●2013年(平成25年)

 三行の映画評


友だちのうちはどこ?
2013.01.02 TOHOシネマズ上大岡:スクリーン7 خانه دوست کجاست ؟‎ Khāneh doust kojāst ?
【01】1993年イラン 監督:アッバス・キアロスタミ 脚本:アッバス・キアロスタミ
CAST:ババク・アハマッドプール、アハマッド・アハマッドプール、ホダバブシュ・デファイ、イラン・オリタ
●初めて噂に名高いキアロスタミ作品を観た。先行して観ていたマジッド・マジティの作品同様に何とも可愛いらしい作風だが、なるほどロングショットを多用することで出演者の呼吸が伝わってくるような映像を紡ぎだす。生活感はどの国でも不変であることを思いながらも、イスラム圏だから成り立つ世界観でもあるようだ。
※1993年キネマ旬報ベストテン第8位


恋のロンドン狂想曲
2013.01.04 TOHOシネマズ シャンテ スクリーン1 You Will Meet a Tall Dark Stranger
【02】2010年スペイン・アメリカ 監督:ウディ・アレン 脚本:ウディ・アレン
CAST:ジェマ・ジョーンズ、アントニオ・バンデラス、ジョシュ・ブローリン、アンソニー・ホプキンス、ナオミ・ワッツ
●この邦題は何とかならんのかと思いつつ、前回がパリだったから今度はロンドン。物語上で舞台がロンドンである必然性はないし、家族全員が恋に狂うが、必ずしも成就するわけでもない。どうやら最初から物語を大団円に収めるつもりもないらしい。それでも独特の節回しで見せてしまう。ウディ・アレンはもはや無敵か。


真夜中のカーボーイ
2013.01.04 TOHOシネマズみゆき座  Midnight Cowboy
【03】1969年アメリカ 監督:ジョン・シュレシンジャー 脚本:ウォルド・ソルト
CAST:ジョン・ヴォイト、ダスティン・ホフマン、シルビア・マイルズ、ブレンダ・バッカロ、バーナード・ヒューズ
●まさかスクリーンでラッツォに会えるとは思わなかった。ニューヨークでズタズタにされながらフロリダ行のバスの中、生死の境で一瞬でもマイアミの空気を感じることはできただろうか。挑発的な映画だと思っていたが、今観ると何とハートフルなんだろう。やはりニューシネマの代表作だ。ジョン・バリーの旋律がまだ頭の中で鳴っている。
※1969年キネマ旬報ベストテン第2位


レ・ミゼラブル
2013.01.05 TOHOシネマズ海老名  Les Misérables
【04】2012年イギリス 監督:トム・フーパー 脚本:クロード=ミシェル・シェーンベルク、アラン・ブーブリル 
CAST:ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド、ヘレナ・ボナム・カーター
●ファンティーヌが声を絞り出すように歌う「I dreamed a dream」がとにかく圧倒する。おかげで彼女亡き後に一体誰に感情移入していいのか解らず少々途惑ってしまった。その中で繰り広げられる革命の激戦に目を泳がせながら、最後の最後でジャン・バルジャンの生涯に物語が収斂され、ほっと胸をなでおろした152分だった。


卒 業
2013.01.06 TOHOシネマズ上大岡:スクリーン3 The Graduate ※再観賞
【05】1967年アメリカ 監督:マイク・ニコルズ 脚本:カルダー・ウィリンガム、バック・ヘンリー
CAST:ダスティン・ホフマン、アン・バンクロフト、キャサリン・ロス、ウィリアム・ダニエルズ
●既成の価値観への焦燥と反逆がニューシネマの定義ならば、その典型とされる本作も、今や時代を選ばず不変の恋愛劇として通用する。こうして時の流れは取捨選択を繰り返していくのだろうが、ラストでバスに乗り込んだ二人の表情が強張っていくのは何故だろう。1978年のリバイバル版のようにS&Gのナンバーに字幕をつけてほしかった。
※1968年キネマ旬報ベストテン第6位


ダーティハリー
2013.01.10 TOHOシネマズみゆき座  Dirty Harry ※再観賞
【06】1971年アメリカ 監督:ドン・シーゲル 脚本:ハリー・ジュリアン・フィンク、リタ・M・フィンク他
CAST:クリント・イーストウッド、ハリー・ガーディノ、ジョン・ヴァーノン、レニ・サントーニ、アンディ・ロビンソン
●サンフランシスコの俯瞰。屋上のプールで優雅に泳ぐ美女。向けられるライフルのスコープ。そこでラロ・シフリンの音楽がボーンと鳴る。そらキタぞキタぞとワクワクものだ。しかし異常殺人犯を熱演したA・ロビンソンがその後にまったくブレイクしなかったのは残念。何たってあのハリー・キャラハンをあそこまで本気にさせたのだから。


フレンチ・コネクション
2013.01.13 TOHOシネマズみゆき座 The French Connection ※再観賞
【07】1971年アメリカ 監督:ウィリアム・フリードキン 脚本:フィリップ・ダントニハリー
CAST:ジーン・ハックマン、ロイ・シェイダー、フェルナンド・レイ、トニー・ロー・ビアンコ、マルセル・ボザッフィ
●高校生のときに国鉄ガード下の名画座で観たおかげで、地下鉄に乗った狙撃犯をポパイが高架下から追跡するカーチェイスは臨場感たっぷりだった。。。という嘘みたいな思い出話を何度披露したことか。ジーン・ハックマンのポパイ刑事は改めてかっこ良く、ハリーとともに1971年の刑事アクションのレベルの高さはまさに驚異的だ。
※1972年キネマ旬報ベストテン第10位


M*A*S*H[マッシュ]
2013.01.13 立川シネマシティ M*A*S*H ※再観賞
【08】1967年アメリカ 監督:ロバート・アルトマン 脚本:リング・ラードナー・ジュニア
CAST:ドナルド・サザーランド、エリオット・グールド、トム・スケリット、サリー・ケラーマン、ロバート・デュバル
●こういう形の反戦メッセージもあるものかと、リバイバルロードショーを見た中学生は頭でっかちに納得したのかもしれないが、それから人生を3倍以上生きて思うのは、戦争ブラックコメディをベトナム戦争の最中に作ることが反戦以上に意味があったのではないかということ。そういえばドナルドもエリオットもやけに挑発的ではないか。
※1970年キネマ旬報ベストテン第5位



2013.01.19 TOHOシネマズみゆき座 La Strada
【09】1954年イタリア 監督:フェデリコ・フェリーニ 脚本:フェデリコ・フェリーニ、トゥリオ・ピネリ
CAST:アンソニー・クイン、ジュリエッタ・マシーナ、リチャード・ベイスハート、アルド・シルヴァーニ
●映画史上において男性主人公の名は数多く思い浮かぶものの、女性主人公となるとどうだろう。その中でもジュリエッタ・マシーナ演じるジェルソミーナという名はニーノ・ロータの名曲とともに永遠に輝き続けるのではないか。フェリーニはジェルソミーナに悲しくも哀れな末路を与えたが、彼女の愛くるしい面影は忘れられるものではない。
※1957年キネマ旬報ベストテン第1位


タクシードライバー
2013.01.19 立川シネマシティ TAXI DRIVER ※再観賞
【10】1976年アメリカ 監督:マーティン・スコセッシ 脚本:ポール・シュレイダー
CAST:ロバート・デ・ニーロ、ジョディ・フォスター、ピーター・ボイル、シビル・シェパード、ハーヴェイ・カイテル
●マンホールから立ちのぼる蒸気の向こうで陽炎のように揺れるマンハッタン。そこにバーナード・ハーマンのスコアが相俟って醸される狂気はかつての高一のガキを圧倒し、幻惑させ、ほんの少し大人の観客にしてくれた。しかし37年経って改めて再会してトラヴィスもアイリスもまったく色褪せていないのに驚く。改めて感服した。
※1976年キネマ旬報ベストテン第1位


