人にゲイの色合いを匂わせるものだが、この映画はストレートにゲイのカップルを描く。そこに妊娠したい女が飛び込んで来てコメディの様相を呈すると、意外にも愛と日常の揺らぎを捉えた家族の物語になった。インディペンデンドの鏡ともいうべき秀作ではなかろうか。
※2001年キネマ旬報ベストテン第2位


ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ
2002.05.22 シネマライズ Hedwig and the Angry Inch
【07】2001年アメリカ 監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル 脚本:ジョン・キャメロン・ミッチェル
CAST:ジョン・キャメロン・ミッチェル、スティーヴン・トラスク、ミリアム・ショア、マイケル・ピット
●図らずも渋谷のミニシアターをハシゴして日米のゲイ・ムービーを観てしまったが、これもまた強烈に面白かったのは、やはりインディペンドらしい自由と奔放さに満ちていたからだろう。もちろんこの世界とは大きな壁に隔てられてはいるが、エネルギュッシュなステージの余韻のまま、日常の孤独もライヴで見ているような錯覚に陥った。


リリィ・シュシュのすべて
2002.06.- 厚木テアトルシネパーク
【08】2002年ビクター 監督:岩井俊二 脚本:岩井俊二
CAST:市原隼人、忍成修吾、伊藤歩、蒼井優、細山田隆人、松田一沙、郭智博、笠原秀幸、大沢たかお
●無数の匿名の中の一人一人の孤独がヒリヒリと胸を刺す。ではリリィにとって自身の音楽に心酔するネット掲示板の若者たちはどんな存在意味を持つのか。むしろ目に見えない怪物に神格化されて弄ばれているのではないだろうか。“エーテル”を具現化した岩井俊二と小林武史に胸を締めつけられながら、闇の透明度がわかった気がした。
※2001年キネマ旬報ベストテン第7位


スター・ウォーズ :エピソード2/クローンの攻撃
2002.06.29 ヴァージンシネマズ海老名 STAR WARS Episode II: Attack of the Clones
【09】2002年アメリカ 監督:ジョージ・ルーカス 脚本:ジョナサン・ホールズ、ジョージ・ルーカス
CAST:ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、ヘイデン・クリステンセン、サミュエル・L・ジャクソン
●正直言えばこのシリーズはずっと他人の熱狂のイメージがあって、自分はその外側からずっと傍観しながら、でも一応は噛んでおかないとなと思いながら付き合ってきたような気がする。しかしこの最新作には初めて心の底から面白いと思った。活劇に次ぐ活劇の連続がとにかく楽しく、ヨーダのライトセーバー戦など拍手ものだった。


名探偵コナン/ベイカー街の亡霊
2002. 07.15 秦野名画座
【10】2002年小学館=日テレ=東宝 監督:こだま兼嗣 脚本:野沢尚、こだま兼嗣
CAST:(声)高山みなみ、山崎和佳奈、田中秀幸、折笠愛、津嘉山正種、小林清志、速水奨、島本須美、神谷明
●一応、探偵マンガの体裁をとっているのだから、仮想現実とはいえタイムトラベルものを描いていいものなのか疑問に思ったものの、コナン・ドイルやシャーロック・ホームズへのリスペクトを随所に散りばめた野沢尚の脚本が良く出来ていたので許そうかと思う。作画班もよく頑張り、シリーズでも白眉の出来なのではないか。


スパイダーマン
2002. 07.15 秦野名画座 SPIDER-MAN
【11】2002年アメリカ 監督:サム・ライミ 脚本:デイヴィッド・コープ
CAST:トビー・マグワイア、キルスティン・ダンスト、ウィレム・デフォー、ジェームズ・フランコ、クリフ・ロバートソン
●アメコミという殆ど門外漢のジャンルだったが、スパイダーマンの成り立ちがよくわかっただけではなく、サム・ライミがこのヒーローにいかに愛着を持っているかが納得出来て好感を持った。マンハッタンのビルからビルへ、蜘蛛の糸を操って浮遊するCG映像も楽しい。わりと硬派な演技陣がアメコミのチャラさを一掃しているのもいい。


モンスターズ・インク
2002.08.15 横浜日劇 Monsters, Inc.
【12】2002年アメリカ 監督:ピート・ドクター、ジョン・ラセター 脚本:アンドリュー・スタントン
CAST:(声)ジョン・グッドマン、ビリー・クリスタル、ジェームズ・コバーン、スティーヴ・ブシェーミ
●いわゆるフルCGアニメを劇場で観るのは初めてだったが、キャラクターの質感に温もりを感じて、当初イメージしていたTVゲームのポリゴンと違ってきちんとアニメーションになっていたのはひと安心だった。しかしサリーの毛の質感。これはもうセル画では到底太刀打ちできない表現だなと痛感し、遅ればせながら新時代の到来を実感した。