甘い生活
2013.01.26  TOHOシネマズみゆき座  La Dolce Vita ※再観賞
【11】1959年イタリア 監督:フェデリコ・フェリーニ 脚本:エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネリ、B・ロンディ
CAST:マルチェロ・マストロヤンニ、アニタ・エクバーグ、アラン・キュニー、アヌーク・エーメ、イヴォンヌ・フルノー
●冒頭のイエス像をヘリで運ぶ不思議な場面で俯瞰するローマから始まって、ラストの砂浜に打ち上げられた醜悪な巨大魚の出現まで、脂がギトギト滴るようなフェリーニの力技の前に、こちらも相当なエネルギーで迎え討たざるを得ない。怠惰と退廃が弾ける奇妙な熱狂が全編を覆う175分。ヘトヘトに疲れるけど不思議に面白いのは何故なんだ。
※1960年キネマ旬報ベストテン第2位


007/ロシアより愛をこめて
2013.02.02  立川シネマシティ  From Russia with Love ※再観賞
【12】1963年イギリス 監督:テレンス・ヤング 脚本:リチャード・メイバウム
CAST:ショーン・コネリー、ダニエラ・ビアンキ、ペドロ・アルメンダリス、ロッテ・レーニヤ、ロバート・ショウ
●未だにシリーズ最高傑作といわれるが、今観ると野暮ったいところも含めて007というよりもスパイアクションのクラシックといった方がいいのかも知れない。コネリーはもちろん、D・ビアンキのボンドガールもいいし、スペクターの殺し屋R・ショウが最高。イスタンブールからオリエント急行へ乗ってからの一気のたたみ掛けで俄然面白くなる。


山 猫
2013.02.02  TOHOシネマズみゆき座  The Leopard
【13】1963年イタリア 監督:ルキノ・ヴィスコンティ 脚本:スーゾ・C・ダミーコ、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ
CAST:バート・ランカスター、アラン・ドロン、クラウディア・カルディナーレ、リナ・モレリ、パオロ・ストッパ
●フェリーニの退廃と違い、不倫も男色も描かかずともヴィスコンティの映像には何ともいえないデカダンが漂う。この豪華絢爛な貴族趣味の徹底した描写にシチリアの荒涼とした風景や革命で流れた血の匂いが脳裏にちらつく。延々と繰り広げられる舞踏会に死の予感を悟った公爵のバート・ランカスターが観る者を圧倒した。


鍵泥棒のメソッド
2013.02.03 関内ホール 
【14】2012年クロックワークス 監督:内田けんじ 脚本:内田けんじ
CAST:堺雅人、香川照之、広末涼子、荒川良々、木野花、小野武彦、森口瑤子、大谷亮介、ムロツヨシ、池田成志
●「入れ替わり」「巻き込まれ」のシチュエーションコメディで主演が堺雅人。またかよ・・・と序盤はまったく乗れなかったが、記憶喪失となった香川照之の自分探しを丁寧に描くことで一気に面白味が出た。良く出来た脚本とほど良く出来上がった会場の雰囲気との相乗効果で、本来狙っていた地点に着地したのが嬉しかった。
※2012年キネマ旬報ベストテン第8位


おおかみこどもの雨と雪
2013.02.03 関内ホール 
【15】2012年東宝 監督:細田守 脚本:細田守、奥寺佐渡子
CAST:(声)宮﨑あおい、大沢たかお、黒木華、菅原文太、染谷将太、麻生久美子、林原めぐみ、上白石萌音、谷村美月
●予告編で観ていた限り、狼子供である姉弟の冒険ものだと思っていたら、なんと人間の母親の話だった。映画祭のステージで細田守監督が「一生懸命に頑張っている女性を描きたかった」といっていた通りの出来栄えで、ひとり山に去って行った“雨”が崖の上から雄叫びをあげる場面に、成長物語が最高の形で結実した感動が満ち、思わず涙した。


桐島、部活やめるってよ
2013.02.03 関内ホール 
【16】2012年ショウボート他 監督:吉田大八 脚本:喜安浩平、吉田大八
CAST:神木隆之介、橋本愛、東出昌大、清水くるみ、山本美月、松岡茉優、落合モトキ、浅香航大、太賀、大後寿々花
●学園に起こった青春の小さな波紋のすべてを重層的に描こうとして、なにひとつ描けないことを証明した凄ぶるつきのアンチ青春映画。それでもバラバラな価値観を持つ高校生たちを様々なアングルで捉えながらバラバラな群像ドラマとして見事に完結している。キリシマはキリストではなくソンビだったのかもしれない。
※2012年キネマ旬報ベストテン第2位


アルバート氏の人生
2013.02.08  TOHOシネマズ シャンテ3  ALBERT NOBBS
【17】2011年アイルランド 監督:ロドリコ・ガルシア 脚本:グレン・クローズ、ジョン・バンヴィル
CAST:グレン・クローズ、ミア・ワシコウスカ、アーロン・ジョンソン、ジャネット・マクティア、ポーリーン・コリンズ
●「男装のグレン・クローズに圧倒された」という感想で終わってしまったら映画が主演女優に呑まれたことになる。確かに女優の凄味が観たくて劇場に行った。しかしアルバート・ノッブスの切なくも孤独な道化ぶりは、潜在的にすべての人間が抱える滑稽さを合せ鏡のように写し出すものではなかったか。そこに抵抗と諦観を感じてしまった。


華麗なる賭け
2013.02.09 立川シネマシティ  The Thomas Crown Affair  ※再観賞
【18】1968年アメリカ 監督:ノーマン・ジェイソン 脚本:アラン・L・トラストマン
CAST:スティーブ・マックイーン、フェイ・ダナウェイ、ポール・バーク、ジャック・ウェストン、アディソン・パウエル
●高校生で観たときはマックイーンのカッコよさが印象的だったが、改めて映画そのものがカッコいいのだと納得。ポロ、グライダー、サンドバギーといった道具立ても、分割画面をスタイリッシュに使いこなすN・ジェイソンも、ルグランのテーマ曲も、大人の恋愛の終わりを告げるラストも、何もかもがカッコよすぎで苦笑してしまったが。


脳 男
2013.02.14 TOHOシネマズ渋谷:スクリーン2
【19】2012年日テレ=日活=東宝 監督:瀧本智行 脚本:真辺克彦、成島出
CAST:生田斗真、松雪泰子、江口洋介、二階堂ふみ、太田莉菜、染谷将太、甲本雅裕、小澤征悦、石橋蓮司、夏八木勲
●冒頭のバス大爆発からいきなりド肝を抜かれた。『ヒミズ』の二階堂ふみと染谷将太が今回は『悪の教典』での消化不良をなぎ倒さんとばかりに存在感で主役の三人を食ってかかる。首藤瓜於による原作の何十倍も面白い。爆発によるカタルシスも十分で映画チームの本気度がビシビシ伝わってきたのが嬉しい。


ダイ・ハード/ラスト・ディ
2013.02.14 TOHOシネマズ渋谷:スクリーン5  A GOOD DAY TO DIE HARD
【20】2013年アメリカ 監督:ジョン・ムーア 脚本:スキップ・ウッズ
CAST:ブルース・ウィリス、ジェイ・コートニー、セバスチャン・コッホ、ユーニア・スニギル、メアリー・E・ウィンステッド
●80年代の掉尾にぶっ放された第一作は本当に傑作だった。あれから四半世紀近く経つのか・・・。火力やカーチェイスが派手になればなるほどつまらなくなっていく一方だが、とうとう、このシリーズもB級に堕ちたかという印象。唯一良かったのは98分というタイトな上映時間か。そもそもなんでマクレーン刑事がチェリノブイリにいるんだか。


ムーンライズ・キングダム
2013.02.19 TOHOシネマズ シャンテ スクリーン3 Moonrise Kingdom
【21】2012年アメリカ 監督:ウェス・アンダーソン 脚本:ロマン・コッポラ、ウェス・アンダーソン
CAST:ジャレット・ギルマン、カーラ・ヘイワード、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、ブルース・ウィリス
●凄い映画なんだか他愛ない映画なんだか、そのあたりの境界を自由自在に駆け回っているような不思議な感覚。思えば随分と長い間、メジャースタジオから外れたところに存在する才能にはノータッチで過ごしてきた。今、そのことがとても悔やまれる。キュートだけど底意地の悪さも感じる映画で、私はかなり好きですね、こういう映画は。


ゼロ・ダーク・サーティ
2013.02.21 TOHOシネマズ渋谷:スクリーン2 ZERO DARK THIRTY
【22】2012年アメリカ 監督:キャスリン・ビグロー 脚本:マーク・ボール
CAST:ジェシカ・チャスティン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン、マーク・ストロング、クリス・プラック
●力のある映画だと思う。暗視映像によるウサマ殺害の臨場感はアパッチの爆音とともに今も頭から離れない。しかしマヤが最後に流した涙は達成感か、空虚感か、そのどちらにしてもウサマ殺害に沸き立つアメリカ国民の熱狂を思い起こすと、この事件を個人の思いに集約して描くことに生理的な嫌悪を禁じ得ないのは何故だろう。


マリーゴールド・ホテルで会いましょう
2013.02.23 TOHOシネマズ シャンテ スクリーン2 THE BEST EXOTIC MARIGOLD HOTEL
【23】2011年イギリス=UAE=アメリカ= 監督:ジョン・マッデン 脚本:オル・パーカー
CAST:ジュディ・デンチ、マギー・スミス、デーヴ・パテル、セリア・イムリー、ビル・ナイ、トム・ウィルキンソン
●ベテラン俳優たちが奏でる安心感か。彼らは晩年にインド観光に来たのではなく、再出発を賭けてこの地を訪れる。喧騒という洗礼に途惑いながら、それぞれの年輪を噛みしめていくのがいい。ただ次第に橋田壽賀子ドラマの情緒が醸されてJ・ディンチが赤木春恵に、M・スミスが奈良岡朋子に思えてきたのには少し困ったが。


アルゴ
2013.03.01 新宿ピカデリー Argo
【24】2012アメリカ 監督:ベン・アフレック 脚本:クリス・テリオ
CAST:ベン・アフレック、アラン・アーキン、ジョン・グッドマン、ブライアン・クランストン、スクート・マクネイリー
●オスカーウイナーの色目抜きで観ればクライマックスはハラハラの畳み掛けで、面白いサスペンス映画ではある。惜しむらくはトニーと人質たちの掘り下げが浅かったことと、ホメイニの革命軍を単なるイスラム過激派としてしか描けていないこと。一週間のうちにアメリカによるCIA礼賛映画を続けて観てしまったようだ。
※2012年キネマ旬報ベストテン第6位


世界にひとつのプレイブック
2013.03.05 109シネマズ グランベリーモール:シアター2 SILVER LININGS PLAYBOOK
【25】2012アメリカ= 監督:デヴィッド・O・ラッセル 脚本:デヴィッド・O・ラッセル
CAST:ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、クリス・タッカー
●物語が進むにつれ、傷だらけのパットとティファニーが磨かれたように光り輝いていく。おっと最後に美味しいところを持っていこうとデ・ニーロ親父が狙ってるぜ、気をつけろ!「よくもまぁ臆面もなく恋愛映画の王道をなぞったもんだ」などとしたり顔でのたまう奴がいたら、そいつとは少なくとも1か月は口を利きたくないな。


ジャンゴ 繋がれざる者
2013.03.09 109シネマズ グランベリーモール:シアター8 DJANGO UNCHAINED
【26】2012年アメリカ 監督:クエンティン・タランティーノ 脚本:クエンティン・タランティーノ
CAST:ジェイミー・フォックス、レオナルド・ディカプリオ、クリストフ・ヴァルツ、サミュエル・L・ジャクソン
●FREEMANとUNCHAINEDの違いを読み解くのもいいだろうが、そんな難しい話より、タランティーノはこんな映画好きだろ?と踏絵を用意しつつ、あの「さすらいのジャンゴ」を聴かす冒頭から痛快なラストまで、暗闇をめぐる夢に陶酔させてくれる。奴は我々、映画が作りたくて脇道に逸れてしまった映画小僧たちの総代であり続けるのか。


日本春歌考
2013.03.13 シネマヴェーラ渋谷
【27】1967年創造社=松竹 監督:大島渚 脚本:田村孟、佐々木守、大島渚、田島敏男
CAST:荒木一郎、吉田日出子、小山明子、伊丹十三、串田和美、田島和子、岩淵孝次、宮本信子
●軍歌も革命歌も反戦フォークもすべて春歌で塗りつぶし、高校生たちの妄想と現実が迷走する。革命の終焉から政治の時代へ、若い世代を通して先読みして自虐しているかのようでもあるが。黒い日の丸や突然始まる朝鮮起源説のアジテーションなど、今観ると大島自身が迷走しているようでもある。正直いってひどく退屈だった。


愛と希望の街
2013.03.13 シネマヴェーラ渋谷
【28】1959年松竹 監督:大島渚 脚本:大島渚
CAST:藤川弘志、望月優子、伊藤道子、富永ユキ、渡辺文雄、坂下登、須賀不二夫、千之赫子
●個人的には意外なほど面白かった。二つの階層を往来する鳩。大島渚27歳のデビューは最後に鳩を射ち殺すことで松竹大船調を真っ向から否定した衝撃作という定説だが、テンポといいディティールといい、憎たらしいほど商業映画として成熟している。階級への闘争ではなく断絶を描くことでより切実な不変を今に伝えているのではないか。


少 年
2013.03.18 シネマヴェーラ渋谷
【29】1969年創造社=ATG 監督:大島渚 脚本:田村孟
CAST:阿部哲夫、渡辺文雄、小山明子、木下剛志、尹隆道、(ナレーター)小松方正、戸浦六宏
●当り屋を生業としながら日本海を転々とする一家。ロードムービーの名作といわれる大島作品だが、悲惨だがどこかしたたかな逞しさを感じる父母に対し、自ら車に向かっていく少年の心象がどうも響いてこないのは何故だろう。重喜劇として面白そうな題材で共同体の崩壊を描いたからなのか、それとも象徴的に頻発する日の丸のせいなのか。
※1969年キネマ旬報ベストテン第3位


天草四郎時貞
2013.03.18 シネマヴェーラ渋谷
【30】1962年東映 監督:大島渚 脚本:石堂淑朗
CAST:大川橋蔵、大友柳太朗、丘さとみ、三國連太郎、佐々木孝丸、河原崎長一郎、平幹二朗、千秋実、佐藤慶
●荒波が岩に砕け散るお馴染みの三角マーク。製作・大川博と来た後に監督・大島渚と出る究極のミスマッチか。島原に集結したのは圧政を強いる者、革命を夢見る者、権力に虐げられる者、アナーキストに転向した者。東映時代劇の中で激しい議論とアジ演説が展開される可笑しさ。とても芳しいとはいえない世評以上に結構楽しんでしまった。