少林サッカー
2002.08.15 横浜日劇 少林足球
【13】2001年香港 監督:チャウ・シンチー、リー・リクチー 脚本:チャウ・シンチー、ツァン・カンチョン
CAST:チャウ・シンチー、ウォン・ヤッフェイ、ヴィッキー・チャオ、ン・マンタ、パトリック・ツェー、カレン・モク
●さすがにこれを見せられたらCG否定派であっても黙らざる得ない。いや黙るなんぞ到底無理か、いやはや笑った笑った。かつてこれほど正しく痛快なCG活用映画があったろうか。こちらの想像を矢継ぎ早に映像が凌駕していく快感というか、香港映画の旺盛な面白主義にすっかり脱帽。ただ痛快な試合場面以外でのやり過ぎは気になったが。


オースティン・パワーズ/ゴールドメンバー
2002.09.26 ヴァージンシネマズ海老名 Austin Powers in Goldmember
【14】2002年アメリカ 監督:ジェイ・ローチ 脚本:マイク・マイヤーズ、マイケル・マッカラーズ
CAST:マイク・マイヤーズ、ビヨンセ、マイケル・ケイン、マイケル・ヨーク、ロバート・ワグナー、フレッド・サヴェージ
●前作は笑いどころのツボが掴めず今イチ楽しめなかったが、今度のは良かった。というより007のパロディどころか所々に本歌取りというか、往年の007そのままのムードに「おっ!」とする瞬間が何度かあった。逆をいえばそれだけ本家が劣化しているのかもしれない。ビヨンセは歴代のどのボンドガールより綺麗だったのではないか。


サイン
2002.09.26 ヴァージンシネマズ海老名 Signs
【15】2002年アメリカ 監督:M.ナイト・シャラマン 脚本:M.ナイト・シャラマン
CAST:メル・ギブソン、ホアキン・フェニックス、ロリー・カルキン、アビゲイル・ブレスリン、チェリー・ジョーンズ
●思わせぶりな展開がダラダラと続き、そろそろ核心に来たか、いやまだ来ないか、と思っているうちに驚くべきチープな結末が待っていた。何故、この脚本に巨額な値段がついたのかまったく意味不明。ダメだろこういう映画を撮ってたら・・・とため息ついたのは自分だけか。誰でもいいので、この映画の面白さを自分に解説してもらいたい。


ピンポン
2002.10.02 シネプレックス平塚
【16】2002年アスミックエース 監督:曽根文彦 脚本:宮藤官九郎
CAST:窪塚洋介、ARATA、サム・リー、中村獅童、大倉孝二、竹中直人、夏木マリ、荒川良々、近藤公園、平野貴大
●ペコもスマイルもアクマもドラゴンも全部良かった。卓抜したCG技術に目を瞠らせるものの、松本大洋の原作漫画をここまで忠実に描いて、なお映画的な新鮮さに溢れている。演出、脚本、芝居が三位一体となって原作世界への理解と、本気で面白い映像を作るのだという気概が嬉しいではないか。日本映画もまだまだ捨てたものではない。
※2002年キネマ旬報ベストテン第9位


ノー・マンズ・ランド
2002.11.08 厚木テアトルシネパーク No Man's Land
【17】2001年ボスニア・ヘルツェゴビナ=フランス=ベルギー=スロベニア=イタリア=イギリス 監督:ダニス・ダノヴィッチ 脚本:ダニス・ダノヴィッチ CAST:ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ、フィリプ・ショヴァゴヴィッチ
●6ヶ国に及ぶ製作国籍。ヨーロッパが総力を結集して挑んだ戦争映画のようでいて、戦場の名もなき兵士の悲劇をひたすら描いていく。本人には悲劇なのだが、観客には喜劇に思えてしまう皮肉。これは立派な反戦映画だ。地雷の上で身動きのとれない兵士。このなすすべのなさこそがセルヴィア・ボスニア戦争そのものだったに違いない。
※2002年キネマ旬報ベストテン第2位


たそがれ清兵衛
2002.11.- ヴァージンシネマズ海老名
【18】2002年松竹 監督:山田洋次 脚本:山田洋次、朝間義隆
CAST:真田広之、宮沢りえ、田中泯、岸惠子、伊藤未希、橋口恵莉奈、草村礼子、丹波哲郎、小林稔侍、大杉漣、吹越満
●山田洋次からまた名作が生まれたということだろうか。今年度のベストワンは決まりだろう。少なくとも70年代に『家族』や『故郷』で垣間見せたリアリストとしての本領がいかんなく発揮されたのだと思った。真田広之と田中泯の剣豪対決は怖いくらいだったが、山田洋次に殺陣の凄味を味わされるとは夢にも思わなかった。
※2002年キネマ旬報ベストテン第1位


マイノリティ・リポート
2002.11.30 ヴァージンシネマズ海老名 Mignority Report
【19】2002年アメリカ 監督:スティーブン・スピルバーグ 脚本:スコット・フランク、ジョン・コーエン
CAST:トム・クルーズ、コリン・ファレル、サマンサ・モートン、マックス・フォン・シドー、ピーター・ストーメア
●「政府が未来を予測できるようになればどうなるか」という命題は極めて政治的ではあるのだが、スピルバーグでトム・クルーズとなればエンターティメントに仕上げざる得なかったか。ただその分の物足りなさは否めない。この題材をもっと哲学的な観点で描けば興行は苦しいだろうが、カルト映画としてずっと語り継がれたのかもしれない。


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