御法度
2013.03.19 シネマヴェーラ渋谷
【31】1999年松竹=角川 監督:大島渚 脚本:大島渚
CAST:ビートたけし、松田龍平、浅野忠信、武田真治、崔洋一、坂上二郎、田口トモロヲ、伊武雅人、吉行和子
●衆道と殺意。一見、狂気に満たされた世界観の中で男たちの間にさざ波のように広がる戸惑い。そして迷い。虚構だろうがある種、新撰組の裏面史としてここまで面白い映画だったことに驚いた、うーん素晴らしい。それにしても京都に帰り、松竹に帰った大島渚の遺作がすでに前世紀の産物であったとは・・・時の流れの何とあっけないことか。
※2000年キネマ旬報ベストテン第3位


忍者武芸帳
2013.03.22 新文芸坐
【32】1967年創造社=ATG 監督:大島渚 脚本:大島渚、佐々木守
CAST:(声)戸浦六宏、山本圭、小山明子、佐藤慶、松本典子、観世栄夫、露口茂、小松方正、小沢昭一
●へとへとに疲れた。随分前に原作を読んだとき、いつか大島の映画を観ることは意識していた。信長の真の敵は今川や武田ではなく僧侶や農民であり、そこに壮絶な階級闘争が展開するのだが、原画をそのまま映しながら動画以上の迫力を見せつけたのは白土三平の画力と、膨大なカットを積み重ねた大島の野心だったか。少し長すぎるが・・・。
※1967年キネマ旬報ベストテン第10位


日本の夜と霧
2013.03.23 新文芸坐
【33】1960年松竹 監督:大島渚 脚本:大島渚、石堂淑朗
CAST:津川雅彦、桑野みゆき、小山明子、渡辺文雄、戸浦六宏、芥川比呂志、佐藤慶、速水一郎
●台詞を噛もうがフィルムは回り続ける。大半を議論で構成する手法は革新的というより、やはり大島渚そのものが日本映画界の前衛だったのだろう。結局、運動の末路は時間の推移によって先鋭と形骸とにセクト化してしまう運命でしかなく、それを批判しながら相対化していく大島の思いをどうやら私は長い年月にわたり曲解していたようだ。
※1960年キネマ旬報ベストテン第10位


儀 式
2013.03.23 新文芸坐
【34】1971年創造社=ATG 監督:大島渚 脚本:田村孟、大島渚、佐々木守
CAST:河原崎健三、佐藤慶、中村敦夫、賀来敦子、小山明子、音羽信子、小松方正、渡辺文雄、戸浦六宏、小沢栄太郎
●厳格な家父長制度の中に苦悩し、そこに埋没する日本人を描いた傑作として評価も、40年後にむしろ日本らしさを求めて祭祀回帰へと向かう風潮となったのは皮肉としかいいようがない。しかし何よりも重要なのは日本人の精神風土史という資料的価値に堕ちることなく、映画としての面白さが風化していないということではないか。
※1971年キネマ旬報ベストテン第1位


ユンボギの日記
2013.03.25 新文芸坐
【35】1971年創造社 監督:大島渚 脚本:大島渚
CAST:(ナレーション)小松方正
●「唐辛子は煮詰められていよいよ辛くなり、麦は死して新しい芽を吹く。イ・ユンボギ、君は韓国の唐辛子」。ガム売りの貧しい少年の独白・・・小学生の時、担任の先生が朗読して聞かせた。私にとって最初が朗読であったため、スチル写真にナレーションを重ねた大島渚の方法論に違和感はなかった。ただやはり映画以前の作品なのだろうと思う。


帰って来たヨッパライ
2013.03.25 新文芸坐
【36】1968年創造社=松竹 監督:大島渚 脚本:田村孟、佐々木守、足立正生、大島渚
CAST:北山修、加藤和彦、端田宣彦、緑マコ、佐藤慶、車大善、渡辺文雄、殿山泰司、小松方正、戸浦六宏
●「自らのアイデンティティに疑いを持たない日本の若者を鋭く糾弾する異色のアイドル映画」とのことだが、正直ひどく退屈で睡魔と闘うことになった。そもそもフォーク・クルセイダーズの3人に華がなく、北山修以下の小芝居には内心失笑させられる。あの大ヒット曲で朝鮮問題を捉えるなど、大島の暴走はらしいといえばらしいのだが。


飼 育
2013.03.25 新文芸坐
【37】1968年創造社=松竹 監督:大島渚 脚本:田村孟、佐々木守
CAST:三國連太郎、ヒュー・ハード、小山明子、沢村貞子、三原葉子、戸浦六宏、浜村純、小松方正、中村雅子、大島瑛子
●大江健三郎の原作は黒人兵と少年との交流を描いた作品だと聞く。ならば大島は完全に価値観をひっくり返した。閉鎖的なムラ社会に囚われた黒人兵は村人たちのエゴの犠牲となって最後は屠殺される。叩きつける絶望的なギラギラ感は並大抵の演出力ではなく、爪を噛みながらスクリーンと対峙して、気がつけば爪がなくなっていた。


無理心中 日本の夏
2013.03.26 シネマヴェーラ渋谷
【38】1967年創造社=松竹 監督:大島渚 脚本:田村孟、佐々木守、大島渚
CAST:桜井啓子、佐藤慶、田村正和、戸浦六宏、溝口舜亮、殿山泰司、小松方正、観世栄夫、福田善之
●何だか中途半端なアングラか、舵が無茶苦茶な日活ニューアクションかというイメージ。ある種の不条理劇なのだろうが、やはり銃撃戦を見せるならば最低限の緊張感は不可欠だ。今思えば大島がじっくり腰を据えた活劇へのアプローチも観たかった。性衝動も殺人衝動もいつもの悪意が込められた歪な日の丸を凌駕するものではなかったか。


愛のコリーダ
2013.03.27 シネマヴェーラ渋谷 L'Empire Des Sens
【39】1976年フランス=大島プロ 監督:大島渚 脚本:大島渚
CAST:松田英子、藤竜也、中島葵、芹明香、藤ひろこ、殿山泰司、九重京司、松廼家喜久平、小山明子
●眠る吉蔵を愛おしく見つめる定の表情が忘れられない。演じる松田英子をある種の観念に追い込んだ情念の演出の賜物だ。愛と独占欲は背中合わせだとしても、大島の性愛へのアプローチに圧倒されつつ、刻一刻と猟奇事件へと流れていくのはやはり辛い。究極愛を描こうとすると最後は近松か阿部定に行き着くしかないというのが私の持論。
※1976年キネマ旬報ベストテン第8位


かぞくのくに
2013.04.01 新文芸坐
【40】2012年スターサンズ 監督:ヤン・ヨンヒ 脚本:ヤン・ヨンヒ
CAST:安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュン、宮崎美子、津嘉山正種、京野ことみ、大森立嗣、村上淳、諏訪太朗
●手持ちカメラの微妙な揺らぎが、彼の国に翻弄される在日コリアン家族の不安と緊張を巧く表現している。悲しくも切ない現実は現実として、リモアのスーツケースを転がすリエの眼差しに一瞬の逞しさを描き出したラストは見事。ヤン監督は先のヨコハマ映画祭では謙虚な人柄を思わせたが、完成させた映画には骨太の芯が通っていた。
※2012年キネマ旬報ベストテン第1位


荒野の決闘
2013.04.03 シネマヴェーラ渋谷 My Darling Clementine
【41】1947年アメリカ 監督:ジョン・フォード 脚本:サミュエル・G・エンジェル、ウィンストン・ミラー
CAST:ヘンリー・フォンダ、リンダ・ダーネル、ビクター・マチュア、キャシー・ダウンズ、ウォルター・ブレナン
●中学の時、テレビの洋画劇場で主題歌だけ聴いて40年近くが過ぎ、ようやくジョン・フォードの名作西部劇を観る。ヘンリー・フォンダのワイアット・アープよりビクター・マチュアのドク・ホリディのカッコ良さ。モニュメントヴァレーの雄大な景色。ただ勝手にトゥームストン、OK牧場のイメージを膨らませてしまい、それが枷となったか。
※1947キネマ旬報ベストテン第2位


図書館戦争
2013.04.27 109シネマズ港北
【42】2013年東宝=TBS 監督:佐藤信介 脚本:野木亜紀子
CAST:岡田准一、榮倉奈々、田中圭、福士蒼汰、西田尚美、橋本じゅん、栗山千明、石坂浩二、児玉清
●西暦と年号を巧みにコラージュして独自の世界観を一気に伝えた冒頭が素晴らしい。原作の乙女度より、戦闘にこだわった製作者の独立性は、ひとえに映画全体を支配する岡田准一のキレのあるアクションによって担保された。それにしても本を守る人々を描きながら、本が焼かれるのを見せるのは映画が宿命的に負う罪深さだろうか。


舟を編む
2013.04.27 109シネマズ港北
【43】2012年アスミック=松竹 監督:石井裕也 脚本:渡辺謙作
CAST:松田龍平、宮﨑あおい、オダギリジョー、黒木華、渡辺美佐子、池脇千鶴、伊佐山ひろ子、八千草薫、小林薫、加藤剛
●良い原作を良い映画に仕上げるのは難しいが、監督、脚本、美術、俳優がみんな良かった。三浦しをんも語っているように、馬締が風雲荘の自室に西岡と麗美を招く場面が秀逸で、辞書編集部がひとつになった瞬間を巧みに実感させる。その結果、出版記念パーティに隅に飾られた松本先生を中心としたスナップ写真には思わず泣けてしまった。
※2013年キネマ旬報ベストテン第2位


メリー・ポピンズ
2013.05.03 TOHOシネマズ上大岡:スクリーン2 MARY POPPINS  ※再観賞
【44】1964年アメリカ 監督:ロバート・スティーヴンソン 脚本:ビル・ウォルシュ、ドン・ダグラディ
CAST:ジュリー・アンドリュース、ディック・バン・ダイク、デイヴィッド・トムリンソン、グリニス・ジョーンズ、エド・ウィン
●最後に劇場で観てから25年が経つのか。。。ロンドンの街がこんなに煙っていたことも、「チム・チム・チェリー」以外にも聴き馴染んでいた曲があることを初めて自覚した。そういえば昔、会社の後輩が “スーパーカリフラジリスティックエクスピアドーシャス!” のおまじないをすらりと諳んじたので驚いたことを思い出した。
※1963年キネマ旬報ベストテン第5位


名探偵コナン/絶海の探偵<プライベート・アイ>
2013.05.03 TOHOシネマズ上大岡:スクリーン5
【45】2013年東宝=小学館=日テレ 監督:静野孔文 脚本:櫻井武晴
CAST:(声)高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、茶風林、緒方賢一、大谷育江、山口勝平、林原めぐみ、柴咲コウ
●このコナンの劇場版シリーズの本気度には毎度驚かされるのだが、その蓄積の中で幾つかびっくりする秀作が飛び出す。久々に劇場で観た今回のはかなり当りだった。防衛省の全面協力を得たのか、イージス艦の詳細な描写に作画チームの執念を感じ、よく練られた脚本と併せて一級のエンターティメントに仕上がっていたのではないか。


白昼の無頼漢
2013.05.10 シネマヴェーラ渋谷
【46】1961年ニュー東映 監督:深作欣二 脚本:佐治乾
CAST:丹波哲郎、久保菜穂子、曽根晴美、アイザック・サクソン、中原ひとみ、春日俊二、ダニー・ユマ、沖竜次
●十年前の三百人劇場の忘れ物を拾う。確かに稚拙だし人物造形の浅さも散見できるが、モノクロ低予算という制約の中で“白、黒、黄色”の人種を並べて裏切り合戦の混沌をこれでもかと連続させる若き深作欣二の悪ガキぶりが微笑ましい。「おっ」と思わせるタッチの萌芽も垣間見え、深作を追い続けた履歴が夢のように通り過ぎた82分だった。


レイダース/失われたアーク《聖櫃》
2013.05.12 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 Raiders of the Lost Ark ※再観賞
【47】1981年アメリカ 監督:スティーブン・スピルバーグ 脚本:ローレンス・カスダン
CAST:ハリソン・フォード、カレン・アレン、ジョン・リス=デイヴィス、ポール・フリーマン、ロナルド・レイシー
●遊園地の乗り物がアトラクションと名付けられたように、この作品を境に映画の何かが変わった。大学生のとき劇場で2回ほど観ていると思うが、30年以上が過ぎてもワクワク感は色褪せていないし、実際よく出来ていると思う。しかし終始、撮影現場を見ている気分がするのとレーザーディスクのイメージが消えないのは何故だろう。


リンカーン
2013.05.12 TOHOシネマズ海老名 LINCOLN
【48】2012年アメリカ 監督:スティーブン・スピルバーグ 脚本:ビル・ウォルシュ、ドン・ダグラディ
CAST:ダニエル・デイ=ルイス、サリー・フィールド、デビッド・ストラザーン、ジェームズ・スペイダー、トミー・リー・ジョーンズ
●歴史劇というよりも政治ドラマ。南北戦争の裏にホワイトハウスの多数派工作が綿々と繰り広げられていた事実と、共和党と民主党がイメージと違う形で対立していたことに驚く。リンカーン=偉人という図式ではないアメリカ史を語った意欲作だと思うが、近代史しか持たない国の内戦にどこまで付き合うべきなのかとの違和感は残った。


ジャッキー・コーガン
2013.05.18 TOHOシネマズ海老名:スクリーン4 KILLING THEM SOFTLY
【49】2012年アメリカ 監督:アンドリュー・ドミニク 脚本:アンドリュー・ドミニク
CAST:ブラッド・ピット、リチャード・ジェンキンス、ジェームズ・ガンドルフィーニ、レイ・リオッタ、サム・シェパード
●ハピネット配給で冒頭のトレードマークの連発。タランティーノ風のダラダラ会話、コーエン兄弟風の眩惑的なイメージとブラピ主演でもインディーズ臭が漂う。ブッシュからオバマへアメリカ政治の転換期の影で辺境に展開するケチな殺しの物語。こういう作風は嫌いではないが、エンドロールの後にだからどうしたんだという感は拭えない。


藁の楯 わらのたて
2013.05.18 TOHOシネマズ海老名:スクリーン6
【50】2013年日テレ=ワーナー 監督:三池崇史 脚本:林民夫
CAST:大沢たかお、松嶋菜々子、藤原竜也、永山絢斗、岸谷五朗、伊武雅刀、余貴美子、本田博太郎、山崎努
●警護対象者を東京まで搬送。欲をいえばそこでスパっと終わるべきだった。そのあとの芝居は蛇足。と、そんなないものねだりな欲求が喚起されるほど面白い。とくに新幹線での攻防は目を瞠る。ケレンを排した三池崇史の粘りもあるだろうし、木内一裕の原作の力もあるだろう。木内にはオリジナル脚本で日本映画の力になってもらいたい。


ヒッチコック
2013.05.24 TOHOシネマズ シャンテ スクリーン3 HITCHCOCK
【51】2012年アメリカ 監督:サーシャ・ガヴァシ 脚本:ジョン・マクラフリン
CAST:アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン、スカーレット・ヨハンソン、トニー・コレット、ダニー・ヒューストン
●不覚にも冒頭とラストの楽屋落ちにクスっと笑ってしまったが、総じて妙に俗化したヒッチコックを見せられたようで気持ち悪かった。天才は天才のままでいて欲しかったし、ヒッチコックという幻想が少しも描かれていないことに失望した。チンケな嫉妬劇は愛嬌としても、マザコン男の精神世界などまったく不要だろう。


愛さえあれば
2013.05.24 TOHOシネマズ シャンテ スクリーン1 DEN SKALDEDE FRISOR
【52】2012年デンマーク 監督:スサンネ・ビア 脚本:アナス・トーマス・イェンセン
CAST:トリーネ・ディアホルム、ピアース・ブロスナン、キム・ボドニア、セバスチャン・イェセン、モリー・エゲリンド
●決して恋愛映画は嫌いではないが、若い恋人たちの浅はかで刹那的な恋と同時進行で対比させるほど中高年カップルの恋愛が深いとも思えず、南伊の陽気な風景の中に様々な恋愛模様を相対化させて、ある種の祭りには仕上っていただろう。しかしレモンとオレンジが同じ元木で作られていたという驚きを誰も越えることは出来なかった。


慕 情
2013.06.01 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 Love is a Many-Splendored Thing ※再観賞
【53】1955年アメリカ 監督:ヘンリー・キング 脚本:ジョン・パトリック
CAST:ジェニファー・ジョーンズ、ウィリアム・ホールデン、トリン・サッチャー、イソベル・エルソム、マレイ・マシスン
●香港旅行のとき夜景をビデオで撮り、BGMに主題曲を借用したのを思い出す。高層建物もなく、政治的に揺れ動く香港を舞台に古き良き典型的な悲恋ものであるが、記憶ほどダレ場がなかったことに感心。こういうスタイルを素直に受け入れた昔の観客の無垢さが窺い知れて、今とどちらの時代が幸せなのだろうかと考えさせられた。


バレット
2013.06.08 109シネマズ グランベリーモール:シアター10  BULLET TO THE HEAD
【54】2012年アメリカ 監督:ウォルター・ヒル 脚本:ジョン・パトリック
CAST:シルベスター・スタローン、サン・カン、サラ・シャヒ、アドウェール・アキノエ=アグバエ、クリスチャン・スレーター
●自らのフィルモグラフィを大胆にセルフオマージュし、バディムービー的展開からクライマックスの斧vs斧まで、男臭さ満載のウォルター・ヒル節の炸裂に頬を緩ませつつ、大魔神化したスタローンが40年の履歴を手配写真で披露したのには拍手。エンタティメントにとり憑かれたオヤジ二人のタフな足掻きが醸し出す場末感の心地良さか。


二流小説家 シリアリスト
2013.06.15 109シネマズ グランベリーモール:シアター6
【55】2013年東映 監督:猪崎宣昭 脚本:尾西兼一、伊藤洋子、三島有紀子、猪崎宣昭
CAST:上川隆也、武田真治、伊武雅刀、片瀬那奈、平山あや、賀来千香子、戸田恵子、本田博太郎、高橋惠子
●あそこは良かったがここがダメなので星減点みたいな観賞はしないつもりでいても、良いところ、悪いところの差があまりに大きい。映画というのは差引で平均点とはならないのだ。D・ゴードンの小説を日本で映画化と知った時、驚いたと同時にその意気込みに期待もしたが、脚色チームの頑張りと比べ演出にパッションがなく、あまりに凡庸。


オブリビオン
2013.06.20 TOHOシネマズ渋谷 OBLIVION
【56】2013年アメリカ 監督:ジョセフ・コシンスキー 脚本:ジョセフ・コシンスキー、ウィリアム・モナハン
CAST:トム・クルーズ、オルガ・キュリレンコ、モーガン・フリーマン、メリッサ・レオ、アンドレア・ライズボロー
●ポイント鑑賞でエラそうなことはいいたくないが、撮影現場にシナリオライターも同行し、撮りながら直したり加えたり、そんな図が浮かぶ。地球から人類を消し去った悪の驚くべきチャチさと複製人間のオチは漫画以下の発想でしかないのだが、CGのセンスはゲーセン以上だったといったら失礼だろうか。殺戮マシンのドローンは好きだ。


映画 クレヨンしんちゃん・バカうまっ!B級グルメサバイバル!!
2013.06.22 109シネマズ港北:シアター2
【57】2013年双葉社=シンエイ=テレビ朝日他 監督:橋本昌和 脚本:浦沢義雄、うえのきみこ
CAST:(声)矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、こおろぎさとみ、コロッケ、渡辺直美、川越達也
●久々の快作との噂を聞いて「よっしゃ泣くぞ」と映画館に駆けつけたのはいいが、一体どこが「泣かせどころ」なのかまったく理解が出来ず、もし「かすかべ防衛隊」の結束にあるのだとしたら世間の評判と自分との乖離は手の施しようがない。『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』『アッパレ!戦国大合戦』での感涙は遠い昔の話になったか。


燃えよドラゴン
2013.06.23 TOHOシネマズ上大岡:スクリーン3  ENTER THE DRAGON ※再観賞
【58】1973年アメリカ=香港 監督:ロバート・クローズ 脚本:マイケル・オーリン
CAST:ブルース・リー、ジョン・サクソン、ジム・ケリー、シー・キエン、ボブ・ウォール、ヤン・スエ、アンジェラ・マオ
●13歳の冬、ひとり新宿でブルース・リーに出会って以来、あの怪鳥音とカンフーアクションの虜になった。ここまで生きてきてあそこまで熱狂し、のめり込んだことはないだろう。私たち世代の世界中の中高校生にとって、もう特別以上の映画。久々にスクリーンでB・リーの雄姿と再会してあの頃の熱気にリアルで直撃したことを誇りに思う。


炎のランナー
2013.07.07 1TOHOシネマズ海老名:スクリーン8  Chariots of Fire ※再観賞
【59】1981年イギリス 監督:ヒュー・ハドソン 脚本:コリン・ウェランド
CAST:ベン・クロス、イアン・チャールソン、シェリル・キャンベル、アリス・クリージャ、イアン・ホルム、パトリック・マギー
●ハイスピード映像をヴァンゲリスの音楽で綴ったスタイリッシュでクラシカルなスポーツ映画。30年前に観たときはそんな印象だった。ところがこの映画は権威主義や差別・偏見への戦い、信念を貫くことの尊さを謳い上げていたことを今さら知る。もちろん琴線に来るスポーツ映画のカタルシスもあり、嗚呼、いい映画なんだと実感した。
※1981年キネマ旬報ベストテン第3位


サイコ
2013.07.13 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 PAYCHO
【60】1960年アメリカ 監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:ジョゼフ・ステファノ
CAST:アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー、ヴェラ・マイルズ、ジョン・ギャビン、マーティン・バルサム
●『サイコ』を劇場で観ることはずっと念願だった。ヒロインが会社の売上金を盗んで逃亡する場面の尋常ではないボルテージ。説明無用の浴室の殺戮。最後の驚愕のドンデン返しと、無邪気にヒッチの掌で遊ばせてもらった。スリラー映画の金字塔というより、まさにスリラー演出の金字塔。これを観ないままに死なずに済んでよかった。


真夏の方程式
2013.07.13 TOHOシネマズ海老名:スクリーン10
【61】2013年フジテレビ= 監督:西谷弘 脚本:福田靖
CAST:福山雅治、杏、風吹ジュン、前田吟、吉高由里子、北村一輝、白竜、塩見三省、山崎光、西田尚美
●TVのノリではなく、きちんとした “映画”になっていた。波光きらめく中で湯川と少年の情景描写もきちんと描かれている。原作は未読だが、ただ罪を隠し通してきた者を肯定的に描くとき、「あんな奴なら殺されても仕方がない」と思わない観客も少なくないだろう。せめて湯川は少年のために、もっと強烈に犯人を断罪すべきだったと思う。


風立ちぬ
2013.07.20 109シネマズグランベリーモール:シアター6
【62】2013年スタジオジブリ=日テレ=電通他 監督:宮崎駿 脚本:宮崎駿
CAST:(声)庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルバート、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎
●緊張しながら観た。一回で消化できたか?でも二回目はないと思った。自ら空を舞うのではなく、舞うための飛行機を作る。空から見下ろすのではなく見上げることが、宮崎駿の原点帰りなのか、新たな境地なのかはわからない。ずっと飛行を描き続けてきた夢と、堀越二郎の夢がひとつに溶けていくようなラストを静かに見守るのみだった。
※2013年キネマ旬報ベストテン第7位


冒険者たち
2013.07.28 TOHOシネマズ海老名 :スクリーン7 Les Aventuriers ※再観賞
【63】1967年フランス 監督:ロベール・アンリコ 脚本:ロベール・アンリコ、ピエール・ペルグリ、ジョゼ・ジョバンニ
CAST:アラン・ドロン、リノ・ヴァンチェラ、ジョアンナ・シムカス、セルジュ・レジエニ、ハンス・メイヤー
●鉄屑の中のレティシアを追うオープニングにあのメロディ。彼女はやがて海の底へ沈む運命かと、少し甘酸っぱい感傷がよぎる。多分、これがスクリーンで観る最後の機会になるのだろう。中学のときのTV放送で惚れ込んで以来、青春の映画ではなく、映画の青春であり続けた一篇。ここまでヒロインの名が記憶に焼き付いた映画はない。


ワールド・ウォーZ
2013.08.16 109シネマズグランベリーモール:シアター3 World War Z
【64】2013年アメリカ 監督:マーク・フォースター 脚本:マシュー・マイケル・カーナハン
CAST:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、ダニエラ・ケルテス、ジェームズ・バッジ・デール、ファナ・モコエナ
●ブラピが出ている以外の予備知識がなかったので “Z” の意味は単に「最後の~」だと思っていたらZOMBIE映画だったのでびっくり。のっけからクライマックス全開に猛スピードで突進してくるゾンビはなかなかのもので、最後まで飽きさせない映画ではある。主人公が国連職員だからではないが、UNTACとUNDEADは語感も似ていて面白い。


タワーリング・インフェルノ
2013.08.18 TOHOシネマズ上大岡:スクリーン6 THE TOWERRING INFERNO ※再観賞
【65】1974年アメリカ 監督:ジョン・ギラーミン 脚本:スターリング・シリファント
CAST:スティーブ・マックイーン、ポール・ニューマン、フェイ・ダナウェイ、ウィリアム・ホールデン、フレッド・アステア
●待ちに待って封切日を迎えた中学生の頃を思い出し、すべての場面が懐かしかった。その後に『ダイ・ハード』があり、現実の9.11の衝撃映像ありで、この映画が色褪せたのは否めないが、改めて見直すとCGなどない時代、手作りの中にハリウッドの底力が満ち溢れている。ひとつの画面に収まるマックイーンとニューマン。今でも凄いと思う。


プリティ・ウーマン
2013.08.25 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 Pretty Woman
【66】1990年アメリカ 監督:ゲイリー・マーシャル 脚本:J・F・ロートン
CAST:リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツ、ラルフ・ベラミー、ジェイソン・アレクサンダー、ローラ・サン・ジャコモ
●映画観賞履歴の穴に嵌りずっと未見のままだった。『マイ・フェア・レディ』を焼き直したシンデレラストーリーにバブリーの残り香をムンムンと漂わせたラブコメと纏めてしまえば身も蓋もないが、冒頭からラストまでジュリア・ロバーツが大ブレイクしていく過程が凝縮されているのが面白い。ヒット作にはそれだけの理由があるということか。


サイド・エフェクト
2013.09.08 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 Side Effects
【67】2013年アメリカ 監督:スティーブン・ソダーバーグ 脚本:スコット・Z・バーンズ
CAST:ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、チャニング・テイタム、ヴィネッサ・ショウ
●「サイド・エフェクト」とは “副作用” のことだったのか。スタイリッシュなイメージのソダーバーグにしては随分とオーソドックスにヒッチコックのトリビュートを仕上げたものだ。いつから職人になったのやら。この二転三転するストーリーが原作ものではなく、オリジナル脚本であることに敬意を表しつつ、小説で読みたかったとも思う。


スター・トレック イントゥ・ダークネス
2013.09.08 TOHOシネマズ海老名:スクリーン8 Star Trek Into Darkness
【68】2013年アメリカ 監督:J・J・エイブラムス 脚本:デイモン・リンデロフ、アレックス・カーツマン他
CAST:クリス・パイン、ベネディクト・カンバーバッチ、ザカリー・クイント、ゾーイ・サルダナ、ジョン・チョー、アリス・イヴ
●最後に観てから30年ほど経つので繋がりに自信はない。カーンって、あのカーンなのか。『宇宙大作戦』と比べ、カークもスポックも凄く汗を掻いていたが、往年のヒーローをシリアスに描くムーブメントの中で、この二人のやんちゃぶりは安心させる。アイデア満載の宇宙船バトルを描きながらちゃんと二人の成長物語になっているのもいい。


あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
2013.09.14 TOHOシネマズららぽーと横浜:スクリーン9
【69】2013年フジテレビ=アニプレックス 監督:長井龍雪 脚本:岡田麿里
CAST:(声)入野自由、茅野愛衣、戸松遥、櫻井孝宏、早見沙織、近藤孝行
●タイトルの言葉に並びに惹かれ、深夜アニメの劇場版を観る。子供の頃の夏のひと時、秘密基地、仲間の死・・・と、決して世界観は嫌いではないし、条件反射的に泣かされもするのだが、アニメ声優たちの情緒過多な演技は辛かった。最後は泣かせの畳み掛けがあまりにしつこく「ここで終わってくれ」と何度思ったことやら。


許されざる者
2013.9.15 109シネマズグランベリーモール:シアター2
【70】2013年ワーナー 監督:李相日 脚本:李相日
CAST:渡辺謙、佐藤浩市、柄本明、柳楽優弥、忽那汐里、小池栄子、國村隼、近藤芳正、小澤征悦、滝藤賢一、三浦貴大
●イーストウッド自身のキャリアが意味を持つハリウッド版に対し、日本版は幕藩体制の崩壊、蝦夷地開拓とアイヌ民族粛清などの歴史背景が重厚な意味を持つ。勧善懲悪の英雄ストーリーにカタルシスを覚えた瞬間、主人公の生き方は永遠に許されたのではないか。何ひとつ平板な画を見せなかった李相日以下、作り手の執念が沸騰している。


リオ・ブラボー
2013.09.08 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 Rio Bravo
【71】1959年アメリカ 監督:ハワード・ホークス 脚本:ジュールス・ファースマン、リイ・ブラケット
CAST:ジョン・ウェイン、ディーン・マーティン、アンジー・ディキンソン、リッキー・ネルソン、ウォルター・ブレナン
●少し前にH・ホークスの再評価が言われていたが、名画座も含めて何度も観てきた映画がここまで完成されていたことに驚いた。確かにフォードのような抒情はないが、西部劇の、映画の面白さがすべて詰まっている。ウェインって本物のスターだったんだなと当たり前のことを確認しつつ、中坊のとき思いを寄せていたアンジーに改めて惚れた。


カッコーの巣の上で
2013.10.26 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 One Flew Over the Cuckoo's Nest ※再観賞
【72】1975年アメリカ 監督:ミロス・フォアマン 脚本:ローレンス・ホーベン、ボー・ゴールドマン
CAST:ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャー、シドニー・ラシック、ダニー・ディビート、ブラッド・ドゥーリフ
●秀作ではあると思う。しかし不思議と高一に観たときほどの衝撃がなかったのはJ・ニッチェのテーマ曲の懐かしさにスポイルされたせいなのか、L・フレッチャーの鬼看護婦が可愛らしく思えるほどこちらが歳を取ってしまったからなのか。もっとニコルソンの破壊的な狂気が破裂する映画だと記憶していたが、実にオーソドックスな映画だった。
※1976年キネマ旬報ベストテン第2位


フォレスト・ガンプ 一期一会
2013.11.17 TOHOシネマズ海老名:スクリーン7 Forrest Gump
【73】1994年アメリカ 監督:ロバート・ゼメキス 脚本:エリック・ロス
CAST:トム・ハンクス、サリー・フィールド、ロビン・ライト、ゲイリー・シニーズ、ミケルティ・ウィリアムソン
●ビデオ屋時代に大量仕入れをして大コケした思い出がある。オスカーを『ショーシャンクの空へ』と争ったのだっけ。流れゆく合衆国の近代史を傍観するのみだったのは、日本のチョコレート箱は開けたらすぐ中身がわかるように出来ているからか。うーん、エアキャップをプチプチ潰している人をずっと見させられている気分だった。
※1995年キネマ旬報ベストテン第4位


中島みゆき「夜会 VOL.17 2/2」劇場版
2013.11.21 イオンシネマつきみ野
【74】2013年YAMAHA 音楽監督:瀬尾一三 脚本構成・作詞・作曲:中島みゆき
CAST:中島みゆき、コビヤマ洋一、植野葉子、香坂千晶
●スクリーンの中島さんの表情を見ながら、生の舞台観賞の時の記憶を補填し、確認していくという不思議な映像体験だった。正直言うと迫力や臨場感はLIVEには遠く及ばない。しかし定点観測では味わえないクローズアップやカットバックは新鮮だった。「幸せになりなさい」から「二雙の舟」へと転調する劇的な感動はそのままだったか。


かぐや姫の物語
2013.12.05  TOHOシネマズ渋谷:スクリーン4
【75】2013年2013年スタジオジブリ=日テレ=電通他 監督:高畑勲 脚本:高畑勲、坂口理子
CAST:(声)朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子、高畑淳子、田畑智子、上川隆也、伊集院光、宇崎竜童
●不思議な気分で137分を過ごした。自然回帰を描けば描くほど異国感が漂ってきて『竹取物語』が別の国のファンタジーのようにも思えた。誰からも同意は得られまいが、月よりの使者は『太陽の王子・ホルスの大冒険』の宴を彷彿とさせ、懐かしの東映動画の匂いさえ感じてしまう。巨匠が力づくで原点帰りを試みたわけではないだろうが。
※2013年キネマ旬報ベストテン第4位


キャプテン・フィリップス
2013.12.22 109シネマズグランベリーモール Captain Phillips
【76】2013年アメリカ 監督:ポール・グリーングラス 脚本:ビリー・レイ
CAST:トム・ハンクス、バルカド・アブディ、バルカド・アブディラーマン、ファイサル・アーメド、マハト・M・アリ
●幌馬車を襲う有象無象なインディアン的な描き方ではなく、ハリウッドがソマリアの若き海賊たちに真正面から挑んだのは秀逸。彼らが海賊としてリクルートされる場面に未だ内戦の傷跡疼くソマリアの現実を見せる。彼らが最新鋭のシールズに一瞬のうちに掃討される衝撃に対し、かえってトム・ハンクスのバリューが邪魔だとすら感じた。


清須会議
2013.12.22 109シネマズグランベリーモール:シアター8
【77】2013年フジテレビ=東宝 監督:三谷幸喜 脚本:三谷幸喜
CAST:大泉洋、役所広司、小日向文世、佐藤浩市、妻夫木聡、浅野忠信、寺島進、でんでん、鈴木京香、中谷美紀
●顔に泥をつけて勝家を見送る秀吉とねね。歴史を動かす驚くべき人間力に圧倒されるが、本当に驚くべきは三谷喜劇にそこまでの感慨を抱かされたこと。その後に勝家とお市が自刃して果てる史実を思うと、その手前で開かれた清須会議は本当に人間喜劇なのだと思う。清須会議に着目した三谷の勝利だ。ただし旗取り競争の余興は蛇足。


武士の献立
2013.12.23 109シネマズグランベリーモール:シアター10
【78】2013年北國新聞=松竹 監督:朝原雄三 脚本:柏田道夫、山室有紀子、朝原雄三
CAST:上戸彩、高良健吾、西田敏行、余貴美子、夏川結衣、緒形直人、成海璃子、柄本佑、鹿賀丈史
●松竹撮影所らしいほのぼのとしたグルメ映画だと思っていた。もちろん味覚まで伝わるものではないが、百万石の藩位に揺れる加賀藩の苦悩もきっちりと抑えたことで、加賀料理の何たるかはリアルに表現出来たと思う。ただヒロインの上戸彩が弱く、所作の全部が学芸会に思えた。例えば宮﨑あおいならもっと濃厚な味になったのではないか。


そして父になる
2013.12.23 109シネマズグランベリーモール:シアター6
【79】2013年フジテレビ=アミューズ=ギャガ 監督:是枝裕和 脚本:是枝裕和
CAST:福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー、二宮慶多、黄升炫、中村ゆり、ピエール瀧
●慶多も琉晴もどちらも泣かない良い子だ。取り違えた二人の子にハンデをつけないことで「血」をとるか「時間」をとるかの苦しみが鮮明になる。何故すぐに気づかなかったのだと自分を責める母親に対し、父親は父としての資質を顧みて苦悩する。文句のない秀作だが琉晴から弟や妹を引き離すことの非情さへの言及があってもよかった。
※2013年キネマ旬報ベストテン第6位


ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE
2013.12.29 109シネマズグランベリーモール:シアター3
【80】2013年日本テレビ=TMS 監督:亀垣一 脚本:前川淳
CAST:(声)栗田貫一、高山みなみ、小林清志、山崎和佳奈、沢城みゆき、林原めぐみ、山寺宏一、小山力也、内野聖陽
●ルパンとコナンの世代は違うものの両作とも好きなので密かに期待していた。おそらく双方のファンも満足できる出来だったのではないか。ただ先に製作されたTVスペシャルの続編という形になっていたので、怪盗と探偵のファーストインパクトが劇的なものにならなかったのは残念。クレジットに大野雄二、大野克夫にはニヤリとしたが。


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